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時刻は21時30分。
夕食を終えた俺は、部屋に付いていた露天風呂へと来ていた。
「ふう、やっぱり風呂は露天に限るな」
一日の疲れを汗とともに流し、一息ついていると、どこからか叫び声が聞こえてきた。
「今の声は…明久?早速実行に移したかな」
例の覗きを実行中なのだろう。
だがまあ俺と雄二の予想通りならあの四人だけじゃ教師陣の壁を突破するのはまず不可能。
雄二も今日だけで攻略可能だとは思っていないだろう。
「助けを求めてくるとすれば最終日…さてさてどんなふうに面白くなるかな」
これから起こるであろうことを考え、笑みを浮かべながら湯に浸かる刹那だった。
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「ふう、いい湯だったー」
「お帰り、倉木君」
部屋に戻ると、久保がくつろいでいた。
「おう、大浴場はどうだった?」
「なかなか大きなところだったね。結構楽しめたよ」
「こっちもいい湯だったかな。それで、何やら騒がしかったようだけど何かあったのか?」
大方の予想はつくものの、一応聞いてみる。
「僕も聞いた話だけど、どうやらFクラスの人たちが女子風呂を覗きに行ったみたいだね」
「あー、それでか」
予想的中。
この分だと召喚システムもあったみたいだな。
「まったく、入浴中の『女子』を覗こうとするなんて、理解できないね」
「あ、ああ。そうだな」
だから時折見せるその反応は一体なんなんだ。
「明日も早いし、今夜はもう寝ようか」
「だな。俺ももう疲れたし」
というわけで今夜は二人共眠ることにした。
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「いやあ、昨日は散々な目にあったよ」
「まったくだぜ」
爽やかに迎えた強化合宿二日目、俺たちAクラスはFクラスと合同で自習していた。
「まさか教師が召喚獣をだしてくるなんてね」
眠そうに目をこすりながら座る明久と雄二。
大方、一晩中鉄人の補修でも受けてたのかな?
「それで?お前らはこれからどうするつもりなんだ?」
こいつらのことだ。
このまま諦めるという選択肢はないはずだ。
「もちろん続けるさ」
「そうは言っても雄二、これからどーするのさ?僕はもう鉄人と夜を明かすのはやだよ?」
あ、やっぱ夜通しで補修受けてたのか。
「お前は少しは頭を使え」
「ほえ?」
「昨日俺たちが負けた理由はなんだと思う?」
「えっと…教師が召喚獣を出してきたから?」
「そのとおり。教師クラスの召喚獣となると俺たちじゃあタイマンじゃ勝てねえからな」
「じゃがどうするのじゃ。教師をなんとかせねば覗きは不可能じゃぞ?」
「…………(こくこく)」
となりの机にいた秀吉とムッツリーニも会話に参加してきた。
「刹那はどう思う?」
明久がこちらに話を振ってきた。
「一体一が無理なら味方の数でも増やすのか?」
「その通りだ。そこで刹那、相談なんだが…」
「この流れだと俺にも参加しろって言うんだろ?楽しそうだが却下だ」
「やはりか…」
「えっ!どーしてさ!?」
雄二はダメもとで言ってきたみたいだが、明久は納得がいっていないみたいだ。
「理由は二つ。一つは俺にも立場があるって話しだが、二つ目は勝目がうすいってことだな」
「うむ…刹那と雄二が手を組めば不可能などないと思うのじゃがのう」
「秀吉は俺を買いかぶりすぎだよ。肉弾戦ならともかく、召喚獣が出てくるとなると俺ひとりの力なんて大した影響は出ない。教師陣が相手となると特にな」
さらに俺の予想だと、入浴時間外の女子生徒も出てきそうで…。
まあこれはまだ確証がないから言わないでおくが。
「ってなわけだから不参加にしとく。見方に誘うなら同じクラスの男子に協力を頼んだらどうだ?」
「だな。あいつらなら馬鹿だしすぐ食いつくだろう」
仮にも同じFクラスの仲間だというのに、なかなかひどいこと言うな。
「んじゃ俺はAクラスに戻るぞ。こっちはこっちで調べてみるからさ」
「うん!おねがいねっ、刹那!」
明久が期待したような目で俺を見送った。
まあできることはやっておくか。
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「ただいまっと」
「あらおかえりなさい」
「もうFクラスの人達とのおしゃべりは終わったのー?」
もともとの席に戻ると、木下さんと工藤さんが迎えてくれた。
ちなみに久保もいる。
代表は一緒じゃないのかって?
俺と入れ違いにFクラスの方に行ったようです。(雄二頑張れ)
「俺もAクラスなんだし、この合宿の趣旨に沿って行動しないとね」
「よく言うわよ。普段の授業じゃほとんど寝てるくせに…」
「だよねー、倉木君寝てばっかりだけど、どうやってテストで点数取ってるのかな?コツとかあったら教えて欲しいな」
「どうって言われてもな…」
「それは僕も気になるな」
気づけば久保まで手を止めてこちらに耳を傾けていた。
「特別なことはしてないって。ただ授業聞くよりも自分で勉強したほうが早く頭に入りやすいんだよ。数学が得意なのは実践的な演習を繰り返しやってるからかな」
「へえ~、ちなみに家での勉強時間はどれくらい?」
「2、3時間くらいだな。あんまり長くやっても集中力が持たないし」
「ふむ。それであの成績ということは才能、なのかもしれない」
久保が冷静に分析する。
才能ねえ、まあ多少はあるかな(笑)
「さあおしゃべりはこの辺にして、勉強続けようぜ。そのための合宿なんだし」
そーだね、といい三人ともすぐに集中して勉強に戻った。
俺も見習って勉強に専念することにしよう。
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「ふう、今日はいつも以上に疲労感があるなあ…」
「そりゃいつもと違って起きていたんだもの、当たり前よね。普段の授業もそれだけ真面目にすればいいのに」
自習時間が終わり、今は木下さんと一緒に部屋に戻ってきた。
どーして二人っきりかという説明をしておこう。
まず工藤さんは「ちょっとFクラスに遊びに行ってくるね♪」
それに代表が「…………夫についていくのが妻の努め」
そして久保が「なにっ!?じゃ、じゃあ僕も!」
といった具合だ。
「いやあ、どうにも数学以外の授業は気乗りしなくてね」
「そういえば倉木君って苦手な科目はあるのかしら?」
「ん?もちろんあるよ?」
俺だって高校生だし、苦手な科目ぐらいはある。
「一番苦手なのは英語かなー…」
「へえ、意外ね。なんでもできるんじゃないかと思ってたわ」
「期待に添えなくて悪かったね。英語に関しては下手すりゃFクラスにも負けるよ、俺は」
「はあっ!?そこまで!?」
「うん。ちなみに前回の点数聞きたい?」
「え、ええ、ぜひ」
「…21点」
「………」
ち、沈黙が痛いっ!
「………(じぃ)」
め、目線も痛いっ!!
「いやあ、俺日本男児なもんで…」
「はあ…しょうがないわね」
「へ?」
「明日からまだ合宿もあることだし、あたしが教えてあげようか?」
「おおっ!それはありがたい、ぜひ!」
ずんっと前のめりに近づく俺。
とたんに木下さんの顔が赤くなった。
「ち、ちちち、近いわよっ!」
「おっとごめん。でも嬉しいな~」
「ふふ、あたしは厳しいから覚悟しておくのね」
「どんとこいだ。そのお返しに木下さんには数学を教えよう」
「あたしとしてもそうしてもらえたら嬉しいわ。どの科目も点数が高いに越したことはないしね」
うんうん、俺としても仲間の戦力が上がるのは嬉しいことだ。
あ、そうだ。ついでにあのことで木下さんにお願いしてみようかな?
「ねえ木下さん」
「何かしら?」
「Fクラスの事なんだけど、噂ぐらいは聞いてるよね」
「例の覗き騒動のこと?また馬鹿な事してるみたいね」
「その事なんだけど、実はちょっと事情があってね」
俺は木下さんに、明久と雄二の置かれている状況について伝えた。
「ふーん、なるほどね。そういうわけだったの」
「そこで木下さんにお願いがあるんだけど…」
「その『お尻に火傷の痕がある女の子』を探して欲しいのね?」
さすがは木下さんだ。鋭いね。
「そーゆうこと。このあとの入浴時間にA・B・Cクラスの女子を調べて欲しいんだ。もちろん無理にとは言わない」
「うーん…」
少し口元を手で押さえて考える木下さん。だったが
「ま、そのくらいなら協力してあげるわ」
「本当!?よかっ「でもそのかわり!」た…?」
どうやら何か条件があるようで…なんだろ?
「その代わり、貸し一つ、よ?」
ふふん、といたずらっぽく笑う木下さん。
その表情に少しドキドキしながらも、了承してしまう。
単純だなー、俺って。