翌日
昨日と同じく、俺たちAクラスはFクラスとの合同授業だった。
「それで?結局鉄人の補修は受けたわけだ」
「「………」」
雄二と明久は机に突っ伏したまま動かない。
「昨日はどういった感じだったんだ?」
仕方ないのでまだ元気のある秀吉とムッツリーニに話を聞くことにする。
「昨日は刹那の言ったとおりFクラスを懐柔したのじゃが…」
「…………予想外の妨害にあった」
「妨害?」
「うむ、女子生徒たちが有志を募って立ちはだかったのじゃ」
ふむ。俺の予想通りだったか。
「おかげで部隊は即壊滅状態。さすがに人数が増えても、Fクラスのバカだけじゃ壁は突破できなかったってわけだ」
横では雄二がいつの間にか復活していた。
「なるほどな。状況は完全に不利だな」
いくらほかのクラスよりFクラスが召喚獣の操作性に優れていたとしても、点数・物量の両方が足りない以上は突破は難しい。
となると次に雄二がとる行動は…
「ここまで来たらもうあとにはひけねえ。今度はさらに戦力を増やすぞ」
「戦力を増やすか…でもなんかそれって今までの僕たちのやり方じゃないよね?」
雄二に続いて明久も目を覚ましたようだ。
「どういうことなのじゃ、明久?」
「だって今まではどんなに不利な状況でもそのままの戦力でどうにかするような作戦を雄二が考えてくれたじゃないか」
「ほう、明久にしてはなかなか鋭いじゃないか」
「へ?」
どうにもその先はわからないようなので、雄二に変わって説明してやる。
「明久、もしこのまま覗きが成功できなかったらお前たちはどうなる?」
「えっと…社会的にも物理的にも抹殺されるよね…」
「うん、まあ間違ってはない」
覗き魔として社会的に汚名を着せられ、雄二はうちの代表、明久は姫路・島田の両名から拷問をかけられる運命。
涙をそそる展開だな(笑)
「じゃあ成功した場合は?」
「そりゃあ脅迫犯を捕まえて僕のデータを消去して…」
「でも覗きをしたという事実はつきまとうわけだろ?」
「あ、ほんとだ」
「学園側も看過できずにお前たちを停学処分にするかもしれない」
「そうじゃのう。じゃがそれと戦力の増強とでどういった関係があるのじゃ?」
「俺たちの人数が多ければ多いほど学園側は誰が覗きに加担したのか特定しづらくなる」
と雄二。
「文月学園は全国的にも有名な試験校だしな。不祥事を起こした生徒は徹底的に処分するか隠すかの選択しかない」
と俺が説明すると
「…………なるほど」
「そういった考えがあったのじゃな」
とムッツリーニと秀吉は納得したようだった。
「え?え?どゆこと?」
未だにこのバカはわかっていないようだったが。
「まあとにかく今の戦力じゃ目標が達成できない以上は仲間を増やすしかないって事だけわかってりゃいいさ」
「ふーん…でも誰を仲間にするのさ?刹那が加わってくれるの?」
「うーん、個人的には参加したいんだが…」
いかんせんAクラスというものの縛りが強い。
さっき木下さんにもAクラスらしく真面目にって言われたばっかりだし。
「そうだなー、Aクラス男子全員を仲間にすればいい。そうすりゃ必然的に俺も参加出来るしな」
「ちょうど今は合同自習中だしな。ちょうどいい、代表格の久保を説得するか」
たしかに学年次席のあいつならうちのクラスの男子代表といっていいだろう。
ある種のカリスマ性のようなものもあるし、説得が成功すればAクラスの男子諸君をうまくまとめてくれそうだ。
「久保の説得なら明久が適任だな」
「うむ」
「…………(こくこく)」
あ、やっぱりそーなのか。
うすうす感じてはいたけど…
「へ?別にいいけど、どーして僕?」
「「「「…………」」」」
その理由は…俺たちの口から言っていい内容じゃあないのさ。
「まあとりあえず行ってこい。この中じゃあ間違いなくお前が一番久保に好かれている。それだけは自信を持て」
「あ、うん」
「だが、いざという時はこれを使え」
スっと雄二があるものを明久に渡した。
スタンガン(二十万ボルト)
同じ学校の生徒に頼み事をしに行くにしては、あまりにも重装備だった。
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とぼとぼ
「ごめん、ダメだったよ…」
「そうか。まあお前が無事だっただけでもよしとしよう」
少しして明久は戻ってきたが、結果は失敗だったようだ。
だが雄二の言うとおり、明久の無事がなによりだ。
久保…お前はいつか普通の道に戻れると信じてる。
一人の友達として信じているぞっ。
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そして夜。
漢(おとこ)たちによる三度目の覗き(たたかい)が始まった。
今日は一日あいつらと一緒だったが、どうやら懐柔できたのはD・E・Fの三クラスの男子生徒だけであった。
(うーん、Fの男子だけで瞬殺ってことは、今回もちょっと厳しそうだな。何よりも…)
「あれー?代表?」
ラウンジでいつものメンバーでおしゃべりしていると、工藤さんが異変に気づいた。
「あら?さっきまでここにいたのに…」
木下さんも気づいた。
そしてその疑問に答えたのは久保だった。
「代表ならさっき、『………浮気の気配』って言ってどこかに消えたようだよ」
「あー、そういやもう入浴時間だったね♪」
「はあ、代表も大分Fクラスに毒されてきたのかしら」
そう、代表。
我がクラスで成績トップ、つまりは俺たちの学園で主席の実力を持つ彼女が出陣した。
これは他クラスの女子が防衛に回るのとはワケがちがう。
(今夜もまず無理だろうな…Fクラスの姫路さんも出てくるだろうし、学年の1・2位が出てきたとなれば突破は無理…か)
心の中で悪友の冥福を祈りつつ、他の二人に気づかれないように会話を切り出した。
「木下さん、例の件どう?」
「うーん、あの覗き騒動のおかげであたしと愛子は部屋のお風呂使ってるし、直接確かめるのは無理ね…」
「そっか…」
「なになに?二人して内緒話?」
注意してはいたが、工藤さんの耳に届いてしまったようだ。
まあ隠すほどのことじゃないし、工藤さん(ついでに久保)にも話しておこうかな。
協力してくれれば心強いし。
(事情説明中)
「ってことなんだ」
「なるほどねー…今回の覗きにはそんな理由があったんだね。ちょっと気の毒カナ?」
「まあ他の男子諸君は純粋に覗き目的だから、自業自得だけどな」
「まったくだ。人の集まりにはルールがある。覗きというものはそのルールを犯す、人として間違った行為だというのに…」
「ほんっとに考えが短絡的よね。さすがはFクラスだわ」
相変わらず木下さんは辛辣だなー…。
正論だから何も言えないが。
あと久保が「人として間違った行為、か…」つぶやいていたが、俺は一人の友人として彼が自力で答えを見つけることを応援する。
決して臆したわけではないと言っておこう。
「二人はこの件に関して何か知らないか?」
「うーん、ボクは特になにも…あっ!」
工藤さんが手をぽんっと叩いた。
「そういえば女子風呂の脱衣所に、もうひとつ隠しカメラがあるよ」
「なに…?本当か?」
「うん。ボクもちゃんと確認したからね。でもちょっと技術に差がありすぎたカナー、解除はできなかったよ」
彼女いわく、かなりわかりづらくされており、彼女でも正確な位置がわからないという。
ちなみになぜあるのかわかるのかというと、一つ目のカメラが見つかったあとにこっそり専用の探知機をつかってみたようだ。
「そもそも一つ目のカメラが見つかったのもおかしいわよね。その脅迫犯って高い盗撮技術を持っているんでしょ?」
「ああそうだな」
「だったら素人にすぐわかるようなところにカメラを仕掛けるなんてちょっと変よね」
「たしかにそうだね。そうなると考えられる可能性は一つ。『二段構え』ってことになる」
木下さんの推測に久保が明確な推理を加えた。
さすがはAクラスのトップだな。
頭の回転が全然違う。
「なかなか頭が回る犯人ね。でもどうしてそんなことしたのかしら」
木下さんが素朴な疑問を投げかけた。
「女の子の裸を盗撮して特をする人物かー。そうなると大分限られてくるんじゃない?」
「だな。少なくとも俺の知る中では一人しかいないし」
今はDクラスだったか。
確かFの島田さんに好意を寄せている女子生徒なら一人いるし、その子なら明久を脅迫するのも道理にかなっている。
「どうやら何か答えを掴んだようだね♪」
「ああ。容疑者が一人浮かんだ。おそらくあいつが今回の犯人だろうな」
「それで?それを知ったあなたはどうするのかしら?」
「んー、そうだな。今のところは何もする気はないが、明日の今頃はわからないな。気が変わっているかも」
「はあ、今更あんたに何言っても無駄ね」
ため息混じりにそう言ってくる木下さん。
「俺は楽しければそれでいいんだよ」
明久が見ていれば、雄二と同じ顔してる、というであろう程よく邪悪な笑みを浮かべ、その日は部屋へ戻り静かに眠りについた。
余談だが、この夜明久と雄二はセーラー服とパンツのみという大胆な格好で廊下で言い争っていたところ、鉄人に保護され、鉄人と三度目のあつーい夜を過ごしたそうで。