バカとAクラスの日常   作:ゴリ霧中

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久保君が何気に好きな作者。

Aクラスにスポットを当てると存分に出したくなってしまいます。


第二十三話

合宿四日目

 

今日も今日とて自習中である。

だが昨日までと違うのが一点。

 

「だから、どうしてそうなるのよ!」

 

「す、すみません…」

 

「そこは目的語をもってきて…ってまた単語のスペル間違ってる!」

 

「は、はい…」

 

「ったく、よくそんなんでAクラスにはいれたわね。ふう、やっぱりまずは基礎単語の暗記が必要ね…」

 

隣には木下さんが最近癖になってきたんじゃないかと思うため息をしながらジト目で講義中。

 

俺は昨日の約束通り木下さんに苦手な英語を教わっていた。

 

「どうにも単純な暗記って苦手なんだよな…数学は暗記力より応用力の方が多いから楽なんだけど」

 

「そうは言うけど暗記が必要なのは英語だけじゃないでしょ。他の科目でも必須だし、大学受験じゃそんな泣き言は聞いちゃくれないわよ」

 

「だな。諦めて頑張るか…」

 

単語帳を片手に持ちながら暗記作業に没頭していると、今度は木下さんが数学の勉強を始めていた。

 

「とは言ってもあたしも暗記が得意なだけで、応用力の必要な数学は微妙なのよね」

 

「そうなの?」

 

「ええ。でも試験の点数ではちゃんとAクラスとしての点数を維持できているわ。今の所はね」

 

「ってことはこれからの内容に不安を感じていると」

 

「そうなのよ。二年生になってからというもの、どんどんわからないところが増えているわ」

 

「んじゃひとつアドバイス。新しい公式が出てきたときはその基本例題を何回も解くこと。暗記と違って数学はとにかく解く事が大事なんだよ。問題の基本的な形さえ掴めば試験なんてだんだんゲーム感覚で解けてくるから」

 

「簡単に言うわね…でも頑張ってみるわ。数学学年一位の言うことだものね」

 

「ふっ、さすがにこの座だけは誰にも渡さないよ」

 

ちょくちょくふざけたところも残しながら、二人共この日は一日中苦手科目を夜まで勉強していた(俺はたまに寝落ち)。

 

 

 

 

そして明久と雄二にとって、運命の夜を迎えたのであった。

学力強化合宿は全部で五日間行われる。

つまり四日目である今夜が女子風呂を覗く最後のチャンスであった。

 

(さすがに最後くらい協力してやりたいけど、うちの久保は頭が固いからな…)

 

実際、男子の代表である久保さえ協力してくれれば参加は可能であった。

今日の午後雄二から流れてきた数枚の写真…Fクラス美少女達のはだけた浴衣姿の写真をみて(中にはうちの代表のもあり)、我がクラスの男子諸君も他クラス同様に女子風呂覗きにやる気を出していた。

 

がしかし、男子の実質リーダーである久保がそれを許さない。

奴はそんな写真じゃ心が動かず、今もこうして男子たちを集めてひとつの部屋に集まっていた。

 

「(そわそわ、そわそわ)」

 

(あーあ、久保のやつわかりやすくそわそわしちゃって)

 

明久のことが心配でたまらないって顔だな。

ちなみにほかの男子たちも、妄想が広がって先程から慌ただしくなっていた。

 

「はあ~、女子風呂かあ…」

「うちの学年って可愛い女子多いよな…」

「Aクラスだけでも代表・木下・工藤なんていう豪華メンバーだし…」

「是非とも拝みたいものですねっ(くいっ)」

 

ほらもう傍目から見たらFクラスと大差ないぞ。

そして最後の君、前もみたメガネを中指で上げるのがうまい!実に似合ってる!

お前でもそういうのに興味あるんだな…。

 

「ああっ吉井くん、吉井くん…僕は一体、どうしたらいいんだぁっ!」

 

勝手にしてください、なんて言わないぞ。

俺はどうなってもお前の友達であることをやめないからな!

 

「辛そうだな、久保」

 

「く、倉木君か!教えてくれ、僕は一体どうしたらいいんだ!」

 

そう言って泣きながら俺にすがってきた。

 

(久保…そこまでしてあのバカのことで悩んでいたのか…)

 

「久保よ…お前の道を正してやれず、俺はただ見守っていることしかできなかったな。だがだからこそ今お前がやるべき道を示そう!」

 

ひと呼吸置き、真剣な眼差しで久保を見る。

 

「道が間違っているからなんだ!社会のルールから外れているからなんだ!好きならそんなもん踏み倒せ、むしろ踏みつぶせ!」

 

「倉木君…」

 

「たまには理性なんて考えずに自分の欲望のまま、本能のままに生きてみろよ…」

 

「…………」

 

俺が言いたいことを言うと久保は黙ったまま俯いた。

周りも空気を読んで静まり返った。

 

「………うだ」

 

「ん?」

 

「そうだ…僕の望みのまま、僕の思うがままに行動する。それが時として正しいと僕は大事な人から教わったんだ。そしてその彼が今窮地に陥っているそんな状況で僕は一体何をためらっているんだ!」

 

久保の中で今何かが吹っ切れた。

心の中の何かが吹っ飛んだ。

それは理性。

自分の行動を縛る、時としてそれは重要なストッパーだが、時には邪魔な重し。

彼はそれを理解し、自分の意思でそれをとっぱらった。

 

「ありがとう倉木君。君のおかげで僕は大事な事を思い出せたようだ」

 

「ふん、友達として当然だろ?」

 

「友達、か。初めてだよ、心からそう思えるのは。だがあえて言おう!君は最高の親友だ!」

 

ばっと立ち上がり、自信に満ちた面持ちで俺たちに向かう久保。

 

「聞けっ!我が同胞たちよ!君たちも僕と同じく欲望のため、本能のために生きる覚悟はあるか!」

 

「「「おおーっ!」」」

 

「ならばこの僕に力を貸してくれ!Aクラス男子、総勢二四名!これより本能のまま女子風呂覗きに参加する!」

 

「「「おおおおーーっっ!」」」

 

「おうっ!」

 

久保の一言でこのクラスはひとつになった。

 

「吉井くんのためにも…」

 

と久保が付け加えていたが、もう何も言うまい。

結果として俺は社会のルールに背いた道を親友に示してしまったのかもしれない。

 

だがそれでもいい。

久保が幸せなら親友としてもそれが一番の選択だ。

 

久保とともに満足気な顔を浮かべながら、俺たちはやつらが待つであろう戦場へと向かうのであった。

 

 

 

 

同時刻

合宿所一階

 

「くそっなんて圧倒的なんだ…」

 

吉井明久は究極の修羅場にいた。

となりには同胞であるBクラスの男子たち…の屍。

 

そして前方には、鬼。いや阿修羅。

 

「………雄二、浮気は許さない」

 

「うふふふ~明久くんったら、おいたが過ぎますよ?」

 

「くっ、さすがにこの二人が相手じゃあ…」

 

「やはりAクラスがおらんようじゃのう…」

 

周囲を見渡して秀吉が悔しげに告げた。

 

「おまけにこの布陣か。くそっ隙がねえ!」

 

見ると目の前には霧島・姫路の両名がいたが、その先の地下へと通じる階段には学年主任の高橋先生が別の召喚フィールドを展開していた

さらにはほかのAクラスの女子たちも周りを囲んでいる。

 

「こちらへの攻撃は翔子と姫路が、そして高橋女史が取りこぼしを叩く。まるで隙がねえじゃねえかっ」

 

「ど、どうするのさ雄二っ!?」

 

「ちょっと待て、今考えてるんだよ!」

 

とはいえこの状況だ。

打開策は思い当たらない。

 

そんな中秀吉が根本的な疑問を明久に投げかけた。

 

「明久よ…なぜお主はここまで圧倒的に不利な状況で諦めないのじゃ?今更お主の印象なんてそれほど変わらないじゃろうに」

 

なにげにひどいことを言っているようだが秀吉に悪気はない。

そして明久も特に気にはしていない。

 

「違うんだよ。そうじゃないんだよ、秀吉…」

 

「なんじゃと?」

 

「確かに最初は写真を取り戻すためだった。そして初日の疑いを晴らすためだったんだ。でもね…こうして仲間が増えていって、その仲間たちを失いながらも前に進んで、僕はひとつの答えにたどり着いたんだ」

 

「それは、なんじゃ?」

 

ごくっと秀吉が息を呑む。

そして明久は言い放つ。

 

「たとえ許されない行為であろうと、僕は自分の気持ちは偽れない。正直に言おう。今、僕は…純粋に欲望のままに女子風呂を覗きたいっ!」

 

「お主はどこまで馬鹿なんじゃ!?」

 

脅迫?真犯人?

そんな些細なものはどうでもいい。

『欲望』

その一言で説明がつくじゃないかっ!

 

「世間のルールなんて関係ない!誰に文句を言われようと、僕は僕の心に従って生きていくだけだぁっ!」

 

勝ち目はないと分かりながらも召喚獣を呼び出し、臨戦態勢をとる明久。

 

そのときだった。

 

「よくぞ言った、吉井明久君っ!」

 

その一言が響き、廊下は静まり返った。

 

「だ、誰ですっ!?」

 

姫路さんが反応する。

明久たちも声のする方へ目を向けた。

 

「待たせたね、吉井君。君のその魂の一言…この僕が聞き届けた!」

 

「く、久保君!」

 

「よう明久、絶体絶命ってやつだな」

 

「刹那!二人共来てくれたんだねっ!」

 

明久は救世主の登場に感動していた。

 

「ずっと気持ちに踏ん切りがつかなかった。ここぞという時に理性で踏みとどまっていた。だがそんな時に僕の親友が手を差し伸べてくれた!救いの手を!」

 

「そ、そこまで仰々しくいうなよ。恥ずかしいな」

 

「だが事実だ。僕がここに来れたのは君のおかげさ」

 

実にいい笑顔でこちらを向く久保。

ここまで幸せそうならあえて水は指すまい。

 

「我らAクラス男子総勢二四名、今より吉井明久の覗きに力を貸そう!」

 

「「「おおーっ!」」」

 

「な、なんですって!?」

 

後ろで状況を伺っていた高橋先生の顔色が変わった。

そりゃそうか、俺たちは高橋先生の直属の生徒だもんな。

 

「そういうわけだ。ここは俺たちに任せて先に行くんだな」

 

「恩にきるぜ刹那!明久、ムッツリーニ!お前らはなんとしても地下へたどり着け!」

 

「もちろんさ!」

 

「…………了解!」

 

雄二の号令とともに走り出す二人。

うちの代表と姫路、さらにAクラス女子達は久保を含めた男子達が抑えていた。

 

「くっ、ですがここは通しません!」

 

そこに高橋先生が立ちはだかる。

 

「いんや通してもらうぜ!『起動(アウェイクン)』!」

 

雄二がキーワードをいうと高橋先生が展開していた召喚フィールドが一瞬で消え失せた。

 

「っ!干渉ですかっ!やってくれますね…!」

 

「いけ!二人共!」

 

ダダッ

 

「よし、あとはあんたを行かせずにここで足止めさせてもらうぜ」

 

「ふっ、いいでしょう。ですがあなたにそれができますか、坂本くん?」

 

「やるのは俺じゃねえさ。『起動』!」

 

「なっ!?」

 

雄二がやったのはまたしても『起動』。

新たに召喚フィールドを作り出した。

どのみち高橋先生が作り出すのだからあまり意味はないはずだが。

 

ことこの状況では違ってくる。

 

「はあ。雄二よお、お前もとから俺が来ること前提で作戦立ててやがったな?」

 

頭をポリポリと掻きながら雄二の後ろから高橋先生の前へ踏み出す俺。

そんな俺に雄二も一言。

 

「お前のことだ、どうせ最後くれえは来るだろ」

 

「確かに…」

 

「「こんな面白そうなことに参加しないわけがない!」」

 

「倉木君!あなたまでそちらにつくというのですか…っ!?ということはこのフィールドは!」

 

「その通りさセンセ。こいつのために俺が張った『数学』のフィールドだ!」

 

「た、確かにこれは厳しそうです。ですが!一人の教師として生徒に負けるわけには行きません!サモン!」

 

「いやー、いつか戦ってみたかったんですよねー高橋先生とは。サモン!」

 

互いに召喚獣を呼び出し、その点数が表示された。

 

 

学年主任 高橋洋子

数学   1000点

 

「なんじゃあの点数は!?」

 

「文月学園のテストは上限なしの試験。と言われておりますが、実際には上限は存在します。ちょうど1000点を上限としていましてね。まあ生徒はここまで点数が伸びませんし、教師用でしか意味はありませんが」

 

「くっ…さすがは学年主任だ。だがあれに対抗できるのは刹那かムッツリーニくらいしか…」

 

自分の立てた作戦ではここで刹那が高橋女史を足止めする予定だったが、想定していたよりも数段点数が高い。

てかチートすぎんだろ!!!どんな頭してやがる!

 

「さあ倉木君。勝負を始めましょうか?」

 

そういい余裕満々の表情で刹那の召喚獣へ目を向ける高橋女史。

 

Aクラス 倉木刹那

数学   1000点

 

「あー、この点数バグじゃなくて仕様だったんだ。てっきりシステムエラーかと思いましたよ」

 

「………へ?」

 

高橋先生は目を点にして驚いていた。

もちろん雄二や秀吉たち、さらには戦闘中のAクラスの生徒たちでさえも。

 

「ば、馬鹿な…今まで生徒でそこまでの点数を出したことなんて」

 

「今までがなんです?現に俺はこうして点数を出している。それだけで十分じゃないですか。さあて、では始めましょう。実力が同じ二体の召喚獣の戦いをっ!」

 

言い放ち、瞬間。

 

刹那の召喚獣の猛攻が始まる。

 

「ほらほらっ!おしゃべりはもう終わりですよ!」

 

「くっ…!」

 

明久も顔負けの操作技術で高橋女史(の召喚獣)に襲いかかる刹那。

点数がカンストしていることもあり、その攻撃は一撃が尋常じゃない攻撃力であった。

みるみるうちに点数を消耗していく高橋女史。

 

「くぅ、やりますね倉木君」

 

「残念ですが手は抜きません。勝たせてもらいますよ!《具現》!」

 

キーワードを口に出し、いつかの明久同様に無数の剣を生み出す。

 

「いけっ!」

 

刹那の一言ですべての剣が襲いかかった。

 

「くっ、はっ、はぁっ!」

 

だが負けじと高橋先生もその攻撃を避ける。

しかも紙一重で避けながらも手に持ったムチでそれらを撃ち落としていった。

 

「なるほど。腕輪の能力でムチの速度・威力の二つを上げていますか」

 

「そう簡単に教師が生徒に負けるわけにもいかないんです、よっ!」

 

気づけば生み出した剣もそのほとんどが撃ち落とされていた。

 

「わたしは違いますが、あなたの腕輪は使うたびに点数の消費が激しいようですね」

 

「あ、バレましたか」

 

「当たり前です」

 

気づけば俺の召喚獣の点数は腕輪の影響で半分近く減り、高橋先生の点数も俺の攻撃を何発か受けた影響で半分まで減っていた。

 

「さすがにここまで避けられるとは思ってませんでしたが、そろそろ終わりにしましょうか」

 

「何をするつもりです?」

 

「こうするんですよ」

 

今度は一本だけ剣を生み出す。

 

「はあっ!」

 

その剣を飛ばし、攻撃を加える。

パァンとムチに弾かれた。

 

「だからそんな攻撃は効か…っ!?」

 

高橋先生が油断したその瞬間、弾いたと思っていた剣がその軌道を変えて襲いかかった。

 

「くっ!」

 

パァンとまたしてもムチに弾かれた。

 

「弾いても弾いても向かってくる斬撃。まあさすがに簡単には当たりませんが…これならどうでしょう」

 

続けてさらに十本の剣を生み出し、同じように飛ばした。

 

「一本だけでも苦戦していましたが、数を増やしてもまだ避けれますかね」

 

「あ、あ、ああ…」

 

ムチだけでは捌ききれず、次第にどんどん攻撃が当たるようになっていく。

そして攻撃に耐え切れず、高橋先生の召喚獣はついにムチを叩き落され…

 

「これで終わりです」

 

「くぅ…」

 

その点数がとうとうゼロになった。

 

「ふー、疲れた」

 

「完敗です…」

 

「「「おおおーーっ!!」」」

 

周囲にいた男子たちから歓声が上がった。

あの高橋先生が倒されたのだから無理もない。

 

「聞けっ皆の衆!これで俺たちに立ちはだかる壁はない!今こそ、理想郷へと足を踏み入れるのだぁっ!」

 

「「「うぉっっしゃーーーー!!」」」

 

いつの間にか代表と姫路さんを下していた男子たちは、雄二を先頭に地下へと続く階段を走っていった。

 

「よし、これでとりあえずは終わったな。なかなか楽しめたし…」

 

俺個人としては女子風呂を覗くという行為にそこまでの思い入れはないため、部屋に戻って休もうと踵を返すと。

 

「あら?もう帰るのかしら?あたしとしては少し倉木君とお・は・な・しがしたいんだけど」

 

「き、木下さん!?どどど、どうしてここに…?」

 

「どおしてかしらねえ~?」

 

「ま、待つんだ。ここはひとつ俺の話を…」

 

「聞くと思う?」

 

「いやでも…」

 

「…正座」

 

「へ?」

 

「せ・い・ざ(にこ~)」

 

「…はい」

 

今までにない満面の笑みを浮かべた魔王(木下さん)に俺は膝を折って謝罪の意を伝えた。

人間の…いや、動物の本能。

それは欲望にまっすぐ生きるより、目の前の恐怖に屈してしまうことなのであると、俺は知ってしまったのだった。

 




雄二って自分で科目選んでフィールド作れたっけ?
ランダムだったような気もするけどそこは気にしない方向で。

もしランダムだったらオリジナル展開ってことになります。

そして上限1000点というのもオリジナルです。

そうしないと際限なく主人公に無双させちゃいそうなんで。
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