バカとAクラスの日常   作:ゴリ霧中

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第二十七話

ところ変わってここは喫茶店。

俺はアイスコーヒーを注文して一口すする。

ここまでなら俺も別段困ったことはないのだが、ひとつ問題があった。

 

「あら、コーヒーだけでいいの?ここはケーキも中々美味しいわよ?」

 

「あ、ああ。俺はいいや…」

 

俺の対面に座り、ケーキを食べる小山さん。

紅茶を片手にこちらを見てくるもんだから、俺としても心が休まらない。

一体何を企んでいるのやら。

 

「それで?俺をこんなところに呼び出した理由を聞かせてもらおうか?」

 

「随分と邪険に扱われたものね。理由ならさっきも話したとおりよ。あなたにもっとあたしのことを知ってもらいたいの」

 

それなりに冷たく応対したつもりだったが、効き目はないようだ。

それどころかにこやかにこちらを見つめてくる。

 

「はあ、俺なんかのどこがいいんだか…」

 

「それも言ったでしょ?あたしは頭のいい人が好きなの」

 

「そりゃ俺は一応Aクラスには属しているが、あんたの言いたいことはそういうことじゃないんだろ?」

 

「そうね。頭がキレて行動力もある。そんなあなたに興味があるの。ルックスもまあまあだしね」

 

「中々の高評価で嬉しいが、正直言って俺はあんたにあまりいい印象は無い」

 

「あら、随分な物言いだこと」

 

「そりゃそうだろ。普段はクールを装ってるけど、一度頭に血がのぼると見境なく感情をむき出しにするその性格、はっきり言ってあまりいい性格とは言えないな」

 

「この間の試召戦争のときね。あの時は見苦しいところを見せてしまったわ」

 

「それだけじゃなく明久たちのことをFクラスだという理由だけで侮蔑する差別思考もある。俺の好みのタイプとは大分違うな」

 

「頭の悪い人たちにバカというのは相応の対応だとあたしは考えるわ。もっとも、Fクラスの代表は少し違うみたいだけど」

 

ほう、雄二に対しては考えが一致してるみたいだな。

 

「それでもFクラスの人間は大半が馬鹿で野蛮な連中だと考えているのはあたしだけじゃないはずよ」

 

「まあそりゃそうだわな」

 

俺もそのことについて全否定するわけじゃない。

 

「でもあんたに対しての考えが変わるわけじゃない」

 

「それは残念ね。まあ今日のところはこれくらいにしましょ。あたしについての印象は追々変えて言ってもらえばいいわ」

 

「変われば、の話だけどな」

 

そういい、話は終わったと思った俺は店をあとにした。

 

よかった、大したことも起こらず早く帰れて。

 

 

 

 

翌日、俺たちAクラスの授業はいつもどおり行われていた。

 

「はあ、暇だな」

 

「授業中にその発言はAクラス生徒としてはいただけないわね」

 

隣の木下さんに白い目で見られるものの、俺にとって退屈な英語の授業ではしょうがないこと。

なんで外国の言葉を日本人が勉強しなきゃならないのかな…

 

「はあ、早く数学の時間にならないかな」

 

「数学は午後からよ。まだまだあとね」

 

「はあ、さらにやる気がなくなった…」

 

今頃Fクラスは試召戦争のことでてんやわんやしてる頃か。

昨日雄二からメールで聞いた話だとBクラスにも狙われてるらしいし。

 

「今の状況でBクラスから狙われたらFクラスに勝ち目は無い…」

 

「えっ、Bクラス?」

 

「ん?ああ、聞こえてたか」

 

「声に出てたわよ。それより、Bクラスに狙われてるって…」

 

「うちのクラスじゃなくてFクラスがね。DクラスだけじゃなくてBクラスにも狙われてるみたいなんだ」

 

「ええっ!?それって大変なことなんじゃ…」

 

「だろうね。今の戦力じゃDクラスだけならまだしも、Bクラスを相手にしたらまず勝てないだろう」

 

「そうよね…それで、倉木君はどうするつもり?」

 

「うーん、俺としてはどうにかしてやりたいところなんだけど」

 

「立場が立場だから何もできない、ってわけね」

 

「そーゆーこと。せめてBクラスの根本がこっちにもちょっかい出してくれたらやりようもあるんだけど」

 

「わざわざ格上のうちのクラスに手を出してリスクを負う必要もないわね」

 

「そーなんだよなー。いっそのことこっちから手を出そうかとも考えたけど…わざわざみんなを巻き込むわけにもいかないし…」

 

「Aクラスの生徒たちはあまり好戦的じゃないから仕方ないわね。そうなるとこちらからFクラスの援護はほとんどできないわ」

 

「そうなるな…って珍しいな。木下さんがFクラスの肩を持つなんて」

 

「へっ!?べ、別にそういうわけじゃないわよ!ただBクラスが相変わらず汚い方法をとってることが気に入らないだけ!」

 

顔を赤くしながらまくし立てる木下さん。

まあ今はそういうことにしておきますか。

 

 

 

 

「やぁっと終わったか…長い授業だったな」

 

退屈な授業が終わり、今は待ちに待った昼休み。

 

「さてさて、では昼食を…って、ん?あれは…」

 

ふと教室の入口付近に目をやると、代表が男子生徒と話しているところだった。

話が終わると、代表は血相を変えて教室を飛び出していった。

代表のあの表情…ただ事じゃないみたいだな。

 

急いで代表を追おうと教室を出るが、既に代表の姿はなかった。

 

仕方ないので代表と何かを話していた生徒のもとへ向かう。

 

「さっきまで話してた生徒は、と。あれか」

 

教室を出るとすぐにその生徒を見つけることができた。

どうやらBクラスの生徒だったようで、隣のBクラスに戻っていった。

 

(今はFクラスに攻めるために忙しいBクラスが、なぜうちの代表と…?)

 

考えを巡らせたが、そのあいだに彼が根本と話している声が聞こえてきた。

 

「で、どうだった?」

 

「ああ、お前の言ったとおりまんまと騙されたぜ。多分今頃Fクラスの坂本のところにでもいるんじゃないか?」

 

「ふっふっふ、坂本の母親が倒れた、なんてでまかせにこんなにあっさりと騙されてくれるとはな。霧島は確かに脅威だが、坂本が絡むと途端に扱いやすくなるぜ」

 

その会話を教室の外で聞き耳を立ててる人間がいる、なんて思わないのだろうか?

このあたりが根本の甘いところだ。

 

(それにしても代表を使って雄二を封じるとは…やっぱり根元は汚い作戦を使ってくれる)

 

すぐに教室へと引き返し、木下さんと久保、工藤さんを集める。

急な呼び出しに三人は少し戸惑っているようだが、この際無視して強引に話しを進めるとしよう。

 

「三人に聞いて欲しいことがあるんだ」

 

「何かな何かなー?」

 

「君のその様子だと、あまり嬉しい内容じゃあなさそうだ」

 

「ああ、久保の言うとおりあまり明るい話じゃないかもな」

 

木下さんは既に大体知っていたが、今現在Fクラスが置かれている状況を三人に話した。

さらについさっきBクラスで聞いた根本達の会話の内容についてもだ。

 

「なるほどねー。それじゃあ今Fクラスはかなりピンチなわけだ」

 

「しかもBクラスまで関わってくるとはね。ついでにうちの代表まで巻き込んで」

 

「それで、あたしたち三人を集めたってことは…」

 

「ああ。俺はFクラスを援護したいと思う。流石のあいつらでも今の状況を覆すのは無理があるからな」

 

「いいね♪気分は弱き人を助けるヒーローってところかな?」

 

「援護か…まあ僕としても今の状況は気に食わないし、吉井君(Fクラス)を助けるのにも異論はないが、何をするつもりだい?」

 

「そうね。まあ言いたいことは予想がつくけど」

 

三人の目が俺に集中し、俺の言葉を待つ。

 

「ずばり、Bクラスを叩く」

 

こうして、本来は関わることのなかった学年最強クラスが、学年最弱クラスを助けるために行動を起こすことが決定した。

 

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