「Bクラスを叩くって…本気なのかしら?」
「もちろんだ。こんな時に冗談を言ってられないさ」
「それはそうだが、他クラスの戦争に手を貸すのはルール違反じゃないか?」
久保が顎に手を当てながらこちらを見る。
ふむ、確かに試召戦争のルールでは直接的に手を貸すのはルール違反だが…
「何を言ってるんだ?俺たちはAクラス代表を、自分達の作戦に利用したBクラスに対して報復行動に出るだけだ。これのどこがルール違反なんだ?」
「ぜーんぜん違反してないね。うん」
「なるほど。うちのクラスが動くための大義名分は、Bクラスが勝手に作ってくれたわけだ」
「そうゆうことだ。これで俺たちに障害はなくなった」
まあ実際はFクラスを助けるために動き始めたわけだが、ルールがある以上は建前が必要。
そのためにじっくり待ってたわけだが、根本がまんまと罠にはまってくれちゃったわけだ。
「結局のところあなたの思うようにことが進んでいくわね」
む、心外な。
俺はそんなつもりは…ないとは言い切らない。
でも今回は偶然根本が墓穴を掘っただけであって、俺は何も関与していない。
「ふっ、根本も愚かなやつだな。俺の友達に手を出すんだから…」
にやり、とホンの少し邪悪な笑みを浮かべ、教壇まで歩く。
「じゃあまず手始めにうちのクラスの連中に話しを通してくるわ」
「大丈夫なの?さっきも言ったけど、うちのクラスの生徒たちはあまり好戦的じゃないわよ」
「なんなら手伝うよー?」
「問題ないさ。ちょっくらいってくる」
スタスタと教壇に向かう俺に、木下さんたちだけじゃなくほかのクラスメイトも目を向ける。
「食事中のところすまないが、頼みがある!みんな聞いてくれないか?」
俺の声に、弁当を食べていた生徒も箸を止めてこちらを見る。
「みんなも知っているだろうが、Bクラス代表の根本のことだ!あいつが女装姿でうちのクラスに宣戦布告してきたことはまだ記憶に新しいと思う。その変態がまた我がクラスに手を出してきた!」
根本の名を出すと、途端にクラスメイトたちの雰囲気が変わる。
おそらくあの女装姿を思い出していたのか、食事中ということもあり吐き気をもよおす生徒たちもいた。
それについては後で懇切丁寧に謝るとして…
「あの変態根本は前回の試召戦争で敗れたFクラスを潰すために、あいも変わらず下劣な策を使った!それも俺たちAクラスの代表、霧島翔子を利用して!」
代表の名前が出た途端、雰囲気は一転。
ざわつくクラスメイト達。
「どういうことだ?」
「代表の身に何かあったの?」
「そういえば教室にいないな?」
「代表がFクラスの坂本雄二と幼馴染なのは周知の事実かと思うが、その坂本を封じるために根本は代表に嘘の情報を流した」
「なんだって!?」
「代表が!?」
「よりにもよってあの変態根本に!?」
事実に驚いたのか、より一層ざわつくAクラス。
「そこで諸君に一つ問いたい。果たして俺たちはこんな愚行に走った根本を許していいのだろうか!我がクラスの大切な仲間である代表に手を出されて、黙って見過ごしていいのだろうか!」
静まり返る教室。
だがそこにいる生徒たちの目は怒りに燃えていた。
「ふっ、その目。答えは聞かなくてもいいみたいだね。よしっ、では俺はここで宣言する!我々Aクラスは今この時をもってBクラスを敵とみなし、試召戦争を仕掛ける!」
「「「おおぉっーー!」」」
Aクラス総勢39名(代表不在)は今ここでひとつになった。
標的はBクラス。
共通の敵を持つことで人はひとつになるのだ。
「ちょ、ちょっとやりすぎじゃない?」
っと、木下さんが少し引いている。
「いやいやこのくらいの方が面白いんじゃないかな♪」
「それにどうせ戦争を仕掛けるなら士気は高いに越したことはない。彼は人の上に立つ才能があるのかもしれないな」
対称的に俺の行動に対して肯定の意を示す工藤さんと久保君。
うんうん、やっぱりやるからには楽しまないとね。
「よし、それじゃあ戦争を仕掛けるにあたって臨時のの代表を決めようと思う。俺は霧島に次いで学年次席の実力を持つ久保を推薦しようと思うんだけど、異論はないかな?」
「僕がかい?」
「ああ。実力はそれこそ代表の次に高いし、作戦を立てることもできる。それでいて冷静な状況判断だってできる。俺は久保が適任者だと思うけど?」
「ふふ、君がそこまで僕を評価していたとはね。少し驚いたよ」
「当然のことだと思うけどね」
なんだかんだで久保のことは買っている。
あとは明久絡みでの奇行さえなんとかなれば完全無欠なんだけどね。
まあそのことは今はおいておこうか。
「それで、異議のある人はいるかな?…いないみたいだね。それじゃあ臨時代表は久保に決定だ。ここからは久保の指示に従おうと思う」
それだけ言い、あとは久保に丸投げ…もとい任せた。
「わかった。じゃあまずは現状の戦力を確認しようか。この前の合宿で大分点数に変動があったみたいだからね。各自主要強化の点数を紙に書いて僕に提出してくれ」
さすが久保だな。
いきなり代表に選んでどうなるかと思ったが杞憂だったみたいだ。
的確に指示を飛ばしてみんなを動かしている。
「やっぱり久保を選んで正解だったか」
「その様ね。でもあたしは倉木君が代表になっても良かったと思うけど?」
「だよねー。ボクも久保くんは適任だと思うけど、キミも人を先導するのは得意そうだし?さっきの演説だってすごかったよ?」
「俺?俺はだめだよ」
「え?どうして?」
「どうしてって、俺が代表になったら好き勝手暴れられないじゃん?この戦争の目的は根本を粛清することにあるんだし、だったら俺は現場で根本をいじめる方が適任だと思わない?」
「……えっと、それが久保君を代表に選んだ理由かしら?」
「なんていうか、倉木くんらしい、って言えばいいのかな?確かに久保君やほかのAクラスの人よりかは適任だし」
そのとおり。さすが二人共、わかってくれてるね。
さあて根本、じっくりと
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・
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「ふむ、よし。全員提出し終わったみたいだね。それじゃあ僕はこれから作戦を考えるから、倉木君と木下さんと工藤さんの三人以外はBクラス戦に向けて一休みしておいてくれ」
ん?今呼ばれたか?
「どうしたんだ久保。俺たちだけ呼び出すなんて」
「なに、僕も人間だからね。こうやって試召戦争の作戦を立てるなんて初めてのことだし、いつものメンバーで考えた方がいい作戦が練られると思ってね」
「そ〜ゆーコトなら手伝おっかな♪」
「そうね。いきなり久保君だけに丸投げしても久保君だって困るだろうし」
「了解だ。そういうことだったら知恵を貸そうか」
「感謝するよみんな。それで、これが現状の戦力なんだが」
「どれどれ…ほー、随分と偏ってるな」
「そのようね。まあこの前の合宿での一件があるから仕方のないことでしょう」
「だよねー」
紙を見ていくと、男女間での戦力が偏っていた。
男子はこの前の合宿での覗き騒動で停学になっていたので、回復試験を受けることができないでいた。
代わりに女子は全教科回復試験が済んでおり、いつもどおりの戦力だ。
「Aクラスの男子は二十四名、女子は代表を抜いて十五名か。まあこれだけの戦力があれば力でBクラスに劣ることはないと思うが、どう思う?」
「そうね。戦力を見ればBクラスに負けることはないと思うわ。向こうの男子もまだ回復試験は受けていないはずだし」
「かと言って今俺たちが回復試験を受けたらBクラスは明らかに怪しく思うだろう。それに力で勝っているからこそあの根本が何か仕掛けてくるだろう」
あの変態のことだ。
こちらの主力メンバーに対してかなりゲスい作戦を使ってくるに違いない。
「じゃあどうしよっか?」
「そうだな…とりあえず宣戦布告をして奴らの目をこちらに向けてしまおう。あいつらがどんな行動に出るかでこちらの行動も考えればいい」
「そんな行き当たりばったりなことでいいのかしら…」
「向こうにはそうは見えないさ。わざわざ格上のAクラスが攻めてくるんだからな。根本は相手の手の内を読んでそれに対応しようと策を練るタイプだし、勝手にいろいろ考えて空回ってくれるんじゃないか?」
「なるほど。やはり君に相談してよかった。さすがは僕の友だ」
「ふっ、お前も俺のことを買ってくれているんだな」
「当然だろ?」
目をキラキラさせながら見つめ合う俺たち二人を少し冷めた目で見つめる木下さんと工藤さん。
「ねえ、この二人って…」
「いつの間にこんなに仲良くなったんだろうねー?」
あ、言っておくけど薔薇的な関係じゃないぞ?
あくまでも俺と久保のあいだにあるのは友情だ。
そして俺はノーマルだ。
そこんとこ勘違いしないように!