バカとAクラスの日常   作:ゴリ霧中

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第二十九話

「さて、宣戦布告もすんだことだし、これで根本もこちらに集中せざるを得ないだろうな」

 

あのあとBクラスに乗り込んで宣戦布告を行ってきた。

Aクラスが攻め込んでくるとあって、Bクラスは騒然となっていたが、そんなものは知らない。

根本も戦争を避けようとしていたようだが、こちらとしても代表に手を出されたとあって一歩も引かず、強引に開戦にこぎつけた。

 

「Fクラスに対してなら格下ということで余裕もあったみたいだけど、俺たちAクラスが相手ならどう動くかな?」

 

「力で勝てないのは向こうも承知のはずだけど…」

 

「だよねー、いくら代表が不在だからって言っても戦力差は圧倒的だし」

 

「あの根本のことだから警戒はしておいた方がいいだろうね。まあ負ける気はないけど」

 

かと言ってただ勝つだけってのもつまらないな。

どうせなら徹底的に痛めつけることも考えよう。

 

 

 

 

―Cクラス―

 

「それで、話っていうのは何かしら、恭二?」

 

Aクラスで刹那たちが今後のことについて話し合っている間、Bクラス代表の根本は、Cクラスに来ていた。

それも元カノであるCクラス代表の小山に会うために。

 

「もうあたしたちは別れたんだし、こうして会う理由もないはずだけど?」

 

「そう邪険にしないでくれ。今日来たのはほかでもない、君に俺とのよりを戻して欲しくてね」

 

「よりを戻す?こっちにその気はないけれど?」

 

「ふん、そんなことを言ってられるのも今のうちだな」

 

「どういうことかしら?」

 

「Aクラスの倉木だったか?お前が興味を持っているっていう」

 

その名が出たところで小山の眉がぴくりと反応する。

 

「彼がどうかしたのかしら?」

 

「実は今日あいつらが宣戦布告に来てな。Aクラスと試召戦争をすることになった」

 

「へえ、そうなの。ご愁傷様」

 

小山としてもBクラスがAクラスに勝てるとは微塵にも考えられず、特に興味も示さなかった。

 

「そこでだ。もし俺が奴らに勝てたら、よりを戻すことを考え直してくれないか?」

 

「…なんですって?」

 

「お前は頭のいい男が好きなんだったな。そこで俺が策を巡らせて奴らを倒すことができたら、その時は俺のことを考え直してほしいってわけだ」

 

この言葉には小山も少し考える。

 

(今更この男が倉木くんに敵うとは思えないけど、彼の実力はもう少し見たいわね。その点この男なら彼を試すにはちょうどいいかも)

 

「そうね…まあそういうことなら考え直してあげてもいいわ」

 

考えた末に、小山は了承の意を示す。

 

「交渉成立だな」

 

これには根本も気をよくしたのか、上機嫌になった。

とは言っても小山の気持ちは根本には全く向いていないわけだが。

 

「そこでだ。その作戦をするにあたって、優香に手伝ってもらいたい事があるんだ」

 

「あら、他クラスの戦争に手を出すのは禁止じゃなかったのかしら?」

 

「なに、あいつらだって俺たちがFクラスと戦争しようとしてるのを知ってて仕掛けてきたんだ。あのバカたちを助けるためにな。それに俺が頼みたいのは直接戦争に関わることじゃない。あくまでも個人的に優香に潰してもらいたい奴がいるんだ」

 

「まああたしとしても戦争に直接的に干渉しないのなら少しくらいなら手を貸してもいいわ。それで、誰なのかしら?その潰して欲しい人っていうのは」

 

「これは優香にとっても有益な話さ。倉木と仲がよく、それでいてAクラスの主力メンバー、木下優子だ」

 

口角を上げて気味の悪い笑みを浮かべる根本。

刹那の予想通り、根本はまたしても下劣な策を使いAクラス戦に備えていた。

 

 

 

 

「さてさて…もうすぐ開戦の時間だな」

 

「そうね。でもちょっとおかしくないかしら?」

 

Bクラスとの戦争が近づき、俺と木下さんは準備を終え、間近に迫った開戦時間を待っていた。

 

ちなみに久保は大将として味方本陣であるAクラスで護衛に囲まれている。

なおBクラスはすぐお隣なわけだが、敵の本陣は体育館へと移されていた。

さすがの根本も教室がすぐ隣では策に関係なく力で押されると思い、教室にとどまりはしないようだ。

 

Aクラスの作戦はいたってシンプルで、先遣部隊が敵本陣までの道を作り、突破したら第二陣の部隊で敵大将を撃破、というもの。

何もなければ力で勝るこちらが勝利するだろう。

 

俺と木下さんは先遣隊として開始早々前に出るため、Aクラスの仲間を数人連れて教室の入口で待機していた。

 

工藤さんは第二陣の攻撃部隊なので最初は俺たちの後方で待機だ。

 

「さて、そろそろ開戦かな」

 

「そうね。でも少しおかしくないかしら?」

 

「確かに…いくらなんでも根本がおとなしすぎるかな」

 

俺は最初から根本が開戦まで待つはずがないと思い、宣戦布告から今まで警戒を怠らなかった。

クラスの誰かが接触されれば必ず久保か俺のところに報告に来るようにクラスメイトたちには言っておいた。

 

それなのに奴は何もしてこない。

何もしてこないまま戦争は始まろうとしていた。

 

「前回のFクラスとの戦争ではエースの姫路さんが奴の術中にハマって封じられたと聞いていたけど、どうしたんだろ?」

 

ただでさえ格下のFクラスにそこまで策を練っていたのに、格上の俺たちには何もしない。

まさか諦めてただやられるのを待ってるなんてことは…ないな。

あの男の性格からしてそれはまずない。

 

「となると可能性は…」

 

「戦争が始まってから仕掛けてくるでしょうね。なんにせよここからは気が抜けないわね」

 

「そのようだね」

 

(こちらの戦力であいつがつぶしに来そうなのは…学年次席の久保と一点特化の工藤さん、そして木下さんか)

 

今回に関しては久保が大将なので、久保に何かされる可能性は薄い。

全体の戦力差を見るに、自ら動かない大将よりも兵である俺たちを何とかするべきだろう。

 

工藤さんは第二陣として後方に待機してるから始まってすぐどうこうされることはないだろう。

 

(となると問題は…)

 

俺はチラリと横を見る。

 

「…?何かしら?」

 

「いや、なんでもない」

 

(考え過ぎか?木下さんに小細工が通じるとは思えないし…)

 

いくら考えても答えは出ず、チャイムの音が鳴り、戦争が開始された。

 

(大丈夫。何かあっても俺が守ればいいだけ。あんな変態相手に遅れは取らないさ)

 

不安は残るものの、今は戦争に集中すべく、先遣隊を指揮する。

 

「さあ戦争の始まりだ!先遣隊!俺と木下さんのあとに続け!Bクラス本陣までの道を切り開くぞ!」

 

「「「おおおぉぉーーーっ!」」」

 

AクラスとBクラスの試召戦争が膜をあけたのだった。

 

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