バカとAクラスの日常   作:ゴリ霧中

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第三十話

「いたぞ!Aクラスの木下と倉木だ!」

「囲んで集中砲火だ!」

「あの二人を倒せば勝機もあるぞ!」

 

開戦直後、体育館へ向かう途中でBクラスの生徒たちに行く手を阻まれた。

 

「各自散開して敵部隊を叩け!一箇所に固まるな、いくらBクラスでも数で押されればこちらの勝機も薄いぞ!」

 

「「「了解!」」」

 

「わかったわ!」

 

俺は先遣隊に指示を飛ばし、あくまでも突破を目指す。

 

(思っていた以上に敵の戦力が多いな。護衛に回す数の方が多いと思っていたが、今ここにいるのは女子生徒の方が多い。本気でこの先遣隊をつぶしに来たか?)

 

だがまだ甘い。

ほかの生徒たちならまだしも、俺と木下さんはいくらBクラスが束になってかかってきても、負けるわけがない。

 

「よし、行くぞ!」

 

 

 

 

「ふう、なんとか突破したか…」

 

「その様ね…」

 

あのあと俺たちはBクラスの先遣隊との戦闘を続けた。

だが敵もバカ正直ではなく、点数が減るたびに後ろにいたほかの生徒と代わり、全員の点数が減れば対戦フィールドを変える…

いわゆる消耗戦を仕掛けてきた。

 

「中々しんどかったな。木下さんがいなければ俺もやられていたかもしれない」

 

「あなたが生き残っていただけでもいいわ。ほかの人たちは補習室送りにされたみたいだし…」

 

そう、木下さんはともかく、俺は運良く生き残れただけ。

ほかの先遣隊は苦手科目に変えられた時にやられて、戦死していった。

かく言う俺も、科目が英語になったときは肝を冷やしたものだ。

木下さんの助けがなければ今頃は鬼の補習中だっただろうな。

 

「さすがにこれ以上の消耗は厳しいか。戦線の維持は後方の部隊に任せて、俺たちは回復試験を受けてこようか」

 

「そうね。あたしも大分点数を削られたわ」

 

後方にいた工藤さんたちに話しを通して、俺たちは回復試験に向かった。

 

 

 

 

「にしても根本のやつ、あそこまで前線に戦力を割いてくるとはね」

 

「あたしも驚いたわ。てっきり護衛に力を入れてくると思っていたから」

 

「俺もだ。よっぽど木下さんは警戒されているらしい」

 

「それを言うならあなたもね。あたしが助けてなかったらさっきは危なかったんじゃない?」

 

「そ、、そうかな…まあそのことに関しては感謝してるよ」

 

「ふふ、仲間同士なんだから当たり前でしょ?」

 

「それでも助かったよ。ありがとう」

 

「どういたしまして…っ!?」

 

そこまで言って木下さんの表情が一変して厳しいものとなった。

 

「どうしたの、木下さん?」

 

木下さんの目線を追うと、そこにいたのは…

 

「あら奇遇ね。こんなところで会うなんて」

 

「こ、小山さん!?」

 

そこに立っていたのはCクラス代表の小山優香だった。

 

「奇遇、ねえ…待ち伏せておいてよく言うわ」

 

え、待ち伏せてたの?

まあ戦争中にばったり、なんて偶然にしては出来過ぎだしな。

 

「また倉木君に何か用?今Bクラスとの戦争中で忙しいのだけど」

 

「戦争なんてあたしの知ったこっちゃないわね。それにあたしはあなたに用があるのよ、木下優子」

 

「あたしに…?」

 

「ええそう、あなたに。だから倉木くんは少しの間口出さないでくれるかしら?これは女同士の話だから」

 

「お、おう。わかった」

 

我ながらあっさり引いたとはおもったが、それだけ小山さんが怖かったので仕方ない。

 

「お利口ね。じゃあ話しましょうか」

 

「とはいっても、あたしはあんたなんかと話すことは何もないわよ」

 

「あたしにはあるのよ。倉木くんのことでね」

 

「っ!?あんた、またっ…」

 

「この前言ったばかりよね?あたしは倉木くんが好き。だからあなたにはあまり彼のそばにいて欲しくないのよね」

 

「あ、あたしが誰とどこにいようと、あたしの勝手でしょ!」

 

「あなたがどこに誰といようとどうでもいいけど、倉木くんは別だわ。目障りだからそばにいて欲しくないの」

 

「っ!?なんですって!」

 

「だから目障りなの。自分の好きな人の周りにいつも他の女の子がいるなんて、いい気分ではないでしょ?まあ、あなたも倉木くんが好きだって言うなら話は別だけど、この間は違うと言っていたし」

 

「ぐっ…」

 

な、なんかいつの間にか話がだいぶヒートアップしてついていけてない俺。

おかしいな、一応俺についてのことでもめてると思うんだが。

本人の意思全く無視ですか。

 

「それにあなたの弟の、秀吉っていったかしら。その子から聞いたのだけど」

 

「なによ…」

 

あからさまに警戒する木下さんだが、ここまで来たら小山さんも引かない。

 

「あなたの趣味のことよ。男同士の恋愛を書いた小説が好きなんですって?それも大分過激なもののようね」

 

「…それが何か?」

 

「そんな歪んだ趣味を持った人が倉木くんのそばに近づくなんて嫌だもの。腐女子、だったかしら?そんな腐った趣味を持つのはFクラスの馬鹿だけにして欲しいわね」

 

「っ!?」

 

「あたしの言いたいことはわかったかしら?わかったらさっさとどっかに行って頂戴。目障りよ」

 

「くぅっ…」

 

ダッ

 

「あっ、木下さん!」

 

小山さんに散々言われた木下さんは、すぐに何処かへ駆けていった。

気のせいかな、少し泣いてたような…

 

「ふふ、これでふたりっきりになれたわね」

 

「そうだな。俺としては望んじゃいないが」

 

「そう言わないで。ゆっくりお話しましょ」

 

「はぁ、それも根本の作戦か?」

 

「…気づいていたのね」

 

「当然だろ。いくらなんでもタイミングが良すぎる。大方先遣隊として出ていた俺達を他の仲間と分断して、その隙にあんたが叩きに来たってところだろ。狙いは木下さんか」

 

「ええそうよ。さすがあたしが見込んだだけのことはあるわね」

 

「あんたが木下さんに何を言っても、Bクラスとの戦争中である以上は木下さんも手を出せない」

 

「そうよ。あの子に言葉で言い負かされるとは思えないしね。さ、これであの子のこともわかったでしょ?」

 

「それはさっき言ってた趣味のことか?」

 

「ええ。弟の秀吉って娘に聞いたら話してくれたわ」

 

秀吉…俺の時もそうだけど、身内の秘密を簡単に話しちゃダメだろ。

こりゃ後でまた言っといたほうがいいな。

あと気のせいか、コイツも秀吉のこと女だと思ってないか?

まあそこはいまさらか。

 

「あんな汚れた趣味の子といたら悪い影響しかないわ。早いところ縁を切ったほうがいいわよ」

 

「…」

 

「ふふ、わかってくれたようで良かったわ。じゃあ私はこれで…」

 

踵を返して教室に戻ろうとする小山さん。

だが、これで返すわけにはいかないな。

 

「ちょっと待ってくれるか?」

 

俺の言葉に足を止める小山さん。

 

「何かしら?もしかして返事をもらえるとか?あたしの好意についてはもうわかってくれたみたいだし」

 

「ああそうだな。一つはっきりさせておこうか」

 

もともと返事は決まってたし、それを言うのに早いも遅いもないか。

それ以上にここで何も言わなければ俺は人も納得できない。

 

「結論から言おう。俺はあんたが嫌いだ」

 

「…なんですって?」

 

さっきまでの上機嫌はどこへやら。

一変して冷たい表情になる。

だけどやめない。

ここまで来たら行くとこまで行こう。

 

「あんたが嫌いだって言ったんだ。それに木下さんに散々言ってくれたみたいだが、俺の考えとは少し違ったみたいだね」

 

「あんな腐った趣味を持つ子の肩を持つ気かしら?あの子と比べたらあたしの方が…」

 

「違うね。俺は別に腐女子を嫌いだとは思わない。趣味が腐ってる?そりゃあんたの主観だろ。趣味なんて本人がいいと思ってるのなら誰かがとやかく言うべき問題じゃない。そんなことよりも俺は性根が、いや、魂から腐ってるあんたの方が嫌いだね」

 

「な、なっ…」

 

「そういうことで、もう俺に構わないでもらえるかな。俺もそこまで暇じゃないものでね」

 

そう言って小山さんへと背を向ける。

もうこの場に残る意味はない。

 

「ま、待ちなさいよ!まだ話は…」

 

「終わったよ。俺はもうあんたと話すことは何もない」

 

後ろで小山さんが何か喚いているが、知らない。

これ以上いても不快になるだけで何も得られない。

 

それよりもほかにやることができた。

 

「根本恭二…本物の生き地獄ってやつを教えてやろうか」

 

木下さんを傷つけた罪は重いよ。

たとえ実行犯が小山さんだとしても、この下劣な作戦を使ってきたのは根本だ。

こうなったらもう慈悲なんてかけるもんか。

 

「木下さんのことは心配だけど、多分今は一人にしておいたほうがいいと思うし」

 

落ち着いて、冷静な木下さんに戻ったら話しに行こう。

 

「その前に潰すそうか、あのゲス野郎を」

 

静かに怒りを込めながら、刹那は目的の部屋へと向かった。

 

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