バカとAクラスの日常   作:ゴリ霧中

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いやあ随分と難産でしたねえ…

ごめんなさいサボってました、はい。
お待たせしてしまった皆様誠に申し訳ありません。


第三十五話

「一体何があるんだろうな」

 

「ムッツリーニじゃあるまいに、明久はそこまで隠し事はせんと思うのじゃが」

 

「…………隠し事なんてない」

 

「おいムッツリーニ、さすがの俺でも擁護しきれないぞ?うん」

 

「…………っ!?」

 

「いや、そこで驚かれても」

 

「刹那が無理なら誰も弁護できんな。将来は刑務所行きだなこりゃ」

 

雄二、友人の将来なんだからもう少しまともな未来を想像しようよ。

 

「でもなんでしょうか。明久くんがそこまで隠したいことって」

 

「どうせアキのことだから大量のエロ本でも出てくるんじゃないかしら」

 

「普段のこいつの行動からしてその程度でうろたえるとは思えんがな」

 

「確かに。強化合宿の時を考えると今更だな」

 

「そもそもこのバカは頭の残念さが際立ちすぎだ。それ以上に恥じることなんてないはずだが」

 

「さすがにひどすぎるよ雄二!僕をなんだと思ってるのさ!」

 

学校からの帰宅途中、先ほどから明久が隠そうとしていることを暴くために俺たちは吉井宅へとやってきた。

 

「えっと、みんな本当に来るの…?」

 

「無論だ。そのために来たんだからな」

 

「…………さっさと吐いたほうが身のため」

 

「お主はあきらめが悪いのう」

 

家にはついたものの、明久がなかなか鍵を開けようとしない。

ここまで来たんだ、もう諦めろよ…。

 

「ほら早く鍵を出せ」

 

「やだね」

 

雄二が鍵を催促するが、明久も最後の抵抗を見せる。

 

「明久、裸Yシャツの苦しみを味わってみるか…?」

 

「えっ、いきなり最終警告!?もう少し交渉というものを…」

 

「…………涙目で上目遣いだとありがたい」

 

「なにが!?ねえなにがありがたいのさ!?第一そういうのは秀吉がやるべきでしょ!」

 

「なぜそこでわしが出てくるんじゃ!?」

 

「そうだ、秀吉は男だぞ」

 

うちの学園では既に俺と優子以外誰も認めてはいなさそうではあるが、一応補足する。

 

「刹那ったらいつまでそんなこと言ってるのさ」

 

「おい待て。なぜお前は俺を聞き分けのない子供みたいに言うんだ?」

 

さすがの俺も明久にされるとストレスのもとになる。

優子?ぜひやってほしい。ご褒美じゃないか。

 

「そうだ、なんなら刹那がYシャツを…」

 

「明久、念仏は済んだか?」

 

「心の底からごめんなさい。どうかその拳をおさめてください…」

 

おっとついうっかり手が出てしまった。

反省は…いらないか。

 

「うぅ、わかったよ、開ければいいんでしょ」

 

ようやく観念したのか、ポケットから鍵を出した。

 

「最初からそうしろ」

 

「…………いざとなれば鍵がなくても入れた」

 

ピッキングは犯罪だぞ。

まあ今回はしても止めなかっただろうけど。

 

「ただいまー」

 

ただいま、ということはやはり家族が帰ってきているのか。

俺と雄二の予想では姉ということだったが。

 

「お邪魔しまーす…」

 

俺たちが続々と中に入ると、室内にはブラジャーが干されていた。

 

「馬鹿な、これは一体なんの罠だと言うんだ…」

 

あ、明久が膝から崩れ落ちた。

 

「アキ、これは一体どういうことかしら…?」

 

そして四つん這いの状態から島田さんに関節を決められてる。

おっ、肩が外れそうだな。

 

「ちょっ、美波、ギブ!ギブ!」

 

「ったくしょうがねえな。島田、それは…」

 

雄二が呆れて仲裁に入ろうとしたが、姫路さんが先ほどのブラジャーをもってやってきた。

 

「あらあら明久くんったら、ダメじゃないですか」

 

「えっと姫路さん、それは多分…」

 

俺が予想を頼りに事情を説明しようとしたが

 

「このブラジャー、明久くんにはサイズがあっていませんよ?」

 

「その返しは予想してなかった!?」

 

明久に負けず劣らずの斜め上回答。

俺は静かに戦慄していた。

 

「あらこれは…」

 

次に姫路さんが手にとったのは、女性用の化粧用コットンパフ。

 

「ハンペンですね」

 

「「「ハンペェン!?」」」

 

この一言にはさすがに全員が耳を疑う。

え、姫路さんそれ食べれるの?

 

「えっと二人とも誤解してるようだから言っておくと、その二つは…」

 

ガチャ

 

そこまで言ったところで玄関のドアが開いた。

 

「あら?今日は随分とお客さんが多いですね」

 

入ってきたのは両手に買い物袋を携えたグラマラスなお姉さん。

まさかこの美人さんが明久の姉?

 

「ようこそいらっしゃいました。狭い家ですけれどもゆっくりしていってくださいね」

 

「「「お、お邪魔してます…」」」

 

そのルックスからか溢れ出るオーラからか、全員が萎縮して挨拶を交わす。

本当に明久の姉か?

振る舞いが只者じゃない。

 

「失礼しました、自己紹介がまだでしたね。私は吉井玲といいます。みなさんうちの出来の悪い弟と仲良くしてくださってありがとうございます」

 

そう言って深々と一礼した。

か、完璧や…完璧な自己紹介やっ!

なぜか先程から明久は冷や汗かきまくりで見ているが、どうしたんだろうか。

というかそもそもこんな綺麗な姉がいるのにどうして家に帰りたがらなかったんだ?

俺たちに隠した理由もわからないし。

 

「ああ、どうも。俺は坂本雄二、明久のクラスメイトです」

 

あの雄二が敬語を使ってる!?

くっ、今日の帰りは土砂降りだな!

 

「…………土屋康太、です」

 

続いてムッツリーニ。緊張しまくりじゃないか。

 

「雄二くんに康太くんですね。よろしくお願いします」

 

さすがの雄二も今の状況がわからんようだな。

俺もさっぱりだけど。次は秀吉かな。

 

「わしは木下秀吉じゃ。よしなに。初対面じゃとよく間違われるのじゃが、わしの性別は…」

 

「ええ、男の子ですよね?秀吉くん、ようこそいらっしゃいました」

 

「っっ!?」

 

おお、秀吉が目に見えて嬉しそうにしてる。

いつものポーカーフェイスが崩れてるぞ。

 

「わ、わしが男じゃとわかってくださるとは…」

 

「もちろんわかりますよ」

 

にっこりと微笑む玲さん。

人間出来てるなあ、どう見ても明久の姉だとは…

 

「だって、うちのバカでブサイクで甲斐性なしの弟に、女の子のお友達なんてできるわけがありませんから」

 

前言撤回。

正真正銘明久の親類ですはい。

てか随分とまあ嫌な確信のされ方だなあ…。

 

「ですからこちらのお二人も男の子ですよね?」

 

「「えっ!?」」

 

なんと姫路さんと島田さんのことまで男だと思ってしまっているらしい。

さすが明久の姉だ。

 

「ちょっと、何失礼なこと言ってるのさ姉さん!三人ともれっきとした女の子だよ!」

 

「わしは男であっておるのじゃが!?」

 

すかさず秀吉が突っ込む。

哀れ秀吉、もう色々と手遅れだ。

 

「女の子、ですか?アキくんが家に女の子を…」

 

「ね、姉さん…?」

 

気づくと玲さんの背後からは優子や代表が時たま見せる、どす黒いオーラが溢れてきた。

いや、優子たちよりも三倍はやばそうだ。

 

「やはり格が違う、か」

 

「翔子が可愛く見えてくるぜ…」

 

雄二もそう思ったか。

だが甘い。

 

「おっ、その言葉頂き」

 

「へっ?」

 

「今の言葉録音させてもらったわ笑」

 

さっきからこっそり起動させておいた携帯を操作する。

 

「なにっ!?せ、刹那…今すぐデータを」

 

「もう家のパソコンに送ったよ。代表喜んでくれるかな」

 

「終わったー!俺の人生がたった今終わったーっ!!」

 

その場で泣き崩れる雄二。

とまあ俺たちがふざけてる間に明久の折檻も終わったようだ。

ロープで縛られて吊るされている明久はほうっておいて、最後に俺も自己紹介しておこう。

 

「倉木刹那です。お宅の弟さんには色々と…お世話してる側ですね、はい」

 

「これはこれは。うちの愚弟がご迷惑をおかけしました」

 

「ここは社交辞令じゃとしてもお世話に『なってます』と言うべきだと思うのじゃが…」

 

「…………すぐばれる嘘は逆に失礼」

 

「それもそうじゃの」

 

気を失っているはずの明久が涙を流したような…気のせいか。

 

「……あいつは機械に弱いし……音声を再生するのに手こずってるうちに…ブツブツ」

 

「雄二はまだ戻ってこないのう」

 

 

 

 

 

 

「そろそろお暇しようか」

 

あれからみんなで一緒に勉強したり男性陣(秀吉を除く)が料理を振るったりとあり、日も暮れた現在。

流石にこれ以上は長居できないかと思い、帰宅を促す。

 

「そうだな。このバカに長時間の勉強は向かないだろう」

 

「とはいえ明久の姉上はすごいのう。わしの姉上よりも英語のできる人に会えるとは思わなかったぞい」

 

「アメリカ暮らしは伊達じゃないってことだな。優子も高校生にしてはかなり優秀だけど、本場の人と比べるのはさすがになあ…」

 

教え方もどこかで教師でもやったらどうなのかというほど上手だったし。

まあ俺からすればさっぱりだったが。

英語はやっぱわからん。

 

それから玲さんとその愚弟に見送られ、俺たちは帰路についた。

帰り道が途中で別れたため、俺は家の方向が同じである秀吉と帰ることになった。

 

「にしてもあの人が明久の姉か…」

 

「あまりにも似てない姉弟じゃのう」

 

「頭の出来は言うまでもないが、あの性格も全く似てないからな」

 

「今思えば明久のあの自分を悲観する性格は、家庭での仕打ちによるものなのじゃろうか」

 

「それはあるな。姉であそこまでの性格なんだ。親とかも結構なもんじゃないのか?」

 

「可能性はあるのう…」

 

バカは自業自得かもしれんが、あの性格は幼少期からの受けた教育が問題なのだろう。

それがなければ姫路さんや島田さんももう少し仲が進展していたかもな。

そうなれば必然的にあの扱いも…いや、アレは改善されないか。

育ちの違う優子や代表だってかなりバイオレンスな性格してるし。

いつものメンバーの中でまともな家庭が築けそうなのは工藤さんくらいかも…

 

「花が咲く場所を選べないように、子も親を選ぶことはできない、とは誰が言った言葉だったかな」

 

「心に突き刺さる名言じゃのう。特に明久にとっては」

 

「それを俺たちが言ってもしょうがないな。それにあいつはあいつでなかなかに楽しんでるようだし」

 

「そうじゃのう。姉弟仲は良さそうじゃった」

 

「お前のとこだって優子と仲いいだろ?」

 

秀吉が羨ましそうにしていたので聞いてみる。

優子と秀吉が喧嘩してるところなんて見たことないはずだ。

 

「仲が悪いわけではないのじゃが…いかんせん姉上は手が出るのが早くてのう…」

 

「あー、確かにすぐ関節決められてるもんな」

 

主に秀吉の失言が原因なわけだが、秀吉は秀吉で天然だから無自覚で優子の琴線に触れる。

どうしようもないな、うん。

 

「刹那からも何か言ってはくれんかのう」

 

「ごめん無理。さすがにそれは俺の手には負えない」

 

すまん秀吉、助けてはやりたいが優子のアレは俺が言ってどうこうなるもんじゃないんだ…

隣を歩く友人の冥福を祈りながら(死んではいない)俺たちはとぼとぼと帰路を歩いた。

 

 

 

 

「というわけで勉強会するよ♪」

 

明久の家で勉強会をした翌日、今は自習時間も終わり昼休み。

隣の優子の席まで来ていた工藤さんが唐突に切り出した。

 

「ん?何が「というわけ」なんだ?」

 

「倉木くんったら話聞いてなかったの?」

 

「ああすまん、もう一度言ってくれ」

 

眠くて話を聞いていなかった俺は工藤さんに聞く。

 

「だから、Fクラスのメンバーと昨日勉強会を開いたんでしょ?」

 

「ああ。明久の家でな」

 

「そんな楽しそうなことになんでボク達を誘わないかなー?」

 

肩をつんつんと指でつつきながら工藤さんが言う。

おい優子、そんな目で見るな。

工藤さんのスキンシップが多いのは今に始まったことじゃないだろう。

俺は何もやましい気持ちはないぞ。

てか工藤さんもわかっててやってるな?

 

「明日は土曜日でその次は日曜日。テスト前最後の休みなんだから追い込みはかけるべきだよね?」

 

「まあそれはその通りだな」

 

「だから、Fクラスのメンバーもそうだけど、ボク達も一緒に勉強会とかしようよ!もちろん泊まりがけで!」

 

「はい?」

 

「さっきからこの調子よ。まったく、秀吉から聞いたことなんて教えなきゃよかったかしら」

 

ため息混じりにそういう優子。

なるほど、勉強会のことは秀吉が情報源か。

 

にしてもいつも突拍子のないことを言う人だとは思っていたが、今回もまたやってくれるか。

泊まりがけで勉強会ねえ…

そりゃテスト前の追い込みなんだからそれ自体を否定するわけではないけど。

 

「いくらなんでも急すぎないか?皆の予定とかもそうだけど、何より場所がないぞ?」

 

Fクラスの連中を誘うとしたら昨日のメンバーで6人。

それに俺と優子と工藤さん、そしていつものメンバーというのなら代表と久保も呼ぶだろう。

合計すると人数は11人。

 

昨日行った明久の家は俺を含めた7人+玲さんでかなりギリギリで、全員が寝泊まりするなんてことはできないだろう。

俺の家だって明久の家より狭いし、他の家だとご家族の人だっているだろうから迷惑になることは確実。

そもそも11人が泊まるとなるとどの家でもスペースがない。

 

「強化合宿じゃああるまいし、大人数で泊まれる家の宛はあるのか?」

 

「え、えっと~それはぁ…」

 

工藤さんの目がうようよと泳ぎ始めた。

完全に見切り発車だな。

後先考えず、「面白そう!」というだけで考えたのだろう。

でも現実問題そんな都合のいい家なんて…

あれ?これってなんかのフラグかな?

 

「…………それなら問題ない」

 

「代表っ!?」

 

いつの間にか話を聞きつけた代表が工藤さんの後ろから顔を出す。

 

「本当にいつも心臓に悪いな…普通に登場してくれればいいものを」

 

それは今更だからこの際置いておくとして。

 

「…………場所なら私が提供する」

 

「えっ、本当!?」

 

工藤さんが目を輝かせながら代表の手を取った。

 

「…………うちなら客室全部を使えば何人でも泊まれる」

 

あー、そういえば清涼祭の打ち上げで行った代表の家ってものすごく大きかったような…

それこそ11人なんて簡単に泊まれるくらいだだっ広い家だ。

 

「…………両親のことは心配しなくていい。騒いでも音は外に漏れない造りだから」

 

「全室防音かよ…まあそんなのなくてもあの広い家なら騒いだところで迷惑になることはなさそうだけど」

 

「そうだねー。打ち上げの時にクラス全員でお邪魔しても快く迎えてくれたし♪」

 

「というより噴水付きの庭でバーベキューなんて打ち上げにしては豪華すぎるくらいだったわよ」

 

それぞれがあの夜のことを思い出す。

うんうんアレは確かにすごかったな。

欲を言えば俺が全身に怪我を負っていなければもっと楽しめただろう。

俺ってあの日絶対安静だったんだよな。

 

「それは置いといて。ってことは代表の家に行ってもいいんだねっ♪」

 

「…………私としてはできれば雄二も呼んで欲しい」

 

「それについては問題ないな。是が非でも強制参加だ」

 

あいつを脅迫するための材料なんていくらでもある。

それだけであの豪邸で勉強会を開けるのなら迷わず使おうじゃないか。

 

「刹那君、ものすごく悪い笑顔を浮かべているのね…」

 

「そりゃそうさ。雄二には屋上での件で何も仕返ししてないし。今回の件は渡りに船だ」

 

雄二よ、俺は告白を覗かれた恨みを忘れちゃいないぞ。

 

「はぁ、ほどほどにね?」

 

「できるだけ努力するよ」

 

そう言って俺は残るメンバーを誘いに向かった。

 

ちなみに久保は教室にいたのですぐにつかまった。

明久と一緒に勉強会…

参加の意思は確認しなくてもわかるだろ?

 

 

 

 

「というわけで明日の予定は大丈夫か?」

 

Fクラスに来てすぐに本題を話すと、全員快く了承してくれた。

姫路さんは家庭の事情で少し難しそうな表情を浮かべていたが、絶対に行くと言ってくれた。

約一名が少し渋ったが。

 

「待てっ!俺は絶対に行かな…」

 

「おっと携帯が…『翔子が可愛く見えてくるぜ』随分と面白い声が録音されてるなあ」

 

「くっ、卑怯な…!」

 

「雄二、俺は屋上の告白の件でお前を許したつもりはないぞ?」

 

「お前まだ根に持っていたのかよ!?」

 

「俺も鬼じゃない。だがお前がもし断るというのならこの音声記録を…」

 

「待て早まるなっ!そいつを翔子に渡されたら…」

 

「なんだわかってるなら話が早い。明日、くるよな?」

 

「くそっ、選択肢がねえじゃねえかっ!」

 

結論だけでいいな。

『全員快く』了承してくれた。

 

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