ほんの少しだけだけど…
「………以上で今日の報告は終わりです」
教壇では淡々と高橋先生がホームルームを進めていた。
「ああ、それと最後にもう一つだけ。FクラスがDクラスに試召戦争を仕掛けました。よって本日の午後の授業は早速ですが自習となります」
ざわざわ
高橋先生の最後の報告はAクラス生徒全員を驚かせた。
Fクラスが戦争をしかけただって?
俺の脳裏にはすぐさま悪友達の顔が浮かんだ。
……奴らならやりかねない。
でもまあそれはそれとして
「授業が自習になるのはラッキーだな~」
俺が本音を漏らすと、不意に誰かに話しかけられた。
「授業がなくなるのを喜ぶのはどうかと思うよ、倉木君。自習だって立派な勉強時間なんだ」
「そんなこと言うのはお前だけだと思うぞ?久保」
話しかけてきたのは学年次席の久保利光だった。
「でも試召戦争か~。おもしろそうだよね♪」
さらには工藤さんも。
「だよなー。せっかくこの学園にきたんだし、早いとこやってみたいよ」
「倉木君と久保君は今回の戦争どっちが勝つと思う?」
工藤さんはにこにこと笑いながら問いかけてきた。
ふむ、今回の戦争か。
「振り分け試験を受けたばかりなんだからDクラスの方が明らかに有利なんじゃないのかな?」
と、久保の意見。確かにそれは正しい。
が、
「それはどうかな?」
「「えっ?」」
二人は反論されるとは思っていなかったらしく、二人同時にこちらを向いた。
「数値的な戦力差の優劣はさすがにFクラスといえども承知だろう。それでも今試召戦争をしかけた。と言うことは勝つための秘策でも考えてるんじゃないか?」
俺は目で説明を求めてくる二人に簡単に説明をした。
「さらにFクラスには去年の俺の悪友達がいる…」
「悪友って?(わくわく)」
おもしろそう!とでも思ったのか、目を輝かせながら工藤さんが聞いてくる。
「基本的には馬鹿ばっかりだ。だが、俺は今回の戦争…Fクラスが勝つと思う」
「本気でそんなことを言っているのかい?」
久保は半ば呆れたふうに俺を見る。
だが俺の意見は変わらない。
あいつ等なら…特に雄二だ。
あいつに悪巧みをさせたら右に出るものはいない。
その雄二が何の考えもなしに戦争を起こすとは考えにくい。
さらに言うならあいつの狙いはDクラスなんかじゃない。
おそらくは…
「おそらく奴らは、このDクラス戦を足掛かりとしてAクラスを狙っているだろう」
「ええっ!?ま、まっさか~」
「ふっ、もしそうなるようなら全力で倒させてもらうまでさ」
「ああ。この教室は渡さない。Aクラスのプライドにかけて守り通すさ」
「ふふっ。なんかおもしろくなってきたね♪ボク、今からわくわくしてきたよ!」
さっき以上に目を輝かせた工藤さんは一通り話が終わると、俺の隣の席へと目を向けた。
「で?優子は何であんなに呆けてるのかな?」
俺の隣には先ほどからずっと上の空になっていた木下さんが。
「さあ?腹でも減ってんじゃないか?」
原因は分からないので放置しておくほかない。
まあほっとけばそのうちなおるっしょ。
***
そして放課後。
「ふぁーあ…よく寝た」
退屈な自習時間を貴重な睡眠時間へと変えたおかげで、大分体力が有り余ってしまった。
「さーて帰るか。ん?木下さん…?」
隣を見ると、木下さんはまだ放心状態のようだ。
「木下さん!」
「ふぇっ?あ、何かしら?」
「何って、もう授業終わったんだけど?」
「あら、本当。帰らなきゃ…」
そうは言うが足取りがおぼつかない。
体調悪いのかな?
「具合悪そうだね。途中まで送ってくよ」
「べ、別にこれくらい平気よ!」
「そうは見えないから心配してるんだろ?ほらっ、さっさと行くよ」
木下さんの意見など聞かず、さっさと玄関まで向かった。
***
玄関を出てすぐの校庭では、下校中の生徒に隠れて何かが行われていた。
よく見ると人だかりもできてるような気がする。
何だろうと目を凝らしていると、どこの誰だかはわからないが声高に宣言した。
「Dクラス代表 討死!」
「「「うおおぉぉー!!」」」
よくよく見ると例のFクラスとDクラスの試召戦争が行われていたようだ。
放課後までもつれ込んだのか…
「まさか、Fクラスが勝ったの!?」
ついてきた木下さんからも驚きの声があがる。
俺も何だかんだで驚いている。
「む?おお、刹那ではないか!それに姉上まで。これはなかなかに珍しい組み合わせじゃな」
驚き立ち止まっていると、人混みの中から手を振りこちらへ向かってくる美少女(?)が一人。
木下秀吉である。
「うーす、秀吉。久し振り、かな」
「そうじゃな。刹那はどこのクラスにいるんじゃ?」
「俺か?俺はお前の姉さんと同じAクラスだよ」
「なんと!そうであったか。それで姉上と一緒にいるのだな」
「ああ、そんな所だ。それで、勝ったのか?」
何に?と言われればもちろん試召戦争に、だ。
「うむ。雄二の見事な作戦のおかけじゃ」
「やっぱりな。さすが雄二だ。で?その功労者である雄二は何で明久に襲われているんだ?」
少し離れたところに雄二と明久の姿が見えるのだが、なぜか明久が包丁を持って雄二に襲いかかっていた。
「お主も聞いたじゃろう?先ほどの放送を…」
「放送って、あの船越先生のやつか?」
放送とは午後の授業中のあれのことだろう。
おそらくFクラスの作戦なんだろうけど、船越女史4○歳独身。婚期を逃し、今では単位を盾に生徒に交際を求めるほどのモンスターである。
その船越女史を呼び出すために、明久が放送で売られたというわけだ。
「あ、返り討ちにあってる」
「って、あんた達二人はあの光景を見て何とも思わないの!?」
男子生徒が包丁で他の生徒に襲いかかる。さらには襲われた方が返り討ちにし、爪をはぎにかかる。
ふむ、確かに危ない光景ではあるが。
「別に普通じゃね?」
「うむ。これくらいは日常茶飯事じゃ」
「……あんた達、頭大丈夫?」
心底どん引き中の木下さん。
「あ、そうだ秀吉。もう帰るんだろ?」
「そうじゃな、試召戦争も終わったことじゃし」
「悪いけどお前の姉頼むな。なんか今日体調悪いみたいでさ」
「姉上が?珍しいのう、姉上が体調を崩すなど」
「だから、別に具合悪いわけじゃないって!あんた達に心配されなくても平気よ」
少しご立腹のようだが、秀吉があやして連れて行った。
明日は元気に会えるどいいな。
***
「ところで姉上、一つ聞きたいことがあるのじゃが」
「…なによ?」
未だむくれ顔の姉だが、構わず秀吉は聞いた。
「刹那と何があったのじゃ?様子がおかしかったようじゃが」
「べ、別に何もないわよ!」
反応からして何もないはずがないことは丸わかりだった。
「まさか姉上、刹那に惚れ……って待つのじゃ姉上。その間接はそっちにはまがらなっ!?」
木下姉弟の帰り道。
秀吉の断末魔がこだました。
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