「で?代表、作戦てのはどういったものだ?」
Aクラス全員の視線が代表へと集まる。
そんな中、代表が提案した作戦は、Aクラスの誰もも予想していないものだった。
「…………作戦は簡単。倉木、久保、優子、愛子の四人がそれぞれ先生を連れてCクラスに乗り込む」
「…へ?」
工藤さんが目を点にして声を上げた。
「で、そのあとは?」
当然そのあとがあるものだと思い、俺は代表に尋ねる。
「…………それだけ。後は四人に任せる。他の人はこの教室で私の護衛」
「なに!?」
「だ、代表。さすがにそれは…」
「…………大丈夫。今言った四人はこのクラスの主力メンバー。私はみんななら勝てると信じてるから」
「そうは言ってもね…」
珍しく久保が弱音をあげた。
らしくないな。
「おいおいどうした?久保はずいぶんと弱気だな。自信がないのか?」
「なんだと…?」
「俺はいいと思うけどね。何てったって俺たちはAクラスだ。下位のクラスが小細工したところで、圧倒的な力の差で勝つ。そのくらいしないとAクラスはつとまらないぞ?」
「確かに倉木君の言うことにも一理あるよねー」
「そうね。それに代表がそう決めたならあたし達は従うだけよ」
「ああ。それに代表の頭の回転の速さは言うまでもない。仮に思惑通りに行かなくても、その場その場に応じて対応してくれるだろう」
「君たちまでそんなことを…。だが確かに一理ある」
「だろ?」
「だが僕は別に自信がない訳じゃあない。君達が足を引っ張らないかと心配していたんだよ」
「ははっ!言ってくれるじゃないか」
「ほかに反論者がいないようなら僕も異論はない。全力を持って戦うことを誓おうじゃないか」
「そうこなくちゃ!じゃあ作戦は決まりだな」
「…………四人はそれぞれ得意科目の先生に話を通しておいて」
代表に促されて、俺たち四人はすぐに職員室へと向かった。
***
そしていよいよ開戦の時刻がやってきた。
「時間だ。じゃあ行こうか?」
「ああ!」
「ボクは準備オッケーだよ♪」
「あたしもいつでもいいわ」
「では開戦と行こう」
久保が先陣を切ってAクラスを飛び出した。
AクラスとCクラスの教室は同じ新校舎である。
だから教室に乗り込もうと思えば、障害さえなければすぐにでも乗り込める。
だがさすがにそれは許してくれないようだ。
廊下にはすでにCクラスの生徒が展開しており、そう易々と通してはもらえないようだ。
人数はかなり多く、Cクラス生徒の半数は廊下に出てきているようだ。
どうやら向こうの作戦もこちらと大差なく、攻撃こそ最大の防御。
やられる前にやってやれ。
乗り込まれる前に乗り込んでやれってわけか。
「さて。ここからどうしようか?」
意見を仰ぐために久保に話しかける。
「この状況で退くという考えはない。力でここを押し切るしかないだろ」
「じゃあ二手に分かれて一方は教室に殴り込み。もう片方はここで廊下に展開している舞台の殲滅し、その後教室に乗り込んで合流、ってのはどうだ?」
「考えている時間もないし、その作戦で行こうか。では僕はここに残り、少し召喚獣の操作の練習でもしているか」
「ボクもここに残るよ。優子と倉木君は先に教室に乗り込んで♪」
「ええ、わかったわ」
「早く来ないとおいしいところ全部もらうからな?」
「それでAクラスが勝利できるならそれでもいいさ」
「ボクが道を先制攻撃で道を作るから、二人はその隙にCクラスへ!」
「ああ。じゃあ、作戦開始だ!」
工藤さんを先頭に走り出す四人の前に、Cクラスの生徒たちが立ちはだかる。
「大島先生!Aクラス工藤愛子がCクラス生徒に保健体育勝負を申し込みます!」
「承認する!」
「サモン!」
工藤さんの叫びの直後、床から幾何学模様が浮かんだ。
そしてその模様から、俺たちの膝元より小さな召喚獣が現れた。
「やああぁ!」
工藤さんの召喚獣が、手に持った巨大な斧を振りかざし、力いっぱい振り下ろした。
余りに強大な一撃に、展開していた敵部隊は一瞬にして体制を崩された。
「今だ、木下さん!」
「ええ!」
工藤さんの一撃で生まれた隙間を、脱主で駆け抜ける。
Cクラスの生徒は教室に進入することを拒もうとするが、久保がそれを許さない。
「君たちの相手は僕がさせてもらうよ。サモン!」
久保も工藤さん同様に召喚獣を出し、応戦する。
廊下で戦う二人に背中を預けて、俺と木下さんはCクラス教室内へ乗り込んだ。
「よしっ!とりあえず教室には入ったぞ」
廊下からはたびたび「鬼の補習は嫌だ~!」と断末魔が聞こえてきたが、それはおそらく久保達が善戦してくれている証拠だろう。
気にせずにCクラス攻略を始めるか。
「あんた達、Aクラスね!」
「そう言うあなたはCクラス代表の小山さんだったわね」
「木下優子!ちょうどいいわ、あなた達!侮辱された借りを返しなさい!」
小山さんの号令で、護衛に回っていた残り半数のCクラス生徒が俺たちに襲いかかった。
こちらも立ち会いの教師を用意してはいたが、ここは敵の本拠地。
事前に用意されていた数学のフィールドが張られていた。
「たった二人でうちの本拠地に殴り込むなんてどんな作戦か知らないけど、ここで倒させてもらうわよ」
「はい?俺達AクラスがCクラス相手に小細工なんてするかって」
「なんですって!?」
「お前達の相手は俺達ふたりで十分。うちの代表はそう考えたんだ」
「へえ、言ってくれるじゃない。でも数はうちが圧倒的に勝ってるわ。おとなしく倒されなさい!」
そう。数は確かに負けている。
だが戦いにおいて勝敗を分けるのは個々の実力が鍵になる。
「倉木君、数学の点数はどう?」
木下さんも同じことを考えたのか、現在の戦力確認をとる。
「今回はまあまあだったな。数学単体の点数ならCクラスどころかAクラスにも負けないよ」
「それはずいぶんと心強いわね。サモン!」
「そう言う木下さんも頼りにしてるよ?サモン!」
俺達が召喚獣を呼び出すと、Cクラスの生徒達も次々と召喚獣を呼び出した。
Aクラス 木下優子 数学 356点
Cクラス生徒 数学 平均128点
召喚獣達の強さを表す点数が表示された。
ほお。さすがは木下さんだ。Aクラス生徒として恥じない点数だな。
でも……
Aクラス 倉木刹那 数学 859点
でも俺の半分にも満たないな(笑)
「「「はあ?」」」
「はい?」
Cクラス生徒はもちろん、味方の木下さんも目を点にして驚いていた。
「数学のフィールドにしたのは失敗だったな。俺は数学だけなら学年主任の高橋先生すら超えれるぞ?」
「な、何よあいつの点数は…」
これにはさすがに小山さんも驚きを隠せないようだ。
「さーて、覚悟はいいか?」
にやり、と口元を歪めて召喚獣を操作する。
俺の召喚獣は点数の割には軽装で、江戸時代を思わせる和服に、腰に一本の刀を装備。
そして腕輪を装備しただけであった。
ゆっくりと刀を抜き、Cクラス生徒の召喚獣へ斬りかかる。
ザシュッ!
一振りで四体もの召喚獣を葬り去った。
「なんだよあいつ!?」
「あんな点数の奴に勝てっかよ!」
「お、鬼の補修は嫌だ~!」
あまりに一方的な虐殺っぷりに、Cクラス生徒は大半が戦意を喪失していた。
「さて。じゃあそろそろ終わりにしようか」
すでに敵の大将を守る壁は意味をなさない。
完全に孤立していたのだ。
「さて、その大将首…討ち取らせてもらおうか」
「こ、この!」
「終わりだ」
ザシュッ!
この一振りで、Cクラスとの試召戦争は終わりを迎えた。
***
「まったく。呆れるほどの無双っぷりだったわね。あたしがいる意味なかったじゃない」
「なあに、数学だけだよ。他の科目じゃこうはいかなかったさ。向こうがわざわざ数学のフィールドを用意してくれたおかげかな」
俺はため息混じりの木下さんと一緒にAクラスへと帰還した。
「久保と工藤さんもお疲れさん。まあ苦戦はしなかっただろ?」
「まあね~」
「君たちがもう少し苦戦してくれていたら僕達の出番もあったんだが…」
「まあまあ。勝ったんだからいいじゃないか。そうだろ?」
「…………皆お疲れ」
「おお代表。代表の作戦、ちゃんとこなしてきたぜ」
「最初はどうなるかと思ったけど、終わってみればなかなか楽しかったよ♪さすがは代表の作戦だね!」
「…………私は今回なにもできなかった。でも今後のことを考えると主力になる四人に召喚獣の操作を覚えておいてもらいたかったから」
「なるほど。そう言う考えだったのか」
「確かに召喚獣の操作は思いのほか難しかったわね」
「うんうん。今回は向こうも操作に慣れていなかったみたいだから力押しで何とかなったけど…」
「多少操作に慣れた敵だと苦戦する、と言うわけか」
代表はそこまで考えて今回の作戦を提案したのか。
つくづく頭の回る人だ。
まあ何はともあれAクラス初の試召戦争は勝利で幕を閉じたのだった。
会話以外の地の文の書き方がいまいちわからん…
それでも楽しんでいただけたら幸いです。
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