天性の魔術師と王女 作:バロン
全身を流れる血が熱くなる、こんな感覚は久し振りだ
「まぁまぁ、そんなことより俺と遊んで行けよ」
俺がフードを取ると赤き双角が露になった、一瞬ガルドラの顔が鈍る
俺はゆっくりと魔力を集中させる、ガルドラもゆっくりと俺との距離を詰めていく
「お前の他にも後4匹居るらしいな、そいつらとお前だとどっちが強いんだ?」
俺は残りの四聖獣に興味が湧いていた、もしもこいつよりも強い奴がいるならいつか殺り合いたい
「ワレコソガヨンシュゾクサイキョウノセンシナリ!!!」
そこにはゼロの望む答えは無かった、しかし今はこの強者との時間を楽しむとしよう
「じゃあ…始めようか!」
ゼロは右手を付きだしレールガンを打つ、光の早さで飛ぶ破壊の閃光がガルドラに近づく
ガルドラはその巨体を横に滑らせ紙一重で避ける…いや敢えて紙一重で避けている、そんな余裕感が漂う
また両者動きが止まる、しかし今度はガルドラがその沈黙を破った
体をジグザグに揺らしながら高速で近づいて来るガルドラ、ゼロはそれを正面か受け止めた
「ファイアウォール!!!」
目の前に現れた炎の壁に一瞬たじろぐガルドラだったが直ぐ立て直し構わず炎の中へ突っ込んでくる
炎の壁にガルドラの黒爪が突き立てられた、ファイアウォールは容易く貫きその赤き双角を突き出す
狙い通りだ、ゼロは溜めていたサンダーボールを双角にぶつける、速度は死なずゼロは後ろに吹き飛ばされるがファイアウォールから出てきたガルドラは微かに体から煙が立ち上る
だがそのたたずまいはゼロの込めた魔力等全く効かないと言うような姿、正しくこの島の覇者の風格
「…クソが!、これならどうだ!」
俺は、悪鬼王の小太刀を抜きガルドラの胸辺りを横に薙いだ、飛び散る鮮血、しかしその傷は浅くとても致命傷とは成らない
ガルドラはこの小太刀から発せられる気配に危険を感じとりギリギリの範囲で避けたのだ、結果ガルドラの堅く堅牢な毛皮が容易く斬れたのだガルドラは素早くゼロの剣を握る拳を前足で叩く、ゼロの拳は叩き折られ剣は離れた大岩に突き刺さる
「グアアアァァァァァーー!!!」
ゼロの叫びにドラガルは無反応、ただ確かに獲物を殺すハンターだった
ダメだ…速さもパワーも桁違いだ、どうする?どうすれば勝てる?
ゼロはそれから残った左腕でレールガン・サンダーボール・ファイヤーボール・錬金術で金属を錬成し雨のように降らせたが全て避けられるか粉々に破壊された
「ムダダ、アキラメロ!」
ガルドラはゆっくりと近付いてくる、それはゼロの死へのカウントダウンだった
「諦めろだ?…ふざけんな!」
ゼロは錬金術による鋼鉄製の盾を錬成ガルドラの前に躍り出た、無情にも振り下ろされる漆黒の爪が鋼鉄製の盾を紙のように切り裂く
しかし切り終わるにも多少抵抗がある、その隙にゼロはガルドラの腹部に至近距離、魔力全てを込めた槍≪破槍≫さっきまで使っていた≪悪鬼王の小太刀≫を見て考え付いた、何故あの刀だとガルドラに傷を付けられたのか、あの武器には付与が付いていた、なら俺の錬金術で付与は出来ないかと
結果出来た・雷・光・火それらを全てを錬金術によって作り出した槍に付与したそれを全力で投げたのだ
その一瞬の出来事にもガルドラは反応した、振り下ろしていた手を止め地面を横に蹴り回避行動をとる
しかし今回は距離が近すぎた、ガルドラの腹部を狙った破槍は少しずれて肩から激しく鮮血を散らした
「まだか!オラァァァァ!!!」
ゼロは錬金術により首輪を錬成、体勢を崩したガルドラの首へと飛び乗る
「ふぁ!」
何か聞こえた気がするがそれどころではない、俺はまだ体勢を崩し動けないで居るドラガルの首に鋼鉄製の首輪を掛け鎖を辺りの木々に手当たり次第巻き付けた
「どうだ!」
ゼロの叫びにガルドラは答えない
「……け」
いや何か言ってはいる
「何だって?」
「…けだ」
「いや、全然聞こえない…」
「私の負けだ!行け!」
突如発せられたガルドラの敗北宣言だった、俺は何が何だか分からないがこれ以上戦わなくて済むならそれに越した事はない
俺は動かないガルドラに背を向け街道へと駆けた
≪ピロリン!!ピロリン!ピロリン、ピロリ……≫
始まった、その機械音は街道に出るまで続いた
「ドルドさん!」
街道に止まっていた馬車まで来ると、そこには重装甲に固めた騎士、約百人程が馬車を中心に囲んでいた
「止まれ!何者だ!」
ゼロは突如重装甲兵に止められた
「私の名前はゼロ、あなたたちは?」
ゼロは自分を止めている兵士に尋ねた、その手には槍、剣、大斧、メイス、そして杖?
剣兵30人・槍兵10人・大斧兵15人・メイス兵15人・杖兵30人
ざっとこんな感じか?
「それにはこの私が答えよう!」
馬車の辺りから出てきたのは白銀の鎧に身を固めその手には純白の一メートル程の杖、腰にはレイピアが差されている
「我が名前はアルドルファー・ロマード、ロゼーノ王国第三騎士団の団長をしている、さぁこの私がお前のような農民風情に名を名乗ったのだ貴様も答えるが良い」
明らかにボンボンのようなこの男、試しに鑑定しといた
アルドルファー・ロマード 25歳 人間族 剣士&魔術師
レベル 13
HP 570/570
MP30/30
筋力120
耐久100
俊敏210
魔力35
スキル
傲慢 レベル C
(自分が使う体力を極力人に肩代わりさせる、レベル上がるにつれて肩代わりさせられる量も増加)
胆力強化 レベルC
(自分に対する暴言等による精神攻撃を減少、レベルが上がるにつれて減少値が増加)
固有スキル
魔術≪氷≫ レベルD
(氷魔法を使えるようになる、魔力の増加でより魔力消費の大きい魔法が使えるようになる)
プラス思考 レベルB
(様々な事柄に対して全てプラスに受けとる、レベルが上がるにつれて思考増加)
称号
ロゼーノ王国第三騎士団団長
あぁ…何かめんどくさそうなスキルが多いな
「私の名前はゼロ、この馬車に乗っていた人に王都まで連れていってもらう途中です」
「貴様のような農民が何をしに王都へ行くのだ!」
俺は錬金術を使い直ぐ様ローブの中から手紙が出てきたように見せかける
「この手紙を王都へ届けに行きます」
俺が手紙をローブの中で錬成し見せると、アルドルファーはフンッ!と顔を反らした
「まぁ良い、我らの望みは達成された…おい!」
すると近くにいたアルドルファーの部下らしき男が何かを引きずってきた、それの首には首輪と鎖が繋がっていた
そこにいたのは紛れもなく先程助けた女カリーナだった
「その女が何かしたのですか?」
「こいつは我々ロゼーノ王国の宝である花々の生育法を纏めた物を王宮から盗んだ大罪人だ、よって身分を自由民から奴隷へと落とす!!!」
奴隷…、名前を聞く限り良いとは言えない身分だろう、カリーナは一度俺の方を向いたて…少し微笑んだ?、そう思ったら直ぐに鎖を持つ兵士を睨んだ
「さぁ、行くぞ!」
弛んでいた鎖がジャラジャラと音を立てながら伸びきる、同時にカリーナは引きずられるようにフラフラと歩き始めた
「おい!」
俺は声を上げてしまった
「お前…本当に盗んだのか?」
俺が尋ねるとカリーナは
「私は盗んでいない」
その顔には嘘を付いている様子は微塵もなく、ただ自分の潔白を証明していた
「貴様!まだ言うか!!!」
鎖を持つ兵士が持っていた鞭を振りかぶりカリーナ目掛けて振り下ろす
「レールガン!」
ゼロの指から放たれた細い光線は兵士の腕を容易く貫通させた
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」
辺りの兵士たちは何が起こったのか分からない様子だったがアルドルファーはいち早く気が付いた
「その男を捕らえよ!」
アルドルファーの声に反応する兵士達、だが動きが遅すぎる、俺はカリーナの鎖を持つ兵士を蹴り飛ばしその鎖を握った
「貴様!農民風情がこんなことをして只で済むと思うなよ!」
ゼロのを中心に剣兵が取り囲む
「その農民風情に罪人を取られた間抜けどもは誰だ?」
ゼロがそう言うと剣兵達が一斉に襲い掛かってきた、全身を鋼鉄の鎧に固めた兵士達が向かってくるだ恐怖でしかない
「ファイアウォール!!!」
ゼロは前方に炎の壁を作り出した、何人かの兵士が回避が間に合わず餌食に為った
「こいつ、魔術師か!」
俺が魔術師と分かると剣兵・槍兵・大斧兵・メイス兵が俺を中心に周りを囲む、そしてその外側を杖兵が囲んだ
「奴の右腕を見ろ!何故かは知らんが深傷を負っているゆっくりと着実に攻めろ!」
それから兵達は必ず一斉に5人以上で襲ってきた、流石に俺一人なら何とか成るがカリーナを庇いながらでは一人二人ずつしか倒せない、しかしこのままなら殺られる事はないだろう
その時…
「炎よ、我が望みに答え矢となりて敵を穿て≪炎矢≫」
一人の魔術師から放たれた矢は俺の背中に突き刺さる
「ん?」
少し背中に痛みを感じた様な気がするが…うん、問題なし!な
「何だと!完全詠唱の魔術だそ!」
「次はこっちから行くぞ!≪降り注ぐ鉄槍≫」
今回の戦いでゼロはまだ全力で魔術を行使していなかった。
レベルが上がった今ゼロが全力で魔術を使った場合どれ程の範囲に被害が出るのか分からなかったからだ。
だがこの技ならある程度力がある者なら生き残るだろう
俺は折れていない左腕を上にむけて魔術を使った
「おい、何も起こらないぞ…」
一人の魔術兵がそんなことを言った次の瞬間、青空が黒く埋め尽くされた、あぁ~流石に魔力全部注ぐのは失敗か?
≪ズドドドドドド…!!!≫
半径500メートル程に降り注いだ鋼鉄の雨は地面を黒く染めた、生き残ったのは氷でシェルターのような物を造り出したアルドルファーと数人の部下のみだった
「こ、こんなことが…ありえない私はロゼーノ王国第三騎士団団長・アルドルファー・ロマードだぞ!この私が率いていた騎士団が数名残して全滅何て…嘘だぁぁぁぁーーー!」
アルドルファーは戦意を失ったようだ、残っている兵士達もどうして良いのか分からずアルドルファの側でオロオロしている
「さて、話を聞こう…か?」
俺が振り向くと、先程までフラフラながら立っていたカリーナが地に伏せていた
「おい、どうした!」
カリーナを抱き上げる、脈をはかる…まずいどんどん弱くなっているこれは
「毒…か?」
俺がアルドルファーの方を向くとアルドルファーはニヤリと笑うと
「取引しよう、その毒の解毒法を知っているのは私だけだ、お前が大人しくすると約束すればその盗人も助けてやろう」
最早考える間でもない、俺は大人しくすると約束しアルドルファーから手錠を掛けられた
≪ウグッ!≫
手錠を掛けた瞬間、アルドルファーはいきなりゼロの腹部に蹴りを叩き込んだ
「この!クズが!お前ごときがこのアルドルファー様にたてつこうなんぞ!百年!早いんだよ!」
2度3度と蹴りを全身に受けるゼロ、何故だ…魔術が使えない
「その錠は魔封鋼から作り出された対魔術師専用の拘束道具だ、これで魔術を使うことは出来ない!」
「くっ!約束は…果たせ!」
俺はアルドルファーに向かって叫ぶ、するとアルドルファーはニヤリと笑らい
「約束~?あぁ、あの盗人の毒を抜くって話か、勿論やってやるとも、ギリギリ王都までたどり着ける程度にはな」
それからアルドルファーは部下に薬草を取りに行かせ調合した薬をカリーナに少し飲ませた
「さぁ、行くぞ!」
騎士団の馬車は先程の攻撃で全てボロボロに成ってしまった、代わりとしてドルドさんの馬車を使われる事に成った
ドルドさんは俺の方をチラリと見ると直ぐに目を背けた、この状況で俺を庇ったらドルドさんまで悪くなる、正しい判断だ…
「ところでお前何故ローブで頭を隠している」
アルドルファーが荒くゼロの頭からフードを脱がす、同時に赤く染まる双角が現れた
「その角は…貴様!呪われ人か!」
俺は蹴り飛ばされ地面に転がる、その隙にカリーナの口からこぼれた解毒薬に触れる
「貴様は騎士殺害罪・身分偽造罪・罪人擁護罪・呪人殺害法に乗っ取り王都に連行する!!!」
それから俺は首輪を付けられ馬車の後ろに繋がれた
次回からゆっくりと本編に入りたいな…