このお話の題名?? それは───   作:ゼッケンマン

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皆さまお久しぶりです。
今話は虫が出るので苦手な方や想像力豊かな方は閲覧注意かもです……。



じゅうにわめ!

──ラウラちゃんとの電話が終わって予定通りに朝ご飯を食べた僕は今! 一人この部屋で絶望と戦っていた……。

僕をジッと見据えるように、微動だにしない絶望──G(ゴキブリ)は、何処から侵入しているのか分からないまま1匹、また1匹と僕の視界に映る範囲で増えていく……!

 

「じゅ、10匹は余裕でいるんじゃない……??」

 

僕だって曲がりなりにも男だ。

Gの1匹や2匹なら頑張って戦っていたと思う。

だけどこの瞬間にも奴らGはまだまだ数を増やす。

それこそ四方八方にGたちはカサカサとそこら一帯をッ!!

 

「ひゃっ?!」

 

思わず変な悲鳴をあげながらしゃがんでしまった!

だけど仕方ないよね?? 僕の顔面目掛けて飛んで来たんだから!!

不可抗力だよ、本能が体を動かしたんだよ……!

 

「くっ、携帯電話は目と鼻の先にあるのにその数歩すら歩けないくらいに溢れてきてる……っ」

 

10匹なんてとうに超えたG軍団。

もう一周回っても冷静になれるわけがない僕だけど、この状況を打破する方法を必死に考えてみる……。

既に能力は奥の手という選択肢を設けるくらいには切羽詰まっていて、余裕が消えていく心を深呼吸で必死に押さえつけながら考える。

まずはそもそもどうやってこの部屋に侵入したのか。

僕がこの部屋に住み始めてから、きちんと掃除もしてるしGが出る心当たりはない。

……本当はGって、見た目とは裏腹に綺麗好きな虫らしい。

だからってこの部屋に出る心当たりなんてない!

 

「あは、仮に出たとしても1匹……多くて2、3匹だと思うけど。もう100匹は超えたんじゃないかな? この部屋に居るGさんたち♪」

 

なんかもう謎にテンションが上がってきた!!

こんな状況で、いや、こんな状況だからこそアドレナリンが爆発したのかもしれない!

僕はこのチャンス? を逃さない為に、最大限に集中してGを踏まないようにもう神業に近い忍び足で携帯の元まで進み何とか辿り着いた。

こんな数歩もない距離なのに、異様に汗かいてるおでこを袖で拭って、奇跡的に引っ付いていなかった携帯を手に取った。

 

「っ、誰にSOSを送るか……」

 

警戒を怠らず、視界に周囲を収めながら悩む。

僕が助けを求めた相手は、この地獄に巻き込んでしまうのと同じだ。

だけどもう迷ってる時間が無いのも確かだった。

 

「──もしもし?」

 

結局のところ、僕は、

 

「あ、い、一夏兄? ……今大丈夫??」

 

そう。

僕の兄、一夏兄だ!

 

「おう、俺は大丈夫だけど……いきなり改まってどうしたんだ? しかも電話なんて珍しいな?」

 

「あはは、単刀直入に言って部屋から出れないくらいには僕、ピンチなんだよね~……」

 

「なっ……?! お前がピンチって、取り合えず待ってろ! すぐそっちに行くからな!!」

 

そう言って通話が切れた。

確かに僕がこういう風に一夏兄に頼ったことって今まで無かったような気がする。

 

 

 

 

 

「桜ッ!! 大丈夫か?!」

 

それから数分の時間この部屋で何も出来ないままただ一夏兄を待っていた……。

そしてこの部屋唯一の扉からノック音と一夏兄の声が!

 

「一夏兄! その扉は鍵掛かってるから開けれないし、何より開けちゃダメだから、窓側から来て!」

 

「っ、分かった!!」

 

この部屋は一階の一番端っこにある、そして窓からはちょうど外が見える。

……つまりここの窓と外は繋がっている。

もしかしたらGが外から侵入しているのかどうかが分かるかもしれないし、それこそ万が一でも部屋の扉を(あけ)ちゃったら──Gが一斉に廊下に飛び出して学園中が大パニックになる可能性だってある!!

 

「大丈夫か桜ってなんじゃこりゃ?!?!」

 

外に回って窓を覗き込んだ一夏兄は素っ頓狂な声を上げる。

 

「な、何が起きたんだ?!」

 

「僕にもさっぱり見当がつかない! 突然現れたと思ったらこんなあり得ない現象に巻き込まれちゃった!! それよりも一夏兄、窓の近くからGが侵入してる様な痕跡はある?!」

 

僕の言葉にハッと我に返った一夏兄は、キョロキョロ首を動かす。

その間にもまだまだ増え続けるGに対して、もう僕の正体はGが進化した姿なのではないかなんてある種の悟りを開きかけてた時だった!

 

「──あった! あったぞ桜!! ッッ?!」

 

「どうしたの一夏兄?!」

 

この部屋の窓からは外が見える、だけど綺麗な海が見える訳じゃないんだ。

見えるのは自然豊かな森。

そして一夏兄の視線は森の奥に注ぎ込まれていた。

何よりも、一夏兄の顔色がどんどん青白くなっていっている。

 

「……終わった」

 

「何が?!」

 

「くっ! もう俺たちは終わったんだ、桜!!」

 

「だから何が?!?!」

 

あれだけいつも元気で爽やかな一夏兄なのに、今は本物の絶望を覗いた亡者になりつつあった……声すら震えてる。

それだけじゃなかった。

僕の居るこの部屋にも異変が起きた!!

 

「っ?! Gたちがこぞって外に出てる……??」

 

あれだけうじゃうじゃしてたGたちは、1匹残らず森の奥に移動していく。

ここからじゃ一夏兄が見ている光景、そしてGたちがどこに行っているのかが分からないから、窓を開けて一夏兄の隣に立ち──

 

「──なに……あれ……?」

 

「この状況でヤンデレ化か?」

 

「意味分からないよ一夏兄?! ……あれ、僕たちより大きい巨大なGだよね?」

 

真っ青な顔色でおかしなことを言う一夏兄に軽くチョップをし、改めてその正体に視線を移す。

 

「Gの集合体なのか、目を凝らすとうじゃうじゃしてるぜ……」

 

「あんまり直視したくはないよね……」

 

一瞬だけあの集合体の元凶は束姉なのかと考えたけど、流石にないことぐらいは理解してる。

そもそも束姉、G超苦手だし。

 

「どうすりゃあいいんだ? はぁ……IS使うわけにもいかないし」

 

「ほっとくって選択肢は元からないもんね……」

 

箒ちゃん、セッシー、鈴ちゃん、簪ちゃんにあの謎の生命体を見せる訳にはいかないし……。

この学園の生徒会長で生徒最強の楯無さん、それか人類最強の姉、千冬姉に助けを求める?

だけど、僕はふと思った。

なんでこれだけの時間巨大Gはずっとただただこっちを見てるんだろうって。

 

「一夏兄、ちょっと待ってて」

 

「桜?」

 

僕は巨大Gに近づく、恐る恐る。

 

「『読心(どくしん)』」

 

僕はここで一つの能力を発動した。

読心、どんな生物でも相手の考えていることが分かる能力。

人に試したことなんて一度もないこの能力を、G相手にするとは予想してなかったなぁ。

 

『……テンテキ、キタ。テンテキ、キタ』

 

テンテキ……天敵? が来たってことかな?

 

『オマエハ、オレヲミテモ、コロソウトシナカッタ。ダカラ、タスケテ』

 

あぁ、だから僕に一切の危害を与えなかったのか! ……顔目掛けて飛んできたのはこの際忘れてあげよう。

 

「それなら、案内して?」

 

言葉が通じるかは分からなかったけど、

 

『ワカッタ、コイ』

 

そう言って背を向けた巨大Gはカサカサではなくガサガサと森の奥に進んでいった。

その後を僕もついて行く。

 

「ど、どうなったんだ?」

 

呆然と僕と巨大Gを見守っていた一夏兄は、困惑気味に僕の隣に来て尋ねる。

 

「天敵が来たから僕に助けを求めてるらしいんだ」

 

「て、天敵? なんで桜に助けを……?」

 

一夏兄に簡単に状況を説明しながら、僕たちはただ巨大Gの後に続いた。

 

 

 

 

 

「洞窟??」

 

「この島にこんな大きな洞窟があったんだな……」

 

森を抜けて、島の端まで来た僕たち。

そこから崖を降りて、着いた場所は洞窟だった。

しかもある程度の船だったら余裕で入れるくらい大きな洞窟。

 

『ココ、オレタチノスミカ。ダガ、ヤツガキタ』

 

巨大Gはそう言って洞窟を眺めながら立ち尽くす。

あはは、もしかして……

 

「一夏兄、ここからは僕たちだけで行けってことみたい」

 

「ま、マジかよ?! この洞窟に案内無しで進むのか?」

 

僕は頷いて、洞窟に向かって進む。

もう覚悟はできた、何が出てきても大丈夫だと思う!!

 

「しっかしこの短時間で状況が目まぐるしく変わっていくよな」

 

一夏兄も僕の後をついてきてくれて、苦笑いでぼやく。

もうここまで来たら、ただ同じように苦笑いで頷き返すしかできない僕は、意外と明るい洞窟内をどんどん進んでいく。

 

「それよりも、今更だけどごめんね? 昨日はクラスマッチだったし、まだ疲れも残ってるでしょ?」

 

「おいおいなに言ってんだよ。俺は全然元気だし、もしどんな状態だろうと……弟の頼みならそれに応えるのが兄貴ってもんだろ?」

 

そうニカっと笑って僕の頭をポンポンと撫でる一夏兄。

 

「──一夏兄、気づいてる?」

 

「あぁ、これも毎日の特訓の成果の賜物かな」

 

僕と一夏兄は歩みを止め、奥に(うごめ)く巨大でビックでジャイアントなM(ムカデ)を引き攣った頬を指で摘みながら観察する。

 

「なんか、今日は不思議体験の連続でもうお腹一杯かも」

 

「もうこの場所も含めて、ここが地球なのかも怪しくなってくるな……」

 

「にしし、もしかしたらここは異世界だったりしてね!」

 

「冗談はあのムカデだけにしてくれ?!」

 

さて。

現実逃避はこれくらいにして僕は考える。

あのムカデをどうやって追っ払うか……倒すか。

僕は一応、あのムカデにも読心してみる。

 

『ゴギャグギャメギャギギャ』

 

理解不能だった。

少なくとも知能が無いに等しいのが分かっただけでも吉かな?

そのことを一夏兄にも伝える。

 

「そっか。ならここで仕留めるか?」

 

「……うん、じゃなきゃ巨大G以上に巨大ビックジャイアントMが学園に近づいたらB級怪獣映画になりかねないし」

 

「だけど生身でMに勝てるわけないよな。かと言って、IS発動なんてしたらすぐにバレるしさ」

 

「僕の能力使ってもいいけど……はっ?!」

 

良いこと思いついたかも!!

僕はバッと勢いよく一夏兄に顔を向ける。

僕の笑みに何かを察したのか、一夏兄はじりじりと後ずさる。

 

「──一夏兄、クラスマッチで負けた時悔しかったよね?」

 

「っ、あぁ」

 

「もっと強くなるって思ったよね??」

 

「お、おう」

 

「……これはチャンスだよ! 一夏兄!!」

 

僕は壁際まで追い詰めた一夏兄の両手を掴み、ジッと顔を見る。

一夏兄も僕から逃げられないと悟ったのか、溜息を零しながら降参だと肩を竦める。

 

「それで? 大方の予想はついてるが、説明してくれ」

 

「うん。──一夏兄、ISの部分展開って知ってる?」

 

部分展開、それは片腕だけだったり武器だけだったり、ISの一部だけを発動する言葉通りの技術だ。

 

「あぁ、そりゃ知ってるけど……っ、まさか?!」

 

「にしし、そう。部分展開ならISを発動しても信号をキャッチされないよね? だから、両腕と両脚、頭の部分と武器を発動させれば空は飛べないけど戦えるんだよ!」

 

「要するに千冬姉の劣化版か……?」

 

「それは流石に千冬姉に失礼だよ?! コホン。今から2倍の重力を解くから、一夏兄は部分展開して!」

 

一夏兄は不服そうな表情ながらも、僕が異能の力を使ったらオーバーキルになりかねないと思ってるのかもしれない。

だから素直に部分展開してくれた。

そして重力を解いて、

 

「おぉ、なんかいつもと違って新鮮だな!」

 

ぴょんぴょんと絶対に人間では飛べない高さの脚力を余裕で見せてくれる。

スイッチが入ったらしい一夏兄は、

 

「行ってくるぜッ!!」

 

そう言い残し気合の雄叫びを出しながら、奥のMに向かって尋常じゃないスピードで走り出した。

あんなにスピード出して体が持つのかなって、息できるのかなって思ったけど、一夏兄って千冬姉と同じ血を引いてるんだよね(僕もだけど)。

僕はいつでも加勢できるように戦いを、一夏兄と巨大ビックジャイアントMの死闘を見守った。

 

 

 

 

 

──夜。

1時間に及ぶ死闘の末、勝利したのは一夏兄だった!

怪我も無く倒した一夏兄がまた一歩千冬姉に追いついたなってつい感慨深く思った。

Mを討伐後、巨大Gに報告したら一言『アリガトウ』とだけ言われさっさと洞窟に帰って行った。

もう既に息絶えたMはそのままにしたけど、どうやら今日はGたちの宴らしい……聞かなきゃよかった……。

今日のことは僕と一夏兄だけの、兄弟の秘密として皆には話さないことにした!

だって内容が内容だし……ね?

 

「今日はありがとね、一夏兄!」

 

僕は親しき中にも礼儀ありの心で、もう一度お礼を言った。

 

「気にすんな。また何かあったら迷わず呼べよ? 何度も言うけど、俺は桜、お前の兄貴なんだからな?」

 

「うん!」

 

最後におやすみと言い、僕は一夏兄と別れた。

……今日から一夏兄の重力は3倍になり、僕は僕にできることを一夏兄にしようと改めて思えた、そんな不思議な一日だった!!

 

 

 

 

 

 

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