このお話の題名?? それは───   作:ゼッケンマン

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じゅうさんわめ!

「うわぁ~ん! 助けて桜く~ん!!」

 

昨日とは打って変わり、今日は平和な昼下がり。

それは唐突に楯無(たてなし)さんに抱き着かれたのをきっかけに終わっちゃった……!

 

「……えっと、鍵空いてました?」

 

色々と突っ込みどころは満載だけど、ある意味で楯無さんのスキンシップに慣れてきた僕がいる……。

だから自分の頬っぺたを僕の頬っぺたにピタリとくっつけて不気味な笑い声を発している楯無さんの行動はもうスルーだ! じゃないと僕の身が持たないからね……。

 

「流石に私でも勝手に鍵を開けたりしないわよ?」

 

う~ん、千冬姉が出て行ってから閉め忘れちゃってたみたいだね。

結果的にだけど、鍵が開いてても閉まってても僕が楯無さんを部屋に招き入れた時点でこうなることはほぼ確実だったのかもしれない。

現に凄い勢いで、それでいて優しく背中越しに抱き着かれてるのが証拠になるかな?

 

「それでどうしたんです? 今日は日曜日でしかも昼間なのに制服まで着ちゃってるじゃないですか」

 

僕の髪の毛を好き放題弄ってる楯無さんが、重い溜息を吐いた。

 

「今日は生徒会の部屋を大掃除する予定だったの。メンバーは、私と(うつほ)ちゃん、本音(ほんね)ちゃんの生徒会メンバーに、手伝いを申し出てくれた天使の(かんざし)ちゃん!! 最初は四人で掃除する予定だったんでけどね……」

 

「……もしかして」

 

「そうなのよ、虚ちゃんも本音ちゃんも天使簪ちゃんの全員が急遽用事が入っちゃってね~」

 

「そ、それはなんというか……ドンマイです」

 

今まで暗い顔でテンションが下がってた楯無さんがバッと顔を上げる。

その瞳には涙が溜まっていて、なぜだか抱き寄せる力が強くなった気が……?

 

「そ・こ・で。桜くんに頼みがあるんだな~」

 

僕の耳元でぼそりと呟いた。

それもなんでか知らないけど、無駄に息を混ぜるから耳がくすぐったい!

 

「……なんで僕なんですか? 楯無さんはこの学園の生徒会長で生徒からの信頼も多いでしょうし、友達も沢山いるんじゃないですか? それこそ僕よりも掃除が得意なむぐぅ?!」

 

僕の顔ごと抱きしめてきたせいで、これ以上喋れない?!

い、息がしづらい!!

 

「え~、桜くんなら二つ返事に了承してくれると思ってたんだけどな~。掃除を手伝ってくれたらお礼はちゃんとするから、ね?」

 

これはもう断れない流れだろうし、もうそろそろ酸素が欲しい!

僕は精一杯頭を縦に振る。

 

「っ、ん。ありがと~! それじゃあ早速行きましょうか!」

 

「──わ、わかりました」

 

解放された僕は楯無さんの後ろをついて行く。

うーん、僕が頭を振ってた時に少しだけ楯無さんの体が痙攣したような……?

それに楯無さんの頬が少し赤いのは気のせいなのかな??

なんて思考もすぐに切り替えて、掃除をする前は軽くストレッチでもした方がいいかなと思ったりしてみた。

 

 

 

 

 

「──おぉ……! パンパンに詰まった袋や段ボールの山で一杯ですね?!」

 

生徒会室に入ってみると想像以上に散らかっていた。

なんでこのタイミングで大掃除をするのかなどの些細な疑問が吹っ飛ぶくらいに袋と段ボールしか見えない。

 

「四人なら夕方には終わる量だけど、流石に一人だとね……」

 

「今日中に終わらせるには、せめてあと一人は欲しいところですねー」

 

なぁんていつまでも現実逃避ならぬ雑談をしてても時間だけが増えてくだけだよね。

一先(ひとま)ず僕は中々踏ん切りがつかないでいる楯無さんを促し、段ボールを廊下に運ぶことから始めた。

理想は二人でご飯時までに終わるのが理想だけど、最終手段で一夏兄を呼ぶ手段もなくはないんだけど……。

 

「よいしょ、よいしょ」

 

「ん、んっ」

 

だんだん重くなってくると、僕の掛け声と楯無さんの無意識な吐息が静かな部屋に充満する。

──やっぱり楯無さんもこうして見ると普通の女の子なんだなって思うよね。

学園最強、ロシア代表の世界に肩を並べるIS操縦者のスーパー女子高生でも、何回も往復で重い物を運んだりしてると息は乱れてくるし汗もかく。

 

「ふー、暑いわねー……」

 

……ただ、胸元のネクタイを(ほど)いてボタンを開けるのはちょっと頂けないかも。

 

「た、楯無さん。暑いのは僕も一緒ですけど、身嗜(みだしな)みはきちんと整えてください!」

 

「えぇ~、虚ちゃんみたいに固いこと言わないでよ~。……あ! そ・れ・と・も? お姉さんのセクシーな体に興奮しちゃった?」

 

胸元を強調するようにして、ニヤニヤと笑う年相応なスーパー女子高生楯無さん。

 

「はぁ、そんなことする暇あるならちゃっちゃと残りの段ボール運びますよ」

 

「そんなことの一言で流された?!」

 

楯無さんの背後にガーンと石の文字が見えた気がしたけど……きっと気のせいに違いない、うん。

拗ねてますよと言わんばかり頬を膨らませて、また段ボールを運び出した楯無さん。

それでも何だかんだとちゃんと身嗜みを整えてくれた楯無さんは、やっぱり根は素直なんだろうなって勝手ながらに思ったり。

それからは殆ど休憩も挟まずに、黙々とひたすら段ボール、そしてごみ袋を廊下に出し運び終えた。

予想よりやや早めの、その時はもう太陽も沈みかけの時間だった。

最後に掃除機をかけて、あとは後日細々(こまごま)とした作業は生徒会メンバーでするとのこと。

 

「お疲れ様~、桜くん! はいジュース。これからちょっとだけ待っててね~」

 

「はい、楽しみにしてます!」

 

僕は楯無さんに淹れてもらったオレンジジュースを貰う。

そして現在エプロン姿の楯無さんは、鼻歌交じりに生徒会室の別室にある和室で料理をしていた。

その和室にはキッチンを元に料理器具や調味料が一式揃ってるんだって!

今日の掃除を手伝ったお礼にと、楯無さんの提案で手料理を振舞ってくれることになった!

どんな料理かは完成してからのお楽しみなんだって。

料理を待っている間、何気なしに生徒会室を観察する。

すると、

 

「……?」

 

向かい側のソファーの下に一枚の紙が落ちていた。

処分忘れかなとその紙を手に取ってみると──

 

更識(さらしき)……刀奈(かたな)……?」

 

と、楯無さんの顔写真が貼られているプロフィール(しょ)らしきものの名前欄にそう書かれてあった。

 

 

 

 

 

 




それではまた!
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