このお話の題名?? それは───   作:ゼッケンマン

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かんわ! そのいち!!

「うぉ?!」

 

一夏兄は驚いたように声を上げて、辛そうに腰が下がってる。

いま僕は一夏兄に1.5倍の重力をかけた。

やっぱり1.5倍って小さいようでとっても大きいよね?

現に一夏兄は体を動かすのに苦戦してる。

 

「その状態を明日の夜まで、だね! ……その次は2倍になるけど大丈夫そう?」

 

「お、おう……っ! 平気だぜ!」

 

「そっかそっか。それなら今から最後に、この重力作戦はあくまで短期間でISに乗るための最低限に必須な能力を荒治療で補うのが目的だからね? 一夏兄ならやり遂げれるって信じてるよ!!」

 

「あぁ! 弟にここまでしてもらったら最後までやりきる!!」

 

──こうして、一夏兄の六日間の特訓が始まった!!

 

 

 

 

 

──一夏兄の重力作戦から三日が経った夜!

僕は千冬姉の部屋で食堂から持ってきてもらった唐揚げ定食を完食したあと、お皿やトレーを綺麗に洗って、束姉から貰った透明化シールをおでこに貼ってから、他の人たちの迷惑にならないようにこっそり食後の散歩をする!

……今頃一夏兄は2倍の重力に頑張って慣れようとしてるんだろうな。

暫く当てもなくぶらぶら歩いて訓練室に近づくと、訓練室の方から重く響く銃声が聞こえた。

この時間帯はちょうどお腹を空かせた生徒たちで混雑する(ここ三日で確認した!)から、こんな時間まで訓練をするなんて中々な努力家さんが居るみたい。

失礼を承知で僕は誰が練習してるのかな~って覗いてみる。

するとそこには、一夏兄とIS勝負をするイギリス代表候補生のセシリア・オルコットさんが訓練していた!

僕は銃には無知と言っていいくらい知識がないけど、それでもこの練習場に置いてある銃を一通り使ってるみたいで、その一発一発が正確に的の中心を射抜く、顔も真剣そのものだった。

……そうだよね。

代表候補生になるには皆が楽しく過ごしている間も、こうやって密かに、地道に練習してるんだ。

この訓練室にはセシリア・オルコットさん以外居ないみたいだし──

 

「こんにちは! オルコットさん!!」

 

訓練が終わったのを確認して、透明化シールを剥がして話し掛けてみた!

 

「ひゃっ?!」

 

背後から話し掛けたのは失敗だったかな?

素っ頓狂な声を上げたオルコットさんは、驚いたような怒ったような顔で、

 

「いきなり誰ですの?! ……って、あなたは織斑先生とあの無知で野蛮な男の弟さん?」

 

と、訝しげに僕を見るオルコットさん。

一夏兄がめちゃくちゃに言われるのは、まぁ、うん、それは僕はノータッチかな?

その評価も今度のISバトルで挽回してくれるのを僕は信じてる!

 

「そーだよ! 改めまして、僕の名前は織斑桜! 桜って呼んでください!」

 

「あら、ただの悪戯好きなあの男の弟かと思ってましたが、ちゃんと礼儀は弁えているんですわね」

 

「にしし、あの時は久しぶりの外だったからテンション上がってたんだよね~。……それでさ」

 

「なんですの?」

 

「うん。僕はオルコットさんのことは全くってほど知らないから何を話していいのか分かんないけど、でも、少なくとも悪い人じゃないなってさっきの練習を見てて思った!」

 

「……」

 

「だから、今度のIS勝負で一夏兄が勝ったらオルコットさんのことをセッシーって呼んでいい?」

 

「何を言うのかと思えば……万が一でも私が負けることはありえませんが、それでも、私が負けたらその呼び名で呼んでもよくってよ」

 

「よーし、約束だよ! それじゃあ僕はそろそろ行くね、練習の邪魔をしたくないし! またね!!」

 

僕はそのままオルコットさんの返事は待たずに訓練室から出た。

にしし、ごめんね一夏兄! セシリアさんを本気にさせちゃったかも!

でもやっぱり、一夏兄が勝つと思うんだ。

だって一夏兄は一夏兄だからね!

 

 

 

 

 

またまた透明化シールを張って、今度は目的ある散歩をする。

それは一夏兄に会いに。

あ、オルコットさんとの約束事を話すわけじゃあないよ?

今日は三日目、重力が2倍になっている一夏兄の様子を見る為に一夏兄の部屋に行く。

部屋まで着いた僕は、扉をコンコンと鳴らして部屋に入った。

 

「お邪魔しまーす!」

 

「お、おう……。いらっしゃい……」

 

一夏兄には無理矢理作った笑顔で出迎えられた。

正直相当無理してるみたいだね。

 

「箒ちゃんは?」

 

「箒ならクラスメイトと飯食いに行ったぜ」

 

「そかそか。箒ちゃんも友達沢山居るのには内心ホッとした~。 ──それでどーお? 2倍の重力は。1.5倍よりも体にくるでしょ~?」

 

「もう立ってるのもやっとってくらいキツイぜ。昨日までは何とか誤魔化しながら行動できたけど、今日は箒や千冬姉に心配されちまった」

 

「にしし、だって一夏兄が2倍の重力に掛かってるって知らないから当たり前だよ。それに本来ならこんなすぐに体が壊れる鍛え方は嫌なんだけどね~。時間もないのも理由の一つだけど、一夏兄はすっごいタフだからね!」

 

「そ、それは褒めてんのか?」

 

「褒めてる褒めてる! じゃないとこの重力作戦はしてないからね! うん、一夏兄も何とか元気そうだし、僕はそろそろ行くね!」

 

「おう。俺ももう寝るから、もし帰り際に箒と会ったらそう伝えててくれ」

 

「おっけー! そしたらまた明日ね、一夏兄!! おやすみ~!」

 

「おう、おやすみ!」

 

一夏兄に軽く手を振って僕は部屋を出た。

さーってと、僕もそろそろ──寝る前に部屋を片付けようかなぁ。

僕が掃除しても一日で散らかり放題になる部屋と今日も戦わなくちゃ!

 

 

 

 

 

一夏兄とオルコットさんがISバトルをする日がとうとう明日となった。

一夏兄曰く、今日まで全くと言っていいほどISの練習をしていないことに対して、仲良くなった人たちから箒ちゃんを筆頭に心配されてるらしい。

唯一皆の前で行動していることとすれば、ISに関しての勉強くらい?

──あと二時間くらいで就寝時間を迎える時間。

僕は今日もオルコットさんが練習してる訓練室に来た。

オルコットさんと約束した夜から、毎夜ここにオルコットさんと軽く談笑してるんだ!

少なくともファーストコンタクトよりは仲良くなった!

 

「いよいよ明日だね!」

 

「そうですわね。……貴方は勿論織斑一夏を応援するんでしょう?」

 

柔軟体操をしながらオルコットさんは言う。

ちなみにオルコットさんは僕のことは貴方としか呼んでくれない……。

やっぱりこれも含めて一夏兄には頑張ってもらわなくちゃ!

けど、

 

「にしし、普通はそうなるのかな? だけど僕は一夏兄、そしてオルコットさん。二人を同じだけ応援するよ!」

 

僕の回答にキョトンと初めて見る表情を浮かべながら、

 

「……なぜですの??」

 

「ん? そんなの簡単だよ! 一夏兄は僕の兄で、オルコットさんは僕の友達だから! 約束はまた別の話しだから。ね? 簡単でしょ?」

 

「──ふふ、貴方は本当に言葉では言い表せない、少なくとも生まれて今まで(わたくし)が出会ってきた人間とは違うような気がしますわ」

 

……今日はオルコットさんの初めてがたくさん見れる日だなぁ!

思わずちょっと見惚れちゃった、オルコットさんの笑顔!!

 

「それじゃあ、オルコットさん。僕はもう行くね!」

 

オルコットさんの返事を聞いて、僕は訓練室を出た。

明日は早いし、一夏兄にはメールで本番前のISスーツに着替えるときに呼んでって伝えてある!

それじゃあ、おやすみ~。

 

 

 

 

 

──それから、本番当日はあっという間の一日だった!

放課後まではいつも通りに過ごして、暫くしてから一夏兄から電話が掛かってきた。

ロッカールームに行くとちゃんと一夏兄はISスーツに着替えてる。

大観衆の前での初戦闘に緊張しているよりも、、2.5倍の重力を解いた一夏兄はめちゃくちゃ元気ハツラツ! やる気満々だった。

色々な原因が重なって、どうやらアドレナリンが爆発してるみたいだね。

その後はすぐに一夏兄たちのクラスの副担任、山田 真耶(やまだ まや)先生と箒ちゃんが一夏兄を呼びに来た。

僕も特等席での観戦に誘われたけど、このロッカールームにあるモニターからでも観戦できるからって断っちゃった!

そしてそして!!

二人のISバトルは圧巻の一言だった!!

オルコットさんは勿論、一夏兄も素人ではできない動きで戦ってたのを見て、千冬姉がISに乗ってた頃の動きと重なっちゃったなぁ~。

接戦の末、最後は一夏兄の一撃で勝負はついた!

アリーナで観戦してた人たちは皆立ち上がって拍手してたし、勝負が終わった後、少しだけ一夏兄とオルコットさん──セッシーは話してて握手してた!

うん! 最初から最後まで気持ちの良い勝負だったな~!

僕は最初に一夏兄のところに行ったけど、遠くから沢山の足音が聞こえたから逃げてきちゃった!

 

 

 

 

 

そして夜、さっきはビックリしたな~!

中学からの友達、鈴ちゃんと廊下で会ったからね。

話しを聞けば、この学園に転校してきたんだって!

懐かしい話しをしながら、学園の受付窓口にまで案内して今日はバイバイした。

一夏兄は明日改めて会いに行くとして、今日はセッシーに会いに行ってみた。

……確かこの部屋で合ってるよね?

僕の記憶を信じて、扉をノックノック!

 

「──はい、どちら様でしょう? ……って、“桜さん”?」

 

「こんばんわ! そして今日はお疲れ様、セッシー!!」

 

「ふふ、ありがとうございます。こんなところで立ち話しもアレですから、お部屋で話しましょう?」

 

「え、いいの? やった! お邪魔しまーす!」

 

セッシーに案内されて椅子に座り、その後は美味しい紅茶を淹れてもらったり、就寝時間までいっぱい喋った!

やっぱりこうやって新しい友達も出来るし、この学園に遊びに来て正解だったな~何て思いながらセッシーと別れて、千冬姉の部屋に戻って寝る間に幸せな気持ちに満たされながら、僕は眠りについた。

──意識が遠のくちょっと前に、千冬姉が優しく頭を撫でてくれてたような気がした。

 

 

 

 

 

 

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