ハクトウワシは正義を求める   作:ベルマッキャン

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基地の中にはブリタニアから出向している警備隊と憲兵隊。
各国から引き抜かれた整備兵。
事務担当の需品科、調理の主計科等男性もそれなりに居ます。
原作からしてそれくらいは居そうですから、でもそんなに出てきません。


501航空基地ちほー

西暦1939年、史実ならチェコスロバキアを飲み込んでナチスがポーランド侵攻。

集団的安全保障が発動され英仏が宣戦布告、1945年9月4日ミズーリ甲板に行われる降伏調印まで続く世界大戦が起こった年だ。

だがこの世界では異形の敵相手に二度目の大戦をする年となっていた。

そして結果として人類はやはりと言うかダンケルクで追い出され、ヨーロッパは殆ど陥落。

皮肉な事に史実なら陥落しているノルウェーや、のらりくらりシエスタして戦争を交わしたスペインは生き残っている。

だがペルシアやシリア方面から敵に雪崩れ込まれスエズ運河は陥落、イスタンブールやらバルカン半島は無茶苦茶になった。

 

それが今ハクトウワシ、私の居る世界だ。

 

 

MPと書かれた腕章と、白いヘルメットを着けたM3グリースガンを持った憲兵隊が通路に立つ。

 

「中佐の命令により関係者以外の立ち入りを禁じてます。」

 

そう憲兵は、ヘルメスの杖が書かれた救急品類の箱を持ったセーラー服の少女を去らさせる。

そんなやけにピリピリした雰囲気を漂わせている基地の一角を遠巻きに眺めつつ、金色の髪をした黒い制服を着た少女は呟く。

 

「なーにが起きてるんだろ」

 

だがそれも束の間、後ろから鬼の形相で首根っこを捕まれ出荷される家畜のような瞳をして連れていかれた。

 

 

そんな事が室外では起きているが、室内は想像より重い事態に包まれている。

気絶して眠っているハクトウワシを横目に、カーキ色の海軍軍服を着用した女性が言う。

 

「それで誰なんだろねーこの子」

 

彼女は空母エセックスの第211戦闘飛行隊隊長、デイジー・マッキャンベル中佐。

海軍航空隊として研修と、模擬戦闘をするため偶々501統合戦闘航空団に居た。

だが模擬戦闘をする直前、ブリテン沿岸のレーダーがエコー(機影)を捉え急行。

マッキャンベル中佐の隣で、航空救難隊の隊員が報告する。

 

「この子は軍人手帳、身分証、MPC(軍票)、手紙類等を一切携行しておりません。完全に不明です」

 

ハクトウワシが眠るベッドの隣には海洋迷彩が施された謎のストライカーが置かれている。

全くもって情報が無く、制服から見て恐らくリベリオンだと推察できる程度。

火器類の携行や、階級章や部隊章が無いことから特殊作戦部隊とも推測出来る。

 

「これは、何だか手に余る事態かも知れないわね...」

 

困惑しながら、赤い髪をした女性は片手で頭を掻いて対応を考える。

彼女はミーナ、この基地を預かる部隊長である。

あれこれ個性にまみれた面々を束ねる強くキツイ紐でもあり、時に恐ろしく時に優しく飴と鞭を切り替えれる将校でもある。

すると、ハクトウワシはうっすらと目を開ける。

そして皆の姿を見て、段々と口が開く。

 

「た...」

「「「た?」」」

 

文字通り君をもっともっと知りたい三人はグイッと視線を向ける。

ハクトウワシは、背筋に冷たい汗が流れる感覚を感じつつ叫んだ。

 

「食べないでください!!」

「「「食べないよ!?」」」

 

三人の驚愕の声がこだました。

 

 

一応の説明を終え、サーバル顔と化したハクトウワシが落ち着くまでミーナは電話を取る。

強いコネクションを各国に持っており、特殊作戦の為の諸国家統合の軍故に黒い人達の繋がりもある。

 

「へい」

 

かかってきた電話を、黒いセーターを着た男が取る。

彼はオズワルト・モズレー、タカ派の野党党首でもある。

 

「陛下、なんかミーナ中佐が正体の知れない不明ウィッチを拾って帰っちゃったらしいっす」

「あ、そう。SISで新しい経歴用意してやれ、植民地人にも一応伝えること」

 

三十代ほどに見える着こなしからして貴族染みた男がそう言うと、モズレーは新たな経歴を用意してくるので明日まで待ってほしいと伝える。

彼はジョージ六世、兄貴が愛に生きるとか言ってならなくて良かった筈の役職に就かされる羽目になったある意味悲劇的な名君である。

モズレーは伝えてことを報告しようとしたが、部屋から聞こえてくる「エリザベス?!陸戦ウィッチになるって本気か?!」と言う声を面倒事から脱走した。

 

 

ハクトウワシは困惑し、狼狽しつつも受け入れる以外道がないことを理解した。

そして、恐らく自分が戻れる確率は0に限りなく近く、帰れるか帰れないかで言えば帰れないがオッズが大きいことも理解した。

そう思うと、幾本かの液体が頬を伝っていくのを感じ、静かに、かつ俯いて喋る。

 

「すこし、一人にさせて下さい」

「...えぇ」

 

ミーナはそう言って部屋を出る。

憲兵の敬礼に答礼し、基地司令官室に戻っていると、マッキャンベル中佐は小さな声で言う。

 

「...あのストライカーやけにピッカピカだったなあ、おかしくないか?」

「発言は正確に端的に」

「特殊隠密部隊にしては綺麗過ぎる、色々とね、アイツもしかして企業の試験機ウィッチじゃないの?」

「社員証も財布も通達も出さないで?あり得るかしら」

 

ソレを言われると確かにそれもそうだとマッキャンベル中佐は自身を待ってる部下達に戻っていった。

ミーナ中佐はマッキャンベル中佐よりは事態を悲観的に見ておらず、むしろ楽観視に近く捉えていた。

どうせ何処かの秘密の多いところのお嬢さんが...。

だが歩みを止め、少し考えを戻してみる。

ハクトウワシの生えている羽根と、戻すときにお尻の方から生えていた羽毛、魔力無しであんなになる人は居なかった。

 

「あっ」

「どうした家の鍵を閉め忘れたみたいな顔して」

 

そうミーナを、白い海軍軍服に旧スクを着た女性が笑って言う。

彼女は坂本美緒、これでも海軍航空隊の精鋭として多数の戦果を上げ親閲を受けた事さえある。

ここでは気軽に相談出来る頼れる橋渡し役を引き受けているので、当然基地司令官であるミーナとは関係は親密であった。

...343航空隊と他の航空隊の確執や縦割りを起こす軍隊が異常なのだが。

 

「いえ、今日救難した娘がね...カバー(経歴)の手配はしてあるのだけど」

「あぁ、しかし妙な奴だ、やけに魔力消費が少ないから最初びっくりしたぞ」

 

対抗相手、つまり敵役を何故か飛び入りしてきたペリーヌと共に引き受け、演習をしているとゆっくりと降下し直線でかつ一人のウィッチがいた。

ACM(空中戦闘機動)として落第点、いや懲罰すらあり得るような奴だと思い近づくと魔力の反応が薄く目を閉じており気絶したかと思い緊急通報。

マッキャンベル中佐が自分の部下がやらかしたと思い込みまっしぐらに突っ走り救難機を連れて美緒がきたのである。

ミーナは先ほどの考えを思い返しつつ、案外とんでも無いものを迎え入れたかもと不安が過るも、笑って言う。

 

「私は基地司令よ、なーに色物新人は彼女だけじゃないわ」

 

そう言うと同時に、救難隊員の「宮藤軍曹がまたやらかしました!」の声を聞く。

二人は頭を掻きつつ偶然にも同じことを思った。

 

そろそろこの仕事辞めようかなぁ。

 

 

ハクトウワシは涙を拭い、じっとハシビロコウのように前を見つめる。

白い壁は何も答えず、ハクトウワシは意を決して立ち上がる。

うんっと背筋を伸ばし、窓の外を見てみると「連続歩調ーっ」の声と共にエンフィールド小銃を持ってマラソンをしている皿型ヘルメットの兵士達が走っていた。

辺りは湖か海らしく、水が広がっていて美しい。

おとぎ話のお城のようで、沈んでいた心が少し浮き上がった。

 

「えーと」

 

英語はちゃんと読めるハクトウワシは新聞があるのを見つけ、手にとって見る。

くすんでいたりする事から結構前の新聞であることを理解し、内容をざっと飛ばし飛ばしで見ていく。

"ネウロイユーラシア方面軍北アフリカに攻撃激化!人類司令部サルゥームへ後退"と書かれており、二面には"ウイグル・チベットが扶桑と軍事同盟"と書かれていた。

扶桑と言うのが日本に辺り、ブリテンにあたるのがブリタニアで、アメリカにあたるのがリベリオンとか言う国らしい。

リベリオン、Vフォーヴェンデッダとかガンカタ?。

ハクトウワシは職員さんと一緒に見た映画を思い出したが、コレジャナイと思って脇においておく。

戦争はかれこれ五年以上らしいが、最前線の住民や国家は疲れきっているらしい。

スオムス、多分フィンランドにあたる国では産業が徴兵によって伸びるどころか低迷、足元見て高値で資源売り付ける企業までいるらしい。

なんでも国民の2割動員し、GDPの軍備への割合がキツイらしい。

三割が限界で越えると国家崩壊であると何かで見たハクトウワシは世界は敵が違うだけで苦労するのは変わらない事を理解した。

ちょっと違うだけで楽に行くわけないのだ。

 

「苦労していますねこの世界でも」

 

そう思ってページを読み進める。

オラーシャ、ロシアにあたるらしい国で"ペテルブルグ包囲解囲作戦"が行われ第5号パショーロクが奪還、キーロフ鉄道が繋がりムルマンスクとアルハンゲリスクから補給が繋がったらしい。

ただ死者数は触れておらず検閲が入った事が察せれた。

軍本部は「スモレンスクやモスクワ解放は未だに遠い」と言いつつ大きな勝利と報じている。

 

「ノルマンディーは...勝てるのかなあ」

 

史実ではセメントすらろくにどうこう出来ず足並み千鳥足な枢軸が勝てる見込みは無いが、異形の敵は統制され確固たる指揮を命じられて忠実に動く。

三か国よって文殊の知恵どころか内部ゲパルトな人類国家連合が勝てるのだろうか。

何処か他人事な気分であることに気付き、ハクトウワシは何でだろうと考えてみる。

その時だった、唸るサイレンとマイクからの音声が鳴り響く。

 

『空襲警戒警報発令!!空襲警戒警報発令!!』

 

ハクトウワシは本棚の上に置かれたラジオを点け、FMラジオを聴いてみる。

恐らく中年の、仕事に慣れている様子の男性の声が聞こえてくる。

 

『防空司令部発表!、本日12月8日、午前11時に空襲警戒警報が発令されました。

ブレスト方面より侵攻中であり推定攻撃目標はロンドン、ロンドン一帯には空襲避難勧告が発令されました。

慌てずホームガードとスコットランドヤードの誘導に従い地下鉄か防空壕に退避して下さい。

屋外は高射砲の彈片や流れ弾、地上掃射に身を晒す事になって非常に危険です!絶対に退避して下さい!

この放送は3分おきに再放送致します!』

 

放送が終わると同時に憲兵が扉の鍵を外し敬礼して言う。

 

「空襲警戒警報が出ました、一応御退避願います」

「えっ、あっ、はい」

 

一応答礼すると、憲兵は微笑んで言う。

 

「敬礼は右手です」

「あっ」

 

顔を赤くするハクトウワシが退室する後ろで、整備兵らしい油と汗の匂い漂う兵士達がストライカーと言う謎の何かを運び出していく。

外の高射砲陣地に人が入り出し、仰角が調整されていく。

移動していると基地内の放送で「ウィッチ隊はB(ベイカー)A(アポストロフィ)12に急行せよ」の声が聞こえる。

基地内の施設を出て、ベトン製の防空壕に入る直前、ハクトウワシは鉄の(ストライカー)を履いて飛ぶ魔女(ウィッチ)を見た。

 

 

 

 

 

 

 




次回「くうせん」お楽しみに。

ー劇中の史実ネター

「エリザベス王女」

実は日英には王族に兵役の義務があります。
ジョージ六世は海軍に居ましたし、現皇太子チャールズ氏はアパッチのガンナーです。
敗戦のせいで日本では無くなりましたが女子でも英国はあの手この手でそれを行い、
史実では戦車整備士としてクロムウェル戦車とかを整備していました。
実はエリザベス氏は結構お転婆な人だったのかも知れませんね。

日本の皇族軍人軒並みスキル高いからだいすき(hoi)。
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