ワンサマーとプレデター(リメイク) 作:噛ませ犬
「うっひゃあ〜〜何時見てもかっこいいなおい!?」
二日後、此所は東京にある、とある動物園――今日は休日なのと、昼間なのか沢山の物が来園しており、家族連れ、カップルや一人で来る者が見受けられる。
そんな中、ある者達も来ている――一夏、隼人、止の三人である。彼等は前日、伊豆諸島に降り立った際、村にある港で、本州を行き来する船に無断で乗り込み、本州へと来たのだ。
装備はガントレットを操作して隠す様に消し、ガントレットは右袖で隠している。動物園に来たのは、止が動物を見たいと言い出し、動物園へと来たのだ。
言い出しっぺであり、肝心の止は今、檻の中にいる動物、虎を見て興奮している。止だけではない、他の者達も虎を見て興奮する子供達、静かに楽観している者達も居た。
虎は檻の向こうにいる者達を見て唸り声を上げるが堪忍袋の緒が切れたのか、咆哮を上げる――肉食動物としての、二つ名を持つ獣としての威厳を保つ為だろう。
効果はあったのか泣き始める子供やたじろぐ者達は少なからずいて、中には少し驚いた者や逆に興奮する者達もいる。
「わぉっ! 咆哮上げたぞあれ!? やっぱり密林の殺し屋と言うだけであって威厳ありまくりじゃねえか!」
止は興奮する者であった――彼は子供の様に嬉しそうであったが彼は自分の気持ちや感情を曝け出している。
――子供か、コイツは? ――。近くにいた隼人は呆れて溜め息を吐きながら頭を抱え、一夏は無言で虎を見続けていた。
彼等は其々違う事を考えている。止は無邪気に興奮し、隼人は何故此所に来たのかを疑問に思い、一夏は単に虎を見続けている。
が、彼等は互いを信頼し合っている事に変わりはなく、偽りでもない。三人で虎を見ているのは集団行動と言う意味でも行動している。
「ふぅ……隼人、済まないが俺は手洗いに」
一夏が言うと、隼人は「ああ」と頷き、一夏は踵を返し、トイレがある場所へと向かう。後ろから止の興奮する声が聞こえるが一夏は背中で受け止めつつその場を離れた。
数分後、一夏はトイレから出て来ると、隼人と止を合流すべく、歩き始める。
彼は不意に周りを見た。周りには家族連れやカップルは当たり前として、兄妹なのか二人の良く似た男の子と女の子が目に入る。
何方も仲良しだが男の子の手にはチョコレートらしき物があり、男の子は袋を破いている――一枚の板チョコの半分が姿を見せる。
刹那、男の子はチョコの端を掴み、二つに折った――チョコは二枚になった物の、片方は少し小さい――もう片方は大きい物の、男の子は大きい方を妹に渡した。
妹は喜んでいるが男の子は妹を見て笑っていた。誰から見ても仲睦まじい――二人は仲良しであるが時には喧嘩するかも知れない。
喧嘩と言っても仲が良い証拠であり、仲良しでも時にはぶつかる事もしなければならない――良い思い出の一つとしても作る意味もあった。
そんな仲の良さそうな兄妹を見た一夏は微笑んではいなかった――内心は喜んでいる物のそれを顔には出せないでいる。
微笑ましい兄の優しさや、妹の無邪気な喜びに頬を緩める事は出来ない――冬捉えられるのも無理はない――何故なら一夏は……。
――きゃっ! ――。一夏は横から誰かとぶつかる。一夏はぶつかった事に驚きはしなかった物の、ぶつかった者を見る。
自分とは同い年であろう可愛らしく綺麗な少女であった。透き通るような空色の長い髪で外側にピョンと跳ねており、紅い瞳が特徴的な美少女。
黄色のブラウスを着て、白の上着を羽織り、白のスカートを穿き、黒いストッキングに白い靴を履いている。
白を基準としつつ、黄色と黒を足している様にも思えた。
「あっ、ごめんなさい――怪我はない?」
少女は一夏に対して申し訳ない様に一夏に謝る。
「怪我はない――それよりもどうした? 何か急いでいるのか?」
「えっ、ええ……ちょっと考え事をしていたの――それじゃあね」
少女はそう言うと、その場を歩きながら去っていく。そんな少女の後ろ姿を一夏は無言で見ていた――何処か寂しそうにも思えた。
身内か友達、或いは仕事――そう感じていた。すると、一夏は、ある事に気付く。
――まさか……――。一夏は何かを察知し、懐を探る――お金はあった。
「スリじゃなかったな……」
一夏は溜め息を吐く。ぶつかって来たとなれば、また小走りで去っていったとなれば、スリとしか思わない。
一夏はそう思って懐を探ったのだ。お金はあった為に問題はなかった。まあ、こんな場所でスリをするのは恰好の場所であるのと、沢山の人がいたら誰がスリをしたかなんて判らないだろう。
――あのぉ……――。刹那、人の声が聞こえ、一夏は声がした方へと振り返る――家族連れであるのか男性と女性、小さな子供がいた。
声を掛けてきたのは男性だが一夏は「何でしょうか?」と訊ね返す。
「これ、貴方のですか?」
男性はある物を一夏に差し出す――ピンク色の細長い財布であった。一夏はそれを見て自分のではない事に気付き答えようとした。
「あれ……これってまさか……」
一夏は何かに気付き、振り返る――少女は既にいなかった――見当たらない。財布は少女の者かも知れないと思った。一夏は溜め息を吐くが再び男性の方を見ると、こう、言った。
「それは俺のじゃないけど――落とした人に心当たりありますがね……」
少し経った後、此所は動物園の少し奥の室内であり、一番人気かつ、休日なのか衰えを見せないように沢山の人々に見られている、中国から来た動物、パンダのコーナー。
そこは強化ガラスが張られており、ガラスの向こうには二頭のパンダがいた。何方も性別は違うにも拘らず見た目も大きさも全く同じであり、見分けがつかない――それだけでなく、パンダがいる庭には竹が茂り、遊び用のタイヤが置かれている。
片方は竹の葉を美味しそうに貪り、もう片方はタイヤを使って遊んでいる。誰から見ても楽しそうかつ、癒しを与えている様にも思える。
パンダであるのと、その仕草や行動が可愛かったのか周りはキャアキャアとはしゃいでいる。可愛いね、可愛い――そう言った同じ様にも思える声が耳に入る。
――はぁ……。――。周りが喜びを隠せない中、一人だけ溜め息を吐く者がいた――さっき、一夏とぶつかった少女である。
彼女はガラスの向こう側にいる二頭のパンダを見て複雑な気分に教われ、嫉妬と羨ましいと言った感情が孕んでいる視線をパンダへと向けている。
彼女はパンダを見てある事を呟く。――簪ちゃんを誘えば良かったな……――。少女は後悔そうに呟く。
簪とは彼女の妹であり、彼女が一番大切な妹でもあった。が、その妹とは少しギクシャクしている――原因は自分にあり、彼女を心ない言葉で傷付けてしまった。
妹から見ればショックであり、自分もそんなことを言ってしまった事にも後悔している。
出来れば誘いたいが妹は自分とは話をしないし、自分も話しかける事は出来なかった――すればすればで余計にややこしくし、更に悪化を辿る。
少女はそう思いながらも二頭のパンダに嫉妬や羨ましいのは、二頭は双子であるのと、仲が良い事に、そう言った感情を向けてしまった。
――自分は何故パンダなんかに嫉妬しているのだろう? ――少女は自分に疑問を投げ掛ける様に訊ねるが自分自身に訊ねても意味はない。
少女は溜め息を吐くと、懐に違和感を感じ、懐を探る――少女は懐からある物を取り出しす――水色のスマートフォンだった。
さっきの違和感の正体は振動音であった――が、少女は画面に映っている文字を見て瞠目した。
――『仕事』――そう白く、その二文字の漢字が映っていた――。それは彼女への命令と、課せられた宿命でもある。
別にいやらしい仕事ではない――同じ意味でもあるが少女はその場を離れる様に小走りで、室内を出て、人気のない場所へと向かう。
――あれは……? ――。
しかし、自分の姿を一夏に見られている事には、彼女は気付かなかった。
そして一夏は、何処かへと向かう少女の後を従いていくように少し遅めに小走りで追いかけた。
次回、再びの出逢いと少女を超える者。