ワンサマーとプレデター(リメイク) 作:噛ませ犬
――ふぅ……――。その頃、隼人と止は休憩と言う意味で園内にある休憩所に設けられた席で向かい合う様に座りながら間食を摂っていた――と言うよりも止だけであり、隼人はとを見て溜め息と共に呆れていた。
止は、この休憩所にあり、昼食も間食が摂れる意味で動物園側が決め、設けられた屋台で何かを注文したのである――注文したのは、甘〜いソフトクリームで、隼人は注文はした物の、ソフトドリンクであった。
周りには人がいる物の、彼等は周りに眼中はなく、赤の他人である為、気にもしていない――訳ではなかった――止はソフトクリームを食べる手を止め、辺りを見渡しながらある事を呟く。
「それにしても、一夏の奴遅いな〜〜もしかして大きい方?」
止は何となく言う――止は一夏がお手洗いに言った事は隼人から聞いた為に知ってる物の、心配していた――逆に隼人は止を見て再び呆れる。
止の言い方は何処か彼なりの気遣いを感じ、何処か失礼である。大きい方と言ったらあれを想像してしまうし、此所は他にも昼食か間食を摂っている者達もいる。
そんなエチケットも守れず、御法度的な発言はタブーである。それを止は平気と言ってのけたのだ――隼人は呆れつつも話題を変える意味で止に訊く。
「それよりも止、何故動物園を選んだ?」
「えっ何が?」
止はキョトンとするものの、隼人は頬杖を突く。
「だから動物園だよ? 俺達は何で動物園に来なければならなかったんだよ?」
隼人の心は疑問だらけであった。動物園は別に行くつもりはなかった――当初、そう言う予定はない上、遠足に来た訳でもない。
此所を隠れ家にするつもりもない上、こんな場所で奴等と殺り合い、凄惨な場所へと変えたくもない――此所は人々が、特に子供達が動物と触れ合う大切な場所であり、憩いの場だ。
隼人は内心そう思いながらも敢えて教えず、敢えて止に動物園の事を訊ねた。もう一つ、止が動物園に来たい理由も訊いてない。
「それは隼人……」
止はキョトンとした後、ソフトクリームを軽く食べる――少し後、止は訳を簡潔に述べた。
「あんな他所の場所で三年間、変な奴等を相手にしたし、動物園に来たかったのは、目の保養と言う意味で来たかったんだぜ?」
止の言葉に隼人は「ハッ?」と惚ける。刹那、止は哀しそうに笑い、付け足しと言う意味でも説明した。
「此所に来れば、動物と触れ合えばアイツが、一夏が笑うかな〜って思ったからよ……」
「えっ……簪ちゃんが!?」
此所は動物園のお手洗いの裏側にある壁、そこは人がいそうにない場所であるが一人の少女が手に持ってるスマートフォンを耳に当てながら驚愕していた。
その内容は少女にとって辛く、この世の終わりとも思える内容でもあった。最愛の妹が誘拐された――少女にとってかけがえのない妹が攫われた事は少女を充分に驚かせる事と、恐ろしい事をも与えている。
「それで簪ちゃんは……そう、簪ちゃんを誘拐した奴等は簪ちゃん誘拐したのは、私への報復ね……そう、今夜七時、私一人で横浜の港の第二倉庫へ……そう、判ったわ……大丈夫よ、私一人で行くわ――私が蒔いた種よ……怨みを買われるのは至極当然――大丈夫、お父さんとお母さんには私が行くと伝えといて、大丈夫よ……後は私に任せて、其方はお父さん達を頼むねわ、
少女はそう言うと、スマートフォンの画面の通話終了の意味でもある受話器を指でタップして通話を無理矢理終了した。
「……簪ちゃん」
少女の表情に影が差す――少女はそのまま膝を抱く様に座る――刹那、少女は目に涙を浮かべ、涙は少女の頬を伝う。
少女は泣いた――自分の大切な、最愛な妹が自分のせいで攫われた。少女から見れば自分が蒔いた種であるのと、妹を巻き込んでしまった事への後悔。
何れ因果応報とも言うべき事が起きると危惧していたが正に現実となり、妹が巻き込まれると言う出来事が発生した。
これには流石の自分も反省と、妹が死ぬ危険をも想像してしまう――いくら仕事の為とは言え、此方の世界には入れたくなかった――妹には青春を謳歌して欲しい――そう願っていた。
仲直りしたいのも事実であるが、手伝いたいと言い出しそうであった為、傷付けてしまったのだ。
「ごめんね簪ちゃん……ごめんね……!」
少女は泣いた――誰にも見せる事もない、少女の本当の気持ち――普段は凛と振る舞っているが彼女もまた一人の女の子だ。
泣きたい時は泣きたいのだ――しかし、誰も慰める事は出来ない。場所が場所であるのと、少女の誰にも見せたくない我が儘があったのかもしれない。
――何を泣いてんだ? ――。刹那、横から声が聞こえ、少女は泣きながら目を見開くと、声がした方を見る。そこには一人の青年が壁にも凭れ掛かりながら腕を組んでいた。
――っ!? ――。少女は泣きながら立ち上がる――否、少女は彼が、一夏が近くにいた事に気付かなかった――近くには人の気配どころか、察知出来なかった。
少女は彼、一夏がいた事に未だ驚いているが無理もない――彼は、一夏は少女を追いかけたものの、気付かれる心配があった為に、右腕に付けてるコンピューターガントレットで躰を透明にし、少女に近づき、少女がスマートフォンの向こう側にいる者との通話を終えるまで、聞いていた。
少女が通話を終えると同時に少し後に透明を止める形で姿を現したのである。少女が驚いているのを他所に彼は、一夏は冷静であった。
彼は無表情であり、少女とは目を合わせてはいないものの、内心、この件に関しては怒りを覚えていた。いくら少女のせいとは言え、関係ない身内を巻き込むのはどうかしている。
彼はそう感じていたが少女の言っていた『簪ちゃん』と言う者を、あの時の自分と重ねて見えていた。あの時の自分は……。
――ねぇ!? ――。少女が一夏に訊ねる、彼は何かを思い出す前に訊ねられた為に思い出すのを止め、一夏は視線を少女の方に向ける。
少女は涙は残ってるものの何処か心配そうで、何処か困惑していた。
「ねぇ、何時から居たの? それに貴方はさっきの……どうして!?」
少女は一夏がさっきぶつかった者と気付くが通話の一部を聞かれたのかと心配していた。聞かれたとなると、警察を呼ばれ、簪の命が危うい――少女は妹を心配と共に、一夏に聞かれた事にも困惑していた。
少女の言葉に一夏は何も言わず、壁から離れ、少女を見る――無表情のままが少女から見たら警戒され、一歩後退りされたが彼は左手を懐に入れる。
――っ!? ――。少女は警戒し身構えるが一夏は懐からある物を取り出し、それを少女に差し出す――ピンク色の細長い財布であった。
その財布はさっき一夏が男性に財布の持ち主ではないかと拾い、一夏に訊ねた物である。そう、一夏が少女を追いかけたのも、財布を届ける為でもあった。
「それは私の財布? まさか!?」
少女は一夏が持ってる財布を見てある事に気付き、慌ててズボンや懐を探る――無かった――鍵やスマートフォンはある物の、財布は無かったのだ。
まさかあの時、彼とぶつかった時に落としてのでは? ――少女はそう気付いたのと共に戦慄した。まさか彼は、一夏が自分の財布を持っているのは……。
「ま、まさか財布を届ける為に、私を捜してたの?」
少女は恐る恐る訊ねると、彼、一夏は無言で頷いた。彼の仕草を見た楯無は戦慄し、後悔する。
まさか彼は、自分が落とした財布を届ける為に自分を捜していたのか? ――だとせれば自分の通話も聞いていたのでは? 少女は彼に、一夏に正体を知られたのでではないかと後悔と恐怖した。
もし聞かれたとなれば、彼はどうするつもりなのだろうか? 自分を脅す? 何をするかは判らないのと、彼が誰にも言わないと約束してくれるのかも判らない。
少女は何も言えない中、一夏は少女を無言で見ていた。無表情である為に何処か怖い――しかし、彼の心の中までは判らないだろう。彼が何を考え、何を思っているのかは誰にも判らない――判るとすれば極一部の者達だけだろう。
刹那、一夏は少女に対し、訊く。
「どうした? 妹が誰かに攫われたのか?」
彼の言葉に少女は「っ!?」と驚きを隠せない――聞かれていた――彼に、一夏に通話のやり取りを聞かれてしまった事に。
少女は驚く中、一夏は少女を無言で見ていた――それは彼自身も妹が誘拐されている事に怒りと、簪と言う妹の安否を気にしている事を、少女は知らなかった……。
未だ動物園の園内に人々の声が微かに耳に入る中、二人の間は沈黙が流れ、何方も会話どころか、そう言った雰囲気ではなかった……。
次回、後戻り出来ぬ選択とこれから起きる後悔