ワンサマーとプレデター(リメイク)   作:噛ませ犬

6 / 6
第6話

「あ、ぁぁぁ……」

 

 此所は第二倉庫――そして少女は今、目の前に広がる惨劇に言葉を詰まらせ、躰を震わせていた。目の前には一人の青年が立っている。彼の近くには三人の男達と一人の女性が倒れていて、彼の足下には一本の注射器に一つの壊れているビデオカメラが落ちていた。

 倒れている――と言うよりも、彼等は既に死んでいた。男達の内、一人は後ろから刺されたのか口内がグチャグチャにっており、一人はお腹を斬られ、同時に腸を引きずり出されており、最後の一人は首から上は無い――首から上であった物は男の近くに落ちており脳みそらしき物が顔をのぞかせる様に、生卵の様に辺りに飛び散っている。

 女性は、少し先に倒れているが躰中、ネットの様な物で絡まれており、ネットの様な物で命を落としていた――女性の命とも言える顔には網状の傷が出来ており、服の至る所には切り傷の様な物が出来ていた――女性の手には拳銃が握られていた。

 地面には男性達の物であろう血が飛び散っており、男達の近くには微かに血の海が出来ている――誰から見ても、どう見ても男達の物と判断出来る。

 惨劇――誰もが口を揃えて言うだろう。吐き気を催し、鼻が突く程の死臭が男達の間に充満するだろう――しかし、少女は吐き気よりも怯えながら青年を見ていた。

 彼は全身黒で統一された服とズボンに、腹や四肢の一部が露出している錆びた様な鋼色の禍々しい防具を着けているが男達の物であろう血が微かに付着しており、腰周りや左脹ら脛には武器を携え、右手には槍らしき武器を握っている。

 顔には口元が複雑なマスクを着けているが仮面の下はどんな容貌をしているのと同時に想像力を膨らませる――否、少女は彼が、マスクを着けている青年を知っていた。

 彼に何かを言いたかったが後悔していた――彼を、自分達のいざこざに巻き込ませ、人殺しにさせてしまった事に。

 少女は目に涙を溜める――一生償いきれぬ後悔、一生背負わなければならない十字架を彼に背負わせてしまった。いくら自分が蒔いた種とは言え、殺せとは言ってない。

 しかし、後の祭りだ――自分は彼を止める事は出来なかった――両手を縛られ、ISは奪われてしまったのと、近くには躰の自由を縄で奪われた最愛の妹、簪が気を失っている。

 彼の殺戮劇を目に焼き付けてしまった事で――否、途中で気を失ってしまった。彼の行動に耐えられなかったのだろう――簪はまだ十五であり、生で見る殺人劇には耐えられなかったのだろう――幸いな事かも知れない。

 一方、少女は、顔が口元が複雑なマスクを着けている彼を見据える。

 彼は――否、少女は誰かは気付いていた。――い、一夏君……? ――。少女は涙を浮かべながら彼、一夏に訊ねる。

 

「…………」

 

 一夏は何も言わなかった。彼はマスクを着けているが俯いていた。彼がどんな表情をしているのかは判らない――マスクを着けているのは当たり前として、少女から見ればだった。

 彼はマスクを着けていながらも無表情である――怒り、憎しみと言った感情を吐き出す形で見せる事はしなかった――否、彼自身、それが出来なかった。

 しかし、彼は怒っていた――男達が少女を妹の目の前で犯し、薬漬けかつカメラで撮影しょうとしていた事に。

 少女だって女性であり、妹の目の前で犯される事は心に傷を負わせる行動にも等しい。彼は、一夏はそれを許せなかった。

 公開処刑にも等しい卑猥な、愚劣な行為――怒りしか沸かなく、後悔さえも一夏には無かった。彼は既に冷酷な人間にも等しいだろう――が、微かに人としての情は残っており、優しさも残っていた。

 少女を助ける為にではない――人としての報いを受ける為にも殺したのであった。そこで残された物は虚しいだけかもしれない――彼にはそう言った感情は無いのは当たり前だろう。

 

「い、一夏君……ね、ねぇ?」

「…………」

「ね、ねぇ……い、イヤァァァァァァ――――――っ!!!!」

 

 少女は後悔し、泣き叫んだ――後悔――そう言った感情を吐き出す形で叫んだのである。

 そして倉庫内で彼女の叫び声が木霊した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少し戻って三十分前――此所は横浜の港にあるり、幾つもある倉庫がある場所。今の時間帯は夜七時前であり、辺りには人は居ない――訳ではなかった。

 そこには一人の少女がいた。外側に跳ねた空色の長い髪に紅い瞳の少女――黄色のブラウスに白の上着を羽織り、白のスカートに黒のストッキングを穿いている。

 少女は昼間、動物園にいて、虚と言う者から妹が誘拐された事を聞かされ、妹を誘拐したであろう者から、一人で横浜の港の第二倉庫に来るよう言われたのである。

 ――簪ちゃん……――。少女は簪と言う少女の名を呟く。

それは少女の妹であり、最愛な、大切な妹である。少女から見れば誘拐された事は、哀しみと誘拐犯に怒りをも沸かせる。

 現に少女の表女は怒りが沸きながらも何処か心配そうであった。妹が無事であって欲しい――そう願っていた。

 少女は第二倉庫がある場所まで歩いていた。人の気配は少女以外無いものの、波の打つ音が聴こえ、潮風が吹き、少女の肌や髪、服を撫でる。

 少女を向かい入れている様にも思え、少女に何かを訴えかけている様にも感じられる。

 ――大丈夫なの、楯無さん? ――。そんな少女を数十メートル離れた倉庫の屋根にいる者達がいた。一夏、隼人、止の三人であった。

 彼等は少女――楯無と言う者の後を尾けていた――と言うよりも、彼女に力を貸す為に、簪救出作戦に参加していた。

 作戦と言っても、この指揮を執っているのは楯無であるのと同時に一夏が指揮を執ってると言っても過言ではない――が、隼人と止も参加しているのには理由があった。

 彼等は一夏の命を受け、参加する事になったのだ。最初は隼人は反発した物の、止は身内の誘拐事件と聞いて胸糞悪いのと同時に自分と同じ境遇をも感じていたのだ。

 二人を紹介したのは自分だけで行動すると二人に迷惑が掛かるのと、単独行動は却って危険を伴うからであった。

 勿論、自己紹介は済ませており、彼女は自分の名は更識楯無――一夏は織斑一夏、止は霧崎止――そして隼人は苗字は無いが一応、湯谷隼人と自己紹介したのである。

 彼等は今、屋根の上にいるものの、一夏は右腕に付けているコンピューターガントレットを見ていた――と言っても、この港全体を見渡す事が出来る映像を見ている。

 映像には倉庫と言う建物は元より、人の気配さえも分かる様に動く者を感知する機能まで携わっていた。映像に映っている建物等は青く、人等は体温を映し出す様に赤外線で見るようになっていた。

 一夏は今、建物ではなく、倉庫に向かって歩いている者、楯無を見ていた。

 

「アイツは大丈夫だよ……多分、な」

「ねぇ一夏、その言葉、逆に心配するんだけど?」

 

 一夏の言葉に止は苦笑いする。そんな二人に近くで、両手を後ろの頭に当てながら寝そべっていた隼人が口を開く。

 

「まあいい――それにあの女が殺されようが、俺等には関係ない」

「ちょっ隼人!? そう言っちゃ可哀想だよ!? それに楯無さんは簪さんを心配して一人で何とかしょうとしたんだよ!? 人として……」

 

 刹那、隼人は止を見る――吊り目だが鋭い眼差しを止に向けている。――っ!? ――。止は隼人を見てたじろぐが直ぐに一夏の後ろに隠れる。

 

「ご、ごめん隼人! ごめんって! 別に悪気で言った訳じゃないから!」

「…………」

「ごめんって! そんな目で俺を見ないで! ねぇ一夏、何とか言ってよ!?」

 

 止は一夏に助けを求める。しかし、一夏は右腕に着けているコンピューターガントレットの上にあり、映し出されている映像を見続けていたが彼は楯無が向かっている第二倉庫の方へと移動させる為に操作する。

 映像は第二倉庫へと移動する様に動くが、倉庫内には誰かが居た。五、六人はいるが縄で縛られている者が一人に、女性らしき物が二人、男性は三人――どう見ても誘拐犯は複数である事を知った。

 が、一夏は不意にコンピューターガントレットを操作する――刹那、映像は第二倉庫の中にいる者達の方へと移動した。

 一夏は操作を続けるも彼は倉庫に居る者達を睨む――一夏は彼等が何かを持っていないかを警戒していた――刹那、映像が切り替わる――

映像は赤くなっていたが彼等も赤くなっていた――腰には何かを持っていた。

 ――これは……――。一夏は彼等の持っている物を見て呟く。刹那、彼等が右腕に着けているコンピューターガントレットから警告音が響く。

 ――つ!? ――。一夏は無表情だが驚き、止は突然驚き、隼人は起き上がると冷静にコンピューターガントレットを見ていた。

 

 コンピューターガントレットは警告音を鳴らし続けるが、それは奴等が近くにいる事を意味していた。

 そしてそれは、一夏達がエルダーに言われ、倒すべき奴等が近くにいる事をも意味していた……。

 

 

 




 次回、惨劇の狂宴の始まり
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。