約束を守るためにダンジョンに潜るのは間違っているだろうか 作:レフィクラ
「―――お願いします、雑用でもなんでもやります。どうか僕を【ファミリア】に入れて下さい!」
それは本当に偶然。
気の向くままにオラリオを散策していた一人の女神がふと聞こえてきた必死な声に足を止めた。
その名はロキ―――この迷宮都市オラリオで誰もが知っている都市最大派閥の一角【ロキ・ファミリア】の主神である。
(ん? なんやあの子? えらい懸命にお願いしとんな~)
黄昏時を思わせる朱色の髪に端麗な顔立ち。細目がちな瞳のロキの視線の先には一人のヒューマンの少年の姿があった。
白髪に
「はっ、笑わせる。貴様のような田舎者を誇りある我ら【アポロン・ファミリア】に入団させるわけがなかろう」
「っ! お、お願いします……どうか―――」
「黙れ、貴様のような弱者など必要ない。栄光あるアポロン様の名に泥を塗るだけだ。身の程をわきまえろ三下が」
「っ……」
「理解したのなら早急に去れ。ここは貴様のような者が居ていい場所ではない」
「す、すいませんでした……」
だが、結果は見事なまでに惨敗。入団試験すら受けさせてもらえず少年は門前払いを受けていた。
(あちゃ~。今のは中々に辛烈やったな~。あの子大丈夫やろか?)
寂しそうに歩く少年の背中を見つめながらロキはそのようなことを思っていた。
たしかに【ファミリア】は多少なりとも戦闘や専門職に心得がある人材を優先させる傾向が多い。己が所属する【ファミリア】をより良きものにしようと、すべてが一からの初心者よりも、なにかしら持っている経験者を優先させるのは仕方がないことであろう。
―――が、中には今のようにいきすぎた事例が数多く存在することもまた事実だ。いくら自らが所属する【ファミリア】の主神の為とはいえ、皆等しく可能性がある子供達に入団試験などのチャンスすら与えない。その行為は自ら眷族……子ども達を見い出すロキにとって面白いものではなかった。
―――ぱんっ、ぱんっ!
「よしっ! 次だ次! 幸いエイナさんから貰ったダンジョン探索専門の【ファミリア】一覧表がある。エイナさんが印をつけてくれた初心者でも入れてもらえそうな【ファミリア】から片っ端にいくぞ! このくらいでめげたりするもんか!」
しかし、ロキの予想よりもずっと早く少年は立ち直った。大抵の初心者の子ならば、普通あれほど滅多打ちに言われればしばらくは落ち込み続けてしまうものだが少年は違った。己の頬に両手で活を入れるとすぐさま次の行動を開始し始めたのだ。
(へぇ……ええガッツやん。ちょっと興味でてきたわ)
その少年の行動力にロキは少しばかし興味をもった。とりあえず跡をつけてみる程度には。
一定間隔で見つからないように、建物の小影にさっと身を隠したり、時には道行く歩行者を装ったりと、様々な方法で少年の跡をつけていく。
「すまない。今うちの【ファミリア】は団員を募集してないんだ」
「そうですか……失礼しました」
気が付けば、十以上の【ファミリア】に入団を断られる少年の姿をロキは見続けていた。
(……なにがそこまで自分を駆り立てるんや? ここまでダメやったら普通、落ち込んだりなんなりするもんやないんか?)
連戦連敗、あまりにも救いのない結果。だが、少年は決して折れたりしなかった。入団を断られその度に落ち込みはするが必ず立ち上がってみせた。強い想いをもって。
それにロキは興味を持った。何度断られようとその度に立ち上がる少年に、その原動力に。始めはちょっとした興味からつけはじめたが、今はこの少年についてもっと知りたいと思う自身がいた。
「……あきらめない。絶対にあきらめたりするもんか!
心からの叫び。さすがにこれまでの結果が響いたのか少年は必死に自身を鼓舞していた。なにもかもが初めての地、襲いくる不安、それらに決して負けてしまわぬように。
そんな少年の声は人通りが少ない通りなこともあって、誰の耳にも残りはしなかった。
―――ただ一人を除いては。
(おもろい、おもろいで自分! 『約束』のために生死を懸けてダンジョンに挑む冒険者になるっちゅうんか!)
ロキである。少年の跡をつけていた彼女だけはその言葉を聞き逃したりはしていなかった。
(こんな子初めて―――いや、
普通では考えられない少年の原動力。『約束』ただそれだけのために己の全てを懸けようとしている。その覚悟にロキは自然と笑みをこぼしていた。
久しぶりに見つけたおもしろい子どもに。しかも、その原動力が自身の眷族の少女とまったく同じ『
「なぁ自分。よかったらうちの【ファミリア】に入らへんか?」
「え……?」
自身の【ファミリア】に入れる。
満面の笑みで勧誘する女神に、突然の事態に固まる少年。
今ここに新たな物語が始まろうとしていた―――。
二人目とはいったい……一人目はダレナンダー(棒)
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