目が覚めたらのび太になっていた   作:厨二王子

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夢で見たので書いてみました。長期です続きそうではないので短編で。


新のび太誕生
目が覚めたらのび太になっていた


「いてぇ」

 

 突然、頭部が痛み目を覚ます。そこには自分よりオレンジ色の服を着た大きな男とその人物の隣に小物臭を漂わせている小柄の男が俺を見て笑っていた。

 

 どんな状況だ、これ?

 

 しかし、この二人どこかで見た覚えがある。

 俺は事態が把握出来ずに混乱している中、大きな男が俺に近付いて胸ぐらを掴んできた。

 

「やい、のび太。漫画を返してくれなんて生意気なことを言いやがって。あれはもう俺の物なんだよ、次に同じことを言ってみろ、容赦しないからな!」

 

「そうだ、そうだ!」

 

 その後、大きな男は俺を解放すると隣のやつと共に笑いながらこの場から離れていく。

 

 頭が痛かったのはこいつに殴られたからなのだろうか?

 

 ……よし、よく分からないがとりあえずここまでの経緯を思い出してみよう。

 

 俺はゆっくりと自分の記憶を辿っていく。確か昨日は大学はなく休みで一日中ゴロゴロしていたはずだ。ラノベを読んだり、エロゲをやったり。あっ、アニメも見たな。

 しかし思い出せば思い出すほど普段と変わらない生活だった。

 

 ダメだ。特に変わったことは思い出せん。

 

 しかし記憶を掘り返すことで、他の記憶も思い出してきた。先程のオレンジの服を着た大きな男、その隣にいた小物臭い男ってまさか……。

 俺は慌てて周囲を確認した。

 

「この空き地は……確定だな」

 

 ふと下を見ると水溜まりがあり、そこに顔を覗き込む。そこには自分の顔ではなく、別の人の顔があった。丸い眼鏡にぱっとしない顔、黄色い地味な服に紺いろの短パン。もうお分かりだろう、あの国民的アニメの主人公。

 

 おいおい、マジか!

 

「何でのび太になっているんだ……」

 

 目を覚ますと俺はのび太になっていた。

 

 

 

 

 

「これからどうしようか」

 

 向こうの俺はどうなったとか、のび太の意識はどこいったとか色々あるが、このままここで立ち止まっている訳にはいかないだろう。俺はこれからのことを考えながらぶらぶらと町を歩き始めた。

 

「まず、ここはドラえもんの世界で間違いない」

 

 特に死んだ記憶はないが、どいう訳かのび太に憑依してしまったらしい。特に死んだ記憶もないし、神様とやらに会った記憶はない。転生特典もないようだ。

 しかし何故、憑依した先がドラえもんの世界なのだろうか。どうせなら、エロゲの世界やらポケモン、ハイスクールD×Dの世界とかにしてほしかった。ああ、エロゲの世界は抜きゲーな。ハードなのはお断り。

 さてこの世界でのび太に憑依して得することといえばドラえもんの秘密道具を使って楽して人生を過ごすくらいだろう。そんな人生も楽しいだろうが、それでは元の世界とあまり変わらない生活を送ることになる。

 それに加え何度も世界の危機を救わなくちゃいけない、こちら側にメリットがないのにだ。

 

 ……どうするか。

 

「んっ、ここは?」

 

 気付けばあの見慣れたのび太の家の前に着いていた。この家の場所なんて俺は詳しく知っているはずはないんだけが、体は覚えているというところか。

 体の方も最初は違和感を感じたが、歩いているうちに少しずつそれはなくなっていった。

 俺は意を決して家の中に入っていく。玄関で靴を脱いで階段を上がっていこうとすると向かって左の部屋から声が聞こえてきた。

 

「のび太、おやつはあなたの部屋に用意してあるから手を洗って食べるのよ」

 

「はーい」

 

 のび太っぽく返事をしてみたが、似ていただろうか。

 俺は奥の洗面所で手を洗うと階段を静かに登っていく。この先には自分の部屋があり、そこにはあの国民的アニメの象徴である青いタヌキがいるかもしれない。正式には猫だけど。

 

 しかし……

 

 今思えば小さい頃によくあのロボットがいたらなぁ~とかよく考えたもんだ。形はどうあれそのロボットが目の前に現れる。そんなことを思うと緊張してくる。その他にものび太じゃないとばれるのではないかと不安も出てきた。

 

 でも今さら引き返せない!

 

 俺は襖を横にずらして部屋に入っていく。

 

 ……いた!

 

 青く丸い顔に赤い鼻、胸に着いている半月の形をした白いポケット、独特な形状、まぎれもなくこいつは……

 

「ドラえもん……」

 

「どうしたんだい、のび太くん?」

 

 ドラえもんは手に持っているどら焼きをかじりながら声の主である俺に反応する。声も見た目もアニメや漫画で見た通りである。

 気付けば俺は無意識にドラえもんの頭を触っていた。

 

「……大丈夫かい?」

 

「はっ、ごめん。何でもないよ」

 

 つるつるだった、それと硬い。実際にドラえもんが目の前に現れると触ってみたくなるな。

 しかし、バカと言われているがそれでもこいつは22世紀で生み出された猫型ロボット。長く話せば俺がのび太でないことに気付くかもしれない。そこで俺は考えてのび太らしく誤魔化せる方法を探す。

 そして思い出す、のび太の代名詞。

 

 それは……

 

「のび太くん。またお昼寝かい?」

 

「うん、お休み!」

 

 寝ることである。のび太はしょっちゅう昼寝をしていたので変わった行動でもないし他の人と関わらずに済むので怪しまれない、さらに寝るふりをすればこの先の方針も考えることが出来る。

 しかしここで俺に徐々に眠気が襲いかかる。

 

 今は眠っていいよな。これからのことは夜に考えよう。

 

 俺はドラえもんに起こされるまで目を閉じてそのまま意識を失った。


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