「ここは……、ミハエル!」
「ミハ兄!」
「あれ、俺はあの男に……」
「目が覚めたようでなによりだ」
「誰だ!?」
俺は三人の声を聞き、部屋の中に入っていく。気づけばあの森から見知らぬ白い空間にいたとなれば混乱もするだろう。ましてやあの状況ならなおさら。
俺はとりあえず落ち着くように三人に声をかけた。
「三人ともどこも異常はないかな?」
「あんたは!?」
「あいつを知ってるのか、ネーナ」
「……野比のび太。ソレスタルビーイングにいたやつよ」
「……ソレスタルビーイング。ということはここは」
「いいや、ここはプトレマイオスではないよ。それにソレスタルビーイングとは無関係だ」
「では、お前は……」
「俺は野比のび太。異世界から来たものさ。どうだいトリニティ、俺のところに来ないか?」
俺は自身のことをおりまぜながらトリニティの三人に話し始めた。
「それは即ち、あなたの仲間になってくれということか?」
「そういうことだ。俺はこの空間であるNベースを拠点に組織で活動をしようと思っている。まだ構成員は二人しかいないし、組織の名前も決めてないがな」
「なるほど。しかし、私たちにはガンダムマイスターとしての役割が」
「……ガンダムマイスターねぇ。とりあえず君たちがなんで襲われたか理解してるかな」
「何?」
「君たちの役目は終わったってことだよ。ヴェーダから用済みとして捨てられたのさ。正確にはヴェーダというよりもバックにいる奴らにね」
「……」
これに関してはヨハンも心の中で察していたのか特に反論してくることはない。しかし他の二人は違った。
「なんだとぉ!」
「そんなわけ……」
「よせ、二人とも」
「でも!」
「まぁ、そんなわけで勧誘しようと思ったわけだ。どうだい、仲間にならないかい?」
「……」
「こちらに来れば君たちの命は保証しよう。君たちがこの勧誘を断って向こうの世界に戻ればヴェーダだけではなく世界中から狙われていずれ殺されるだけだしな」
「……少し考えさせてほしい」
「了解。答えが出たらその壁にあるボタンで呼んでくれ」
そして十分後、彼らは俺についてくることに了承した。どうやら彼らの状況とミハエルの命を救ったことが決めてとなったらしい。しかし肝心のミハエルが少し反抗的だ。まぁ、そこを含めて考えはあるのだが。さらにネーナはスイーツのこともちらつかせたおかげでのりのりである。俺は仲間になった三人を連れてある場所へ向かった。
「ここは……」
「ここは演習場である宇宙エリアさ。君たちも自分より弱いやつに仕えるのは嫌だろう。だから模擬戦を行おうじゃないか」
「はっ、面しれぇじゃねぇか」
「だけど私たちの機体は……」
「それなら問題ない。あれを見てほしい」
俺が視線をずらすとその先には三機のガンダムの姿を現す。その機体を見て彼らは驚きの声を上げた。無理もないそれは向こうにあるはずの彼らの愛機。
「スローネ……だと」
「おいおい……」
「嘘……」
「お前たちにはこの三機に乗って戦ってもらう」
「三対一だと。舐めてるのか!!」
「果たして今の君たちに俺に対してどれだけ通用するのかな」
「いいぜぇ、ぼこぼこにしてやる!」
「ミハエル!」
「やる気満々だな。では三十分後に試合を始める」
そして模擬戦開始の五分前。俺はデュナメスに乗ってスローネたちの前に待機していた。俺の専用機の開発だがやはりというべきかまだ時間が掛かるようだ。作業用ロボットを大量に使っているとはいえ、モビルスーツの作成、改造はとてつもない時間を有するのだ。
目の前の彼らは武装の確認を行っている。そして俺のモビルスーツ登場と同時に驚きの声を上げた。
「あのガンダムは……」
「ソレスタルビーイングの!?」
「ガンダムデュナメス!」
「さて、始めようか。激しい歓迎会を!!」
大きな合図の音が鳴ると同時に俺とトリニティたちとの模擬戦が幕を開けた。
「いくぜぇ。行けよ、ファン……なっ」
「ばればれだよ」
合図と共にまずスローネツヴァイが俺に向かって先行する。そしてファングを使った瞬間、俺はビームライフルを急所に打ち込んだ。いい忘れていたがこの模擬戦では特殊な武装を使っていて機体に物理的なダメージは入らず、エネルギーを吸収するようになっている。活動不可能になると行動は停止してアナウンスが流れるしくみだ。
そして俺のビームライフルは当たりどころもありツヴァイを行動停止にさせた。
『ツヴァイ、撃墜』
「ミハエル!」
「ミハ兄!」
「デュナメスと戦うと考えた時、一番厄介なのがツヴァイだからな。それが一番に突っ込んできたのだから当然の末路よ。ファングの使用直後はいい的だ」
「くっ……」
「ヨハン兄!」
「ならば近距離戦で!」
「それはどうかな」
俺は接近してくる二機のスローネに対してGNミサイルを放つ。さらに向こうの動きを予測してGNライフルを使ってそこへ狙い撃つ。彼らはデュナメスに近付けない。
「ならば……ネーナ!」
「うん!」
ここでアインとドライが連結してGNメガランチャーを放つ。さしずめ火力でごり押しというところか。
だが、甘い!
俺はうまくその射程を計算、そのままギリギリでかわして二機に接近した。
「……っ!」
「嘘!」
「終わりだ」
近付いた俺はGNビームソードを振るい二機を同時に落とした。
『アイン、ドライ撃墜』
こうして模擬戦はスローネたちの敗北によって幕を閉じた。
「はい、ということでお前たちは弱い」
「くそぉ!」
「くやしぃ」
「……これは?」
「これからのお前たちのスケジュールだ。暫くの間、トリニティは表舞台には立たず、ひたすらに鍛えてもらいたい」
「あのさ、私のスケジュールの土曜日のところ空白になってるんだけど」
「それについては後で説明する」
この後、Nベースについて軽く説明しながら施設を巡る。途中、教授に会い三人は驚いたが特に執着もないようでそれだけだった。そして俺はメンバーに向かってようやく決めた組織の名前について話す。
「さて、人数もまだ少ないが集まり、名前も考えたので正式に組織を設立しようと思う」
「ほう。どんな名前かね」
「へぇ、私も気になる」
「オーバーワールド。それがこの組織の名前さ」
こうして俺たち、あらゆる世界をまたに駆けて戦う組織。オーバーワールドが正式に設立した。