「いらっしゃいませ!」
「おう、似合ってるぞ。ネーナ」
「あのまかないのスイーツを食べるためとはいえ、どうしてこんなことを……」
ここは異世界食堂である猫屋。俺はそこに今日も訪れていた。ネーナの性格矯正のひとつとしてここでウェイトレスとして働いてもらうことにした。最初は嫌がっていた彼女だったが店主が作ったまかないのパフェを食べると途端にやるきになる。こうして彼女は土曜日に限り、異世界食堂である猫屋で働くことになった。
「いらっしゃいませ、お好きな席にどうぞ!」
そして厨房から新しいウェイトレスが顔を出した。彼女はアレッタといってここ最近で働き始めた少女だ。魔族で職がなかったところ、店主に雇って貰ったらしい。
「ありがとう。それと注文はコーヒーにパンケーキを頼む」
「はい、コーヒーとパンケーキですね。かしこまりました」
「私がせっせと働いているなかパンケーキ頼むなんて……いい度胸じゃない」
「夕飯にはまだ早いからな。……そうだ、夕飯時には皆でここに来るぞ」
「兄たちが!」
「ああ。もし良ければその時間に休憩もらうんだな。大丈夫ですか、店主?」
「問題ないぞ」
店主の声が厨房から聞こえてくる。ネーナは嬉しそうな顔をしながら厨房に戻っていく。アレッタもそのネーナの顔を見て嬉しそうな顔を浮かべながら同じく厨房に戻っていった。
俺はどこに座ろうかと席を探すと、カウンター席に見知った顔を見つける。俺はその人の隣に座った。
「こんな昼間まからお酒ですか?」
「なに、時間に空きが出来たのでな。もちろん、夜になっても飲むぞ」
目の前のカウンターに座っているサムライ風の男。名はタツゴロウ、このお店ではテリヤキをよく頼むのでそのままテリヤキと呼ばれていたりする。見た目はだらしないおじさんだが向こうの世界で武名を轟かせる伝説の傭兵である。
さて、なんで俺がこの人と面識があるのかというと……
「どうだ、最近はみてやれてないが調子は?」
「しっかり言われた通りのことを続けていますよ」
「そうか……」
そう、自身の戦闘力を鍛えてもらっていたのだ。勿論、パイロットの技術ではなく、肉弾戦の方だ。やはり、パイロットの腕だけではなくこういう力も鍛える必要があるからな。
無論、簡単に教えて貰える訳もなく、暫く分のここの食費と土下座を何度も使って師事を得ることが出来た。
「槍の方はどんな感じだ?」
「……まぁ、色々やってます」
タツゴロウ曰く、俺は意外と剣より槍の筋がいいらしい。もちろん弓や銃はぶっちぎりだが。しかし、それは俺というよりのび太の技能だからな何か認められない部分があってな。
それで彼は主に刀を使うので槍のことは基本教えられていないという状態であった。
「なに師を探すのもまた修行よ」
「まぁ頑張ってみます」
今はガンダムOOの世界で手一杯だが、落ち着いたらそれ関連で世界を漁ってみようかな。
すると、頼んでいたパンケーキとコーヒーが届く。
……うむ、いい薫りだ。
俺はナイフとフォークを手に取り、パンケーキを適度な大きさに切っていく。そしてシロップをかけてそれを口に運んだ。口の中にシロップ特有の甘さと柔らかいパンケーキの食感が調和する。
「うまい!」
「お主は色々なものを食べるのう」
「ここの料理が全て上手いのがいけないんだ」
俺は次々とパンケーキを口に運んでいき、食べ終わるとコーヒーを静かに飲み干した。
まぁ、このお店のお客との交友関係といえば始めて赤の女王に目を付けられ死ぬかと思ったが今では加護まで付けてくれるくらい仲が良くなっている。後、目立って仲が良いのは魔術について教えてくれるヴィクトリアとかかな。最初はアルトリウスから聞こうと思ったのだが、彼女を紹介されうまく流されてしまった。まぁそんな経緯でヴィクトリアとは仲が良い。
「カツ丼を頼む!」
……さて、人も増えてきたしそろそろ出ようかね。
俺は立ち上がり厨房の方、タツゴロウに声を掛けた。
「また、夜に来ようと思います。ネーナよ、精々気張って働け。タツゴロウもまた夜に」
「むかつく!」
「おう」
俺は笑いながら猫屋をあとにした。
パンケーキうまいよね。