「のび太、そっちの機材を頼む。敵さんに見つかる前にとっとと終わらせるぞ」
「ほいっす」
トランザムシステムが発動し、世界はまた一歩動き出したのにも関わらず、俺はいつものように機体の整備を手伝っていた。この機体の整理もよく機体のことについて知ることも出来るので決して無駄なことではない。とっとと無双したいなんて考えてないからな。
まぁ、ということで俺は刹那より一足先にトレミーに戻っていた。機長室では今頃、スメラギさんや刹那以外のマイスターがトランザムや今後の対応を話し合っている。
「のび太、お疲れ。はい、これ差し入れ」
「クリスか。おっ、ありがとよ」
俺は投げられた缶をキャッチする。ちょうど喉が乾いていたのでありがたい。
「のび太はどう思う。イオリア・シュヘンベルグのこと?」
「あの人は考えてたんだと思うよ。こういう事態が起こるのも」
「それって」
「ガンダムが……というより疑似GNドライブが敵として現れるという事態さ。俺はそれが理由でトランザムシステムがあると踏んでいる」
まぁ、この先の対話で必要というのが重要なんだが。それは今は言えない。
「私たちのやってきたことは無駄じゃないよね」
「……無駄じゃないさ。俺らがやってきたことは確かにいい影響も与えている。これからも変わらない」
「そうよね……」
すると、クリスの通信機から音が鳴る。どうやらスメラギさんから操縦室に召集命令が来たようだ。さらに俺の方にも連絡が来て今回は先にガンダムの整備の方を優先してほしいそうだ。
……ついに来たか。
俺は正直ここで大きく干渉するか、しないか迷っていた。
時間をたんまウォッチで止めて救出を考えていたが、今回の戦いは一期の終盤でありピンチになるのはロックオンだけではない。トレミーもまた危機に陥る。もちろんこちらも阻止する予定だが……。しかしトレミーの方は中の人は数十人は下らないし、連続で追撃さへるためたんまウォッチで止めてどうなる問題ではない。俺の直接の介入は不可欠だろう。
さらに介入方法はどうであれ、死ぬべき人が生きることからこの戦いの後の状況が原作から大きく離れることは確実。なら俺は変に目を付けられたりするくらいなら堂々と介入すべきだと思ったのだ。
……つまり、時は来たということ。
さらに俺自身、というより今まで触れることもなかったので説明がなかったが秘密道具についてある問題があったのだ。俺は数々の秘密道具を持っているが一つだけ持っていないものがあった。
タイムマシン
理由は簡単でドラえもんが未来に行っている時に俺がこの世界やNベースへ跳んだからだ。故に俺は過去や未来に跳ぶことが出来ない。あるいはもしもボックスを使い手元にタイムマシンを戻そうと思ったがふと思った。タイムマシンを手元に無から生み出されたとすればいいが、ドラえもんが未来に行かずスペアポケットに入っていた状態になったらどうなるかと。その場合、俺が進めたこと全てが変わる可能性があると思ったのだ。これに気付いたのはソレスタルビーイングで活動を始めた後だった。これを知ったときはひどく落ち込んだものだ。
そして死をなかったことにする方法は俺が介入して回りにばれないように死を回避するのと違い大きなリスクがある。例えばもしもボックスなどを使い過去を改変した場合、使用前の俺にはその後の変化を明確に理解することが出来ないのだ。それ故に俺はこの方法を使うのを躊躇った。
他にも改変系の秘密道具があるがあれは俺にも予想出来ないリスクがある可能性があるので保留にしてある。つまり俺はこの戦いでどんな結果が出ても過去改変はするつもりはなく、チャンスも一回ということだ。今回は見ず知らずの人間ではない、長く時を共にしてきた仲間だ。腕に力が入るのが分かる。
……よし!
方針を決めた俺は整備の手伝いを終えると、たんまウォッチで時間を止めてNベースに連絡を入れる。
「教授、機体の準備をお願いします。また以前のフラッグを」
『のび太か。その必用はない』
「その必用はない?……まさか」
『丁度こちらから連絡を入れるつもりだったのだ。君の専用機が完成した。動作、性能の確認は済んでいる』
「さすがです教授。ではトリニティにも伝言も頼みます」
『了解した』
連絡を終えた俺はさっそく速足で動き出す。俺の存在をおおっぴらにする以上、出来ることは精一杯やっておこう。俺は操縦室に行く前にタイムふろしきを握りしめながらある場所へ向かった。
「連合の艦隊がトレミーに接近中。その数、疑似GNドライブ搭載型が250機以上。……例のツヴァイの姿もあります」
「出撃できるのはヴァーチェとキュリオスだけね」
「二機だけでこの数を……」
「作戦は考えてある。乗り切るわよ」
『俺も行かせてくれ、Ms,スメラギ』
「その体で何を言ってるの。今回は休んでなさい」
『くそっ!』
ロックオンの悔しそうな声が響き渡る。そんな中、二機のガンダムが出撃した。
状況はさすがにこちらの劣勢。アレルヤは同じ超兵であるソーマ・ピーリスと戦闘で気を取られ、ティエリアとトレミーが完全に防御に回っている。
「スメラギさん。艦の制御にのび太を召集しましょう。正直、手が足りません」
「クリス、どう?」
「それが繋がらないの。整備の方はもう大丈夫だと思うんだけど」
「……仕方ないわ。今はこの体制で乗り切りましょう。のび太には私からもメッセージを送っておくわ」
そんな状況が続き、かかるはずのない場所から連絡が入る。そこはデュナメスが保管されているハッチからだった。
『ロックオン・ストラトス。出撃するぞ!』
「ロックオン、どうして!?」
映し出された映像はデュナメスのコクピットの中のものだった。この時、慌てていたせいかロックオンの眼帯が外れていたことに気付く者はいなかった。……ただ、一人を除いて。
『大丈夫だよスメラギさん。あんたの作戦通りに動くだけさ。それに目も体の方も問題ない』
「……分かったわ。しかし、無理はしないこと。いいわね?」
『OK』
「スメラギさん、ロックオンの眼帯が……」
「……えっ、そういえば」
こうしてデュナメスは出撃し、GNライフルで出撃と同時にジンクスの数機を打ち落とす。誰から見てもそれはとても片目の視力が無いものの射撃には見えなかった。