「おい、のび太。こっちの機材を頼む」
「はいー」
無事にソレスタルビーイングに入団してから2ヶ月、俺は絶賛雑用に追われていた。やはりというべきか一番に雑用の仕事は整備班が多く、今行っている機材の運び込みが一番多かった。さらにその他の仕事も出来るようにシステム関連などのことも学んでいる最中である。
「イアン、持ってきたよ」
「おう。じゃあこっちにおいてくれ」
「なぁ、この機体って……」
「ああ、ガンダム。こいつはエクシアだ」
「……」
ガンダムエクシア。確か刹那が乗る近接型の機体である。しかしさすがガンダム。かっこよさがすごい。なにより、ガンダムOOに出てくるガンダムですごいのは太陽炉でお馴染みGNドライブだろう。今後のために確保しておきたいものだ。なんとかならないものかな。
俺が機材を運びながら一人考えているとイアンが次の指示を出してくる。話を聞くと、どうやらロックオンが俺を呼んでいるようだ。
「いつもの射撃場で待っているだそうだ」
「了解」
「それと今日のこっちの仕事は終わったから戻って来なくていいぞ」
「そうですか。お疲れさまです」
「そっちもな」
俺は整備室を後にすると、ロックオンが待っている射撃場に向かう。そこで俺はガンダムマイスターたちについて思い出していた。ガンダムマイスターたちの中で一番仲がいいのはロックオンだ。頼れる兄貴分という感じでよく面倒を見てくれている。さらにアレルヤとも少し話したりするものだ。刹那とティエリアはやはりというべきか必要な時しか話さないような仲だ。
俺は初めて彼らと顔を合わせた時を思い出す。
『紹介するわ、彼は野比のび太。新しいクルーよ』
『よろしく』
『『……』』
二人そろって無言だったからな。もはやさすがとしかいいようがなかった。でもティエリアはどこか俺を警戒していたような。……気のせいか。
まぁ今の二人以外の操縦士やオペレーターたちとはうまくやっているつもりである。雑用でパイロットたちよりこっちの方が仕事で関わることが多いからな。
そんなことを考えている間に目的地である射撃場に着く。そこから銃声の音が聞こえてくる。
「おう、来たかのび太」
「すまん、遅くなった」
「いいってことよ。それより特訓を始めようぜ」
俺は銃を持って構えると離れたところにある的に向かって狙い撃つ。さすがはのび太というべきか途中までは狙い通りに的に弾を当てていく。しかし俺はのび太であってのび太ではない。時間が経つごとに集中力がかけていく。やがて弾がはずれていった。
のび太としての射撃力はすごいものだが彼の体力、集中力はとてつもなくひどいものだった。
俺はそれらを克服するべくこの射撃の訓練の他に特訓を始めている。
「くそ!」
「さすがのび太だな。だがまだまだ甘いぜ」
ロックオンは息をするかのように俺が当てられなかった的に向かって弾を当てていく。
「まぁ、こんな感じだな」
「さすがロックオン」
「のび太は最後の方になると力むからな。それがなければ今より弾が当たるようになると思うぜ」
「……」
のび太の体とはいえそんなにうまくはいかないらしい。もし本物ののび太だったらもっといい記録を出せただろうか。
「そんな難しい顔をするなよ。お前は筋があるぜ、俺が保証する」
「そりゃ、どうも」
「まぁ、そう簡単には抜かれる気はないけどな。だてにロックオンを名乗ってないぜ」
「なに直ぐに抜いてやるさ」
なにかを掴めそうではあるが、やはりまだまだこの男は遠いところにいるようだ。
パイロットではないがなにが起こるか分からないのがガンダムの世界。移動中に射殺される可能性だってある。
団長、銃撃、止まるんじゃ……うっ、頭が。
今なにやら思い出しかけたが……まぁいい。とにかく戦闘スキルは必須だろう。であればのび太の唯一の武器ともいえる射撃の精度は高めておかなくては。モビルスーツ戦でも使えるし。近接戦闘も覚えたいところだ。
「おっと。すまないな、のび太。どうやら呼び出しみたいだ」
「こっちは連絡ないみたいだから、パイロットだけかな」
「今日はここまでだな。悪いが射撃場の鍵は閉めていってくれ。もう誰も使わなそうだからな」
「了解」
ロックオンは射撃場を後にし、ブリーティングルームに向かう。俺もこの場所から離れようとしたとき、一通のメールが届く。
「……シエラからか」
プログラム関係はシエラから教えて貰っている。たまにフェルトも基本無口だが教えてくれることもあった。しかし彼女たちもわざわざ時間を作ってくれるのだ、感謝しなくてらならない。
少しでも技術力をつけるために秘密道具も何個か使ったりしたものだ。
そして肝心のメールの内容だが今あるプログラムをいじっているのだが手が足りないので来てほしいとのこと。特にこの後用事がない俺はシエラのいる艦の管理室へ向かった。
「来たきた。ごめんね、突然呼び出しちゃって」
「別に大丈夫だけど。俺に出来ることは限られてるぞ」
「大丈夫大丈夫。ちょっとここを見ていてほしくて。直ぐに終わらせるから」
「そういえば、フェルトは?」
「フェルトは別の場所からアクセスしてもらってるの。だからお願いね」
「了解」
俺は目の前のコンピューターを起動して、すぐさまにプログラムをいじり始める。
作業を始めてから一時間が経つと目の前の彼女は腕を上げて腰を伸ばした。
「終わったー!ありがとね、のび太。ねぇ、そろそろ夕食の時間だし、お礼になにか奢ろうか?」
時刻を見るともう夜の八時。確かに夕食の時間だった。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
「決まりね。フェルトも呼びましょう」
この後、食堂でフェルトと合流した後、俺たちは食事をしてそのまま解散した。
「もうそろそろか……」
後、一週間で原作、ガンダムの武力介入と同時にイオリア・シュヘンベルグの放送が始まる。
しかしそんな中、二ヶ月という月日が過ぎても俺はまだこの世界の現状を把握することは出来ていなかった。
いきなりモビルスーツで無双すると思った人、申し訳ありません。彼は地盤固めから始めました。無双は彼の専用機が出来るまでお待ちください。