「あー、暑い。暑すぎる」
「ほら、こっちの荷物も持って」
「なぁ、俺は確か久し振りの休暇のはずだったんだが」
「……確かに、のび太は休暇で間違いない。というか私も帰りたい」
「じゃあ、なんで荷物持ちしてるんですかねぇ」
「両手に花なんだから文句言わない」
「両手に荷物だろ、これ」
アレルヤが独断で行動するなどハラハラすることもあったがソレスタルビーイングの活動は順調に進んでいた。
そんな中今俺はシエラ、フェルトと共にモラリアの町を回っている。確かにこの地には任務でやって来たが今は特に任務中という訳ではなく、買い物に付き合わされているだけだ。
モラリア共和国
AEUに所属するヨーロッパ南部に位置する国家であり、その国を支える企業の二割がPMCトラストという民間軍事会社が占めている。このPMCトラストというのは簡単に言うと戦争をしているところに傭兵とかを貸し出して金儲けをしている企業だ。まさにソレスタルビーイングの天敵ともいえる。そんな企業がある国に俺はいるのだ。
……早く帰りたい。
「あっ、あの服可愛い。フェルト行きましょう!」
「待って……」
女性二人はまた気になるものでも見つけたのかお店の中に入って行った。俺は近くのベンチに腰をかけ、荷物を地面に置いてハンカチで汗を拭く。そんな時目の前に一枚の硬貨が転がってくる。俺は何気なくそれを拾い上げた。
「これは……」
「おう、わりぃな兄ちゃん。それは俺のだ」
「そうです……か……」
俺は顔を上げると声を掛けてきた人物の顔を見て思わず言葉を失う。この国がモラリアという時点で出会う可能性を考えていたが、まさかこんなショッピングモールで会うことになろうとは。
俺は慌てて冷静を装い硬貨を男に渡した。
「ありがとな。しかしどうした?そんな驚いたような顔しちゃってよ」
「すいません。あまりにも知り合いに似ていたもので」
「そうかい、そうかい。しかし珍しいなこんな時期に日本人とは。観光かい?」
「ええ、そんなところです」
「しかし、こんなところに観光とはな。この国なんてソレスタルなんとかに狙われちまうかもしれないっていうのによ」
「ソレスタルビーイングですか……」
「そうそう。あいつらのせいでこの国も厄介なことになっているのさ。お前さんも早く平和な日本に帰ることをオススメするぜ」
「ご忠告どうも」
「おうよ。しかしお前さんさっきから体が震えているが風邪かい?」
「えっ……」
言われて自身の体が震えていることに気づく俺は慌ててスペアポケットに手を突っ込んだ。
男は薄い笑みを浮かべながらこちらに近づいて呟く。
「知った気になってはいるが何も知らない、お前さんそんな目をしてるな、この辺じゃ珍しい」
「……っ!」
男は俺の肩に手を置く。
「なに、取って食おうとしてるわけじゃねぇよ。ただ……」
「そんなんじゃ、いつか死ぬぜ」
男はその言葉を最後にこの場から去っていく。俺は茫然と立っていることしか出来なかった。
アリー・アル・サーシェス
ロックオン曰く、戦争を生み出す権化。
これが奴と俺のファーストコンタクトになった。
「聞いたわよ。のび太、途中で調子が悪くなったんだって?」
「ああ、スメラギさん。大丈夫です、だいぶよくなりましたから」
「そう……。明日は動いてもらうからしっかり寝なさいよ」
「了解」
ホテルの廊下でスメラギさんと別れると俺は用意された自室に向かう。俺はずっとサーシェスに言われたことを考えていた。
「ああ、俺は知らないことが多すぎる。それにまだ弱い」
それは俺自身がよく知っていることだ。でも、今さら止まれないし、逃げることも出来ない。
やることは決まってる、なら突き進むのみ。
もうソレスタルビーイングのメンバーとはただの画面の向こう側のキャラクターでも他人でもない。大切な仲間だ。彼らの思いにも応えたいとも思っている。
「強くならないと……」
俺は自室に着くと時間を止めてどこでもドアであの空間へ移動、そして特訓を始めた。