艦娘にハグしてみる   作:大葉景華

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阿武隈の場合

ここしばらく大きな出来事もなく、あの後大和もちょくちょく来ては仕事を手伝ってくれる。他の人達とも仲良くやれているようで良かった。特に同じ戦艦の陸奥と仲がいいらしい。練度が低いから主力としてはまだだけど今日も演習に行ってもらってるし、大和がウチの鎮守府で最高クラスの戦力になる日は遠くはないだろう。

 

「提督。演習に出ていた艦隊が帰投したぞ」

「そうか。戦果はどうだった?」

「完全勝利らしいぞ」

「それはめでたい。MVPは?」

「大和だ。彼女は本当に頑張っているぞ。提督と後で話したがっていた」

「そうか。とりあえず皆を呼んでくれ」

「分かった」

 

「提督。旗艦阿武隈以下5名。演習より帰投しました」

「お疲れさん戦果は聞いたよ。よく頑張ったな。補給がすみしだい各自自由にしていいよ」

「提督!大和、MVPを取りましたよ!」

「それも聞いたよ。頑張ったな、大和」

「ありがとうございます!」

「それじゃあ解散。お疲れ様」

 

「さて、それじゃあ俺達も昼食べに行こうぜ」

「分かった」

「何にしようかな…」

「やーめーてーくーだーさーいー!」

「ん?何だ?」

「喧嘩か?ちょっと見てくる」

「若葉も行くぞ」

 

俺達が食堂に駆け込むと阿武隈が北上に髪をワシャワシャされていた。

「北上さん!やめてくださいってばー!」

「え〜?いいじゃ〜ん?阿武隈っちの髪の毛すっごいさわり心地いいよ?」

「アタシの前髪崩れやすいんですよー!」

「いいじゃんかよ〜。あ、提督。やっほ〜」

「…北上、何してるの?」

「見りゃわかるでしょ?阿武隈っちと遊んでるの」

「提督ー!助けてくださいー!」

「北上、流石に阿武隈が可哀想だ。やめてやれ」

「ちぇー、まぁいいや。じゃーねー阿武隈っち。また遊ぼうね」

「ふんっ!北上なんて嫌いです!」

「子供か…阿武隈、大丈夫か?」

「あ、はい。大丈夫です。多分あれが北上さんなりのスキンシップですから」

「随分激しいスキンシップだったな」

「アタシはまだ新人だから北上さんがきっと気を使ってくれているんですよ」

「そうかー?あいつただ構いたいやつに構ってるだけだぞ」

「どうなんでしょうね?じゃあアタシもう行きますね」

「おう、演習お疲れ様。ゆっくり休んでな」

「はーい」

「阿武隈はポジティブだな」

「そうだな。ポジティブってか明るいな」

「提督は明るい子と大人しい子はどっちが好きか?」

「若葉が好きだ」

「……そうか/////」

......................................................

阿武隈の事は当人達でどうにかするだろうし、今回は俺も出しゃばる必要は無いだろう。そう思って海岸を散歩していたら、大井を見つけた。一人でいるなんて珍しいし、ずっと海を見つめて座っているだけで微動だにしない。流石に少しおかしいし、話しかけてみた。

 

「よう。大井、どうした?」

「あっ、提督」

「隣、いいか?」

「どうぞ」

隣に腰を下ろしながら

「なんか悩み事か?」

「いえ…」

「うそつけ、そんなにしょぼくれていて悩みなんてないですは流石に嘘だ。どんな事でもいいから話してみてくれないか?」

「本当に私事なんですけど…北上さんが…」

「北上?北上がどうかしたのか?あいつは最近阿武隈をいじるのに忙しそうだけど…」

「それなんです!北上さんが阿武隈さんに構っているせいで私とあんまり二人っきりになってくれないんです!」

おう……これまた凄い悩みだな。まぁ、当人にとっては深刻な問題なんだろう。

「本人に言ったのか?」

「いえ、独占欲が強いと思われるのが嫌で…」

「安心しろ、相手はあのハイパー北上様だぞ?その程度でお前を嫌うわけない」

「本当ですか?」

「それがホントかどうかはお前のほうがよく分かるだろ?」

「そうですね…私はあの事があったから、少し北上さんに遠慮しているところがあるのかも知れませんね…」

「大丈夫だ。ここの皆は強い。安心して甘えていいぞ」

「…」

「それに、言葉にしないと相手には届かない。はっきりと自分の言葉で相手に伝えないといけないぞ」

「…少し、気分が晴れました。ありがとうございます提督」

「いいよ、それじゃあもう行くな」

「はい」

......................................................

「ひゃあああああああ!」

ここ毎日聞きなれた声。阿武隈が北上に弄られている声だ。

北上は結局こりてないのかと思っていたら

「うわあああああああ!?」

と北上の悲鳴も聞こえてきた。

俺が食堂に入るとそこには珍妙な景色が飛び込んできた。

北上が後ろから大井に抱きしめられたまま阿武隈をホールドし前髪をガシガシと撫で回して阿武隈はそれをジタバタと抵抗し、大井はひたすら北上に抱きつき「北上さん、北上さん」と連呼していた。

 

「……どゆこと?」

「北上さん!本当にやめてくださいー!ていうか!なんでそんな状態でもこんなに力強いんですかー!?」

「むっふっふー。これが練度の差とハイパー北上様の真の力だよってひゃあ!大井っち〜、変なとこ触るのやーめーてーよー」

「北上さん♪北上さん♪北上さん♪北上さん♪北上さん♪北上さん」

 

どうやらこれで落ち着いたらしい。大井が北上に構い、北上は阿武隈に構い、阿武隈は北上に弄られる。この変な一方通行の関係が崩れることはないだろう。

 

ちなみに俺は阿武隈の助けを求める目を受けて、持っているスプーンを全力で投げ捨てた。




今回あんまり阿武隈出てないですね…申し訳ございません。
最後のスプーンのくだりは匙を投げるという意味のギャグです
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