あれから1年…この鎮守府も大きくなり皆強くなった。
そこらの海域では敵無しだし、年に4回ほどある大規模作戦でもそこそこの戦果を出している。
だが、それも最近になっての話。昔は物資も人手も足りなく本当に大変だった。俺自身も提督としての仕事以外にも雑用をこなしていた。今ではいろんな子が当番制でこなしてくれる。
忙しくも皆いい子で仲良く楽しく…そんな時に訪れた一年前の大型作戦。その時に…大井は…
「提督〜何してるの?」
と、いきなり後ろから飛びつかれながら声をかけられた。
「うおっ!?…なんだ北上か。大井と阿武隈はどうした?」
彼女は球磨型軽巡洋艦三番艦の北上。大井の姉でいつもフワフワと言うか、のほほんと言うか、とにかくのんびりしてる奴だが、若葉や叢雲とともにこの鎮守府の最古参の1人で最強の1人だ。
「阿武隈っちは駆逐の子らの勉強見るって。大井っちは木曽っちと料理。今日は2人で作るらしいよ〜」
「そうか、それは楽しみだな」
「え?2人が作るのは球磨型だけであとはみんな普通だよ?」
「え?…ちくしょう、大井の料理美味いから楽しみだったのに」
「そうだね〜、ところで提督はこんな所で何してるの?話をそらそうとしたってダメだよ〜?」
「バレていたか」
「バレバレだよ。提督、嘘下手だから。あ、煙草頂戴?」
「球磨と大井にバレたら怒られるよ」
「そん時は提督も一緒だよ?」
「え〜」
「…ふ〜。提督は煙草どれくらい吸ってるの?」
「一年前くらいに吸い始めたな。」
「…一年前」
見透かされたような目で見られて少しドキッとする。が、表に出さないように努めて平然を装う。
「北上が隠れて煙草を吸い出したのはいつくらいなんだ?」
「…アタシも一年前からだよ…。一年前のあの時から」
「……」
一年前…大規模作戦の中、まだ新米で右も左も分からない俺は指示をミスして艦隊を危機にさらしてしまった。その時に北上が敵の戦艦に狙われ、命の危険に陥った時に大井が庇い、そのまま単騎で敵艦隊と交戦。結果北上達は助かったが、大井はそのまま轟沈。今いる大井はその後建造された2人目の大井なのだ。
「…」
「提督は気にしすぎだよ。第一今の大井っちとあの時の大井っちは違う人なんだよ。アタシはどっちの大井っちも大好きだし、どっちも大切。だからもう沈めない。もちろん、アタシも沈まない。でしょ?」
「…ああ、そうだな…」
「……提督の時間はまだ動いてない。あの時で止まっているんだよ。それを動かすことが出来るのは初期艦の叢雲でも、提督のお嫁さんの若葉でも、アタシでも、大井っちでもなく、提督なんだよ」
「……」
「今の大井っちも気にしてないし」
「…そうなんだけど…なんかまだ自分の中で納得してない部分があるんだ。」
「若葉には話した?」
「いや、まだだ。今夜話してみる」
「案外人に話したら簡単に解決法が見つかるかもよ〜?じゃ、アタシもう行くねー。煙草ありがと」
と、言って北上は行ってしまった。
実際に俺は何を悩んでいるのだろう?以前に大井と話し、俺は吹っ切れたはずなのだ。確かに大井も気にしていない。ならこれは完全に俺のひとり相撲だ。俺はまだあの時のことを引きずっているのか?分からない…
そんなことを考えていて、2人目の来訪者の存在に気がつかなかった。
「提督」
「…大井か」
「北上さんから聞きました。なんでも私を探しているとか?」
北上、手伝わない素振りだったのに…
「提督?どうかしたのですか?」
「…ああ、一年前の事を考えていた」
「一年前…前の『 大井』が沈んだことですか?」
「ああ…以前にお前と話した時に踏ん切りはついたと思っていたが、どうやらまだらしい」
「…それで提督はどうしたいのですか?前の『 大井』を忘れて、前に進みますか?それともこのままここで腐り落ちるのですか?」
「………」
「…反省は弱者の媚薬ですからね。そうやってウジウジしてるのが一番楽でしょう。」
大井のキツい言い方にいつもならカチンと来ただろう。だが、今回は的を射る物言いに反論もできない。反省。そう、反省してる態度で自分を慰めたいだけなんだ。誰かに自分は間違ってないと言ってほしいだけなんだ…
そう思っていたら大井が俺の前に来て俺を抱きしめてくれた。いつかにしてくれたみたいに。
「私も、北上さんも、神様さえももうあなたを許しています。あなたを唯一許していないのは提督、あなた自身ですよ」
俺は知らず知らずのうちに大井にしがみつき、ワンワン泣いていた。大井は慈愛の表情で俺が泣き止むまでずっと抱きしめてくれた。
しばらくして俺はやっと泣きやみ、大井から離れた。大井の制服は俺の涙でクシャクシャになってしまった。
「ありがとうな。また助けられた」
「恩に感じているのなら、今後も私達を素晴らしい指揮で導いてくださいね?」
「ああ!任せろ!もう、誰も沈めたりしない」
と、そこで大井が自分の制服の事を気にしだした
「制服、悪かったな」
「いえ、洗えば済みますし、大丈夫です」
「でもそれじゃあ帰れないだろ?」
「ええ、そうですね…。そうだ、提督の上着を貸してください」
「俺の?いいのか?」
「ええ、時雨さんや夕立さんがたまにくるまっていて少し興味はあるのですよ」
時雨…夕立…アイツらには後で話しておこう。
「じゃあ、はい」
と言って上着を脱ぎ大井に渡す大井はそれに袖に腕を通し俺の上着にくるまった。
「…どうなんだ?」
「…どうでしょね?分かりません特に匂いとかもしませんし」
「なんだそりゃ」
「でも」
大井は俺の服を抱きしめながら続けた
「暖かくて、安心します」
「そうか」
俺は大井の気が済むまでそうしていた。
「はい、満足しました。帰りましょう」
「そうだな、帰ろう」
2人で並びながら鎮守府へと向かう
「そう言えば木曽と作っていた料理はどうだったんだ?」
「結局木曽が失敗しちゃって…今日は私が作りました」
「そうか」
「少しいりますか?」
「いいのか?」
「ええ、多分余りますし。若葉さんの分と合わせて二人分でいいですか?」
「ああ、頼む」
そんな事を話しながら俺達は歩いて行く。
お久しぶりです。KeyKaです。
今回は失敗と反省がテーマ(のつもり)です。誰でも失敗はする。問題はそれを反省し、次に繋がるかです。月並みですがそれをできる人は以外といないです。