艦娘にハグしてみる   作:大葉景華

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知らないけど8月9日ってハグの日ですよね?


ハグの日の場合

8月9日はハグの日。いつも色んな艦娘にハグしているが、やはり今日はいつもよりハグ出来る口実になる!今日はいつも以上に若葉にハグが出来る!そう思っていたのに……

 

「今日?今日は一日中遠征だぞ」

 

そう、遠征任務は最近若葉に管理を頼んでいたのだ。最近ちょっと忙しかったせいでメンバーの確認も出来ず、まぁ若葉に任しているから大丈夫だと……。

 

「わ、若葉!今日は何時くらいに帰ってくるんだ?」

「ん?今日か……だいぶ遠くまで行くからな……夜は遅いから先に寝ていてくれ」

 

夫婦みたいな(実際夫婦みたいなものだけど)やり取りにちょっとホンワカする……けど!違う!

 

「な、なぁ若葉?今日って何の日か知っているか?」

 

俺が聞くと、若葉がちょこっと首を傾げて考える。

 

「今日?……8月9日……?ああ」

 

ポンと手を叩く。分かってくれたか!そう思ったが

 

「針(8)灸(9)の日だろ?帰ってきて、提督がまだ起きていたらやってやろう」

「違うそうじゃない。ていうかなんで俺がされる側なんだよ。やるとしても俺が労う側だろ」

 

若葉はどうやら本当にハグの日を知らないらしい。今日帰ってきたらお互いに満足するまでハグしてやろう。

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

今日の秘書艦は時雨、補佐が夕立、ついでに夕立の補佐に大和が来ている。

 

「提督、この書類はどうすればい?」

「ああ、これはあとハンコだけだから夕立にまかせといて」

「分かったよ。大和さん。お願いします」

「はい。承りました」

 

なぜか大和に書類が渡される。まぁ夕立に任せてもなあ。ちなみに夕立は朝に遊びすぎたせいでお眠のようだ。窓際に毛布を集めて即席の布団を作り昼寝している。

 

 

「提督。休憩にしませんか?」

 

大和が提案する。丁度肩がこってきてくらいだし、一休みするとしよう。

 

「ああ、そうしよう。大和、お茶を頼めるか?」

「勿論です」

「時雨、夕立を起こしてお茶菓子の準備を頼む」

「分かった。夕立、起きて、おやつだよ」

「む~……おやつっぽい?」

「ああ、おやつだぞ。ただし、手をちゃんと洗ってからだぞ」

「ぽい~」

 

欠伸をしながら洗面台に向かう夕立。

準備が整い、4人でお茶をする。

 

「大和、最近武蔵はどうだ?」

「ええ、暇さえあれば鍛錬に勤しみ、己を研鑽しています」

「そりゃ頼もしい」

「私、大和共々、大和型をお使いくださいね」

「ああ、期待しているぞ」

 

そう言うと、大和はニッコリと微笑む。その隣で夕立がピョンピョンと跳ねながら自己主張し、時雨もこちらに向かって頬をふくらましながらアピールする。まだまだ見た目通りの行動をするのが愛おしい。

 

「てーとくさん!夕立も頑張るっぽい!」

「そうだよ提督。僕達も頑張るよ」

 

二人の頭をクシャっと撫でながら言う。

 

「勿論だ。二人も頼りにしているぞ」

 

二匹の犬がない尻尾を振って喜んでいる。

 

お茶も終わり、休憩をしている時に、よしっと立ち上がり時雨に声をかける。

 

「時雨」

 

呼ばれると直ぐにクルッと三つ編みを揺らしながら笑顔で応える。

 

「うん?どうしたの、提督」

 

俺は無言で一歩時雨に歩み寄る。時雨は微動だにせずに俺の顔を覗き込んでくる。その信頼しきった目を嬉しく思いながら時雨を思いっきり抱き締める。

 

「わわっ!て、提督?」

 

慌てながらもしっかりと抱き締め返してくる。

 

「今日はハグの日だろ?だから、皆にハグしながら感謝の気持ちを伝えようと思ってな。いつもありがとうな、時雨」

 

そう言うと、時雨も頬擦りしながら気持ちよさそうに言う。

「お礼を言うのは僕だよ。あのどん底から救ってくれたのは提督だからね」

 

その様子を見た夕立が俺と時雨に飛びつきながら叫ぶ。

 

「ぽいー!夕立もてーとくさんと時雨の事が大好きっぽい!」

 

三人で抱き合って笑っていたら大和が後ろから俺達三人とも抱き上げる。

 

「大和も混ぜてください!大和も提督と、提督の全ての艦娘の事が大好きです」

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

その後は夕立も仕事を手伝ってくれてかなり早く仕事が終わった。いつものように散歩をしていると、私服で何やら紙袋を持った青葉に出会った。今日は非番だからカメラの道具を買ったり、盗聴の機械を買ってきたのだろう。

青葉がこっちに気づくと笑顔のままチョイと手を振ってくれる。

その様子を微笑ましく思いながら手招きする。

笑顔のままトコトコとやって来る。うむ、青葉も犬の素質があるのかもしれない。

 

「司令官?どうしまし……」

 

青葉の言葉を遮ってギュウと強く青葉を抱き締める。女の子特有の柔らかさに包まれる。青葉が慌てた様子で腕の中で暴れるが、構わずに抱き締める。

 

「ちょちょちょ!司令官!青葉こういうのは横から見る派でされるのは専門外と言いますか」

「青葉」

「はい?」

「……まだなのか?まだ、『 心』は見つからないか?」

 

その言葉を聞いた瞬間、青葉の顔からあらゆる感情が作られる。不気味の谷を向こう側に越えたような負の感情すら見えない不安になる表情だ。

 

「……まだですね」

「……そうか」

「……でも」

 

俺の背中を強く握りながら続ける。

 

「いつか見つかるといいなって……そう、思い……ます」

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

喫煙室で煙草を吸っていたら、北上と大井が入ってきた。二人のために場所を作ってやり、二人を迎える。北上がヒラヒラと手を振って挨拶したと思うと俺の口に引っ掛けてあった煙草を奪い取り、自分の口に咥える。

 

「あってめ」

「いいじゃんいいじゃん♪」

「だ、ダメですよ北上さん!」

「えーだって提督の煙草美味しいもん。大井っちも吸う?」

 

と言いながら自分が加えていた煙草を差し出す。大井は少し躊躇う様子を見せたが、えいと煙草を咥え、思いっきりむせた。

 

「げっほ!げほっ!ごふっごほっ」

「だ、大丈夫か?」

 

背中をさすってやる。大井はむせながらも俺の手を制する。ちなみに北上は机の上の俺のシガレットケースから新しい煙草を出してこれまたこれのライターで火をつけながら大井の背中をさする。

 

「ごめんね、大丈夫だった?」

 

ここ最近北上が素直に謝るようになった気がする。まぁいい変化だし、その事をつついて蛇を出すような愚行はしないに限る。

 

「え、ええ。大丈夫……です」

 

そう言いながらも北上から受け取った煙草は落とすまいと必死にしている。

ようやく落ち着き、大井もおっかなびっくり煙草を咥えている。

 

「で、北上はともかく、大井は煙草吸うっけ?」

「うんにゃ、大井っちはアタシがよく吸うから隣にはいたけどあんまり吸ったことはないんじゃないかな?」

「ええ、北上さんがよく吸いますから匂いとかは慣れましたけど、吸ったことは1度もありませんでした」

 

そうか、と言いながらタールの低めの奴を探す。さっきのはわかばだから大分キツかっただろう。そう煙草を探していたが、北上が先に細めの煙草を差し出した。

 

「それピアニッシモか?意外だな」

「いつもはもっと重いのだよ。木曾が吸ってた奴ちょろまかしたの」

「お前……」

 

俺が呆れていると、北上がそうだ、言いながら俺の前に立ってあのニヤニヤをしながら言った。

 

「そう言えばさっきの提督の煙草美味しかったよ。アレもシガーキスに入るのかな?」

 

キスの単語に反応して大井の目が殺意を持って俺の突き刺す。俺は必死に大井に説明しようとする。

 

「大井!待て!違うんだ、キスと言っても本当にする訳じゃなくて煙草同士を……」

「違うの?アタシとあんなに熱くキスしたのに!?」

「北上は黙れ!」

 

確かにあれ熱いけど!

 

「熱いキスを北上さんと提督が……?」

 

ユラ……と立ち上がりながら大井が迫る。どうしようかと思っていたら北上がいつの間にか大井の後ろに回って大井ごと俺に突進してきた。

 

「きゃあ!?」

「うおっ」

 

北上のする事を見ていたから二人を受け止めることに成功した。

奇しくも三人で抱き合う形になる。

 

「北上さん?」

「大井っち、からかってごめんね?さっきのはキスって言っても本当にチューする訳じゃないんだよ」

 

そう言うと大井も力を抜く。

 

「そうだったんですか」

「所で北上。何で俺たちは抱き合っているんだ?」

「むふふ~今日はハグの日でしょ?だから皆でギューってしようとねー」

 

そっちから誘って来るとは。

俺達は北上が満足するまでそれこそ煙草の火のように熱いハグを続けた。

 

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北上達と別れ、次に会ったのは暁四姉妹だった。

長女の暁が俺に気づき、ペコッと礼儀正しく挨拶する。

 

「司令官。こんにちはなのです」

「やぁ司令官。時雨に聞いたよ、また皆にセクハラをしているんだって?」

「そ、そんな言い方しちゃダメなのです響お姉ちゃん」

「しれーかん!私にももっとハグしてもいいのよ!?」

 

見ると暁もちょっとソワソワしている。大人のようだが、まだまだ子供な部分があるようだ。

膝をつき、四人と目線を合わせながら両手を広げると、四人一斉に抱きついてくる。小さな子特有の高い体温に包まれる。

 

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次に会ったのは叢雲だった。出会い頭、俺が何かを言う前に叢雲が呆れたような、それでいて嬉しそうな表情で腕を広げてくれた。

俺も何も言わずに大人しく叢雲に抱きしめられる。キツイけど、痛いほどではない程よい感触。

数秒で離れたが、その後もお互い見つめあってそのまま無言で別れた。それは百の言葉を並べるより、お互い雄弁に語り合ったに違いない。

 

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その後も、ボノたん筆頭の7駆の皆や本気で嫌な顔をした山城等に抱きつき、一通り皆に抱きつき、部屋で若葉を待つ。

時刻はフタサンマルマルを回った頃。部屋のドアがあき、若葉がスッと入ってくる。俺が寝ているかもしれないと気を使ってくれている。

俺がまだ起きているのを見てぱあっと嬉しそうな表情を咲かせ、俺の胸の中に飛び込んでくる。普段は俺から甘えるから若葉からこういう事をしてくれるのは新鮮だ。

 

「若葉?」

「遠征中に初霜から聞いた。今日はハグの日らしいな。それでもって今はフタサンサンマル。まだハグの日は有効だな?」

 

と言って俺の腕の中で目を細める。若葉のサラサラの髪の毛の感触。白い肌の触り心地。少し冷っこい体温。息遣い。俺と同じ時を刻む心音。

 

「若葉」

「提督」

 

「「愛している」」




ちょっと早いけど、ハグの日の日を知ったら書かずにはいられなかった。
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