「あ、そうだ。今日は昼飯いらんぞ。」
とある日の朝。今日の食事当番である叢雲に俺はそう言った。
「あら?珍しいじゃない。何かあるの?」
「ああ。青葉から昼飯の誘いがある。どうせ奢る代わりに取材を受けろというだろうな。」
「へぇ、何を聞かれるのかしらね?」
「さあ?俺も思い当たる節がないんだよ。」
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「いやー、今日は青葉のお誘いに乗ってくれてありがとうございます!」
「いや、昼飯奢ってくれるって言うからな。」
「もちろん、奢らせてもらいますよ!ささ!こちらへどうぞ!」
青葉が用意したのは鎮守府の近くにあるちょっといい感じの料理屋だ。
「へー、結構いい感じの店だな。」
「ですよね?青葉もよく利用するんですよ。」
「ここで賄賂を送って取材を受けさせると。」
「あはは、バレてましたか。」
「お前が考えていることなんてお見通りだよ。わかりやすいからな。」
「いやー光栄です。」
「褒めてねぇよ。」
と、言ったところで料理が運ばれ、しばらくの間、2人は無言で料理を堪能した。
「美味かったな。」
「はい。そりゃもう青葉のオススメですからね。」
「青葉は情報通だからな。ところで、お前はどうやってそういう情報を集めているんだ?」
「そりゃあもう、足で稼いでますよ。」
「ほう、そりゃまた殊勝な。」
「ですよね!?と、言うわけでそろそろ取材の方に入らせていただきたいのですが?」
「何がと、言うわけでだ。まあ、美味い料理食わせてくれたからな。いいぜ。何が聞きたいんだ?」
「ズバリ!最近の提督の艦娘ハーレム計画について!」
「・・・・・・・・・は?」
「最近若葉さんを筆頭に艦娘を執務室に集めていますよね?そして、執務室で提督という立場を利用してあんなことやこんなことを・・・」
「おいばかやめろ。若葉はともかくほかの連中は向こうが好きでやってくれているんだよ。」
「ほうほう。」
「若葉は秘書官だし、叢雲は親友。時雨は俺の世話をしたいで、夕立にいたっては何もせずにただゴロゴロしてるよ。」
「それはそれは。つまり、噂されている様にエッチいことはしていないんですね?」
「ぶっ、そんな事してねぇよ!てか、そうな噂たってるのかよ!?」
「ええそりゃあもう。」
「まぁいいや。で、聞きたいことはそれだけか?」
「はい、もう大丈夫です。取材協力ありがとうございました!」
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「・・・て事だったんだよ。」
「へー、あんたもそんな噂立てられて大変ね。」
「全く・・・」
「で?あんたはしたくないの?エッチ?」ニヤニヤ
「お前までからかわないでくれよ。」
「ふふっ冗談よ。」
「提督!その・・・エッチなことなら・・・僕が!」
「あんたはちょっと遠慮しなさい」デュクシ
「あうっ」
「やれやれ・・・」
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「ふぅ。今日の仕事終わりっと。」
「お疲れ様だ。提督。お茶でも飲むか?」
「ああ。頼む。」
「しかし・・・」
「ん?どうした?」
「提督が取材をうけてから1週間がたつが、その事が書いてある新聞がなぜ出ないのだろうな?」
「まだ編集中とか?」
「昨日の事は記事になっていたぞ。」
「あれ?そうなんだ。じゃあ記事にするのやめたのかな?」
「かもしれないな。」
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(青葉か・・・青葉は来た時からあんな賑やかな奴で戦闘より取材の方が好きって奴だったな。最初こそは戸惑ったが根はいいやつだ。ただまあ、もうちょいゴシップは減らしてほしいがな・・・)
などと俺が考えていたら・・・
「あれ、提督じゃん。」
「加古、提督に失礼だよ。提督こんにちは。」
「ああ、加古に古鷹。よう。」
「提督どうしたの?なんか悩み事ー?」
「もう!加古!」
「いいんだよ。気楽にしてくれて。」
「そ、そうですか?」
「ああ、皆が気楽にしてくれた方が居心地もいいしその方が俺も気が楽だ。」
「ならこのままで、で?提督。なんか悩んで無かったの?」
「あ、そうそう。青葉の事なんだけどな。」
「青葉のことですか?」
「ああ、あいつ最近なんか悩んでないか?」
「いつもどんな記事を載せるか悩んでる。」
「そういうのじゃなくて・・・その・・・プライベートのことで。」
「プライベート?」
「ああ。なんか知らないか?」
「うーん。どうだろうね?」
「アタシも知らないなー。青葉に悩みなんて無さそうだけどなー。」
「そうか。ありがとう。」
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2人と別れてから俺は海岸を散歩しながら考えていた。そしたら・・・
パシャ
「お!いい表情ですねー!もう1枚!」
「青葉か、丁度いいや。ちょっと話さないか?」
「ええ!勿論いいですよ!」
(とは言ったもの・・・何を話そうか・・・今回は直接言ってもはぐらかされそうだし。)
「さあて!今回は何を取材しようかなー?」
「また取材か・・・本当に取材が好きなんだな。」
「そりゃあもう!取材しているとされている人のいろんな反応が見れるので取材は大好きです。」
「そうか・・・そうやって俺たちを気にかけてくれていたのか。ありがとうな。」
「いえいえ、元は青葉の取材から始まった事ですし。」
(青葉・・・本当にみんなの事を気にしてくれているんだな・・・)
「なあ?カメラ今あるんだろ?どんな写真があるかちょっと見せてくれないか?」
「勿論いいですよ!どうぞどうぞ!」
と言って青葉は俺にカメラを渡してくれた。
そこには色んな人が写っていた。俺をはじめ、若葉、叢雲、白露型が雨の中はしゃいでいるしゃしん。扶桑と山城が夕立や時雨に絡まれている写真。皆笑って楽しそうだ。
「へー、よく撮れてるじゃないか。」
「そりゃあもう!このカメラは青葉の体の一部と言っても過言ではないですよ!」
「そうなんだ。ところで、青葉はなんで写真を撮り始めたんだ?」
「・・・・・・・・・いつだったでしょうかねぇ?忘れてしまいましたよ。」
「そ、そうか・・・」
(こいつ・・・なにか隠してる。)
「な、なぁ青葉・・・」
「さて!提督。そろそろ戻りましょか。今日は時雨ちゃんの当番の日でしてよね?遅れたら心配されますよ。」
「あ、ああ・・・」
(なんだ?この感じ・・・明らかに何かを隠されている。でも、その何かが分からない・・・)
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「で、結局青葉の悩みは分からない。と。」
「ああ、なーんか隠しているとは思うんだけどなー。」
「そもそも、それが間違いじゃないのかい?」
「間違い?」
「うん。本当は青葉は僕達みたいに悩みはなくて、ただ提督の思い過ごしだった。て事は無いのかい?」
「あー、うーん。どうだろうな?でも。なんか・・・こう・・・言葉では言い表せない何かがあるんだよ。」
「そう・・・提督。何かあったら何でも僕に相談してね!」
「ああ、頼りにしているよ。」
「うん!」
(とは言ったものの・・・本当に青葉の悩みが分からない・・・うーん。)
しかし、写真をとったり取材をしている青葉は本当に楽しそうだ。本当に俺の思い違いか?
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「えー、本日はお日柄もよく・・・」
「提督ー!そんな堅苦しい挨拶はいいクマー!早くご飯食べたいクマー!」
「そーだよー、気楽に行こー。」
「そうですよ提督!北上さんがそう言っているんですから早くしてください!」
「わ、分かったよ。じゃあ、皆!今日は楽しんでくれ!以上!」
うちの鎮守府は月に1回こうして宴会を開いている。艦娘達の数少ない楽しみになっているようだ。
「おおー!皆いい表情ですねー!はーい!皆さん!撮りますよー!はーいチーズ!」
と、料理そっちのけで写真を撮ってる青葉。
「おい、青葉。写真もいいが、料理も食えよ?」
「大丈夫ですよ!写真撮っている方が楽しいですし。」
「そういう問題じゃないだろ?ほら、こっち来い。」
「じゃあ、お言葉に甘えて。失礼します。」
と、意外とすんなり横に座ってくれた。
「もぐもぐ・・・おお!このお刺身美味しいですね!」
「そうだろ!俺も好きなんだよ。」
「ほうほう。ちなみに提督の好きな料理とかって何ですか?」
「俺か?蕎麦とか、あっさりしたものが好きだな。たまにガッツリ肉食うけど。」
「なるほどなるほど。お!それならこれなんかどうですか?」
「お!タコの唐揚げか。いいね。酒が進む。」
「提督、お酌しようか?」
「時雨か、お願いするよ。」
「お酒、お好きなんですか?」
「ああ、あんまり強くないけどな。」
「ふむふむ・・・」
「と言うか、さっきから質問されてばかりだな。お前はどうなんだ?青葉。」
「青葉ですか?」
「ああ、好きな料理とかそういうの。」
「青葉は何でも好きですよ!強いて言うなら・・・皆さんの笑顔ですかね!」ドヤァ
「ははっ!青葉らしいな。」
「提督!僕が好きなのは提督だよ!」ギュ-
「分かってる分かってる」ポンポン
「・・・本当に皆さん提督のことが好きなんですね。」
「ああ、皆本当にいいやつだ。」
「・・・・・・そう・・・ですよね・・・」
「青葉?」
「ん?何ですか?提督。」
「いや、今ちょっと様子がおかしかったから。」
「いやー、ちょっと飲みすぎましたかね?これ以上はちょっとやばいのでちょっと自室に戻りますね!」
「大丈夫か?運ぼうか?」
「大丈夫ですよ。それでは」スクッ、スタスタ
(青葉・・・)
「悪い皆!ちょっと今日中に終わらせないといけない仕事を思い出した!」
「「「えー!」」」
「悪い!後は俺抜きでやってくれ!それじゃあ!」
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[青葉のお部屋]
コンコン
「青葉、俺だ。いるか?」
返事はない。中に人の気配はない。どこかに出かけているのか?
と、ふと窓の外を見ると、青葉が海岸に向かって歩いているのを見た。
(あいつ・・・どこに行くんだ?)
と、こっそり後をつけてみた。
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(見失った・・・青葉、どこだ?)
と、キョロキョロしてると。
(!?青葉・・・なの・・・か・・・?)
そこには俺の知る青葉はいなかった。海岸の方を身動きせず見ていて。無表情で涙を流していた。無表情?いや、無感動?いや、どんな言葉でも言い表せない顔を、青葉はしていた。
俺が立ち尽くしていると、青葉がこっちに気づいた。すると、すぐにいつもの顔になって
「おや、提督!心配になって見に来てくれたのですか?いやー、嬉しいですねー!」
「あ、青葉・・・お前・・・今の顔・・・」
「顔?顔に何か付いていますか?」
「いや・・・今の、表情・・・」
「どうしたんですか?青葉の顔に何か付いていますか?」
有無を言わせない拒絶。だが、怯んではいけない。俺は1歩近づいて
「青葉、話してくれ。」
「何をですか?」
「何もかもをだ。」
青葉は笑顔のまま無表情だ。俺は青葉と見つめ合いながら。じっと待った。
「・・・・・・提督は、若葉ちゃんの事をどう思いますか?」
「愛している。」
「即答ですね。」
「ああ、ついでに叢雲の事は親友だし、時雨と夕立は俺に懐いてくれる大切な人だ。勿論。お前を含めた他のやつも全員大切だ。」
「・・・そうですか。」
と、青葉は黙っている。
「・・・・・・・・・青葉には・・・そうゆう気持ちが分かりません。青葉は、人の気持ちが分かりません。青葉は、他人の思いが理解できません。周りの人が怖くて、ずっと笑顔で皆を騙していました。カメラ越しにしか人を覗けませんでした。ずっと、ずっと・・・」
何も言えない・・・俺は・・・何も言えなかった。
すると、青葉が俺に抱きついてきて
「大丈夫です提督。もう慣れちゃいました。提督は優しいから理解してくれようとしてくれるでしょうね。でも、理解してもらっても、青葉に感情が宿るなんてことはないんですよ。でも、お願いです。青葉の事・・・知っといてください。覚えといて下さい。忘れないで・・・下さいね?」
青葉はあの無表情の笑顔のまま泣いていた。
俺は・・・無力だ。俺には・・・この娘を助けることが出来ない。この夜の事を覚えておくことだけが。俺に出来る唯一の事だった。
そう思いながら、俺は青葉を抱きしめた。
長い上に思い話です。