しかし、彼はなかなか芸人として大成しない人生に悩んでいた
悩みながらもひたむきに現実と向きあい、夢に向かって生きていたが、そんな彼に容赦なく厳しい現実が降りかかる
現実に直面し、打ちひしがれるイザヨイだったが、ある1つの奇跡が彼に舞い降りる
第1話・まさかの出会い
俺の名前は飯沢洋一
「イザヨイ」という芸名でお笑い芸人をしている
お笑い芸人と言っても、テレビなどには殆ど出たことはなく、月一の事務所主催のライブに出るだけ
芸人だけの収入では到底生活なんてできるはずもなく、現在もバイトをしながら、やっとの思いで生活している
そんな俺の趣味はアニメで、好きがこうじてそれ関係の仕事が入ってきたこともあるほどだ
しかし、それはあくまでも仕事の話
本当に行きたい声優さんのイベントなどはバイトでやっとの思いで生活している俺はろくに行けない始末。
SNSなどでツナがった人たちとの集いなどのお誘いはあるものの、
無論行けるわけもなく、いつも大体1人でその応援している人の映像作品を1人で見て感想などをSNSに投稿してる活動ぐらいしかできていないのが現状だ
しかし、芸人は自分が選んだ仕事。夢を背負って芸人を始めたので大変だが辛くはない
いつか努力をしていれば身は結ぶ
長い夜でも必ず明けて新しい朝は来る
俺が好きな声優さんがそう教えてくれたから、一生懸命、頑張って、来たんだけど、まさかあんなことになるなんて…
今日は俺の所属する事務所のライブの日
事務所主催のライブは昼夜の二部構築なのだが、
昼の部で勝ち抜けできれば夜の部に昇格できる
逆に夜の部で最下位だった場合、昼の部に降格
そしてさらに昼の部で最下位だった場合は次の事務所ライブは休みになるのだが、そのまさかだった…
イ「クソォ…、マジかよ…」
そう、昼のライブに出ていた俺はまさかの最下位になってしまった
つまり、次の事務所ライブは欠席
来月は唯一の芸人の仕事が無くなってしまったということだ
これは辛い…
自分が好きで始めた事だけに現実を突きつけられた時の衝撃はハンパないものがある
しかし、まさかの出来事はこれだけではなかったのだ
事務所ライブ後覚束ない足取りでバイト先のコンビニに向かうと
バイト先からもとんでもない報告があった
イ「えぇ!?このコンビニ閉店するんですか!?」
店長「そうなんだ。本当に申し訳ないけどねぇ…。悪いけど来月末には閉めるから準備しておいてくれるかい」
おいおい…、冗談じゃねーって
ただでさえ芸人の仕事がタイムリーでなくなったってばかりなのに
まぁ、仕事があったところで大した給料は出ないんたけど
生命線を切り離されて今後どうやって生活すれば良いって言うんだ
はぁ、厳しいぞ…
仕事がなくなった時点で次の仕事を探すほかないのはそうなのだが
言っても俺も20代後半
ましてや仮にも本業である芸人の仕事との掛け持ちをしているような人間を雇ってくれるほど人生もなかなか甘いものじゃない
はぁ。これからどうしたら良いんだ?まさに路頭に迷うとはこのことなんだろうか?
その後、俺はバイトを終えて近くの公園で缶コーヒーを飲みながら大きなため息をついて休んでいた
するとそこに1人の女性が猛ダッシュで公園に走ってきた
夜分のこんな深い時間に女性がダッシュで走ってくる…。
大体事情は飲み込める
俺は女性の存在を黙認しながら
後で来るであろう奴らを待ち構えていた
たったった
ほぉら来やがった。男が2人か。
見た目的にヤンキーっぽくないから、
多分過激派のオタクって言ったところだろうか?
俺はすっとぼけたフリをして、その男2人に近づいていった
イ「どうしたんですかぁ?何かあったんですかぁ?」
芸人やってるサガか、猫かぶりの演技はお手の物である
男1「あぁ、あのぉ、今ここにその有名人の方が走っていったんで」
男2「ここの公園に走りこんで来たんですけど知りませんか!?」
ビンゴ、やはり過激派のオタクだ。
全く、こう言うやつらがいるから、
しっかりしてる他のオタクはおろか
当人って迷惑するって言うのにわかってないのかなぁ?
こう言う奴らは無自覚だってことがまたやっかいなところだ。
ちゃんと教えてやらないとこいつらのためにも今後のためにならない
イ「あぁ女性ですか?あっちの方向に走って行きましたよ?でも」
男1「でもなんですか?」
イ「多分そう言うことはやめた方が良いと思うんですよやっぱり。その人も走っていったんですよねぇ?」
男2「えぇそうですけど、それが何か?」
イ「考えてもみてくださいよ?あなたたちがその女性を追いかけてる姿を見て周りの人がどう思うかなんですよぉ。さらに何よりその追いかけられた女性が当の本人だった場合、その女性逃げてたんですよね?もし、その人がイベントやった時とかにあなた達の顔を覚えてたら…どうなるんですかねぇ??」
こういった無自覚の過激派は多少諭せばわかってくれる
無闇に持論を唱えて説得するよりかは発破をかけた方が案外ダメージになる
案の定、2人の男はどこかハッとした様子でトボトボと公園を後にしていった。
俺も公園の辺りをキョロキョロを見渡して、女性の姿を探して見たがどうやら無事に逃げられたらしい
女性の安全を確認し、俺も公園を後にしようとしたその時だった
「あ、あのぉ!!」
俺はどこか聞き覚えのある女性の声に思わず足が止まった
その女性の声は聞き覚えがあるなんてレベルのものじゃなかった
だってその女性の声というのは俺が心から尊敬してやまない憧れの人の声とあまりにも酷似、というか本人でもおかしくはないくらいに聞き覚えのある声だった
まさか、そんなわけがない。俺の憧れの人は人気声優だぞ?
セキュリティが厳しい昨今、おまけにさっきみたいな過激派がいる中でそんな超人気声優が1人で、こんなに深い時間にうろついているわけがないんだ
多分、声がそっくりな地下アイドルとかその辺だろう
平常心を保つため、俺は自分自身にそう言い聞かせながらゆっくりと声のする方へ振り返った
イ「いやぁ、全然僕は大した…、おぉ!!?」
「あ、あのぉ、ありがとうございました」
俺の自己暗示は見事に打ち砕かれた
振り返った先に立っていた女性は、俺より頭1つほど背が低く、髪型は毛先に軽くウェーブのかかったショートカット
間違いない…
この人は俺の憧れの声優・森坂澄海麗ことスミレさんだ!
でも、なんでだ!?今日はこの辺の近辺でイベントをやったという情報もなかったし、何より何故こんな深い時間に1人で出歩いてるんだ!?
色々聞きたいこと、話したいことはたくさんあったが、人間とは不思議な生き物である
本当にびっくりした時っていうのは脳が追いつかないのか?
まるで口が麻痺したかのように言葉が出てこない
俺はまさかの出来事にただただ驚愕し、あわあわするしかなかった
そんな俺の姿を見かねて心配になったのか、スミレさんは俺に近づいて顔を覗き込んで来た
ス「あ、あのぉ大丈夫ですか?顔が真っ赤ですけど?」
イ「あっ、い、いやあのあのあの…」
ヒィィ。近い近い近い!!近いって!
嬉しいけどお願いだ!これ以上近づかれると感情が溢れ出して抑えきれなくなっちゃうから!
このまま感情が溢れ出しちゃうと大きな声が出ちゃうよ!
そうなっちゃうとあなたを守った意味が無くなっちゃうから!
お願い気づいて!嬉しいんだけどお願いだから!
しかし、俺の思いとは裏腹にスミレさんはますます心配になったのか、さらに俺の顔を覗き込むようにまじまじと見つめて来た
もうだめだ!これは俺から逃げないとこの人に迷惑が掛かるし、何より俺の身が持ちそうにない!
だいぶおいしいシチュエーションだけど仕方ない
ここで冷静さを欠いた俺が大声を出したら間違いなくこの場はパニックだ!
イ「ぶ、無事で良かったですね!それでは僕はここで!」
身の危険を感じた俺はそそくさと立ち去ろうと足を急がせた
しかし、今日は何かとまさかの出来事が多い
スミレさんはその場を離れようとした俺の腕をしっかり掴んで来た
ス「あ、ちょっ、ちょっと待って!」
おぉぉ⁉︎なんでだぁ⁉︎なんで引き止めタァ⁉︎