【ARIA】 その、いろいろなお話しは……(連作)   作:一陣の風

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今回の作品は、不親切です。
そして気分は、ドラマCD!(鹿馬)

それでは、しばらくの間、おつき合いください。



第十話

「いい青空ね」

「ええ。風が心地よいわ」

「ぷいにゅ~ん」

「あらあら。社長もごきげんね」

「ああ。実にいい気持ちですなあ」

 

 

  第十話

『Conversazione sulla gondola di un giorno nell'inizio di autunno -Due persone divertenti』

 

 

「こうして、あなたと一緒にゴンドラに乗るのは、何年ぶりかしら」

「そうねえ……かれこれ、二十年ぶりかしら」

「二十年…もうそんなになるかしら……」

「お互い変わらないわねえ」

「ええ。 ほんと」

 

「お二人は、昔からこんな感じだったんですか?」

「とんでもないっ」

「ええ?」

「この二人は、昔っから仲悪かったのよ」

「ほへえ? それはどういうことですか?」

 

「どうもこうも、言葉通りよ。 昔からこの二人は、ライバルとして張り合ってたんだから」

「ライバル……」

「確かに、あのときのお二人のご活躍は、目を見張るものがありましたなぁ」

「あらいやだ。 からかわないでくださいな」

「ほんとですよ。 そんな活躍だなんて」

 

「いやいや。私はあのとき、あの時代。 あの変革のときに、その場にいれた幸せを、いまでも感謝しています」

「まあ、そんなこと言っても、何も出てきませんよ」

「ほんとに、ほんとに……」

「何にもでないの?」

「ほんとに、ほんとに……ふふふ」

「笑顔が恐いだろ?」

「あらあら……」

 

「考えてみれば、あれから二十年。 ふたむかしね」

「そうねえ。どうりでお互い……」

「歳をとった?」

「うふふふふ」

 

 

「あの頃の私は、ひたすらあなたに『追いつけ・追い越せ』だったわ」

「…………」

「『姫屋・不動のエース』とか言われてたあなたは、本当に素晴らしかった。 憎らしいほどね」

「ええ。 私も憧れていました」

「私は、そんな自覚はなかったけれど、みんながそういう目で私を見てくれるのは、嬉しい反面、とても恐ろしかったわ」

「恐ろしかった?」

「あらあら……どういうことですか?」

 

「私は、そんな気持ちは、ひとつもなかった。

 エースだなんてね。……悩んでもいたわ」

「悩んでいた?」

「ええ。 悩む-とゆうより困惑かしら。 

いつまでも私なんかがエースと呼ばれていて、いいんだろうかって……」

「…………」

 

「あの時、私はもう三十。 そんな私がいつまでも『不動のエース』って言われ続ける事は、正直不本意だった」

「不本意……」

「ええ。 実際、私より力のある子は、たくさんいたもの。 

この人みたいにね」

「…………」

 

「それに私は、エースだなんて事に興味はなかった。 

 ただ、ゆっくりと、日々、楽しくお仕事ができれば、それだけで……

 でもあの時は、ただ毎日が、忙しく過ぎていくだけで……」

「だから私達は、あなたに追いつこうと必死だった」

「…………」

 

「なんとか、あなたをエース・プリマの位置から引きずり降ろそうと、みんな一生懸命だったわ。 もちろん、私が先頭っ」

「ええ。 あの時のあなたは、とても恐かった。 鬼気迫るものがあったわ」

「必死だったから…必死で、あなたに追いつき、追い越そうと思っていたから……みんなも…誰もが……」

 

 

「助けてあげたかったんですね」

「え?」

 

「必死で追いつこうとして……一緒になろうとして。

そうやって、少しでも代わりになって、助けたかったんですね」

 

「まあ。驚いた」

「おやおや」

「うふふ… 分かるの?」

「はひ。 だって、お二人は仲悪いんでしょう?」

「あらあら」

「あははは。 こりゃ一本取られたな? やるなぁ、君」

「ふむふむ」

「ぷいぷぅ~い」

 

 

「そして、私は退社することを決めた……」

「この人は、夜。 急に私の部屋に入ってくるなり言ったのよ。 

 相談があるって。 私、今月で退社するの-って。

 あれは相談じゃなくて、報告っていうのよ!」

「あらあら」

「私は私の時間を大切にしたいから姫屋を辞めるんだって。 

 新しい店を作るのって。 

 新しい店で自分の時間で仕事をするのって。

 どこで知り合ったか知らない火星猫を連れて」

「ぷいにゅ!?」

 

「でもあなたは、アリア社長を見て、一番に言ってくれたわ。 瞳の綺麗な猫さんねって……」

「…………」

「ねえ。アリア社長。 私以外で社長が仲良くなったのは、彼女が最初ですものねぇ」

「ぷいぷ~い」

 

「恥ずかしい話を……じゃ。あの時、あなたが泣いた話、バラすわよ」

「ああ…えと…それは……」

「おや。珍しい。慌てています?」

「まっ。いやだわ」

「んん。 それはどういうことですかな?」

「いえいえ。そんな大げさなことではなくて…」

「何、いまさら照れてるの? 充分、おおげさな話よ」

「…………」

 

「部屋に入ってくるなり、私に退社宣言をした彼女は、そのあと、急に泣き出して……」

「あらあら……」

「私の我がままで、みんなに迷惑をかけるからって。 

 まるで姫屋に恩を仇で返すようだって。

 ごめんなさい、ごめんなさいって……それが、思い上がりなのよ!」

「…………」

 

「だから私は言ってやったの。 

 あなたひとり、いなくなったくらいで、この姫屋の屋台骨は揺るがない。 いえ、揺るがせない。 

 あなたのいなくなった穴は、私達で充分、埋められる。

 だから、さっさと出て行きなさい!-ってね」

 

 

「そうやって後押ししてあげたんですね。 安心して退社できるように……」

 

 

「……思うんですが。 このウンディーネさんは、飄々としている割には、鋭いですなあ」

「うむ。 さすがは、ARIA・カンパニーの跡継ぎってことだね」

「あ…いえ、そんな……」

「いいのよ。 これでも、このお二人は、あなたの事、誉めてるんですから…うふふ」

「これでもって……」

「ええ。その通り。 あなた、素晴らしいですな」

「はひ…恥ずかしいです……」

「あらあら」

「ぷいぷい~い☆」

 

 

「そして私は、アリア社長とARIA・カンパニ-を始めた。

 みんなに背中を押されてね。 ありがとう」

「何をいまさら……」

「でも、今更ながら大変だったんですよぉ」

「ん?」

 

「だって、一番の稼ぎ頭がいなくなったんだ。 もう見る間に業績は悪化…全員、顔色なし」

「…………」

「でもね。 だからこそ面白かった」

「面白かった…ですか?」

 

「ああ。また、いちからやり直せる楽しさがある-ってヤツだな。 

 みんな一丸となって、そりゃあ、がんばったサ」

 

「ええ。

 がむしゃらだったけれど。

 忙しかったけれど。

 疲れてはいたけれど。

 充実してたわ……

 毎日毎日。来る日も来る日も、お客様を、お乗せしてゴンドラ・クルーズをした。

 誰も彼も、みんな一生懸命。 楽しかったわあ。 

 ……それもこれも、みんなあなたのせいね。 ふふふ」

 

「…………」

「ウンディーネさんっ」

「は、はひ?」

 

「今の、分かる?」

「おやおや……いぢわるですねえ、ホントあなたは……」

「そうかあ?」

「ま。 だからこそゴンドラ協会の理事長をされてるんでしょうがね」

「ぬかせっ。 で、どう思います?」

 

 

「は、はひ。 

 えと……つまりそれは、やっぱり後押しと同じで、退社したのが理由で、業績が悪化したって言われないために……

 そのせいで、ARIA・カンパニーが、逆に悪い言われ方をされないようにって……

 姫屋のみなさんが、頑張ってくれたんですよね」

 

 

「あらやだ。 ホントに鋭いわね」

「うむ。やはり素晴らしい」

「まさに、まさに」

「あわわ……ありがとうございます」

「うふふ」

「ぷいにゅ~ぷいぷい☆」

 

 

「ねえ、明日香」

「ん?」

「ミュージアムの館長のお仕事が終わったら、城ヶ崎に来ない?」

「え?」

「なんにもない田舎だけど、他の何処にもない自然と時間があるわ……

 それに、あなたとなら楽しく過ごせそう」

「……ばっ。

 急に何言い出すの……わ、私はまだ今の仕事が楽しいの!」

「まっ。 ほっ、ほっ、ほっ…」

 

「わ、私はどうですか? 私も田舎で暮らしたいなあ」

「あら……あなたはまだ、ゴンドラ協会の指導員として、仕事が残ってるのでしょう?」

「ええ~え」

「おや……それはゴンドラ協会の指導員としての現状に、不満があると言うことかな?」

「い、いや、別にそういう意味では……」

「だから、いぢわる言うのは止めなさいって」

「いや、昔から言うだろ? 

 『 かわいい子には、タビをはかせて、達者でな 』って」

 

 

 「『 言わない。言わない。言わない 』」

 

 

 

「ねえ、ウンディーネ…いえ、水無灯里さんでしたっけ……

 ちょっと、お願いがあるのだけど……」

「は、はひ。 なんでしょうか?」

「あなた逆漕ぎでゴンドラを操舵するのが得意なんでしょ? 

 一度、漕いでみてくれないかしら?」

「ええ~え!?  い、いえ、でも、それは……」

「ダメ?」

「いえ、その…ダメって言うか……協会の方が……」

 

「おい。なんか俺達、見つめられてるぜ。惚れられた?」

「また、バカなことを……分かってるんでしょう?」

「はいはいはい。 まったく君は冗談が、ホント通じない」

「あなたが、冗談、通じ過ぎなんですよ。 で、どうなさるんですか」

 

「お前さんも大概、いぢわるだな……

 私だって彼女の逆漕ぎってのは体験してみたかったんだ。

 分かってんだろ?」

「ふぉ、ふぉ、ふぉ……実は、私もです。 では、私達は……」

「ああ、お休みなさい。 寝てる間、何やってるか、俺達は知らんけんねっ。 zzzz……」

「ほっほっほっほっほっ…では。 zzzz……」

 

「寝ちまったぜ?」

「アリシアさん……」

「うふふ。いいんじゃないの。 外洋だし。 みんな期待してるわよ」

「うん」

「ええ」

「ぷいにゅっ」

「お願い。灯里さん」

 

「は、はひ……

 そ、それでは失礼して、みな様の視界をさえぎる漕ぎ方をさせていただきます」

「わくわく…わくわく……」

「アウグスト・v・ビスマルク、ゴンドラ協会理事長。 口から漏れてますよ」

「アイザック・セルダン、ゴンドラ協会首席理事。 君は寝てるんじゃないのかね」

「狐と狸だな……」

「アンジェリア・アマティー技術指導員…なんでしたら……」

「即時の城ヶ崎暮らしを命じようかしらん?」

「ひえっ」

「あらあら。うふふ」

 

 

「では、水無灯里。行きますっ。 んしょ!」

「おおっ」

「これはっ」

 

「あははは。 早いぞ。早いぞ」

「あらあら。また一段とスピードが増したわね」

「ぷいぷいにゅううう~ん!」

 

「ああ……いい風ね」

「ええ……ホント、気持ちいい」

 

「おおお。あんなにも早く景色が通り過ぎて行く。

 カ・イ・カ・ン……」

「いやっほー! それいけ~! もっと行けぇ! どんどん行けぇ~! ハイヨー・シルバー!!」

「理事長…それから、首席理事。

 ……お二人とも寝てるんじゃなかったんですか?」

「『 あ” 』」

「うふふふふ」

 

 

「秋乃」

「なあに?」

「さっきの話…」

「うん?」

「城ヶ崎の話。考えてあげてもいいわよ……」

「あらまあ。どうしたの?」

「か、カン違いしないでね。 私は別に、あなたと暮らしたいわけじゃないんだから。

 ただ、静かに時を、静かな自然の中で、静かに過ごすのもいいかなって、ちょっと思っただけよ」

「ええ 私もあなたと暮らすなんて、ごめんだわ。 

 でも……ありがとう」

「な、仲悪いだろ」

 

「素敵ンぐです」

「ん?」

 

「だって、口ではそう言っておきながら、大切で大事なその時には、互いが互いを思いあって。

 信用しあって。

 信頼しあって。

 でも最後には、やっぱり憎まれ口を、笑いながら言い合う。 

 とっても素敵な仲悪さんです」

 

「灯里さん」

「は、はひ。明日香さん」

 

「恥ずかしいセリフ禁止!!」

 

「ええ~元祖ですかあ?」

「あははははは」

「ほっほっほっ」

「あらあら、うふふ」

「ぷいぷいにゅ~☆」

 

 

「ああ…本当に、いい青空だわ」

「ほんと。素敵な風ね」

 

 

 

 

「ゴンドラ協会に到着しました」

 

「ありがとう、灯里ちゃん」

「ご苦労様。水無くん」

「お世話さまでしたな」

「楽しかった。 また頼むよ」

「灯里さん。 今度、ミュージアムにも遊びにおいでなさいな。待っているわ」

「はひ。 みなさん。 ありがとうございました」

「ぷいぷ~い」

 

 

 

「ねえ、アリシアさん」

「なあに? 灯里ちゃん」

「私も、あの人達のようになれるでしょうか?」

「ん?」

 

「私もいつか、あの人達のように、素直で穏やかで、けれど悪口も言い合えるような大人になれるでしょうか」

 

「うふふ……大丈夫なんじゃない」

「ほへ?」

「だって……ほらっ」

 

「あっ。 灯里ぃぃ。そんなトコでなにやって……げっ! アリシアさああああん!」

「藍華先輩。どうどうどう……」

「藍華ちゃん! アリスちゃん!」

 

「こりゃ灯里。

 アリシアさん独り占めにするの禁止。 久しぶりなんだから」

「藍華ちゃん……」

「藍華先輩。でっかい失礼です。灯里先輩。いちど厳しく叱ったほうが……」

「アリスちゃん……」

「いいの。いいの後輩ちゃん。 灯里には、この程度で」

「…藍華ちゃん。…アリスちゃん」

 

「あらあらあら。 みんな久しぶりね。 どう、このあと、一緒にお茶でもしない?」

「うきゃあああス。 はい。もちろん喜んで!」

「ですから藍華先輩。 どうどうどう」

「わんっ。 って、ちっがああああう!」

 

「大丈夫……」

「ん? なに灯里」

 

「大丈夫だよ……」

「え? 灯里先輩?」

 

「ちょ……きゅ、急になによぉ。 灯里ぃ! ぐぇ……」

「灯里先輩。急に抱きつかれても……く、苦しいです」

 

「大丈夫…うん。 きっと、きっと大丈夫だよ……」

 

「なに? いったいなんなのよぉ」

「でっかい、わけ分からないです」

「あらあら。うふふ」

「ぷいぷいちゃ~い」

 

二人を抱きしめながら、静かに涙する灯里。

困惑しながらも、そんな灯里をやさしく抱きとめる、藍華とアリス。

アリシアとアリア社長は、そんな三人を、優しく、いつまでも見つめていた。

 

夏の暑さも過ぎ、ようやく風が涼しくなり始めた、そんな初秋のある日のことだった。

 

 

 

                      

「Conversazione sulla gondola di un giorno nell' inizio di autunno-Due persone divertenti」          

初秋における、ある日のゴンドラ上の、ちょっとした会話 -おかしな二人 -la fine-

 

 

 




後書きのような、なにかー

「Conversazione sulla gondola di un giorno nell' inizio di autunno-Due persone divertenti」          
 初秋における、ある日のゴンドラ上の、ちょっとした会話 -おかしな二人

本編タイトル。
なぜこんなクソ長いタイトルになったかと申しますと、お仏文学っぽくねぇ? と。
内容もこんなたぶんに「実験劇場」的なので、ちょっと格好つけてみたかんです(鹿馬)

今回はワザと「地の文」は外しています。
なんとなく鼻についたからです。
なにせ私の文章は書き込む過ぎて読みにくいですが故(涙)
ですから、こんなお話になってしまいました。
みな様の脳内補完に期待します(土下座)

 そんな訳で解説をー

 天地 秋乃(グランマ)&明日香・R・バッジオ
元「姫屋」のエース・プリマなお二人。
グランマはさて置き(笑) 明日香さんは現在は水先案内人ミュージアムの館長さん。
グランマの引退で傾きかけた姫屋を立て直した張本人。
引退式はゴンドラ協会の公式行事として挙行された程の人物です。

 アンジェリア・アマティー
こちらも元「姫屋」のウンディーネさん。現在はゴンドラ協会所属。年代的には晃の直属上司。前回の拙作「藍出ル青」にも、ちょこっと出演(笑)

 アウグスト・V・ビスマルク&アイザック・セルダン
ゴンドラ協会の理事と主席理事。
アリスのプリマ進級時や、アリシアの引退式に登場。
作者はこのようなちょい出の脇役(失礼!)が、たまらなく好きなのです。

 アリシア・フローレンス
この時点ではすでに引退して、ゴンドラ協会のお仕事をしています。

 灯里&藍華&アリス
きっとこの三人は、どこまでいっても、この三人なんでしょう(笑)

 アリア社長
はっ!? ヒメ社長とまぁ社長は!?(大鹿馬)


寒い割にはすでに花粉が飛び交っているようです。
私はぜんぜん大丈夫なのですが、愚妻はすでに鼻がトナカイさんになっています。
みな様もどうかご自愛ください。
次回は記念すべき第11話☆ という事で、PART-10までかかる愚長編を掲載させていただきます。呆れず、嫌わず、御贔屓にしていただければ幸いです。

 それでは、もうすぐ春永にー
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