【ARIA】 その、いろいろなお話しは……(連作) 作:一陣の風
このお話しはなんと! 三部構成です!
いえ、ただたんに調子にのって書きすぎたら、収拾がつかなくなったってだけなんですが……(涙)
一応、今月中(今年中?)に三本全部投稿させていただく予定です。
どうか諦めず、最後まで読み進めていただけますよう、ひたすらにお願いいたします(平伏)
それではしばらくの間、お付き合いください。
< ETA-4620M >
「先輩方。オレンジ・ぷらねっとの七不思議ってご存知ですか?」
突然、アリス・キャロルが玉子焼きを齧りながら聞いてきた。
「七不思議?」
杏が、よせばいいのに鮭の身をほぐしながら聞き返す。
「はい。実はちょっと前に、ネオ・ヴェネツィアの七不思議っていう事件がありまして……
それならオレンジ・ぷらねっとにも、同じ様なことが、あるんじゃないかと」
「そういえば、そんな話聞いた事あるわ」
「杏?」
「どうですか先輩方。私と一緒に、七不思議を探してみませんか?」
「うん。それは楽しそうね」
「杏ってば」
「ミステリィですよね、でっかい謎ですよね」
アリスちゃんが、目をきらきらと輝かせながら言う。
私はトーストをかじりながら、ため息をついた。
第七話 『 sette si chiedono 』 前編
私の名前は、アトラ・モンテェウェルディ。
この水の惑星アクアの都市、ネオ・ヴェネツィアで、ウンディーネと呼ばれる水先案内人をしている。
階級はシングル(片手袋)
まだ一人では、お客様を乗せる事はできず、プリマ(手袋なし)と呼ばれる一人前のウンディーネが同乗している時だけ、お客様を乗せて観光案内ができる、半人前。
私の前で、和風朝食セットを食べている、アリス・キャロルは、そのプリマにペア(両手袋)の見習いから飛び級昇進した
我がオレンジ・ぷらねっとの期待の新星。
でも、その実、まだまだ夢見がちな、15歳の女の子。
「えっと、まず。三階にある『開かずの間』でしょ。次に、夜中、どこからともなく聞こえてくる不気味な唄声。それから……」
私の横に座って、アリスちゃんと同じ、和風朝食セットをつついている杏が妙に嬉しそうに言う。
違うのは納豆がついてるか、ついていないかくらい。
ちなみに私は、この納豆という食べ物が苦手だ。
だって発酵してるのよ。
糸引くのよぉ!
杏(あんず)
夢野 杏は、私と同じシングルのウンディーネ。寮では同室の親友。
私と一緒に、トラゲットと呼ばれる、大運河(カナル・グランデ)を渡る、渡し舟をしている。
で、名前の通りの夢見がちな女の子。彼女側の壁の棚は、ぬいぐるみで一杯だったりするのだ。
だから、アリスちゃんと杏の会話ともなれば、朝っぱらから、こんな話になる!
「ちょっと、杏。いい加減にしなさい」
「それから、中庭を走り回る創業者の銅像。夜中ひとりでに鳴るピアノ……」
聞いちゃいない……
「あと……」
アリスちゃんが、ちょっと声を低める。
「この食堂」
「食堂?」
「はい。夜中に何かが食堂を這い回るそうです。 ずる、ずる、ずる……って警備の人もコックさんも、でっかい知らんぷりですが……」
「はうあああ。 や、やめてよ、アリスちゃん……」
私の向かい。 アリスちゃんの横に座ったアテナさんのスプーンを持つ手が止まる。
アテナさん。
アテナ・グローリィさん。「セイレーン(天上の謳声)」の通り名を持つ、オレンジ・ぷらねっとのエース・プリマウンディーネ。
でも、ドジっ子。
「そういう恐い話はしないでね……はぐふぅ!」
突然、アテナさんが悶絶し始める。
「アテナ先輩…ですから、ちゃんと冷ましてから食べてくださいって、いっつも言ってるでしょ?」
アリスちゃんが、冷たく言う。
アテナさんは、熱々の中華粥を、そのまま口に入れてしまったのだ。
ぐおおおおおーと、妙な踊りをおどっているアテナさんに、私は、お水を渡してあげた。
「はふう……ああ、ありがとう。アトラちゃん。助かったわ」
「いえ、どういたしまして。いつもの事ですから」
「はい。でっかい、いつもの事ですね」
「いつもの事ですよねぇ」
「ええ~ぇ」
アテナさんは、いつもこんな調子。
だからドジっ子。
信じられないほどの、ドジっ子。
だけど、それすらも含めて、みんなから愛されている、偉大なるドジっ子プリマ。
「アトラ先輩は、いつも、でっかい冷静です」
「え。そ、そんな事ないわよ」
「アトラ先輩!」
-びしっ
と、音が鳴るくらいの勢いで、アリスちゃんが言い放った。
「私と一緒に、オレンジ・ぷらねっと七不思議を解き明かしてみませんか?」
「えええ?」
「あっ。それはいいかも。 だってアトラちゃん、ミステリィ大好きだものね」
「杏ぅ?」
「それなら、なおの事、私と一緒に不思議を、でっかく解き明かしましょう!」
「いえ、アリスちゃん?」
「それはいいわね。名探偵アトラちゃん登場ね」
「アテナさんまで……」
私は苦薬を飲まされたような顔になっていたに違いない。
確かにミステリィは、子供の頃から大好きだ。
ミドルスクールの時は、夢中になって夜中まで本を読みすぎ、今のように眼鏡のお世話に……
その時は、人と関わり合うより、本を読んでいる方が好きだったのだ。
そしてそれは、オレンジ・ぷらねっとに入った時も続いていて……
でも、ただ読むのと解くのは、また別の話なのになぁ。
それに時期が悪い……
私は小さく、ため息をついた。
< ETA-4560M >
「でもさ。アリスちゃん」
朝食の後、杏とアリスちゃんは、ゴンドラ乗り場に足を運びながら、まだ七不思議の話を続けていた。
「さっきの話だと、五つしか不思議はないわよ?」
「そうなのです。杏先輩。 実は、七つ目の不思議に遭遇すると、でっかい大変な事が起こると言われてます」
「その話も、聞いた事ある」
「はい。ですから、この不思議は六つしかないハズ…七つ目が解明されてしまうと、でっかい大変が起こってしまうからです」
「なるほど……」
いや、杏。
そこは納得するとこなのか?
「でも。そうなると、やっぱり後ひとつ、不思議が残っているわね」
「はい。きっと実は、その不思議は私達の目の前に残っているのではないかと……」
私達が、わいわい言いながらゴンドラ乗り場につくと、まずオール置き場に向かった。
そこには、何十本ものオールが壁にかかっている。
オールには、それぞれ番号がふってあり、ウンディーネは、その決められた自分のオールを手に取り、ゴンドラに向かうのだ。
「あれ?」
「どうしたのアリスちゃん」
「いえ、私のオールがなくって……」
「え?」
「私はいつもアテナ先輩の横に掛けるようにしてるんです。 昨日ちゃんとここに掛けたハズなのに」
「な、なにかのカン違いじゃない。ともかく探してみましょう」
私はすばやく杏を引っ張ると、オールを探すふりをして、アリスちゃんから少し距離をおいた。
「杏。あなた、ちゃんとやったの?」
「うん。でもあれぇ。もしかしたら間違えちゃったかも……てへっ」
「あんたねぇ!」
「ふげげげげっ」
私は怒りのあまり、思わず杏のほっぺたを、両手でつねってしまっていた。
「あったわよお」
少し離れたところで、アテナさんが声をあげる。
「ああ。アテナ先輩、ありがとうございます」
あわてて駆け寄るアリスちゃん。
そこには確かにアリスちゃんのオール、<NO-18>が掛けてあった。
「どうして、こんなところにあるんでしょう……」
「あだだ…さ、さあ。だから、アリスちゃんのカン違いじゃない?」
「そうそう。人は誰でも自分のことは、よく分からないものだから」
「そんなハズは……」
「そ、そうだ。アリスちゃん。これこそ六つ目の不思議よ」
「ちょ、待っ……杏?」
「勝手に動く、オール。これが不思議でなくて、なんなのでしょう!」
「いや、杏。いくらなんでも」
「そうですねっ」
「納得したあ!?」
「アトラ先輩っ。ついに最後の不思議が私達の前に姿を現しました。 さあ、でっかい不思議に挑戦です!」
アリスちゃんが、小さくガッツポーズを決める。
うわぁ。すごいやる気。どうするの、コレ?
杏が、私にだけ見えるように、こっそりと手を合わせ、頭を下げた。
< ETA-3540M >
深夜・零時。
私と杏。
そして、アリスちゃんは、夜の人気のない廊下をゆっくりと歩いていた。
目的地は「開かずの間」
そこは、オレンジ・ぷらねっとの宿舎西側三階の一番端にあった。
「誰もいませんね……」
アリスちゃんが、ささやくように言う。
「もともとこの階は、会議室や資料室、倉庫なんかになってるから、この時間には誰も通らないわ」
「なるほど。アトラ先輩、でっかい理論的で明快な推理です」
「いや、そこまでは……」
「さあ、着きました」
私達は「第13款待(かんたい)倉庫」、通称『ウェン・リーの間』の前にたどり着いた。
「ここが『開かずの間』」
そこには、何の変哲もない扉があった。
「まず、この扉は異常です」
「アリスちゃん、どうゆうこと?」
「杏先輩。この鍵を見てください」
「これは……」
そこには暗証番号を打ち込むタイプの、頑丈な錠がかかっていた。
「こんなに厳重な警備をしなければならないなんて……匂いますね」
「い、いや、アリスちゃん。それは単に、この倉庫には、何か大切なモノが保管してあるって事じゃ……」
「でもアトラ先輩。それにしても、この電子錠は、あまりにも厳重過ぎます」
そう言って、アリスちゃんは電子錠に触ろうとして-
「だめっ。アリスちゃん!」
私の叫び声に、アリスちゃんの動きが止まる。
「ど、どうしたんですか?」
「触らないで。もしかしたら警報装置と連動してるかも」
「あ…そうですね。でっかい、そうかもしれません」
あわてて手を引っ込めるアリスちゃん。
「そこにいるのは誰です?」
突然、私達は暗闇から声をかけられた。
この声は……
「寮長さん?」
そこには、やさしい顔をした、小柄な、おばあさんが立っていた。
寮長さんは、ここオレンジ・ぷらねっとの宿舎寮の管理人さんだ。
いつも柔らかな物腰で、でも時には厳しく、私達に接してくれる。
私達ウンディーネの健康管理から、呼び出し、清掃、洗濯、消耗品の調達等の雑事も引き受けてくれる、文字通りの管理人さん。
でも、中でももっとも私達にとって大切なことは、彼女が私達のよき『相談相手』だということだ。
なかなか進級できないシングルや、入ったばかりで、ホームシックにかかったペアなんかの相談を、いつも親身になって聞いてくれる優しい人。
彼女のおかげで立ち直ったウンディーネは数知れない。
だから私達は、こっそりと彼女を事を『お母さん』と呼んで頼りにしていた。
実を言えば私も、昔はよくお世話になったものだ。
「アリス・キャロル? こんな所でなにしてるの?」
「いえ、その……」
「明日もお仕事なのだから、夜更かしせず、早く部屋に帰ってお休みなさい」
「……はい」
「さあ、アリスちゃん。行きましょう」
「あの、お母……寮長さん」
促す私達を無視して、アリスちゃんは『お母さん』に疑問をぶつける。
「どうして、この部屋は鍵が……こんな頑丈な鍵がかかっているんですか? それも『開かずの間』って言われるほどの……」
「ここは、倉庫ですからね」
寮長さんは、さも当然のように答えた。
「ここには、オレンジ・ぷらねっとの貴重な物品や、社外秘資料などが保管されているの。だから厳重に保管してるのよ」
「そう……なんですか?」
「ええ。だからこの鍵の番号は、私やアレサ部長を含めて数人しか知らないの」
「……あと、どうしてこの部屋は『ウェン・リ-の間』って呼ばれてるんですか?」
「え? さ、さあ。それは私も知らないわ」
「知らない?」
「ええ。いつの間にか気が付いたら、そう呼ばれるようになっていたわね」
「そうなんですか……」
「さあ、アリスちゃん。行きましょう」
私は、アリスちゃんの手をとると、足早にその場を離れた。
去り際に振り向くと、寮長さんが小さく手を振っていた。
< ETA-2820M >
「………ピアノ」
「え?」
急にアリスちゃんが立ち止まった。
翌日の深夜、零時。
再び、私、杏、アリスちゃんの三人は「不思議」探索をしていた。
「どうしたの。アリスちゃん」
「先輩方。ピアノの音が聞こえませんか?」
「え? うんと……杏、聞こえる?」
「えと……」
私はすばやく、杏の足を踏みつけた。
「あうっ。き、聞こえない。何も聞こえないよ。アリスちゃん」
「どうしたんですか? あっ、今。小さくですが確かに、でっかい聞こえました」
「で、でも。私も杏も何も聞こえなかったわ」
私の再びの『特別な合図』で、杏も慌てて、うなずく。
「アリスちゃんの気のせいじゃ……」
「いえ。確かにピアノの音が…これは七不思議のひとつ。ひとりでに鳴るピアノでは……行きましょう」
「アリスちゃん?」
アリスちゃんが、脱兎のごとく走りだす。
私と杏は、あわててその後を追いかけた。
「アリスちゃん。走ると危ないわよ」
「アリスちゃん。待って。待ってってば」
「先輩方。そんなに大声をあげないでください。でっかいうるさいです!」
ドラバタと足音も高らかに、私達は音楽室の前に到着した。
ちなみに音楽室も、第13款待倉庫と同じ西館にある。
もっともこちらは、二階だが。
「ここも鍵がかかってる……」
アリスちゃんが、扉を調べながら言う。
今度は間に合わなかったのだ。
「やっぱり、何かのカン違いじゃ……」
「アトラ先輩。でも私は、はっきりとピアノの音を聞いたんです」
「でも、アリスちゃん。こうして鍵はかかっている。と、ゆうことは、中には誰もいない……」
「ホントでしょうか?」
「え?」
「ホントに中に誰もいないんでしょうか?」
「も、もちろんよ。鍵がかかってるんだし」
「そ、それに、中に誰かいたんじゃ、ひとりでに鳴るピアノじゃなくなっちゃうよ」
「う……杏先輩。するどいです」
-おっ、杏。ナイス・ツッコみ
これなら今夜は………
「じゃあ。中に入って調べてみましょう」
「なんですってぇぇぇぇえ!?」
「ど、どうしたんですか? アトラ先輩。そんな大きな声で」
「う、ううん。なんでもないわ」
「もう、でっかい、びっくりするじゃないですか」
「アリスちゃん。でも鍵かかってるわよ」
杏が、ドアノブを、がちゃがちゃと触りながら言う。
- 気づいてくれたか
「大丈夫です」
そう言うと、アリスちゃんは、おもむろに髪からヘヤピンを抜き取った。
「こんなこともあろうかと、用意しておきました」
そして器用な手つきで、ヘヤピンをドアノブに突っ込むと鍵を開けるアリスちゃん。
「ちょ……アリスちゃん。いったいどこで、そんな技を!?」
「前にも灯里先輩達と、ゴンドラ練習の時に、同じことをやったことがあります。でっかい一般常識です」
「『 違う違う違う! 』」
私と杏は、同時にツッコんだ。
< ETA-2810M >
「失礼しま~す」
そっとドアを開ける。
防音処理されたドアは、結構重い。
中は、当然のことながら真っ暗だ。
「灯りのスイッチは……」
「だめよ、アリスちゃん。灯りをつけちゃ」
「アトラ先輩?」
「昨日の倉庫の鍵のこと忘れたの? こんな夜中に電気なんか点けたら、それこそ警備の人が飛んでくるわよ」
「あ……確かに」
「幸い今夜は月灯りがあるから、窓のカーテンを開ければ、見えないほどではないわ」
「はい」
「じゃあ、杏とアリスちゃんは、部屋の中を調べて、私は隣の準備室を見てくる」
「らじゃ!」
「でっかい了解です」
私は、カーテンを開けながら部屋の中を探索する二人から離れて、準備室と書かれたドアに近づいた。
ドアノブに手をかけ、ゆっくりと回す。
ドアを開け、中をのぞき込む。
小さな部屋だ。灯りをつけなくても、音楽室に差し込む月灯りで、中の様子は、手に取るように分かった。
「アトラ先輩。そちらはどうですか?」
アリスちゃんが近づいてくる。
私はゆっくりとドアを閉めると、少し大きな声で言った。
「なにも、誰もいないわ。そっちはどうだった?」
「こちらも誰もいません。でもこんなものが……」
それは、携帯式のミュージック・プレイヤーだった。
「これは?」
「これが電源が入ったまま、床に置いてありました」
「ちょっと貸してみて」
私は、ミュージック・プレイヤーを受け取ると、再生のスイッチを入れてみた。すると-
「これは……」
音楽が流れてきた。それは『祝福の歌』だ。
- おいおい
「これがさっきアリスちゃんが聞いた、ピアノの正体ね」
「え?」
「なにかの加減で、このプレイヤーのスイッチが入って、その音がアリスちゃんの耳に入ったのよ。さすがは耳がいいね」
「あああ、ありがとうございます」
「アトラちゃん。もうすぐ警備員さんの、巡回の時間よ」
杏が時計を見ながら言う。
-よし。ナイス・フォロー
「分かったわ。杏。アリスちゃん。とりあえず、ここを出ましょう」
「らじゃ」
「でっかい了解です」
「これで、ひとつ目の不思議を解き明かしたね」
「杏先輩。まだまだです。まだ、ひとつしか解き明かせていないんです」
う~ん。なぜにアリスちゃんは、こんなにも不思議にこだわるのか。
誰か教えてください。
「とりあえず今夜はこれで解散ね。寮長さんじゃないけど、あまり夜更かしは……」
「ひっ」
突然、杏が私にしがみついてきた。
「な、な、何? 杏。ど、どうしたの。わ、私にそっちの趣味はないわよっ」
「な、何か………」
「へ?」
「なにか今……」
「え?」
「なにか今、私たちの後ろを通ったあ!」
「えええ?」
「私も見ましたっ」
「アリスちゃん?」
「な、なにか灰色のものが、私達の後ろを横切って、階段を上がっていきました」
「ええ?」
「追いかけましょう!」
再び、脱兎のごとく駆け出す、アリスちゃん。
- いけない! あのタイミングでは間に合わない。
「アリスちゃん。危ないわよ。アリスちゃん!」
「うわあん。待って待って待ってってばっ。ひとりにしないでぇ」
そして再び、私達は、アリスちゃんを大声で叫びながら、追いかけるはめになった。
< ETA-2790M >
三階に向かう階段の踊り場で、私はようやく、アリスちゃんに追い着いた。
「待って、アリスちゃん」
私は、アリスちゃんの腕をつかむと、強引に引き止めた。
「アトラ先輩。なぜ止めるんですか」
「アリスちゃんっ。いえ、オレンジ・プリンセス」
「は、はい?」
急に自分の通り名を呼ばれて、アリスちゃんは戸惑ったように足を止めた。
【 通り名 】
それは、プリマ・ウンディーネだけが持つことを許された、もうひとつの名前。
一人前の証。
そしてアリスちゃんのそれは『オレンジ・プリンセス(黄昏の姫君)』
私は頭をフル回転させて、答えを見つけ出そうとしていた。
「あなたは、オレンジ・ぷらねっとのプリマ・ウンディーネなんです」
「は、はい」
「そんな、あなたがもし、走ってる最中に転んで、怪我でもしたらどうするんですかっ」
「え……?」
「それに万が一、あの人影が本当に不審者だったらどうするんです」
「不審者?」
「ええ。あなたはプリマ・ウンディーネ。会社にとって、唯一無比なもの。
特にあなたは、オレンジ・ぷらねっとの、至宝ともいうべき存在」
「いえ、あの、私は……」
「いいですか、オレンジ・プリンセス」
「は、はい」
「無茶はしないでください」
「え?」
「もう一度、言います。あなたはプリマなんです。少しでも危険なことは避けた方がいい」
「で、でもアトラ先輩」
「アトラでいいです」
「え?」
「あなたは、プリマなんですから、シングルの私を呼び捨てにしてもいいんです」
「いえ、あの……それはできません」
「アリスちゃん?」
「すいません。私、いくら自分がプリマだからと言って、アトラ先輩や杏先輩。
それに他の先輩方も、呼び捨てにはできません。でっかい……でっかい、ごめんなさい」
そう言うと、アリスちゃんは少し顔を紅らめ、下を向いてしまった。
- いい子なんだ
と、嬉しく思う反面。チクチクと突き刺す罪悪感に、私の胸は痛んだ。
「はあはあはあ……みんな待ってよぅ」
杏がようやく追い着いてきた。
「杏。アリスちゃんをお願い。私が先に行くわ」
「アトラ先輩っ」
「大丈夫です。危なかったら逃げますから。二人は少し距離をおいて、付いてきてください」
私はそう言うと、ゆっくりと階段を上がり始めた。
三階の通路には、誰もいなかった。
なんとか間に合ったらしい。
本当に、ゆっくりと歩みを進めながら、私は冷や汗が出るのを止められなかった。
< ETA-2760M >
「やっぱりここですか……」
アリスちゃんが、つぶやくように言う。
私達はまた、第13款待倉庫『ウェン・リーの間』の前に立っていた。
「鍵はちゃんと確認したわ。ちゃんと掛かってる」
「どういうことでしょうか……」
私は少し肩をすくめながら、アリスちゃんに答えた。
「1.『何か』は、最初からいなかった
2.『何か』は、いたけれど。それはこっちには向かわなかった。
3.『何か』は、ここの解除コードを知っていて、鍵を開けて入った。
4.『何か』は、ここを、なんらかの能力で、通り抜けていった……」
「1と2は違いますね。私は、はっきりと見ましたし、杏先輩も見てます」
「うん、うん。確かに」
おいおい、杏。空気読め。
「3は、それこそ無理でしょう。だって鍵の解除コードを知っているのは、数人しかいないって、昨日、お母さんが、おっしゃってましたから」
「…………」
「と、なると……」
「残るは4の、通り抜けていった……」
「…………」
「なに、なに。人間じゃないの?」
杏ぅ? 部屋に帰ったら説教よ!
「これはどういうことでしょう」
アリスちゃんの顔が、若干、青ざめて見えた。 ごめんね。
「やはりここには、何かあるんでしょうか」
「確かにね。だから今はあまり近づかないようにしましょう」
「え?」
「ここの謎を解くには、もっと情報が必要です。お互い、もっと情報を集めてから改めて検討してみましょう」
私の言葉に、アリスちゃんは素直に『分かりました』と、うなずいてくれた。
- やれやれ。なんとかなった
私が安堵したのも束の間。
再び、杏が抱きついてきた。
「杏? だから私には、そっちの趣味は……」
「アトラちゃん。あれ、あれえ!」
杏は、震える手で、窓の外を指差した。
「あれは……」
アリスちゃんも、身を乗り出して絶句している。
中庭の森の中を、何かが駆け抜けて行く!
それは、妙に頭の大きな、まるで銅像のような色をした灰色の何かだ。
それは、不規則な動きを繰り返し、やがて茂みの淵で忽然と姿を消した。
それは、不気味な声とともに……プッイヌフゥゥゥ…
おひおひ。
「アトラ先輩っ」
「な、なに、アリスちゃん」
アリスちゃんが、頬を上気させながら叫んだ。
「あれは、あれこそが、不思議のひとつ。夜中に走り回る、創業者の銅像です!」
「ええ!?」
「あの最後の不気味な声が、でっかい証拠です」
「いや、あの……」
「そうなんだ。あれが走る銅像……」
「杏ぅ?」
「私、再び、でっかい燃えてきました! アトラ先輩っ」
「は、はいい?」
「お互い頑張りましょう。絶対、絶対、七不思議を解き明しましょう」
「うん。がんばろうね」
「もしもぉ~し……」
ひとり盛り上がるアリスちゃん。
まったく能天気な杏。
そして、こっそりタメ息をつく私。
う…うん。
私も頑張ろう……たぶん。
< ETA-2400M >
Un discorso di interludio- 間奏話 Ⅰ
「おはよん、アトラちゃん。朝だよ」
「ううん……もう朝?」
「珍しいわね。アトラちゃんが、朝、すぐに起きれないなんて」
「しょうがないでしょ。 例のことで、寝不足気味なの。 あれ?」
「どうしたの、アトラちゃん」
「いえ、眼鏡がなくて……」
「へっ? そこにあるのは?」
「うん。今日は、いつもとは違う色の眼鏡の気分だったんだけど…ないのよ」
「あちゃっ」
「え?」
「ううん。なんでもないよ。それでないと困るの?」
「困るわけじゃないけど……最近ずっとかけてなかったから、今日はなぜか、その気分だったのに……」
「どっか、違う場所に置いたんじゃ…」
「う~ん。そんなハズはないんだけど……」
「と、とりあえず今日は、違う眼鏡で行けば? 時間もないし……」
「う~ん。そうねえ」
「また帰ってきてから探しましょう。私も手伝うから」
「そうね。しかたないか……ありがとう、杏」
「どういたしまして。 じゃ、行きますか」
「うん」
< ETA-2100M >
「先輩方。聞き込みの結果がでました」
「聞き込み?」
「はい。例の七不思議の件ですが……」
「七不思議?なんか面白そうな話だな」
「あゆみ?」
トラゲット。
その、お昼の休憩中。
私、杏、あゆみが昼食をとっていると、午前の営業を終えたアリスちゃんが合流。
そこにARIA・カンパニーの灯里ちゃんや、アリア社長まで加わって、軽いパーティのような昼食会になっていた。
あゆみ。
あゆみ・K・ジャスミンは姫屋のウンディーネで、私達とはよく一緒にトラゲットをする友人。
彼女は(私を含め)他のウンディーネと違い、プリマにはなろうとせず、シングルのまま、
地域密着型であるトラゲットに、愛情をささげる、少し変わったウンディーネ。
でも性格は裏表の無い、はっきりとした性格で、姫屋の中でも人望が厚く、同僚や上司からも頼りにされていた。
もちろん、私の大切なお友達。
灯里ちゃん。
水無 灯里ちゃんは「アクアマリン(遥かなる蒼)」の通り名を持つ、ARIA・カンパニーのプリマ・ウンディーネ。
私達とは、彼女がまだシングルだった時に、一度、トラゲットをした仲。
彼女との出会いは、くじけそうだった私に、もう一度、元気と勇気をくれた、とても大切な出来事。
あゆみと同じ、素適な友人。
また灯里ちゃんはもともと、アリスちゃんの知り合いでもあったのだ。
そして、アリア社長。
アリア・ポコテン社長は、ARIA・カンパニーの青い目をした火星猫さん。
ここ、ネオ・ヴェネツィアの水先案内店では、航海の安全を守るシンボルとして、青い瞳の猫さんを、
会社の社長とするのが、習わしだった。
ちなみに火星猫さんは、喋れはしないけど人の言葉は理解できるのだ。
「アリスちゃんは、あゆみとは初対面だったよね」
「え? いえ、いや、はい。あ、あの、でっかい初めまして、あゆみさん。私はアリスです」
「お?うお、おう? あ、ああ。ま、まったく初めまして、アリスちゃん。ウチは、あゆみ」
-ん? なんだ、今のは…まるで……
「お、おいアトラっ。で、で、七不思議ってなんだい?」
「え、ええ。ああ、つまりそれは……」
あゆみの叫ぶような言い方に、私の思考が中断される。
私は、これまでの話をかいつまんで、あゆみと灯里ちゃんに話して聞かせた。
「あの第13款待倉庫。通称「ウェン・リーの間」は、なぜ、あんなにも厳重に守られているのか……」
アリスちゃんは、ゆっくりと話始めた。
「こんなに厳重に守らなければならない理由…それは、ずばりっ」
「ずばり?」
「あそこは『死の部屋』なのです!」
「死の部屋ぁ!?」
「はい。私が昼間、関係者の方々に聞き込みをした結果、そういう結論に達しました」
「聞き込みって……どういうこと?」
「実は、ペアの間で伝わっている伝説なのですが、あの部屋で昔、いつまでたっても昇進できなかったペアのウンディーネが、将来を悲観して飛び降り自殺を図った-という、事件があったそうなのです」
ああ、確かにそんな噂あったなぁ……
私は、遠くのカンパニーレ(大鐘楼)を仰ぎ見た。
「幸い命は取り止めましたが、彼女は二度と、ゴンドラに乗ることはできなかったそうです」
「………」
「それ以降、夜な夜な、あの部屋ではいろんな怪奇現象が多発したため、このような頑丈な電子錠をかけて、封印したのだそうです」
「なるほど……」
「そしてそのウンディーネの名前が、ウェン・リー・アンって言うのです」
「アン……ウェン・リー…」
「はい。それでそれ以来、あの倉庫は『ウェン・リーの間』と呼ばれ、開かずの間になったのだとか……」
「怖いですねぇ」
灯里ちゃんが言う。
ー ほんと。 怖い怖い。
「そして次の不思議。夜中に聞こえてくるピアノの音」
「はへえ? アリスちゃん。それは解決したハズじゃ……」
「え? 灯里先輩。どうしてそれを、でっかい知ってるんですか?」
「はひっ。えっと、それはつまり……」
「あ。それはさっき私が灯里ちゃんに話したの。そうよね。灯里ちゃん?」
「は、はひっ。そうです。そうなんです。だよ、アリスちゃん」
「ぷ、ぷいぷいにゅううう」
アリア社長もあわてた感じで叫んだ。
アリスちゃんが、不審げに小首を傾げる。
「そういえば灯里先輩。その傷、どうしたんですか?」
「はへ?」
「ほっぺに腕にヒザに……でっかい絆創膏さんです」
-うわっ。鋭い!!
「灯里ちゃんは、なにか歩いてる最中に、転んじゃったみたいなの」
「ほへえ…アトラさん? 私……」
「うほんっ」
思わず、咳払いと、視線をばちばちっ。
幸い、灯里ちゃんは、気付いてくれた。
「あっ、う、うん。そうなの。私ってばドジっ子さんなのかなぁ…ま、まるでアテナさんみたいだね。あは…あはは……」
「アテナ先輩ほどのドジッ子さんはいないと思いますが……大丈夫なんですか?」
「うん。ぜんぜん大丈夫。元気!元気!! あはっ……あははは」
「……ならいいんですけど」
-ふう。やれやれ。
どうしてアリスちゃんはこう、妙なところでカンが良いのか……
「それよりアリスちゃん。 ピアノがどうかしたの?」
私は、あわてて続きをうながした。
「え、はい。 実はあの音楽室でも昔、同じような話があったそうです」
「えっ。そうなのアリスちゃん」
「はい。灯里先輩。声がでなくなったプリマが、やはりあそこで自殺を図ったとか……」
「ひ………」
「ぶぎっぷぷぷぷ……」
灯里ちゃんとアリア社長が、真っ青になって絶句する。
「どうしたんですか、灯里先輩。アリア社長まで、急に、でっかい涙なんか浮かべて……」
『あうあうあう……』と口をぱくぱくさせる灯里ちゃん。
『ぷうううう……』絶句しているアリア社長。
まあ、気持ちは分からなくもないが………
「それ以来、音楽室と第13款待倉庫では、不思議なことが起こるようになったとか……」
「う~ん」
「そして夕べ見た、中庭を走る銅像……」
「はうあ? そ、そんな……中庭でぇ?」
「そうなんです、灯里先輩……って、なにかご存知なんです?」
「え、いえ、そんな。私がそんなコト、知るわけナイジャナイデスカ……」
灯里ちゃん。めちゃくちゃ不自然!!
「もともと、あの銅像は、オレンジ・ぷらねっとの創業者ユリアン・アマデウスの像なんです。そして、でっかい問題なのは、なぜそれが走り出すか-と、いうことなんですが……」
- アリスちゃん。 もう走ることが前提なのね。
「私が調べた結果、ユリアンは、このオレンジ・ぷらねっとがネオ・ヴェネツィアの水先案内店として、定着する前に他界されたということで、きっとその心残りが霊となって、銅像に乗り移り、夜な夜な、オレンジ・ぷらねっとを徘徊するのではないかと……」
「すごい……」
私は、わざとらしく、感嘆の声をあげた。
「アリスちゃん。よくひとりで、ここまで調べたわねぇ」
「ありがとうございます。アトラ先輩。私、でっかい頑張りました。
で、あと残る不思議は……」
アリスちゃんは続ける。
「どこからともなく聞こえてくる不気味な唄声。夜中に食堂を這い回るモノ。そして私のオール。この三つです」
「え? オールの件は、アリスちゃんのカン違いじゃ……」
「そんなこと、でっかいありませんっ。私がアテナ先輩の横に掛け忘れるなんて、でっかい、ないです!」
真剣な顔で、力説するアリスちゃん。
「アリスちゃんは、アテナ先輩のことがホントに大好きなのね」
「え…いや、そういうわけでは……」
やっぱり顔を紅らめて、うつむいてしまうアリスちゃん。
その様子を、みんなは微笑ましく見ていた。
< ETA-2030M >
私はそっと、灯里ちゃんに目配せした。
灯里ちゃんは、小さくうなずいた後、打ち合わせ通り言ってくれた。
「あのね、アリスちゃん。もういいんじゃないかなぁ」
「灯里先輩?」
「さっきアトラさんから聞いたんだけど、アリスちゃん。夕べ大変だったんでしょ……」
「そうだ、アリスちゃん。あんまり危ないことはしない方がいいぜ」
「あゆみ先輩?」
「うん。私もそう思う」
「杏先輩……」
「ぷいぷーい」
「アリア社長まで…」
「アリスちゃん」
予定通り、最後は私が言う。
「昨日も言いましたが、アリスちゃんはプリマ・ウンディーネなんです。 だから今回の件でも、あまり、深入りは止めた方がいいと思います。 だから、もう止めましょう。不思議は不思議のままでいいんです」
「ダメです」
うわっ。即行否定!?
「私はどうしても、オレンジ・ぷらねっとの七不思議を解明するんです」
「どうして?どうしてアリスちゃんは、そんなに七不思議にこだわるの?」
でっかい頑ななアリスちゃんに、思わず-と、いった感じで灯里ちゃんが訊ねた。
「ネオ・ヴェネツィアの七不思議を経験した人が、それを言うんですか?」
「え………?」
「私だって…私だって、ネオ・ヴェネツィアの七不思議を体験したいんです。でも、でも私は……私には、その資格がなくて…うらやましくて……」
「アリスちゃん……」
「だから私はせめて、オレンジ・ぷらねっとの七不思議を体験して、それを解明したいんです」
うつむき加減で、少し涙声で、叫ぶように言うアリスちゃん。
「アトラさん……」
灯里ちゃんが、何か、すがるような目で私を見てくる。
見回すと、あゆみや杏、アリア社長までもが、同じような目で、私を見てくる。
- そんな目で私を見るなああ!
私だって、私だって………ああ。まったくもう。
私は小さいサイ(ため息)をつくと、仕方なく言った。
「分かりました、アリスちゃん。 最後まで付き合いますよ」
「あ、アトラ先輩。ホントですか!?」
「ええ。しょうがありません」
「あ、ありがとうございます」
「でも……」
私は、釘をさすことを忘れなかった。
「危ないことは、なしですよ」
「は、はい」
「私も、私も手伝うっ」
「杏?」
「ウチも手伝うぞぉおっ」
「あゆみ?」
「はひっ。私もおよばずながら、力になります」
「ぷいぷいにゅっ」
灯里ちゃんとアリア社長が、目をうるませながら言う。
「みなさん。でっかい、ありがとうございます」
アリスちゃんは、立ち上がると、深々と頭を下げた。
……
……まったく
まったく、なんて、お人好しで、おバカさんな人達なんだろう。
状況を理解しているのか?
本質を見誤ってないか?
なんのための打ち合わせだった?
……
……でも
でも、私は、そんな彼女達が、大好きだっ。
「それじゃ今夜もまた、24時に私と杏の部屋に来てください」
「はい。アトラ先輩」
「でも無理はしませんよ」
「はい」
「あゆみと灯里ちゃんは、サポートをよろしく」
「おう。まかせとけっ」
「はひ。了解です」
「ぱ、ぱぱぱあ~い」
アリア社長が、私の服を引っ張りながら言う。
「はいはい。アリア社長も、しっかりお願いしますね」
「ぱあーい、ぱっ!」
こうして成り行きとして、今夜もまた、夜更かしが決定した。
はあああ。
- アトラちゃん
なに、杏
ため息ばっか付いてると、幸せ逃げるって言うよ
…………………はああ……
< ETA-1440M >
誰かがドアをノックした。
「誰ですか?」
「あ、あのアリスです」
早っ。
私は小さくドアを開いた。
「どうしたのアリスちゃん。まだ時間早いわよ?」
「すいません。アトラ先輩。実はちょっと問題が……」
「問題?」
「はい。あの、ここじゃ話せなくって……」
「あ、ごめん。ちょっと待って。シャワーあびてたものだから」
「あれ? 先輩、さきほど大浴場にいませんでしたか?」
「え? ああ。その後、ちょと汗かいちゃったものだから」
「はあ……」
「ちょっと待ってね」
私はいったんドアを閉めると、部屋を横切り、シャワー室の扉も閉めた。
それから改めてドアを開くと、アリスちゃんを部屋の中へと招き入れた。
「すいません。急にお訪ねして。あの…杏先輩は?」
「杏は打ち…いえ、用事で他の部屋に行ってるの。それで、どうしたの?」
「はい…実はアテナ先輩がいなくて……」
「いない?」
「はい。いつもこの時間には部屋で本を読んでいるのに……」
「いないの?」
「はい。実はアテナ先輩、この一週間、毎晩、夜中にこっそりと部屋を抜け出しては、どこかに行ってしまうんです」
「どこかに……」
「そして深夜。 私が眠りについたのを、まるで見計らったかのように、アテナ先輩は戻ってくるんです。でっかい不思議です」
「偶然じゃない?」
「そんな偶然が、一週間も続くでしょうか?」
「……今、アテナさんは?」
「まだ、大浴場だと思います」
「そう…ならアリスちゃん。今、いったん部屋に戻って、アテナさんがまた部屋を抜け出したら、私達の部屋に来て。それから、アテナさんが、どこで何をしているのか、確かめましょう」
「分かりました。でっかい了解です」
「うん、じゃ、また後で」
アリスちゃんは、礼儀正しく頭を下げると部屋を出て行った。
私はドアを閉め、それからシャワー室の扉を開けながら、つぶやいた。
「プラン変更ですねぇ」
Essere continuato (つづく)-
あと書きのような、なにかー
は、お休み(鹿馬)
今回は、最後のお話しの後に書かせていただきます。
だってサ。
何書いてもネタバレになりそうで……って出し惜しみする程のネタもないって?
それは言わない約束で……(号泣)
次回「中編」もどうか御贔屓に。
それではいずれ、春永にー
あ
私、関西人ですが納豆食べれます!(弩阿呆)