正義と剣製と白兎   作:健坊

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※ステータス欄の幸運の削除 6/13


ヘスティアの決断

朝日が傷だらけの二人の少年を優しく包む。

お互いの肩に、互いの体重を預けてゆっくりと帰路に就いている。

かの英雄譚の中であるならそれはまさしく凱旋と言えるだろうが

真実二人は退却戦を繰り広げて命からがら逃げ帰る事に成功した。

誉れなど一欠けらも無い。それでも二人はその命を守り切った。

誰もが笑うだろう。無様でみっともない敗者の姿を。

しかし神はそんな、負け犬二匹を祝福する声を上げる。

 

「ベルくん!士郎くん!」

「神様…」

 

見た目草臥れた廃墟のようなホームの玄関前で、ヘスティアは両手を広げて自分だけの勇者を出迎えた。

胸に飛び込んで来たヘスティアを抱き締めて、ベルは自分の命が在る事を実感する。

 

「ベルくん!ベルくん!バカバカ、心配したんたぞ!」

「ごめんなさい神様」

「うぅ…そんな顔されたらなんも言えなくなるじゃないか!」

「そんな顔と言われても…」

「士郎くん、ベルくんを連れ帰ってくれて本当にありがとう!傷だらけではあるみたいだけど」

「そこは勘弁してくれ。本当に逃げるだけで精いっぱいだったんだよ」

「いや、なに。仕方のないことだ。二人が無事ならボクが言うことなんてなにもないよ!」

 

よくやってくれた、と。士郎の頭を撫で回すヘスティア。

なんだか照れくさいがそこはやはり神様。子供たちを褒めるのは当然の事だ。

士郎にはちっともヘスティアに母性を感じる事が出来ないが、それこそ仕方ない。

 

「しかし士郎くんも無茶をしたもんだ。神の恩恵を授かっていないのにダンジョンに入ってしまうなんてさ!」

「出来る事なら二度はごめんだよ…」

「君は運がいい。たまたま君の身体能力で対処出来る程度のモンスターしか現れなかったんだろう?」

「それがですね神様!単騎とは言え、士郎さんはウォーシャドウを倒したんですよ!」

「は―――?」

「踏み込みの速度、攻撃の重さ、どれも僕なんかよりずっとつよ―――」

「待ってくれベルくん、それは一体どういうことだい?」

「…?」

「え?いや、だから士郎さんの―――」

「士郎くんは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そう言うのかい?」

「あ―――」

 

そこでベルは気づく。士郎の異常性に。

神・ヘスティアが抱いた疑念は正しい。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

本来ならばダンジョンから帰還することすら奇跡。確かに士郎は傷だらけ、満身創痍、死に体だ。

しかしその程度で済んでいる。それは一体どうしてなのか。

彼は記憶喪失だ。豊饒の女主人のウェイトレスに拾われる以前の足取りは不明。

その時の状況も聞いてはいる。彼は、()()()()()()()()()()()()()()

リュー・リオンが助かる確率は8対2、と言う見立てすら楽観視している状態と言っていた。

それなのに、今目の前の少年は1週間かそこらで立ち上がり、店の手伝いを始めていた。

回復薬を多用した?それもあるだろうが致命傷の傷を癒すなんてエリクサー級のポーション以外には不可能だ。

彼は、自分の力で体の傷を癒した―――?

さらに先日、酒場で絡まれていたウェイトレスを庇って殴られていた。

殴った相手はレベル3の冒険者。しかし少年は骨折どころか骨に罅すら入らず頬を冷やすだけに終わった。

酔っていたとは言え、手加減もしただろう。しかし相手はレベル0の一般人。

ゾクリと、背骨の内側に氷が滑り落ちる感覚をヘスティアは覚える。

この子はどこかおかしい。

戦闘力、耐久力、回復力、精神性―――。

知らず足が震える。未知の世界を知りたくて下界に降りて来た神・ヘスティアは

本当の意味での未知なる世界の一端を見てしまった《別次元の世界の一端を開いてしまった》。

 

愛しの我が子、ベルを見る。

士郎とお互いの傷を手当てし合う姿は、兄弟のようにも見える。

手がかかる弟に、向こう見ずな兄。いいコンビなのかと笑みが一つ落ちる。

彼らはダンジョンからまっすぐに此処(ホーム)に帰還した。

 

「士郎くん」

「あ、はい。なんですか」

 

声を掛ける。

異常の塊である彼に。本当にいいのか、自分の選択は間違っていないのか。

士郎くんの事が周知されれば必ず神々の玩具にされる。それはきっと不幸でしかない。

雑多な言い方をすれば()()()()()()()()()()()()()()存在だ。

ならば真新しいおもちゃを、子どもは我慢せず弄ぶ。

そうなればベルくんが悲しむ。

無論、ベルくんを助けてくれて、いつも美味しいごはんを作ってくれて、こっそりバイトの斡旋までしてくれる彼に感謝している。

守りたい。ボクは君を守りたい。

だから―――

 

「ボクの眷属にならないか、衛宮士郎」

「え?」

「君に恩恵を授ける。その力でベルくんを守って欲しい」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!急に眷属とか言われても…」

「時間が無いんだ!」

 

怪訝そうに彼はボクの瞳を覗き込む。琥珀色の瞳がボクを射抜く。

嘘をついてはいけない、誤魔化してもいけない。彼はきっとそれを見抜いてしまうだろうから

 

「士郎くん。率直に言って君はおかしい」

「さっきは褒めてくれたのに急に辛辣だな…」

 

ぶぅたれて拗ねる彼は、どこか愛らしさを覚える。

なるほど、ベクトルは違えどベルくんと同じタイプか

新しい発見に少し辟易しながら言葉を続ける。

君が職場に帰れば今回の事を話すだろう。

それはいい。だがきっと誰かが不審に思う。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、と。

ボクとベルくんしか知らないとは言え、君は単身でモンスターをも撃破して見せた

繰り返すがレベル0の君が――だ。

君のその異常性は、神々の興味の的となる。

きっとそれは、君にとって良くないことだとボクは思う。

だから、ここは

実は()()()()()()()()()()()()()()()事にしてしまう。

神の恩恵を受けているなら、万が一にでもそういう状況になっても帰還できる可能性がある。

それが常識だ。恩恵の力はそこまで大きな意味を持つんだ。

ボクみたいな無名の神様の眷属になるのは抵抗があるかもしれない。

それでも君のことと、ベルくんの事を考えればそれが一番なんじゃないかって思うんだよ

だから…

だから士郎くん、ボクの眷属に―――

 

「わかりました」

「なって…え?なんて?」

「え?いや、だからヘスティア・ファミリアに入ります」

「本当ですか士郎さん!」

「ちょ、ちょっと待ってくれ士郎くん、そんな簡単に…」

「むっ、別に簡単じゃないぞ。ヘスティア様が今ちゃんと理由を説明してくれたから、俺だってちゃんと考えた」

「即答過ぎやしないかなぁなんて…はは」

「一応言っておくけどヘスティア様が無名かどうか、ファミリアの強弱なんて関係ないよ、俺は二人が好きだから入るんだ」

「「士郎くん(さん)」」

「ヘスティア様が俺の事を考えて提案してくれたんだろ?なら、()()()()()()()()()()()

「そっか…ありがとう、士郎くん」

「こちらこそよろしくな、神・ヘスティア。なんの役に立つかわからないけど精いっぱいやってみるから」

 

歓声を上げるベルくんを尻目にボクは安堵の息を隠れるように漏らす。

きっとボクは厄介事を抱えてしまったんだろうなぁと思う。

でも、それでもいい

ベルくん、士郎くん

二人はボクの大切な子ども達なんだ

そう、今は二人目の眷属の誕生を喜ぶ事にしよう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日

全快した衛宮士郎をホームへと呼んだ。

ちなみに彼は変わらず豊饒の女主人で働いている。

元々彼は、冒険者に成りたいと思っていた訳でもない

変わらない日常を過ごしている。しかしファミリアに入った以上ボク達は一蓮托生

上納金では無いが、少なくないお金を彼はファミリアに入れてくれた。

鍛錬もベルくんと二人でしているらしい。そのときの様子をベルくんは楽しそうにボクに語ってくれる。

今はその話も楽しみの一つとなっている。

 

閑話休題

 

「さて士郎くん、今日君を呼んだのは他でもない。君のステータスを更新しようと思う」

「あぁ、でもこの前やったばかりじゃないか?」

「いやいや、あくまでもあれは緊急処置みたいなもので恩恵を与えただけさ」

「まぁ、なんでもいいけど」

「さぁさぁ、上着を脱いで背中をボクに預けてくれたまえ!」

「なんでそんなに嬉しそうなんだよ…」

「子どもの成長を喜ばない神がいるものか!さて、始めるよ」

 

人(神?)に肌を見せることに若干の抵抗感はあるが、渋々俺は上着を脱いで背中をヘスティアに預ける。

先日、リューや女将さんに事情を説明したらそれがいいと二人も同意してくれた。

ヘスティアも俺の事を思って善意でしてくれることだ。不満なんて微塵もない。

ヘスティアの指が俺の背中をなぞる。

少しひんやりしたその指。しかし、俺の皮膚の上を滑らせるとその軌跡に熱を残していく。

 

「…君はやっぱりおかしい」

「いきなりDISるのやめてくれませんかねぇ…」

「だって、こんなの…こんなことはありえない」

「ん?どういうことだよ、説明してくれヘスティア様」

 

不満顔を隠さず、俺に一枚の紙を差し出してきた。

 

「これは?」

「君のステータスが書かれた写しだよ。なんだいこの魔法。こんなの見たことないよ」

「よく言われるレアスキルってやつか」

「君がどうしてそんなに落ち着いて居られるのか不思議だけど。いいかい?この事は誰にも言っちゃいけないよ!」

「あ、あぁ…わかった」

 

書かれた内容に目を通す。

正直、実感なんてなにも無い。

それなりに高いステータスだとヘスティアは言うけど

それよりも俺は、魔法の欄に書かれた文字に驚愕を隠せない。

どこかで見たことがあるような言葉

だけど、初めて知った言葉。

衛宮士郎にとってその魔法は――――――

 

 

衛宮士郎

 

level 1

 

【ヘスティア・ファミリア】

 

力:D580

耐久:C635

器用:B762

敏捷:C606

魔力:B788

 

【スキル】

 

心眼(真)B

修行・鍛錬によって培った洞察力。窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。

逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

 

千里眼 C

視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。遠方の標的捕捉に効果を発揮。

ランクが高くなると、透視、未来視さえ可能になるが、Cランクではその域には達しない。

 

魔術 C

このランクは、基礎的な魔術を一通り修得していることを表す。

特に道具の本質を一時的に増幅する「強化」、物質の構造を把握し、一時的に複製する「投影」を得意とする。

 

魔法魔術】

 

無限の剣製 E~A++

固有結界。自身の心象世界を具現化する。

あらゆる武器を見ただけで解析し、複製し、貯蔵する。

真名を謳えばその武具の真価を発揮できる。

しかしその際ランクは一つダウンするペナルティ。




スキルにランク着けたり、記憶無いのに魔術判明してよかったのだろうか
まぁ、本人忘れてても魂に刻まれてるからせふせふ
ちなみに未だに投影も固有結界も使えません。
なんか聞いたことあるなぁなんて士郎君他人事のように見てます。
ステータスはFate基準だけど数字は適当です。
スキルに料理とか女難とか執事(バトラー)とか着けようか悩んだけどやめました

いよいよファミリアに入った士郎君
彼の出会いはダンジョンにあるのか
乞うご期待
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