ーーー兎も角、今は時間が欲しい
ーーーだったら!!
照平はコートのうちポケットからある物を取り出し地面に投げる。投げられた『それ』は煙を上げ視界を遮る。
【焙烙火矢】──本来は戦国時代の日本で使われた火薬を用いた兵器の1つ。火薬を用いる事で爆発を起こし煙幕の代わりにも利用できる。ただし大きい為所持に場所取りに困り、照平はコートの内ポケットに1つしか入れていない。
照平はメイドの視界を煙幕で遮っている間、ロープの付いた打根を天井に複数刺して飛び移りながら移動する。
煙が晴れると、メイドの視界には照平は居らず代わりにロープの付いた打根が均等の長さに並んでいた。
「………………チッ」
ーーーあの妖怪、この天井の低さでもツタ渡りの要領で逃げたわね
ーーーでも、これだと自分が行った道を示してるものじゃない
ーーーバカな奴ね。これで逃げられるとでも思ってるのかしら?
そんな考えを持ちながら追いかけようとした。しかし立ち止まった。違和感を持ったからだ。
ーーー…………待って。
ーーーもし、このロープを使って逃げたとしましょう
ーーーならば可笑しい
ーーー“右肩”はどうした?
ーーーこのロープを伝っていく方法は2つ
ーーー1つは片方の腕を交互に使用して渡る方法
ーーーもう1つは両腕を使用して渡る方法
ーーーならば、ここで矛盾が起きる
ーーー確かに右肩に大きく傷を入れた筈だ
ーーーならば、痛みで渡るどころの話ではない筈だ
ーーー最悪傷が広がり、出血多量の恐れもある
ーーー……この傷の謎が分からない
ーーーもしかしたら、このロープはフェイクで近くの部屋に隠れている可能性もある
ーーー1つ1つ調べて行きましょうか
そう思ったメイドは近くにあった部屋から順々に探していく。それが無駄な行為とも知らずに。
照平はロープを使用して逃げた。今は廊下の壁に寄り掛け休んでいた。
「ハァ……ハァ……ッぐっ!!」
照平は顔に苦痛の表情を浮かべる。その原因を照平は視る。先程刺された右肩を視ていた。
その右肩の傷は照平が苦痛の表情を挙げる度に埋まっていき、終いには肩の傷が塞がり傷跡の面影すらない程回復していた。
しかしこの出来事に照平は顔をしかめたままであった。まるで、この起きた事を気に食わないかの様に。
ーーー傷は……着けるもんじゃないな
ーーーやっぱり……僕は“僕が嫌だ”
ーーーこんな惨めな僕が嫌だ
ーーー僕は僕を殺したい。でも出来ない
ーーー“あの時の非力な自分を殺したい”
ーーーでも“死ねない”
ーーーこの体が朽ち果てようとも
ーーーこの体の一部がもがれようとも
ーーー“全て無かった事になる”から
ーーー“また決めてしまう”から
ーーー…………だが今は、起きてる事に向き合わなければ
ーーー何か……あの【時止め】の対策を
そう考える内に、照平は“1つだけ模様の違う扉”を見つける。その扉は単なる鉄の扉だが、今まで見てきた扉と明らかに違うので開けてみる。
その中は見えない程暗く、明かりが無ければ物を見ることすら困難であった。
しかし照平は目に妖力を流し込み、ある程度分かる様にした。見渡せば、あらゆる銃火器や銃弾が並べられていた。
ーーーこの銃火器の量はッ!?
ーーー館の外装的に西洋の奴等かと考えてはいたが、まさかここまで……
ーーーだが、年代物ばかりだな
ーーー【ルガー】【ワルサー】【マスケット銃】【コルト1911シリーズ】【パームピストル】etc……
ーーーマシンガンにショットガン、ライフルにグレネードまで……
ーーー全種類の銃が揃われている
ーーー………これなら、利用できそうだ
ーーー僕の能力……いや、コイツの能力を嘗めない方が良い。
ーーーこの能力は“1つの驚異”なのだから
照平は部屋を駆け巡り銃と弾丸を手に入れる。弾丸を銃に装填し、あとはメイドをこの部屋に招き入れるだけ。
その為に先ずは部屋の入り口で待ち構え、発砲する。
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乾いた音が廊下に響き、部屋に響く。メイドは瞬時に理解した。武器庫に行っていると。
ーーーあの妖怪、武器庫に居るらしいわね
ーーー偶然見つけられたとはいえ、厄介ねぇ……
ーーーまぁ、時を止めてしまえば一緒なんだけど
ーーー兎に角、行きましょうか
メイドはアンティーク調の時計を取りだし、上にあるボタンを押す。
そのメイド以外の色が消え、動きが止まる。時が止められたのだ。
メイドは探索していた部屋から武器庫まで走って移動する。
武器庫に着いた。そこには入り口で照平がマシンガンを持ち、構えている姿があった。
ーーーバカな妖怪ね
ーーー私の能力に気付いていれば、死なずに済んだのに
ーーーまぁ良いわ
ーーー邪魔になる存在は排除すれば良いだけの事だから
メイドはナイフを照平の心臓に当たる様に投げ、ナイフは少しだけ動くも直ぐに止まった。
そして、時計のボタンを押す。周囲に色が取り戻され、動きが再開する。
投げられたナイフは照平の心臓に突き刺さり、照平は倒れ込む。
しかし照平は最後の悪あがきと謂わんばかりにマシンガンを発砲する。それらの銃弾は廊下の天井に当たり活動を停止させる。
照平は倒れたまま動かずに居た。メイドは照平に近付き確認を取る。息をしているかの確認のあと、メイドは立ち去ろうとした。
刹那、メイドの背中に何かが複数当たった感触を覚える。
「!!?ぐっ!!」
ーーー何だ!?何が起きた!?
ーーー何に攻撃された!?
ーーー確か後ろには何もなかった筈だ!!
ーーーじゃあ何だ!?何に攻撃された!?
「銃弾だよ」
「ッ!?」
突如、照平に刺さっているナイフが独りでに動き床に落ちる。そして、照平の傷はどんどん塞がっていく。
塞がった心臓辺りの位置の布を握りながら、メイドの疑問に思う事を教えていく。
「さっきのは【ラグ・フォーカス】。時間差で照準を合わせた相手に攻撃をする変わった技だ」
まだ息が荒い照平だが、自分の事について語り始める。
「君が時間停止を使うことは予想できていた。だからこそ、時間差で攻撃できる技を使用したのさ」
「そして、これを可能にしているのが僕の能力」
「【照準を定める】程度の能力」
「この能力は僕の目がしている事なのさ」
「僕の目に妖力を宿し、その目で照準を定める。定められた相手は僕の妖力を宿した攻撃から、半永久的に逃れられない」
「さらには複数にも照準を定められるから、複数の敵が来たとしても一気に方をつける事が出来る」
「また、さっきの【ラグ・フォーカス】みたいに時間差を生み出して攻撃する事も出来るのさ」
「ただし照準を合わせる前の攻撃には対応していないのが現実」
「しかも相殺できる程の威力の攻撃で落とされるデメリットもある」
「最初に照準を合わせていたから良かったけど、合わせてなかったらヤバかった」
「以上だ、何か質問は?」
照平の全ての説明が終わり、メイドは考えていた。
ーーー【照準を……定める】……
ーーー名前だけ聞けば……大した能力とは思わないわね
ーーーでも、体験すれば分かる
ーーー“この能力はヤバイ”
ーーーその身で理解した
ーーーあの計算能力、予測能力、そして能力の応用……
ーーーあの時考えていた“操作系”の能力という線は外れ
ーーー“確実に決める”能力の1つ
ーーー“逃れられない弾丸”“逃れられない武器”
ーーー単純ながら、恐ろしいわね
ーーー嗚呼、お嬢様
ーーーこの咲夜、一生の不覚です
ーーーどうやら意識が朦朧として……い……る……
咲夜と自身の名を思ったメイドは、意識が途絶え倒れた。
どうも、うぷ主の鬼の半妖です。
やっとオリ主の能力が判明しました。その名も……
【照準を定める程度の能力】です。
改めて、この能力を説明するとこんな感じ。
・妖力を宿した目で対象を定められる
・定められた対象は、妖力を込めた攻撃から逃れられない
・複数に照準を定める事も可
・照準を定める前の妖力を込めた攻撃は対象外
・相殺できる威力で落とす事が可
それでは次回もお楽しみに