望んだ世界   作:Haganed

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吸血鬼の恐怖

心臓辺りの布を掴みながら照平は痛みに耐えつつ、何処かへと歩いていく。この痛みに耐えるのは、実を言えば初めてではない。傷付いた際に、この痛みは出るのだ。妖力を放出しながら。

 

 

 ーーー疲れる……何度この苦しみを味わったのか

 

 ーーー刺され、斬られ、貫かれ、焼かれ、毒を掛けられ、殺され………

 

 ーーーそんな事があろうとも、僕は死ねない

 

 ーーーこの体も死ねない

 

 ーーー体は形成され

 

 ーーー朽ちれば変わる

 

 ーーー僕の意識は残したまま

 

 ーーー僕の記憶を残したまま

 

 ーーー僕は生き残り続ける

 

 ーーー生き残り続けてしまう

 

 ーーーなぁ……誰か殺してくれよ

 

 ーーー僕の“存在ごと”殺してよ

 

 ーーー誰でも良い

 

 ーーー誰でも良いから

 

 ーーー“妖怪の賢者”でもいい

 

 ーーー僕を殺してくれ……

 

 ーーーなぁ…………殺してくれよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が殺してあげよっか?」

 

「ッ!?」

 

 

 照平は声のした方に向く。目の前には金髪で、宝石の様な物を背中にぶらさげている小さな少女が居た。

 

 目の前の少女の目には、赤く血の様に染まっていた。

 

 だがそれよりも、照平はあることを気にしていた。

 

 

 ーーーもしかして……声に出してたの?

 

 ーーーあー……最悪だ。ほんっとうに最悪だ

 

 ーーー“この体”で“こんな事”言ったら

 

 ーーーこんな女の子にまで心配されて……

 

 ーーーあれ?“心配”?

 

 ーーーこれは……心配というより

 

 ーーー【純粋な狂気】しかない

 

 

「お兄さんは殺されたいの?」

 

「あっ……いや……その……ね?さっきのは言葉の綾と言いますか……ハハッ」

 

 

 何時もの穏やかな口調で目の前の少女に話しかける。こんな事をしても隠せてないのは少女の発言で分かる。

 

 しかし照平は別の事に疑問を抱いていた。この少女が発した、よく考えてみれば何を言っているのか分からない発言を。

 

 

 ーーー“殺す”?この子が?

 

 ーーー何を言っているんだ?

 

 ーーー確かに殺してほしいと口に出したかもしれないが

 

 ーーー何でこんな少女がそんな事を尋ねてくるんだ?

 

 ーーー……今考えてみれば、この館は人外魔境だった

 

 ーーーということは……この子も……人外?

 

 

 照平は疑問を解決する為に尋ねる。今目の前に居る少女……人外かもしれない少女に。

 

 

「あの……1つ御伺いしても宜しいでしょうか?」

 

「なぁに?お兄さん」

 

「君は……何故そんな事を尋ねたんだい?」

 

「えー、知りたいの?」

 

「え、えぇ。まぁ」

 

 

 何かしら少女の発言1つ1つに背中に悪寒が走る。まるで剥き出しの刀の刃をちらつかせている様な感覚に陥る。

 

 

「ほんとに知りたい?」

 

「し、知りたいです。はい」

 

 

 念入りに首を傾げながら聞いてくる少女。それに答えると、何故か少女は右手を広げ照平に向ける。

 

 その右手に目の様な物が浮き出る。瞬間、ヤバイと思って照平はバックステップを取り逃げようとした。無駄に終わってしまったが。

 

 照平の脚が原型を崩しながら破裂した。

 

 

「ガアッ!!!?」

 

「あーあ、ざーんねん。折角お兄さんのお願い叶えようと思ったのになぁ」

 

 

 ーーーこ、これはッ!!

 

 ーーー急に内側から破裂した!?

 

 ーーー何で……いや、恐らくこの少女の能力かッ!?

 

 

 照平の脚は根本から再生され、元通り復元される。それを見た少女は喜びの声を挙げる。

 

 

「すごーい!!お兄さん脚が生えたよー!!」

 

「ッがっ!!がぁ……がぐぅ……」

 

「あれれー?何で苦しんでるのー?おにーさぁん」

 

 

 ーーーやめろ

 

 

「死にたいんでしょー?」

 

 

 ーーー壊さないでくれ

 

 

「何で再生しちゃうのー?」

 

 

 ーーーこれ以上は……もう……

 

 

 照平の脚が破裂したと思いきや、修復する。佇む少女は何度も何度も照平の体を壊していく。

 

 脚を再度壊すも、修復される。

 

 腕を壊すが、また再生される。

 

 頭を破壊するが、首から再生する。

 

 首を破壊するが、頭と体から再生される。

 

 内蔵を破壊するが、それも再生される。

 

 今度は少女は右手に2つの目玉を出現させる。

 

 照平の体は内蔵と体を破壊される。

 

 しかしそれでも再生する。壊しても壊しても壊しても。

 

 しかし少女は気付かなかった。

 

 照平の体が壊れる度に“妖力が放出されている”ことに。

 

 妖力が放出される。照平はこれを拒んでいた。

 

 妖力が放出される事は、ある意味『妖怪の成長』を意味する。

 

 妖怪という存在は、『恐怖される事で力を蓄える』異形の化け物である。

 

 しかし照平は……『そんな存在ではない』

 

 照平は……『そんな枠では収まりきらない存在』だ

 

 照平ほど“脆く”“弱く”“強く”“恐ろしい”存在は、この世に居ない。

 

 照平は……苦しみ続けた。壊される度に。

 

 

 ーーーやめろ

 

 ーーーやめてくれ

 

 ーーー壊さないでくれ

 

 ーーー僕は……壊される為に来たんじゃない

 

 ーーー僕は……壊されル為に来タンじゃなイ

 

 ーーー僕ハ……壊サレルタメに来タンジャナイ

 

 ーーーボクハ……コワサレルタメニ……キタンジャナイ

 

 ーーーボクハ……オマエタチノ“シソ”

 

 ーーーナゼコウゲキヲスル?ナゼハカイヲタノシム?

 

 ーーーナゼイットキノカンジョウニノミコマレル?

 

 ーーーナゼオマエハ……オレ/ボク/ワタシニコウゲキヲスル?

 

 ーーーキサマガソウノゾムカ?

 

 ーーーヨロシイ。ナラバ………

 

 ーーー恐怖ヲオシエヨウ

 

 ーーー恐怖ノグケンカトシテモ、ノガレラレヌ

 

 ーーーシンノ恐怖ヲ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウガアアアアアアアア!!!!」

 

「ッ!?」

 

 

 黒に近い紫のオーラが、禍々しく照平の体から放出される。その少女はオーラに当てられた。

 

 このオーラに当てられた少女は酷く顔を歪ませる。

 

 吐き気、頭痛、神経症。

 

 骨が軋み、肉が悲鳴を挙げ、細胞が逃げようとした。

 

 しかし、逃れられない。

 

 少女は動けなかった。1歩たりとも、一瞬たりとも。

 

 筋肉が動かせない。硬直している。

 

 細胞が押さえ付けられる感覚。逃げることすらままならない。

 

 照平の全身は禍々しく変貌していく。

 

 いや、違う。

 

 少女たちの“種族”が恐怖する存在へと、変貌する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ッ!?」

 

 

 ーーーこの妖力の多さはッ!?

 

 ーーーまさかッ!!あの男が!!

 

 

 椅子に座っていた少女は、立ち上がる。

 

 その表情は、一種の恐怖を彷彿とさせる。

 

 吸血鬼──本来は1度死んだ人間が不死化して蘇った化け物である。また吸血鬼に血を吸われた人間や、吸血鬼に殺された人間が吸血鬼となる。血を好み、永遠の若さを保つ化け物。恐怖の対象の1つ。

 

 しかし、今回は違った。

 

 恐怖させる側が“恐怖している”。こんな屈辱はあってならないと根元へと向かう。

 

 近付いていく度に、どんどん濃くなっていく妖力に吐き気を覚える少女。

 

 そして、対面する。その正体へと。

 

 

 

 

 

 

 

「堕天使……サマエル」

 

 

 

 

 

 

 

 彼の姿の“1つ”を少女は見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうも、うぷ主の鬼の半妖です。

……スッゲェシリアス!!設定あれだからしゃあないけど、シリアスゥ!!!

 別作品と書き方違うけど、どっちかといえばシリアスが書きやすいのよね。

 では、次回もお楽しみに
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