これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode98 大番狂わせ 〜big upset〜

「す、すげぇ……」

「あいつらあの連中を殺りやがったぞ……」

 

大型酒場の中は、喧騒から一転、とても静かな状態になっていた。

理由は、いわゆる()()()()()が起きたから。

 

1番大きなディスプレイに映る、都市の一角の俯瞰カメラ。

左上には『Narrow vs VRF』と見出しがついている。

 

「お、俺だったら絶対逃げてるわ……」

「俺も……」

 

騒然とする観客達が、口々に仲間にそう呟く。

 

すると、大型ディスプレイの見出しが変わり、『Replay』と表示され、時折スローモーションとカットを挟みながら、大番狂わせの様子がありありと見せられた。

 

「まず漁夫の利をとるだろ……?」

 

ライトのMP5が、乱戦を生き延びた唯一のプレイヤーを、背中から無慈悲に仕留める。

 

その後、周りを警戒しつつ、ゆっくりと彼ら、VRFが通りに出てきた所に、MK3A2攻撃手榴弾が降ってきて……

 

「ここだよ!! ここ!!」

「すげぇよなぁ……」

 

観客達が、一気に湧いた。

 

一旦逃げようとし、すぐさま反対に踏み込んだベネットを、隊列中央から走ってきたタウイに後ろに引き戻され、代わりにタウイが前に出る。

 

そしてその瞬間、画面の動きが、最もスローになった。

 

「すげぇ……あんなのどこで……」

「いやぁ、あれは多分、自作だと思うぞ?」

 

観客達は画面に映る()()に、惚れ惚れしたかのようだ。

 

タウイが、左肩についていた長方形の長い鉄板、甲板のようなものの下に左手を伸ばし、即座に前に突き出す。

 

すると、甲板は左肩のジョイントから外れ、左手にくっついて一緒に前に出てくる。

そして次の瞬間、板の表面が真ん中でバックリと割れて、横に広がった。

 

「か、かっけぇ……」

 

そんな甲板に、目を輝かせる人も多数。

 

その直後、グレネードが地面スレスレで爆発。

0距離にあった甲板に、否が応でも膨大な衝撃波を叩きつけ、そのまま吹き飛ばした。

 

すると、ここで一旦スローが終わり、画面の視点が一気に高く、広くなる。

 

「あっ……こりゃたまげたな」

「え?」

 

その瞬間、察しのいいプレイヤーたちは、思わず笑みがこぼれてしまう。

対し、察しの悪いプレイヤーたちは、良いプレイヤーたちの方を見て、不思議そうな顔をした。

 

その顔を見て、良いプレイヤーたちは、一層笑みをもらす。

 

「見てみろよ……()()を」

()()……? あっ……!!」

 

そしてその良いプレイヤーたちの笑みと視線を見て、悪いプレイヤーたちも悟ったようだった。

 

カメラが上に動いたことで、半ば俯瞰のようになったその画面には、隊列に属する一人一人の動きが鮮明に捉えられていた。

 

「先頭の2人……判断が恐ろしくはええ。見た感じどっちもポイントマンだ。どちらが敵のいる室内で有利だと思う?」

「そら……小さい方だ」

「だろ、あいつらそれを、グレの爆発前に判断して……」

「……っ!?」

 

走り出していた。

もちろん、プレイヤーたちは驚愕する。

 

画面は俯瞰映像のまま、グレネード爆発直前の状態で止まっている。

隊列のメンバー達の動きを、見せるためだろう。

 

観客の中の一人が解説したとおり、プルームとライトは即座に行動していた。

 

プルームは既にタウイの着地点を見ているし、ライトは敵の方など見もせず、建物の一階部分の窓に視線を集中している。

 

ポイントマンとして少し先行している()()()を、十分打ち消し得るタイミングだ。

 

「で、だ。 隊列中央のやつらもすげぇ。ポイントマンの2人が来るのを見もしないで……」

「銃を構え始めてる……!!」

 

観客達はもはや唖然としてディスプレイを眺めている。

 

隊列中央の2人……レックスとギフトは、ライトが走って来ているのをもはや知っていたかのように、銃を上に構えかけていた。

 

隊列のど真ん中から走り出していったタウイの方を見るわけでもなく、向かってきているライトの方を向くわけでもなく、ただただ、敵のいる方向、建物の最上階へ、バレルを向けかけている。

 

「こういう時、普通は味方の方を少しくらいは見るんだ」

「確かに」

「だがこいつら、チラリとも見やしねぇ。真っ先に建物の最上階へ意識ごと向けてやがる」

「……!!」

 

観客の一人が解説するなか、俯瞰映像が少しずつ動き出す。

 

「それに、盾があったとはいえ音は凄まじかったはずなのに、あいつすぐ立ち上がってやがるしよ……」

「普通あんな綺麗に投げれねぇよ……」

 

爆発の余波に頭を揺られたベネットが無理矢理に体を起こす様子も、ギフトの軌道・タイミングが完璧なフラッシュバン投擲も、VR世界であることをいいことにありありと映し出された。

 

「あのさ……あいつらさ……もしかして、だけどよ……」

「ああ……」

 

すると、観客達の中に、まさかと言わんばかりの空気が流れ出す。

 

 

 

 

 

 

 

「プロプレイヤーのチームじゃね!?」




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