これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
ベネットとギフトが見たもの。
それは、「
キラキラと窓の奥で輝いている、ひとつの光の点。
一昔前の、
ただこのゲームにおいては、話はほぼ180度反転する。
それは何か有益なアイテムでも、希望の光的なロマンチックなものでも無い。
それは……
「あれ、スナイパーライフルのスコープの反射光ですね」
「えっ……!?」
「室内戦に持ち込みましょう、相手はまだこちらに気づいてない」
「室内戦……?」
ベネットは、即座に淡々と動きを練り始める。
すると、そんな彼を見て、ギフトは急に笑顔になった。
「よしきた!! ならば、
「……なんですかそれ!?」
そして満面の笑みをたたえながら、ギフトがローブの奥から出してきたのは
これはさすがに古参のベネットも見たことがないのか、そのフォルムにぎょっとする。
「ふふふ……こいつはね、すごいんだよ……」
「な、なにがどうすごいんですか……」
「こいつはね……なんとね……」
ベネットが珍しく息をのんで言葉の続きを待つ。
そしてそれを見たギフトは、満を持したかのように、一言こう、言い放った。
「
「なっ……!?」
すると次の瞬間。
ギフトは、光の見えている窓枠……の、すぐ隣の壁へ、その球体をぽいと投げた。
その軌道を見て、ベネットは一瞬で全てを悟る。
そして同時に……
「敵狙撃手発見!! 交戦する!!」
そう、一言通信アイテムに叫んで、銃を構えた。
✣
ドォォン!!!!!
「何っ!?」
一方、エムである。
いきなり横から聞こえ、また飛んできた爆音と爆風に、流石に驚いていた。
「くっ……そ!! 別働隊か!! レン……!!」
少し爆風に押され、尻もちをついた体をなんとか持ち上げつつ、レンに通信を試みる。
……だが。
ダダダダ!!!!
「ぐっ!?」
外から飛び込んできた弾丸が頭の上を掠めていき、エムは反射的にまた尻もちをついた。
「ぐぅ……!! レン!! レン!!」
するとエムは、もはや立ち上がることを諦めたのか、そのままレンへの通信を試み、何度も呼びかける。
だが、向こうからの返事はない。
「……!?」
まさか、と思い、耳にさっと手を当てる。
実態は、そのまさかだった。
通信アイテムが、耳から落ちていたのである。
「くっ……!?」
エムは即座に周囲の床を見回す。
……すると、棚から落ちてきたコップの破片の中に、キラリと光る通信アイテムを見つけた。
もちろん、即座に手を伸ばし、拾い上げて耳に押し込む。
頭は上げられないため、もはやうつ伏せに寝そべっているような状態だ。
そして、満を持してエムはこう、叫ぶのである。
「レン!! 南だ!! 南へ逃げろ!!!!」
✣
時は少し進んで、プルームが北に走り出して数十秒後。
「こちらレックス、4ブロック先まで展開しつつ北北西へプッシュする」
「了解」
「同じくタウイ、2ブロックまで展開。北西へプッシュする」
「了解」
プルームの無線に、2人の声が入ってくる。
そしてそれに乗ずるかのように、今度はプルームが、ライトに声を飛ばした。
「ライト!! 北にプッシュしてくれ」
「はぁーい!!」
「俺は少し西に展開して、北北東へプッシュする!!」
「りょーかいしました!!」
相変わらず元気な奴だ。
そんな感想が、プルームの中で生まれて消える。
今、自分たちは、全員スナイパーの方向を見て、進撃している。
後ろ、つまり南に走り去ったピンクの悪魔など目もくれず。
実はこの動き、全て相手の状況を読み込んだ上でのものである。
相手はスーツケースに一人、奥の民家に一人。
他のメンツが最大4人、どこかにいるかもしれない。
だが現状考えられるのは、チームは2人だけ、というもの。
理由としては、
考えてみれば簡単だ。
なぜ、囮として忍び込ませていたピンクの悪魔を、即座に逃がしたのか?
他の4人がいるならば、なぜ交差点でクロスファイア、つまり掃射しないのか?
理由は簡単。
だから片一方の狙撃手が攻撃を受けた時、もう片方のピンクの悪魔を即座に逃がした。
人数的にも、陣形的にも、敵う訳が無いからだ。
そのままやり過ごすのも不可能。
サテライトスキャンという便利なものがあるから。
自分がやられれば、その時こそ本当の意味での最悪が訪れる。
スーツケースで籠城線だなんて、無理な話にも程がある。
だから逃がした。
しかも分かりやすい、対極の南側へ。
「予想が外れなきゃいいが……」
そう、プルームは呟きつつ、音鳴る方向より左前向きに走っていった。
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