これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode102 光 〜light〜

ベネットとギフトが見たもの。

それは、「()」である。

 

キラキラと窓の奥で輝いている、ひとつの光の点。

一昔前の、()()()()()R()P()G()で光点は、ほとんどが落ちているアイテムの表現として使われていた。

 

ただこのゲームにおいては、話はほぼ180度反転する。

 

それは何か有益なアイテムでも、希望の光的なロマンチックなものでも無い。

 

それは……

 

「あれ、スナイパーライフルのスコープの反射光ですね」

「えっ……!?」

 

()()()、である。

 

「室内戦に持ち込みましょう、相手はまだこちらに気づいてない」

「室内戦……?」

 

ベネットは、即座に淡々と動きを練り始める。

すると、そんな彼を見て、ギフトは急に笑顔になった。

 

「よしきた!! ならば、()()()を使おう」

「……なんですかそれ!?」

 

そして満面の笑みをたたえながら、ギフトがローブの奥から出してきたのは()()()()()()()()()

これはさすがに古参のベネットも見たことがないのか、そのフォルムにぎょっとする。

 

「ふふふ……こいつはね、すごいんだよ……」

「な、なにがどうすごいんですか……」

「こいつはね……なんとね……」

 

ベネットが珍しく息をのんで言葉の続きを待つ。

そしてそれを見たギフトは、満を持したかのように、一言こう、言い放った。

 

()()()()()()()()()()さ」

「なっ……!?」

 

すると次の瞬間。

ギフトは、光の見えている窓枠……の、すぐ隣の壁へ、その球体をぽいと投げた。

 

その軌道を見て、ベネットは一瞬で全てを悟る。

そして同時に……

 

「敵狙撃手発見!! 交戦する!!」

 

そう、一言通信アイテムに叫んで、銃を構えた。

 

 

ドォォン!!!!!

「何っ!?」

 

一方、エムである。

いきなり横から聞こえ、また飛んできた爆音と爆風に、流石に驚いていた。

 

「くっ……そ!! 別働隊か!! レン……!!」

 

少し爆風に押され、尻もちをついた体をなんとか持ち上げつつ、レンに通信を試みる。

 

……だが。

 

ダダダダ!!!!

「ぐっ!?」

 

外から飛び込んできた弾丸が頭の上を掠めていき、エムは反射的にまた尻もちをついた。

 

「ぐぅ……!! レン!! レン!!」

 

するとエムは、もはや立ち上がることを諦めたのか、そのままレンへの通信を試み、何度も呼びかける。

 

だが、向こうからの返事はない。

 

「……!?」

 

まさか、と思い、耳にさっと手を当てる。

実態は、そのまさかだった。

 

通信アイテムが、耳から落ちていたのである。

 

「くっ……!?」

 

エムは即座に周囲の床を見回す。

 

……すると、棚から落ちてきたコップの破片の中に、キラリと光る通信アイテムを見つけた。

 

もちろん、即座に手を伸ばし、拾い上げて耳に押し込む。

頭は上げられないため、もはやうつ伏せに寝そべっているような状態だ。

 

そして、満を持してエムはこう、叫ぶのである。

 

 

 

 

 

 

 

「レン!! 南だ!! 南へ逃げろ!!!!」

 

 

時は少し進んで、プルームが北に走り出して数十秒後。

 

「こちらレックス、4ブロック先まで展開しつつ北北西へプッシュする」

「了解」

「同じくタウイ、2ブロックまで展開。北西へプッシュする」

「了解」

 

プルームの無線に、2人の声が入ってくる。

そしてそれに乗ずるかのように、今度はプルームが、ライトに声を飛ばした。

 

「ライト!! 北にプッシュしてくれ」

「はぁーい!!」

「俺は少し西に展開して、北北東へプッシュする!!」

「りょーかいしました!!」

 

相変わらず元気な奴だ。

そんな感想が、プルームの中で生まれて消える。

 

今、自分たちは、全員スナイパーの方向を見て、進撃している。

後ろ、つまり南に走り去ったピンクの悪魔など目もくれず。

 

実はこの動き、全て相手の状況を読み込んだ上でのものである。

 

相手はスーツケースに一人、奥の民家に一人。

他のメンツが最大4人、どこかにいるかもしれない。

 

だが現状考えられるのは、チームは2人だけ、というもの。

理由としては、()()()()()()()()()だ。

 

考えてみれば簡単だ。

なぜ、囮として忍び込ませていたピンクの悪魔を、即座に逃がしたのか?

他の4人がいるならば、なぜ交差点でクロスファイア、つまり掃射しないのか?

 

理由は簡単。

()()4()()()()()()()()()()()からである。

 

だから片一方の狙撃手が攻撃を受けた時、もう片方のピンクの悪魔を即座に逃がした。

人数的にも、陣形的にも、敵う訳が無いからだ。

 

そのままやり過ごすのも不可能。

サテライトスキャンという便利なものがあるから。

 

自分がやられれば、その時こそ本当の意味での最悪が訪れる。

スーツケースで籠城線だなんて、無理な話にも程がある。

 

だから逃がした。

しかも分かりやすい、対極の南側へ。

 

 

 

 

 

 

 

「予想が外れなきゃいいが……」

 

そう、プルームは呟きつつ、音鳴る方向より左前向きに走っていった。

 




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