これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode103 キッチン 〜kitchen〜

時は、エムがレンを南に逃がした直後。

 

ズダダダダ!!!!!

「くっ……!?」

 

室内は、既に戦場と化していた。

ただその様子は……『戦闘』というより『掃討』の方が正しいかもしれない。

 

なぜならそれは、ベネットとギフトの連携攻撃に、エムは為す術がないから。

エムの武器は『M14 EBR』、対する2人の武器はどちらともアサルトライフル。

 

継戦能力に圧倒的な差があるのである。

 

「……ふん!」

 

ただそこはエム。

おいそれと負けるような男ではない。

 

スガンズガン!!

「ぐあっ……!!」

 

突如、ギフトの右太腿に重たい弾丸が2発、飛び込んできた。

そしてそのまま、太腿を持っていく。

 

「ごめん……下がる!!」

「了解!!」

 

ギフトはたまらず後ろに倒れると、そのままの体勢ですぐ側にあった机の足をつかみ、そちらに自らの体を引きずった。

 

一方ベネットは、ずんずん進んでいく。

 

「多分、そこの裏から撃ってきたよ」

「……!!」

「そこ木製でしょ? 貫通だよ、やられた!!」

 

すると不意に、そんなギフトの声が、後ろから飛んできた。

その声に、ベネットは躊躇うことなく自分の意思を固める。

 

そしてその直後、左手をついて、勢いよくカウンターを乗り越えた。

それと同時に、右手の銃を容赦なくぶっ放す。

 

いわゆる「決め撃ち」、だ。

変に詮索するより、こうした方が結果的に被害が少ない。

 

……だが。

 

「チッ……そういうことか!!」

 

ベネットは、カウンターの奥に脚がつく前に、自分の不幸を呪った。

 

左手をついてカウンターを飛び越えると、必然的に体は左に向き、視界も自ずとそちらへ向く。

ベネットの左へ向いた眼が映したもの。それは……

 

 

 

 

 

奥に続く廊下、その先に無造作に開かれた扉、そしてその奥に見える、()()()()()()()()()だった。

 

 

「……ふぅ、なんとか、だな」

 

腰を落としたエムは、そう呟いて息を吐いた。

それと同時に、ゴン、と()()()()()()に背中を預ける。

 

先ほどいたところより、明らかに空気が硬い。

それもそのはず、そもそもこの空間を仕切る素材がガラリと変わったから。

 

そこはいわゆる、「ガレージ」と呼ばれる空間である。

 

先ほどまでいたキッチン、大きく括れば家とは違い、フローリングや木の壁なんてものはない。

ただコンクリートで形を作っただけの、快適性皆無の空間。

 

ここへは、キッチンの奥の通路から、恐らく荷物搬入口なのだろう、扉一枚を介して入れる。

 

「さて、貫通弾がどれだけ時間を稼げるか……」

 

するとエムは、そう呟いて大きめのバンから扉の方を覗き見た。

 

キッチンの入口に入られたと悟ったエムが放った、賭けの2発。

せいぜい牽制程度に、と思ってやったことだったが、未だガレージに敵が入ってきていないあたり、案外効果はあったのか? と自画自賛したくなる。

 

「ひとまず……だな」

 

少しだけ覗き、すぐ顔を引っ込めたエム。

腰を上げ、しゃがみの状態に体勢を変えた。

 

残弾は心配に及ばないほどある。

体力もまた同じく。

 

問題は、どこまでやれるか。

 

「……よし」

 

エムが、そう自分に問いかけて気を引き締めた時。

 

 

 

 

 

バババババ!!!!!!

「!!」

 

キッチンの方向から、銃声が響いてきた。




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