これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
「くっ……!!」
ベネットは今、究極の選択を迫られていた。
「このままガレージに突っ込む」か、「増援を待つ」かの二択で。
このままガレージに突っ込んで1on1に持ち込んだほうが、戦いやすいことこの上ない。
ガレージの中がどうなっているかなんて今のベネットには分からない。
であるが故に、自由度が戦況を左右しうる。
しかし、だ。
増援を待った方が、最悪の事態は避けられる。
下手くそなことをして、もし仮に自分がやられるとなったら、それは単純にチームの人数を減らすことになる。
なぜならどのみち相手は北に逃げざるを得ないから。
味方……プルーム達が、こちらに迫ってきているからである。
結果は決まっている、「相手が北に逃げる」だ。
問題は、ベネットがここで、相手と戦うのか、否か、なのだ。
「……ふ、俺は馬鹿だな」
すると、不意にベネットは顔を上げて、不敵な笑みを浮かべた。
カウンターを飛び越えた体勢そのままだったので、その姿はさながら今から走り出すのかと思える格好である。
そんなベネットが選択したのは、「このままガレージに突っ込む」だった。
またあえて言うならば正解はおそらく、「増援を待つ」であろう。
……でも。
ベネットは正解を知りつつも、前に進むことを選択した。
なぜならそれは、
「確かにそうだ……分かったよ菊岡」
ベネットは不意に、笑みを漏らす。
いつか菊岡が言っていた言葉を思い出したからだ。
『どうしてか、僕には分からないんだけど……』
『……?』
『彼らは自分たちの事を、
✣
「はぁ……はぁ……っ!!」
一方、こちらはピンクのチビ……改め、レンである。
「エムさん……? エムさん……!!」
彼女は今、必死に走りながら、必死に無線に問いかけていた。
ただ、無線からの反応は一切ない。
通信圏外とかいう概念のない無線機なので、考えられる要因はただ一つ。
エムが無線に応答できない状況にある、ということ。
ただそれが、戦闘中で無線をあえて切っているだけなのか、それとも運悪く撃ち抜かれて壊れているのかは分からない。
唯一分かるのは、エムがまだ生きている、という事だけ。
それは無線でもなんでもなく、ただ単に視界の上端に表示されている自分とチームメイトのHPゲージがそれを示していた。
「くっ……!!」
さすがに痺れを切らしたのか、レンはもう無線に問いかけることを諦める。
そして久しぶりに、
「はぁ……はぁ……っ!!」
息切れなんてしないはずのこの世界でも、一応のリアリティとしてなのか、レンの視界は大きく上下に揺れている。
……ただ、レンは今それどころではなかった。
「どうすれば……いいの……!?」
レンは思わずそう呟く。
加え、ただただ後ろに流れていた視界が止まっただけで、何もかもがまずい気がしてきた。
指示が、ない。
今まで頼りきってきた、エムさんの指示が、ないのである。
「う、うう……!!」
情けない、と、ふと自分を省みる。
今まで自分は、1人で戦ってきた。
噂になり、討伐隊が組まれるまでに強くなった。
……気がしていた、のか。
そう、自分で結論を出そうとした瞬間。
「っ……!!」
憤り、のような感情が、体の奥底深くから湧き上がってきた。
だからなんだ、じゃぁここで勝負を投げ出すのか。
答えは「NO!!」、じゃぁどうする!!
「とりあえず全員ぶっ殺す!!」
自問自答を繰り返し、そして最後に声を張り上げた。
もうそこには弱気だった彼女はいない。
✣
「ふふ……大バカ野郎がもう1人」
そんな彼女を見た店主は、楽しそうにそう呟いた。
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