これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode104 大馬鹿野郎 〜Great idiot〜

「くっ……!!」

 

ベネットは今、究極の選択を迫られていた。

「このままガレージに突っ込む」か、「増援を待つ」かの二択で。

 

このままガレージに突っ込んで1on1に持ち込んだほうが、戦いやすいことこの上ない。

ガレージの中がどうなっているかなんて今のベネットには分からない。

であるが故に、自由度が戦況を左右しうる。

 

しかし、だ。

 

増援を待った方が、最悪の事態は避けられる。

下手くそなことをして、もし仮に自分がやられるとなったら、それは単純にチームの人数を減らすことになる。

 

なぜならどのみち相手は北に逃げざるを得ないから。

味方……プルーム達が、こちらに迫ってきているからである。

 

結果は決まっている、「相手が北に逃げる」だ。

問題は、ベネットがここで、相手と戦うのか、否か、なのだ。

 

「……ふ、俺は馬鹿だな」

 

すると、不意にベネットは顔を上げて、不敵な笑みを浮かべた。

カウンターを飛び越えた体勢そのままだったので、その姿はさながら今から走り出すのかと思える格好である。

 

そんなベネットが選択したのは、「このままガレージに突っ込む」だった。

またあえて言うならば正解はおそらく、「増援を待つ」であろう。

 

……でも。

ベネットは正解を知りつつも、前に進むことを選択した。

 

なぜならそれは、()()()()()()()、それができると学んだから。

 

「確かにそうだ……分かったよ菊岡」

 

ベネットは不意に、笑みを漏らす。

いつか菊岡が言っていた言葉を思い出したからだ。

 

 

 

『どうしてか、僕には分からないんだけど……』

『……?』

 

 

 

 

 

 

『彼らは自分たちの事を、()()鹿()()()って言うんだ』

 

 

 

「はぁ……はぁ……っ!!」

 

一方、こちらはピンクのチビ……改め、レンである。

 

「エムさん……? エムさん……!!」

 

彼女は今、必死に走りながら、必死に無線に問いかけていた。

 

ただ、無線からの反応は一切ない。

通信圏外とかいう概念のない無線機なので、考えられる要因はただ一つ。

 

エムが無線に応答できない状況にある、ということ。

 

ただそれが、戦闘中で無線をあえて切っているだけなのか、それとも運悪く撃ち抜かれて壊れているのかは分からない。

 

唯一分かるのは、エムがまだ生きている、という事だけ。

それは無線でもなんでもなく、ただ単に視界の上端に表示されている自分とチームメイトのHPゲージがそれを示していた。

 

「くっ……!!」

 

さすがに痺れを切らしたのか、レンはもう無線に問いかけることを諦める。

そして久しぶりに、()()()()()

 

「はぁ……はぁ……っ!!」

 

息切れなんてしないはずのこの世界でも、一応のリアリティとしてなのか、レンの視界は大きく上下に揺れている。

 

……ただ、レンは今それどころではなかった。

 

「どうすれば……いいの……!?」

 

レンは思わずそう呟く。

加え、ただただ後ろに流れていた視界が止まっただけで、何もかもがまずい気がしてきた。

 

指示が、ない。

今まで頼りきってきた、エムさんの指示が、ないのである。

 

「う、うう……!!」

 

情けない、と、ふと自分を省みる。

 

今まで自分は、1人で戦ってきた。

噂になり、討伐隊が組まれるまでに強くなった。

 

……気がしていた、のか。

 

そう、自分で結論を出そうとした瞬間。

 

「っ……!!」

 

憤り、のような感情が、体の奥底深くから湧き上がってきた。

 

だからなんだ、じゃぁここで勝負を投げ出すのか。

答えは「NO!!」、じゃぁどうする!!

 

 

 

 

「とりあえず全員ぶっ殺す!!」

 

 

 

 

 

自問自答を繰り返し、そして最後に声を張り上げた。

もうそこには弱気だった彼女はいない。

 

 

「ふふ……大バカ野郎がもう1人」

 

そんな彼女を見た店主は、楽しそうにそう呟いた。




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