これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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すみません!
今回、ついつい長くなってしまいました。
お許しください。(笑)


Episode10 初任務完了 〜First mission completed〜

「動くな」

「ひっ!?」

 

とある荒野の、崖を削ったような建物の中。

とある兵士が、背後から来た何者かによって、尋問されていた。

 

「吐け」

「な、何も知らない!」

「仲間はどこだ」

「本当に知らない!助けてくれ……!」

バシュン!

「あっ……!」

バタン……!

 

その兵士、つまりプレイヤーが、また一人倒れる。

ビッグ・ボスは、その死体を隅に運ぶと、光の粒子となって消えるのを待った。

そしてその直後、プレイヤーがビッグ・ボスが待っていた通りに光の粒子になって消える。

 

そしてまた、ビッグ・ボスは動き出した。

 

 

「うっ……動くな!武器をおろせ!」

 

その脅迫は、不意に背後からやって来た。

ビッグ・ボスが、とある部屋に入った時。扉の後ろに隠れていた兵士に、アサルトライフルを突きつけられたのだ。

ビッグ・ボスは、素直に手に持ったデザートイーグルを地面に置いく。

そして同時に、その脅迫した兵士の方に向いた。

その兵士は、オロオロしながら銃を向ける。

 

「な、う、動くな!死にたいのか!」

 

ビッグ・ボスは、眼帯で隠れていない右目だけをその兵士に真っ直ぐに向け、淡々と言葉を放つ。

 

「そんな銃じゃ、このスーツの装甲は通らないぞ」

「う、うるさい!大人しくしろ!」

「それにその銃、安全装置(セーフティー)が掛かってるぞ?新米(ルーキー)

「え……?」

 

その兵士が、手に持った銃の横を見る。

その瞬間、ビッグ・ボスが動いた。

 

「あっ……!」

 

流れるように繰り出されるCQC。

その兵士は、あっという間に銃を叩き落とされ、投げ飛ばされた。

 

「ぐはっ!」

「おいおい……」

 

その兵士の苦しみ様に、ビッグ・ボスが呆れる。

その兵士のHPはあっという間に9割減った。

 

「お前、もっとマシな服持ってないのか。そんな耐久値じゃ着ても着なくても変わらんぞ?」

「うっ、うるさい!」

「なんなら俺から頼んでやろうか?すぐそこにいる……あんたらのボスにな」

「え……?」

 

ビッグ・ボスは、寝そべったままキョトンとする兵士に、いつの間にか拾い上げたデザートイーグルを突きつけつつ、すぐ目の前の柱に目を合わせる。

するとそこから、聞いたことのない俗に言う悪役の笑い声が聞こえてきた。

 

「ククク、ふはははは!やはり気づいていたか!雇われ犬が!」

「まあな」

 

その悪役の声の持ち主は、ビッグ・ボスの事を思いっきり侮辱すると、柱から姿を現した。

 

全身黒色の戦闘服を着た、ヤクザのようなサングラスをつけたプレイヤー。

ビッグ・ボスはひと目で分かった。

ーこいつがここのボスだ。

と。

そしてそのプレイヤー、全身黒づくめヤクザは、話を続ける。

 

「やあやあ、初めましてだな?ビッグ・ボスさんよぉ!」

「……」

「俺の名はカイジ!ここのスコードロンのリーダーだ!」

「そうか」

 

ビッグ・ボスは、心底どうでも良さそうに返事する。

そんな対応に、カイジは不満の色を見せた。

 

「へいへい、なんだか連れねぇな、ビッグ・ボスさんよぉ?」

「敵と馴れ合うつもりは無い」

「あのなぁ?これでも俺、ビッグ・ボス。あんたの……」

「ああ、あんたがこの依頼の依頼主(クライアント)だろう?」

 

ビッグ・ボスは、さらりとカイジの言葉を先取りする。

これは流石にカイジも驚いた。

 

「へ、へぇ……あんた、なかなかやるじゃん」

「そりゃどうも」

「でも……これからどうするんだい?俺を殺せば、依頼は失敗だ」

「確かに俺はあんたを殺せない。だがな……」

「……?」

 

そんな脅迫にも動じず、ビッグ・ボスは、カイジの目を真っ直ぐに捉える。

そして、淡々とカイジの核心を突いた言葉を吐き出した。

 

「最初から、俺を殺すつもりなんだろう?」

「……!」

 

カイジは素直に認めることが出来ず、大きく狼狽える。

ビッグ・ボスは、視線を逸らさずにすらすらと話し出した。

 

「もともと、依頼主(クライアント)が匿名の時点で怪しいと思ってたんだ。なにかあるってな。だがそれでも仕事は仕事だ。結果俺は黙々と黙って潜入してみたが……今この部屋に来た時、確信したよ。あんたが、俺を罠にはめて殺すために、わざわざ俺に依頼したんだとね」

「……」

 

カイジは、黙りこくる。

その沈黙は、ビッグ・ボスの指摘を肯定することを意味していた。

ビッグ・ボスは、下で未だ寝そべっている兵士をちらりと見ると、話を続ける。

 

「ちなみに、今この部屋には、11人のプレイヤーがいるな」

「な、なにぃ……!?」

「左右後ろに一本づつあるの柱の後ろに3人づつで合計6人。あんたの隠れていた柱の後ろに2人、で、今寝そべっているこいつとあんた、そして俺だ」

 

カイジは、額に汗を滲ませる。

ビッグ・ボスは、初めて入ったこの部屋でも、振り向かずに索敵できるのか、と。

そう。今ビッグ・ボスが淡々と話した兵士の位置は、すべて正しいのだ。

 

「でっ……でもなんで……!?なんであなたは、ここまで来れて、落ち着いていられるんですか?」

「それはな、あんたらが大規模すぎたんだ」

「な……!?」

 

ビッグ・ボスは、寝そべっている兵士の急な質問に答える。

 

「あんたらは、大規模すぎてむしろ警戒網に穴を開けてしまったんだ。こんだけ大人数でスコードロンを組んでたら、誰がやられても分かるわけがない。何十人もいる中で一人消えても、誰も気づかないのさ」

「……!」

「そして、偶然気づいた他の奴も、ノコノコと近づいてくる。やられない訳ないだろう?」

「で、でも……!」

「それにな、こんだけ大人数なら、一人一人の練度も鈍る。この部屋にいる奴らは、外にいる奴らよりは優秀かもしれんがまだまだだ。そんな連中の守る拠点など、俺からしてみれば見張りがいないのと同等だ。落ち着いていられない方がおかしい」

「な……!」

 

これには流石にカイジでも取り乱した。狼狽える所の話ではない。

それもそのはず。これでもかと仲間を集めたこの拠点を、仲間がいないのも同然と言って入ってきたのだ。

むしろ取り乱さない方がおかしい。

あれだけ自信に溢れていたカイジは、今は見る影もなくなっていた。

ビッグ・ボスはカイジのそんな心の取り乱しを見逃さず、耳元の通信アイテムに素早く手を置く。

そしてたった一言、ポツリと指示を出した。

 

「シノン、撃て」

「え……?」

 

次の瞬間、ヘカートIIの射撃音が、連続して暗闇の荒野に響き渡る。

それと同時に、弾丸が部屋の中に飛び込んで暴れ回った。

 

「うわぁ!」

「ひいぃ!」

 

カイジは恐れ慄いて目を閉じて頭に手をかぶせる。

その部屋にいたその他の兵士達も同様に、恐れの声を上げた。

 

しばらくして、カイジが目を開けた時、もう時は既に遅かった。

 

前にはデザートイーグルを突きつけたビッグ・ボス。

そしてその背後には頭を撃ち抜かれた9人の死体があった。

 

「……!」

「終わりだ。カイジ」

「ぐ!くそっ!」

 

カイジが悔しそうに下を向き、名前でビッグ・ボスに呼ばれた直後、彼の両手に痛みが走り、視界が暗転した。

 

 

「やあ、お待たせしました」

 

それからまた30分後。

シノンと()()()は、壊滅した(させた)組織A(アルファ)の本拠地から少し離れた暗闇の荒野で合流した。

シノンは、あまりの変わりようにやはりキョトンとする。

 

「あれ、もうビッグ・ボスじゃないんだ……」

「はい。敵に見つかった時、誤魔化しが効きませんからね」

「なるほど……」

 

タスクは、サラリとそんなことを口にする。

やはり彼は慣れてるな、と、シノンは内心で感心した。

 

すると急に、ピタッとタスクが立ち止まる。

シノンは、慌てて自らの足も止める。

すると彼は、ニコッと笑ってその場に座った。

シノンは、その行動の意味が分からず、ただ呆然と立っている。

その時やっと、彼が声を出した。

 

「さ、ここが合流地点です。待ちましょうか」

「え……?」

 

シノンは、タスクの言葉の中に、聞き覚えのない言葉を聞き取った。

合流地点。一体なんの、と言おうとしたところで、タスクは話続ける。

 

「ああ、言ってませんでしたね。実は、この仕事が終わった後、店主さんに回収をお願いしてあるんです。本来なら回収目標(ターゲット)を、もっと言えば可能性は低いですが捕虜も連れている予定でしたから」

「そういうこと……」

 

シノンは納得する。

確かに、元々の予定はあの大規模スコードロン、組織A(アルファ)のボスが回収目標(ターゲット)だった。

それに捕虜もいるとの情報だったのだが、捕虜はログアウトさせてもいいと考えていたし、そもそもいるかもわからなかった。

 

結果、その目標(ターゲット)依頼主(クライアント)で、捕虜なんてただのガセだったのだが。

シノンが拠点を見回した時、テントの中はともかく、外にはそんなプレイヤーはいなかった。

 

第一、プレイヤーを捕虜にした所で、現実に帰れなくなるだけで何も苦しくない。

簡単に言えば、捕まえておく意味が無いのだ。

おそらくタスクは、そこも見越してあえてシノンに捕虜情報を言っておいたのだろう。

そうすれば、シノンのやる気が出ると。

 

「嵌めたのね?」

「なにをです?」

 

シノンは、タスクに少し不満気な顔をむける。

だが、タスクはなんの事かとニコニコしていた。

そんな顔を見て、シノンがまた文句を垂れ流す。

 

「捕虜……あんた、最初からわかってたんでしょ?」

「ああ、それですか。はい。分かってましたよ」

「じゃなんで言ってくれないのよ!」

「だってシノンさん、ヘカートIIが撃てなくて不満気でしたから。なにか他の役割を与えなきゃ、勿体ないじゃないですか」

「は、はあ」

「シノンさんみたいな優秀な人、崖の上で寝そべらせておくなんて僕にはできません」

「あ、ありがと」

 

タスクが話を切って、笑顔をこちらに向ける。

シノンは、少し赤面してそっぽを向いた。

 

何気にいい雰囲気…と思いきや、急にタスクがぶち壊す。

 

「ま、ホントはシノンさんのやる気を引き出すためなんですが」

「やっぱりそうなんじゃんか!」

「へへへ!」

「殺す!」

 

シノン後ろ越しに手をやる。が、そこにはG18は無かった。

ヘカートIIのマガジンを入れるため、あの店に置いてきたのだった。

 

「あ……」

「残念でしたね!」

「〜!」

 

シノンは、今度こそ赤面して顔を伏せる。

タスクは、そんなシノンを見て微笑んだ。

 

 

そしてその後、三輪のバギーに乗った店主が、暗闇の荒野にフロントライトを光らせながら迎えに来た。

タスクとシノンは、二人並んで後ろの座席に座る。

店主は、「お疲れ様〜」と言いながら店まで乗せていってくれた。

 

その道中、不意に店主がタスクに疑問を投げかける。

 

「そういやタスクくん、なんか、あの大規模スコードロンのボスが依頼してきた人だったらしいけど、あのあと結局どうしたの?」

「あ、確かに。どうしたの?まさか殺し……」

「いやまさか、殺してはいないですよ?」

 

店主の質問にシノン乗っかり、タスクが慌てて否定する。

するとタスクは、とんでもないことをサラリと口にした。

 

「あのボスは、両手を撃ち落として黒袋被せて放置してきました」

「「ええ……」」

 

この時、シノンと店主が微かに引いたのは、言うまでもないだろう。




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