これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode109 決戦へ 〜To the decisive battle〜

時は、15時10分。

 

やばいやばいやばいやばい。

小さな女の子の頭の中は、この単語でいっぱいであった。

 

理由は、愛銃のP-90、ピーちゃんがいなくなってしまったから。

 

しかもそれが、どこかに飛んでいったり、地面に埋まってしまったり、なんていう理由ではなく……

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()のである。

 

「どっ、どどっ……どうしよう……!?」

 

ピンクの小さな生き物は、頭を抱えてピンクの塊になった。

 

今、自分の手元にあるのは、ナイフ1本だけ。

対して、残っている相手チームは、あの交差点の奇襲さえもしのぎ、むしろ自分たちを分断させるまで至った強者達。

 

絵に書いたような、()()

 

「うう……相変わらずエムさんは返事してこないし……」

 

無線からの声が、ここまで恋しくなったことはない。

 

しかし。

泣いても笑っても、どうしようもないのだ。

 

「……よし」

 

ピンクのチビは、立ち上がった。

そして覚悟を……決めたようであった。

 

 

対して、その強者たち。

 

「ここのどこかに、あのチビがいる」

 

そう、タウイが呟いた。

眼科に広がるは、広大な荒野。

 

市街地のハズレにあった建物から見渡せる範囲でも、相当な範囲がある。

 

「15時10分のスキャンはついさっき終わった」

「そう」

「あのピンクは速い」

「だね」

「したがって?」

「……そゆこと」

 

プルームの言葉に、タウイが頷く。

 

ピンクのチビは、相当速い。

とすると、次のスキャンまでに移動できる範囲は普通よりはるかに広い。

 

ただ少なくとも、市街地には来ないだろう。

となれば、この荒野のどこかに、いることになる。

 

さすがに、隣の砂漠や、遺跡に行くまでは至らない。

それはいくらなんでも遠すぎる。

 

でもだからといって、すぐ見つけられるような地形でもなければ、そもそもそんな距離ですらない。

 

「……厄介」

「だぁね」

 

ベネットが息を着いて目を細めた。

レックスが呆れたような、面白そうな、そんな笑みを浮かべて首を振る。

 

「ま、泣いても笑っても、これが最後、だね」

「ええ〜、もう終わりかぁ」

 

ギフトが伸びをしながらそう笑った。

彼の体にずっしりのしかかり続けているグレネード達も、ローブに引っぱられて上にあがる。

 

ライトは相変わらずお気楽そうであった。

 

 

 

 

 

 

……そして、男たちは決戦の地へと足を踏み入れる。

 

 

 

 

 

 

「……」

 

……ただ。

ベネットだけは、どこか不安げな顔をしていた。

 

 

一方、相変わらずうずくまっているエムである。

 

手紙の内容は、至って簡単。

「ゲームであなたが死んだら、リアルでもあなたを殺す」

 

んなばかな、冗談な、そう思うかもしれない。

だが、()()()はやりかねない。

 

そう思うと、震えが止まらない。

 

こうなれば、レンがやられたらリタイアするほか道はない。

リタイアするな、とは書いてない。

それに加え、別に()()()、わけでもない。

 

したがって、今自分がすべきことはただひたすらこの敵も味方もいないこの地で、その時を待つだけ。

 

レンがやられれば、リタイア権を有するリーダーの資格は自分に移る。

そしてそのままリタイアすれば、何事もなく、無事に終わるはずだ。

 

「……僕は、まだ死にたく……ないん……だ」

 

もし死んでしまった時のことを考えると、それだけで涙が出てくる。

 

……すると、その時だった。

 

ピピピッ

「ひぃ!」

 

不意に、腕に着けていた時計が振動し、音を発した。

 

15時10分。

7回目のスキャンを知らせる、予め設定しておいたアラームである。

 

エムは、慌てて胸ポケットからスキャン端末を取り出す。

そして縋るように、地面に表示させた地図を見る。

 

ゆっくりと、北から、白線が地図を撫でていく。

それをまるで、合格発表の受験生のような目で追うエム。

 

灰色の点がいくつも表示される中、ぱっと光った白点で表示されたのは、『VRF』。

 

彼らは今、マップ中央から見て南西に少しズレたところに位置。

居住区から荒野へと、もう既に移動を開始しているようだった。

 

スキャンはさらに下へ。

 

すると現れたもう1つの光点。

『LM』である。

 

その光点はなんと。

 

「な、なにを……!!??」

 

『VRF』に向かって、まっすぐ移動していた。

つまり、言ってしまえば「正面突撃」。

 

『VRF』も、恐らくはスキャンを見ているだろう。

こころなしか、レンの方へ進路が向いている気がする。

 

「……はは」

 

すると、エムは不意に笑い始めた。

それは、()()()()()()()()()()()()

 

ついさっきまで、レンが死ぬのをあれほど期待していたのに。

傍観者になった途端、レンの無謀な行動に、死ぬぞアイツ、と焦り始めた。

 

「結局は僕も……いや」

 

そして、エムはのっそり立ち上がる。

 

 

 

 

 

()()、大馬鹿者……だ」




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