これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
そして時は戻って……
パチン!パチン!
「……ふ」
エムの牽制射撃が地面を削る。
岩に隠れているので、ひとまず当たることはない。
しかし、そう言ってうかうかしていると、なにかが起きるのが戦闘の常だ。
ここはもはや、一気に出るのが最良だろう。
「……っと、その前に」
ベネットは、慌てて銃についたシールドの上方を殴る。
すると、バゴン、というくぐもった音と共に、シールドが外れて下に落ちた。
そして左手のウィンドウを弄り、新しいシールドを実体化して銃につける。
「よし」
しっかりとついたシールドを確認して、ベネットは顔を上げた。
「すーっ…………ふぅ……」
一度深呼吸を挟む。
体から余計な重荷も抜けたような感覚になる。
パチン、と音を立てて、セレクターが回る。
フルオートから、セミオートへ。
ベネットは目を閉じた。
そして最後にもう一度、
『このシールドは、絶対に貫通しない』
『この形状なら、あんたに届く弾はないよ』
確かな自信を持って言う二人、フォートレスとプルームの手が、背中を押している気がする。
そして最後。
『最終的には度胸だ。いかに強く、確実に前に出れるかだ』
そんなカチューシャの声が、背中をドン、と押した。
✣
「いった!!」
誰かがそう叫ぶ。
それと同時に、どっ、と歓声が上がる。
局面は最終局面だ。
レンと本隊は膠着状態だから、もはや映すものはこれしかない。
バゴンバゴンという音が、大きなスピーカーから響く。
画面の中のベネットのシールドに、エムの射撃が炸裂している音だ。
彼は今、
「……おいおい、大丈夫なのか!?」
だんだん、民衆の中からそんな声が出てくる。
それもそのはずだ、なぜならベネットが
しかもそれどころか、じわじわゆっくりとエムの正面に向かっているのだ。
しっかりと銃を構え、腰を落とし、シールドがもうまもなく真っ白になりそうなくらいヒビ割れさせて。
ただ、次の瞬間だった。
✣
ズダァン!!
単発の発砲音。
「っ、そういうことか!!」
ドッ!!
そして全てを理解したエム。
咄嗟に顔を逸らす。
だが、顔は免れたものの肩に一発もらう。
「んぐっ……!!」
完璧だった。
小さな穴に、真っ直ぐ通す弾丸。
大きな体に真っ直ぐくい込んで、全ての運動エネルギーを体に伝える角度。
銃撃の猛攻に揺られながら放たれたその弾丸は、信じられないほど正確だった。
そしてそのせいで、ワンテンポ銃を覗くタイミングがズレる。
「くっ……そ!!」
エムは無理矢理に体を起こす。
そうしてやっと銃座に着いた時。
「……!!??」
✣
「おぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ベネットはもう、考えてなかった。
本能、もはやその次元まで、意識は集中していた。
エムのシールドに、針に糸を通すような射撃をカマしてからすぐ。
彼は気づけば走っていた。
「よし、よし!!!」
我に返ったのか、まさか上手くいった結果に少し高揚する。
真っ白にひび割れたシールド。
下に垂れ下がった銃。
この2つが、自分をこんな所まで連れてきてくれた。
「いける……いけるぞ!!」
ベネットは、かつてない高揚に身を震わす。
そして無造作にシールド上方を掴むと……
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