これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
「おおおおああああああ!!!!」
「くっそ……!!!!」
ナイフを構えたベネットが落ちてくる。
必死にスコープで彼を探していたエムが上を見上げ、反応が遅れる。
ガチン!
剛健なナイフが地面の岩に当たり、火花と鈍い音を放つ。
エムが咄嗟に横に転がり、ベネットのナイフが地面に当たったからだ。
エムは即座に立ち上がる。
ベネットも即座にそちらを見る。
エムは防弾板から身一つで転がったので、愛銃も防弾板も何も無い。
全てはベネットの目の前に置いてきてしまった。
……が、一つだけまだ武器を持っていた。
こんな時のための、
「終わりだ……!! ベネット!!」
わざと長めに転がったのはそのためだ。
ナイフのリーチから外れ、ハンドガンのリーチで立ち上がる。
そして映画さながらの仁王立ち構え。
歯切れよく数発撃ち込んだ。
……しかし。
「……なっ!?」
ベネットのしゃがんだ体に隠れていた左手が前に回ってくる。
そしてそこについている
ボン!ガン!バチン!
「……!!!!」
結局、放った数発は全て弾かれ、ベネットの周りの地面を削った。
あまりの驚きに、エムは呆然と立ち尽くす。
ハンドガンのスライドは、薬室を開けたまま止まっている。
それすなわち……弾切れだ。
「く……!!!!」
睨むベネットの目に、少し狼狽え後ろに足を着くエム。
その瞬間。
ベネットは、立ち上がるベクトルを斜めにして、飛びかかるようにエムに向かってきた。
エムも慌てて後ろ腰のナイフを引き抜く。
ヒュン!!
ただ風を切る音だけが、その場に響いていた。
✣
「やぁぁぁ!!!!」
「どりゃぁぁぁぁ!!!」
一方、レンとVRF本隊である。
VRFは、ライトを先頭に出し、レンと戦闘させながら、そこを中心にするように包囲網を敷いている。
ライトとレンは、小柄の俊敏同士、拮抗したドンパチを繰り広げていた。
『……ストップ、そこでいい、よ』
タウイの無線が入り、VRFの面々は足を止める。
各々、戦闘を繰り広げる2人を岩陰から見つつ、所定の位置で待機となった。
「何だか観客みたいだ」
レックスが楽しそうに座り込んで見ている。
……思い出す。
あの日、
確かあの時も、自分はかの戦士……
結局変わらない……。
そんな思いが少し芽生える。
「ま、いんじゃなぁいの。 ね?コー君」
ギィ?
すると彼は、笑って背中のモンスターに語りかける。
そのモンスターは、銃の一部を変形させ顔を見せると、疑問符のような声を上げてまた戻った。
✣
そんな風な、感傷に浸れるほどの暇を持て余していた彼ら。
特に、包囲網に加わらず、ドローンの上空映像に見入り、指揮していたタウイは、突如入った無線に困惑した。
「あの……どうしたらいい、ですかねこれ」
その声の主は、ベネットだった。
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