これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode118 変わらない 〜does not change〜

「おおおおああああああ!!!!」

「くっそ……!!!!」

 

ナイフを構えたベネットが落ちてくる。

必死にスコープで彼を探していたエムが上を見上げ、反応が遅れる。

 

ガチン!

 

剛健なナイフが地面の岩に当たり、火花と鈍い音を放つ。

エムが咄嗟に横に転がり、ベネットのナイフが地面に当たったからだ。

 

エムは即座に立ち上がる。

ベネットも即座にそちらを見る。

 

エムは防弾板から身一つで転がったので、愛銃も防弾板も何も無い。

全てはベネットの目の前に置いてきてしまった。

 

……が、一つだけまだ武器を持っていた。

こんな時のための、()()()()()だ。

 

「終わりだ……!! ベネット!!」

 

わざと長めに転がったのはそのためだ。

ナイフのリーチから外れ、ハンドガンのリーチで立ち上がる。

 

そして映画さながらの仁王立ち構え。

歯切れよく数発撃ち込んだ。

 

……しかし。

 

「……なっ!?」

 

ベネットのしゃがんだ体に隠れていた左手が前に回ってくる。

そしてそこについている()()()()()がベネットの前に立ち塞がる。

 

ボン!ガン!バチン!

「……!!!!」

 

結局、放った数発は全て弾かれ、ベネットの周りの地面を削った。

 

あまりの驚きに、エムは呆然と立ち尽くす。

ハンドガンのスライドは、薬室を開けたまま止まっている。

 

それすなわち……弾切れだ。

 

「く……!!!!」

 

睨むベネットの目に、少し狼狽え後ろに足を着くエム。

 

その瞬間。

ベネットは、立ち上がるベクトルを斜めにして、飛びかかるようにエムに向かってきた。

 

エムも慌てて後ろ腰のナイフを引き抜く。

 

 

 

 

ヒュン!!

 

ただ風を切る音だけが、その場に響いていた。

 

 

「やぁぁぁ!!!!」

「どりゃぁぁぁぁ!!!」

 

一方、レンとVRF本隊である。

 

VRFは、ライトを先頭に出し、レンと戦闘させながら、そこを中心にするように包囲網を敷いている。

 

ライトとレンは、小柄の俊敏同士、拮抗したドンパチを繰り広げていた。

 

『……ストップ、そこでいい、よ』

 

タウイの無線が入り、VRFの面々は足を止める。

各々、戦闘を繰り広げる2人を岩陰から見つつ、所定の位置で待機となった。

 

「何だか観客みたいだ」

 

レックスが楽しそうに座り込んで見ている。

 

……思い出す。

あの日、S()A()O()()()()()()

 

確かあの時も、自分はかの戦士……()()()()が、血盟騎士団団長と戦っているのを、ただひたすら眺めてたっけ。

 

結局変わらない……。

そんな思いが少し芽生える。

 

「ま、いんじゃなぁいの。 ね?コー君」

ギィ?

 

すると彼は、笑って背中のモンスターに語りかける。

 

そのモンスターは、銃の一部を変形させ顔を見せると、疑問符のような声を上げてまた戻った。

 

 

そんな風な、感傷に浸れるほどの暇を持て余していた彼ら。

特に、包囲網に加わらず、ドローンの上空映像に見入り、指揮していたタウイは、突如入った無線に困惑した。

 

 

 

 

 

 

 

「あの……どうしたらいい、ですかねこれ」

 

その声の主は、ベネットだった。




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