これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
ベネットが追加したパーツ、それは「ジョイント」である。
通常の「ジョイント」は、長方形型のシールド下方の長辺における中点にある。
これは、誰もがわかる
ではベネットが追加を依頼した「ジョイント」はどこか。
それは、長方形のシールドにおける短辺のそれぞれの中点に位置している。
そう、つまりこれは、
装着するのは、手首と肘のすぐ下。
したがって、どれだけ手を動かしても装着状態に変化はない。
そして不思議なことに。
この使い方は最初、想定していなかった使い方である。
しかし。
なぜだか、驚くほど形状がしっくりくるのである。
「……まさか」
ベネットの脳裏に、もしかして、なんていう言葉がよぎる。
ただ彼は、すぐにその思考をもみけした。
そんなはずはない。
でも実は……
その予想は、数奇にも
✣
そして時は進んで現在。
「な、なんじゃそりゃ」
タウイが、思わず疑問符をあげる。
他のメンバーからの交信はないため、おそらく皆一様に唖然としているのであろう。
……ベネットからの無線は、にわかに信じがたいことだった。
彼は、(どうやったかはともかく)エムに接近し、ナイフ戦に持ち込んだ後、戦闘の末彼にマウントを取った。
だがしかしその後すぐ、彼がなんと、「
しかも、「殺さないで、ほんとに死んでしまう」とかなんとかいって、今じゃ土下座の域に至っているとかなんとか。
極めつけはベネットだ。
ベネットはそんな彼の隣に座り、背中をさすりながら無線を飛ばしてきたらしい。
「はは……え、は、はぁ?」
タウイは、そんな言葉しかでてこない。
それもそのはず。
こんなの、急展開を飛び越えてもはや謎展開だ。
沈黙が訪れ、しばらくそのを占有する。
……ただ、突如その沈黙を破ったプレイヤーがいた。
他でもない、プルームである。
✣
『終わりだ、タウイ。
タウイはまた耳を疑う。
「プルーム? い、いいのか?」
そして思わず、無線を送り返す。
すると、プルームは落ち着き払った声で言葉を返してきた。
『ベネットに引き金を引けとは言えんだろう。それにベネットも、引きたくないはずだ』
「し、しかし……!!」
『タウイ、
「……?」
不意に言葉を切ったプルームに、タウイは沈黙で答えを待つ。
すると、プルームは一息ついて、核心的な一言を放った。
『これが
タウイははっとする。
確かにそうだ。
ビックボスなら、あの人なら、きっとそうするだろう。
普通、世界のどこの部隊でも「結果至上主義」だ。
もちろん、それはVRFも例外ではない。
上は結果を求め、素人は結果で判断する。
そしてそれ故、本職の人間は、結果でしか成果を示しえない。
何らそれは悪いことではない。
むしろ至極当然、当たり前である。
……しかし。
あの人、ビック・ボスはそうではない。
結果より、人としての圧倒的な強さがある。
ボスの任務歴は実際の所、周りとそう大差ない。
むしろ少し劣るくらいである。
でも、誰もが口を揃えて言うのだ、「あの人には勝てない」と。
それは単純に、確かな実力があるのを知られているからでもある。
しかしそれだけではなく、むしろこれは付属的な要素でしかない。
周りにそう言わしめ、そして屈強な強者をまとめ引っ張りあげる強さの真髄は、そこには無いのだ。
「…………」
『……タウイ』
「!!」
躊躇うタウイ。
無線から聞こえてくる声はプルームのものしかない。
他は皆沈黙。
それをもってして、同意とする。無線の原則である。
「わかっ……た」
『……all over……mission fai……』
ブチッ
そうして彼らは、その場に伏した。
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