これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode120 矛盾の中に 〜In contradiction〜

「…………」

 

酒場は、沈黙に包まれていた。

 

一般の方は、賑わっている。

最後の最後まで、小さな戦士達が戦い、その末で男の方が負け、その後だったからだ。

 

 

 

 

 

 

彼らが、撤退(リザイン)したのは。

 

✣

 

沈黙はこちら。

タスクらがいる、個室である。

 

相変わらずのほほんとしたタスクと、厳しめな目で床を睨み、カクテルを仰ぐ店主。

目を伏せて息をつくシノンと、最高に居心地が悪そうなキリト。

 

どうなるんだろう。

そんな風にしか見ていなかったディスプレイで起こった悲劇。

 

泣いて伏す大男の背中をさすり、無線を飛ばすナイファー。

呆気に取られ、呆然とした中、レンとの決着を待って、リザインを押した本隊。

 

そして肝心のレンとの試合も、負(・)け(・)て(・)終(・)わ(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)。

重苦しい雰囲気になるのも致し方なし、むしろ当然かもしれない。

 

「……して」

「っ!」

 

すると、店主がゆっくりと顔を上げた。

キリトはその横顔を、恐る恐る見る。

 

「どう、評価する? タスク君は」

「……うーん」

 

そんな顔を向けられながらも、のほほんとした態度を崩さないタスク。

そう問われ、飲んでいたワインをクルクルと回すと……

 

コト

「……ま、上出来、でしょうか」

「上出来……かい」

「ええ」

 

明らかにそうじゃないだろう。

そう言いたげなキリトの目が、タスクと店主を行き来する。

 

……するとその時だった。

 

「……落ち着いてキリト」

トントン

「んえ……?」

 

シノンが、キリトの背中をつついた。

キリトはゆっくりとそちらに振り返る。

 

「……彼らはよくやったわ。上出来よ」

「ええ……!?」

 

すると彼女まで、そんなことを言い始めた。

キリトは思わずシノンを凝視する。

 

そして勢いよく店主へ振り返ると。

 

 

 

 

 

「はぁぁぁ〜そりゃそうよなぁ〜!!」

「……えっ」

 

 

 

 

先程の雰囲気と一転。

店主がカウンターにひれ伏した。

 

✣

 

そして時は流れ、その日の晩。

 

すっかり日も落ち、夕食も腹に入れ、あとは寝るだけなキリト。

……否、現実世界の、桐々谷和人である。

 

彼は今、電気を消した自室でベッドに横になり、天井を眺めていた。

 

「……」

 

不思議な感じがまだ抜けない。

 

今日の試合はLMが勝った。

問題はその後。

 

結局、あのチームには報酬は何もなかった。

 

後から聞けば、ピンクのチビに負けたのも、わざとらしい。

理由は、敵チームにリザインの選択肢を与えてはいけないから。

 

筋が通っている。納得もできる。

……しかし。

 

それらに対するタスクらの反応。

不思議な感じはここからである。

 

シノンも含め、彼ら3人に一貫して共通していたのは、「彼らはよくやった」という意見。

 

よくやったなら……報酬をあげてもって思うのは、『甘い』のか。

 

あの後、あの店主が、すごく項垂れていた。

しかしそれはがっかりというより、そうなっちゃっかぁ、というような、笑いを含めた項垂れだ。

 

 

「任務が絶対、そう言っているのに、何も達成しなかった任務に対して、『よくやった』…………んん?」

 

 

寝返りを打ち、今度は壁を眺めつつ、そう独りごちる和人、

 

矛盾。

頭には、そんな単語がよぎる。

 

……しかし、だ。

この一見矛盾した状況の中に、彼(・)が(・)求(・)め(・)る(・)も(・)の(・)がある気がするのだ。

 

彼(・)ら(・)の(・)絶(・)対(・)的(・)な(・)強(・)さ(・)の、秘密が。

 

✣

 

それから数分後。

 

ピピピ……

「ん、んん……?」

 

いつの間にか寝ていた和人は、スマホの着信音で目を覚ます。

 

「誰……だ? こんな……時間……に」

 

そして手探りでスマホを手繰り寄せ、眩しい画面に目を凝らす。

 

するとそこには、「明日奈」と書かれていた。

 

「アスナ……!? どうしたんだ一体」

ピッ

 

キリトは慌てて緑色の通話ボタンを押し、スマホを耳に押し当てる。

 

「は、はい……もしもし」

『……もしもし!! いきなりごめんね、キリトくん』

「……ん、いやそれはいいけど……何かあったのか?」

 

和人は、体を起こしてベッドに座り込む。

 

いつものパソコンを介したテレビ電話ではなく、スマホでの通常通話な辺り、普通の電話、では無いのは確かであろう。

 

疑問、と言うより心配、が彼の心に染みでてくる。

 

『ん、いや、いまALOから帰ってきたんだけどね……』

「あぁ……うん……?」

 

ALO、いかにもいつも通りな単語が出てくる。

和人の心に、少し疑問が増えてきた。

 

……そしてしばらくの沈黙の後。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『私を……GGOに連れてってほしいの』




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