これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode130 眼差し 〜look〜

「それって……どういう……」

「んー? そのまんまだよ」

 

驚き思わず振り返ったリーファと、その視線の先に座り、青空を仰ぎみる店主。

 

傍から見たら異様な光景だが、店主はともかくリーファでさえ、そんなことは気にもとめなかった。

 

「君はあと数十分後に始まる戦いに()()()()()()()()

「!!」

「でも今の状態で行けば、()()()()()()()()()()()()()()ってことさ」

「っ……?」

 

店主のあっけらかんな口調に、リーファは違和感を覚えつつも聞き入る。

 

すると店主がゆっくり振り返って、そしてリーファを見上げると、ニコリと笑って隣の地面をとんとんと叩いた。

 

「まぁ座りなよ」

「……はい」

 

リーファはその誘いにしばらくの沈黙の後に答える。

とす、と柔らかい音と共に、リーファがまた店主の隣に座る。

 

そしてそれを見向きもせず、しかし、きちんと座るまで待ってから、店主はゆっくり、話し始めた。

 

「……君は素晴らしい剣士だ。戦い方を見てて分かる、剣道かなにかしてるでしょ」

「……!!」

「それに加えてALOのプレイ時間も長い。SAO未解決状態の時からのプレイヤーだよね」

「ど、どうしてそこまで……!?」

「ふふ、う〜ん……長年の勘ってやつかな」

 

そう言って店主はまた笑う。

リーファはそんな店主を半ば怪訝な目をして見つめた。

 

「っはは、そんな怪訝な目ぇしなくてもいいじゃんか。別に見ただけでわかることさ。探りなんか何も入れてないよ」

「あ、いえ、ご、ごめんなさい……」

 

そんな目に店主は引け目を感じたのか、店主は少し身を引いて弁解する。

リーファはそれをさせてしまったという罪悪感から、慌てて謝りペコペコしていた。

 

普段なら、笑っていれるほどのほほんとした状況。

しかし今のリーファには、そんな状態なれる余裕は到底なかった。

 

すると、店主がそんな彼女を見てため息をつく。

 

「はぁ……あのね、リーファさん」

「……?」

 

呆れたように微笑みながら語りかけてきた店主に、リーファは顔を上げる。

 

そして店主は、またさっきの真剣味を帯びて、こう一言発した。

 

 

 

 

 

 

 

「ユウキさんは別に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

「えっ……!?」

 

店主から飛び出した驚きの言葉に、リーファは放心するがごとく体が固まる。

 

それを見つつも、店主は言葉を続ける。

 

「あなたあれ、きっとさ」

「……」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、そう感じてるんじゃなあい?」

「!!」

 

図星だった。

そう、まさにその通りであった。

 

ユウキらスリーピングナイツはもちろん、観客達も、「ユウキ対タスク」を期待している。

だれも、リーファが勝つことを望んでいないし、期待していない。

 

それだけならまだいい。

しかし今回は仲間たち、キリトやアスナらまでもが、それを望んでいるのである。

 

そんな戦いに果たして意味はあるのか。

そもそもキリトに勝ったタスクだ。リーファが勝てるわけがない。

 

勝てない戦いに挑まなければならない時はある。

しかしそれは応援してくれている人達のためであって、今回はそんな人などどこにもいない。

 

だったら。

そう、思っても致し方なかろう。

 

それに加え、なんだか見せしめのような、消化試合のような。

そんな雰囲気の中戦いに挑むなんて、それこそプライドが許せない。

 

だからリーファはすっかり気分が落ち、池のほとりに座り込んでしまっていたのである。

 

大切な愛剣を傍らに置いて。

 

「……ふふ、あのね、リーファさん」

「!!」

 

すると店主は、そんなすっかり落ちたリーファの目を真っ直ぐ見据える。

リーファはその眼差しに、心を射抜かれたように体が硬直する。

 

そしてゆっくりと。

 

「ユウキさんも観客も、そしてキリトくんもアスナさん達も」

「……」

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()が見たいんだ」

 

 

 

 

 

 

()()……()っ……!!」

 

そう言って、リーファの目を一段と強い眼差しで貫く。

 

「君が負けて欲しいなんて誰も思ってないし、君がもしタスクくんより強かったら、それこそ観客は歓喜するだろうね」

「……!!」

 

すると店主はそんな眼差しを一転、そう言ってふにゃっとほほえむ。

そしてにっと笑うと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()、それこそかっこいいじゃない?」

 

そう言って店主はまた一段と深く笑った。




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