これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
「それって……どういう……」
「んー? そのまんまだよ」
驚き思わず振り返ったリーファと、その視線の先に座り、青空を仰ぎみる店主。
傍から見たら異様な光景だが、店主はともかくリーファでさえ、そんなことは気にもとめなかった。
「君はあと数十分後に始まる戦いに
「!!」
「でも今の状態で行けば、
「っ……?」
店主のあっけらかんな口調に、リーファは違和感を覚えつつも聞き入る。
すると店主がゆっくり振り返って、そしてリーファを見上げると、ニコリと笑って隣の地面をとんとんと叩いた。
「まぁ座りなよ」
「……はい」
リーファはその誘いにしばらくの沈黙の後に答える。
とす、と柔らかい音と共に、リーファがまた店主の隣に座る。
そしてそれを見向きもせず、しかし、きちんと座るまで待ってから、店主はゆっくり、話し始めた。
「……君は素晴らしい剣士だ。戦い方を見てて分かる、剣道かなにかしてるでしょ」
「……!!」
「それに加えてALOのプレイ時間も長い。SAO未解決状態の時からのプレイヤーだよね」
「ど、どうしてそこまで……!?」
「ふふ、う〜ん……長年の勘ってやつかな」
そう言って店主はまた笑う。
リーファはそんな店主を半ば怪訝な目をして見つめた。
「っはは、そんな怪訝な目ぇしなくてもいいじゃんか。別に見ただけでわかることさ。探りなんか何も入れてないよ」
「あ、いえ、ご、ごめんなさい……」
そんな目に店主は引け目を感じたのか、店主は少し身を引いて弁解する。
リーファはそれをさせてしまったという罪悪感から、慌てて謝りペコペコしていた。
普段なら、笑っていれるほどのほほんとした状況。
しかし今のリーファには、そんな状態なれる余裕は到底なかった。
すると、店主がそんな彼女を見てため息をつく。
「はぁ……あのね、リーファさん」
「……?」
呆れたように微笑みながら語りかけてきた店主に、リーファは顔を上げる。
そして店主は、またさっきの真剣味を帯びて、こう一言発した。
「ユウキさんは別に、
「えっ……!?」
店主から飛び出した驚きの言葉に、リーファは放心するがごとく体が固まる。
それを見つつも、店主は言葉を続ける。
「あなたあれ、きっとさ」
「……」
「
「!!」
図星だった。
そう、まさにその通りであった。
ユウキらスリーピングナイツはもちろん、観客達も、「ユウキ対タスク」を期待している。
だれも、リーファが勝つことを望んでいないし、期待していない。
それだけならまだいい。
しかし今回は仲間たち、キリトやアスナらまでもが、それを望んでいるのである。
そんな戦いに果たして意味はあるのか。
そもそもキリトに勝ったタスクだ。リーファが勝てるわけがない。
勝てない戦いに挑まなければならない時はある。
しかしそれは応援してくれている人達のためであって、今回はそんな人などどこにもいない。
だったら。
そう、思っても致し方なかろう。
それに加え、なんだか見せしめのような、消化試合のような。
そんな雰囲気の中戦いに挑むなんて、それこそプライドが許せない。
だからリーファはすっかり気分が落ち、池のほとりに座り込んでしまっていたのである。
大切な愛剣を傍らに置いて。
「……ふふ、あのね、リーファさん」
「!!」
すると店主は、そんなすっかり落ちたリーファの目を真っ直ぐ見据える。
リーファはその眼差しに、心を射抜かれたように体が硬直する。
そしてゆっくりと。
「ユウキさんも観客も、そしてキリトくんもアスナさん達も」
「……」
「
「
そう言って、リーファの目を一段と強い眼差しで貫く。
「君が負けて欲しいなんて誰も思ってないし、君がもしタスクくんより強かったら、それこそ観客は歓喜するだろうね」
「……!!」
すると店主はそんな眼差しを一転、そう言ってふにゃっとほほえむ。
そしてにっと笑うと。
「
そう言って店主はまた一段と深く笑った。
【作者Twitter】
https://mobile.twitter.com/P6LWBtQYS9EOJbl
作者との交流、次話投稿の通知、ちょっとした裏話などはこちら!!
【作者 公式LINE】
https://lin.ee/wGANpn2
公式LINE限定セリフ、各章あらすじ、素早い作中情報検索はこちら!!
【今作紹介動画】
https://youtu.be/elqnCcV7R_0
この動画にしかない物語の鍵があります……。
【感想】
下のボタンをタップ!!