これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode134 獣 〜beast〜

リーファは決意した。

かの恐ろしい猫耳少年に一太刀浴びせるまでは、この戦いは絶対に終わらせてやらない、と。

 

「戦わずして勝つ力」、それ即ち「抑止力」。

それに脅えては、この戦いに挑む意味などない。

 

たった一突きだった。

リーファの剣に隠された、タスクの鋭いあの一閃は、リーファの全てを目覚めさせた。

 

「……ふふ」

「っ……ふぅ……」

 

タスクもそれを感じとっているのであろう。

リーファを見据えて微動だにしない。

 

リーファは剣を構え直した。

タスクの顔に、剣先が重なる。

 

しばらくの沈黙が訪れる。

いつのまにか、観客も静寂に包まれていた。

 

そして次の瞬間。

 

「あなたにも、いるようですね」

「……?」

 

「……獣が」

 

「っ!!」

 

タスクの声と同時に、二人の剣がぶつかった。

ギリリ、と金属が擦れる音がする。

 

「恐ろしい獣だ……存在すら感じなかったですよ」

「……!!」

 

鍔迫り合いの中、タスクはじっとこちらを見つめてくる。

リーファは剣を抑えるのに手一杯だ。

 

バチン!!

「くっ……!!」

 

一旦鍔迫り合いが離れた。

……というより、リーファが弾いて離した。

 

「えっ……あ、くっ!!」

ガッ!!

 

しかしタスクはさらに踏み込み、また鍔迫り合いになる。

 

「中々いませんよ、あなたのような人」

「……!?」

「眠ってる気配すらなかった。存在すら察知されない獣の持ち主」

「……!!」

 

真っ直ぐ瞳を見据え、リーファに語りかけるタスク。

 

リーファには、彼の話していることは正確には分からない。

……しかし、似たようなことをキリトが言っていたような気がする。

 

 

 

 

 

()()()()()は、中に獣が住んでる』

 

 

 

 

 

もし、その()とやらが、自分の中にもいるなら。

 

バチィ!!

「くっ……はぁ、はぁ……!!」

 

鍔迫り合いが、今度はタスクの手によって終わる。

リーファを後ろに弾き飛ばす形で。

 

二人の間に間が空く。

タスクはまた剣を構え直す。

 

しかし。

リーファは俯いたまま、剣を構え直さなかった。

 

……すると。

 

「……いるなら」

「?」

 

リーファが小さな声で話し始める。

 

「私の……中にも」

「……!!」

「私の中にも、獣が、いる、なら……っ!!」

 

そして次の瞬間。

 

「その獣、討ち取ってみなさいよ、猫耳!!」

「っ……!? 」

 

そう言って、リーファは今まで誰にも見せたことがない顔を、タスクに向けた。

 

闘争心と衝動に支配された、女性らしからぬ顔。

 

 

「リーファ……ちゃん……!?」

「……!!??」

 

アスナは心配そうな目をしてリーファを見つめていた。

 

否、アスナだけではない。

シリカやリズはもちろん。

 

()()()()()()、リーファを凝視ししていた。

 

「まさか……リーファ、おまえ……!?」

「キリト……くん?」

 

キリトらしからぬ声。

アスナが反応する。

 

すると。

 

「獣……ね」

「!?」

 

後ろから、シノンの声が聞こえてきた。

 

「獣……って?」

「……ふふ」

 

微笑むシノンに問うアスナ。

シノンは変わらずタスクらの方を見つつ、アスナに答えた。

 

()()()()()()()()()()()()()に、()()()()()()()。それが、『獣』」

「け、も……の」

「リーファちゃんの中にもいたのね……。ふふ、タスク今、すっごい楽しいと思うわ」

「……!?」

 

シノンの声が、アスナの体を揺らすようだった。

 

感覚はあの時と似ていた。

 

 

 

 

 

 

()()()()()A()L()O()のあの時と。

 

 

「ああああああ!!!!」

ガキィ!!

 

リーファの剣がタスクの剣の嶺を削る。

 

この剣を作るのにえらく長く時間がかかった。

しかし今となっては、そんなこと知った話ではない。

 

なんでもいい、この少年を倒したい。

 

一太刀どころで済ませる気は失せた。

この少年を、倒してみたい。

 

これはもはや興味感情を超越した、()()であった。

 

 

「ねーぇ……し、シウネー?」

「……ん?」

 

一方、ユウキら、スリーピング・ナイツの面々である。

 

彼らは、アスナ達のすぐ隣で観戦してはいたものの、タスクの戦いぶりに目を取られ、自ずと半独立のような形になっていた。

 

「ぼ、僕さぁ」

「……え?」

 

ユウキが額に汗を滲ませながらシウネーに笑いかける。

シウネーはそんな珍しいユウキに驚きを隠せない顔を向ける。

 

そして。

 

「楽しみだよ、楽しみだけど」

「う……うん」

 

 

 

 

 

 

「初めて……()()かもしんない……」




あけましておめでとうございました!!
(もう開けちゃってますからね)

こんにちは!!
駆巡 艤宗でございます。

いやぁ、年開けちまいましたよ。
大変お待たせ致しました。

実は作者近況、結構忙しくなってしまいまして……
なかなか更新できずにいました。
大変失礼致しました。

来年の夏? か、秋頃にはまた忙しいのが減ると思いますので、そこまではこんなペースが続いてしまいそうです。
(といいつつ、時間を見つけてノリに乗った時にガツガツ書いて、一気に……とも考えています。)
こんなペースでも読んでくださっている読者の皆様には、格別の感謝を申し上げたく……

ありがとうございます。
今年もよろしくお願い致します。

この作品を、あなたの良き一年の隅に置いておいて頂けると幸いです。


駆巡 艤宗

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