これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode135 「落」〜"Drop"〜

「こ、怖いって……!?」

 

ユウキらしからぬ言葉に、シウネーが思わず彼女を見る。

 

「でも……なんでだろ、すごく……わくわく……する」

「わ……え……?」

 

気づけば、彼女の顔には笑みが浮かんでいる。

 

「……」

 

シノンは見ていた。

 

 

 

 

 

 

彼女の内にもまた、()()()()ことを……。

 

 

戦いはいよいよ大詰めである。

リーファの本性が顔を見せ、沸き立ちが収まらない観客。

 

ここまで魅せるとは思わなかったのであろう、キリトらのすぐ隣、スリーピング・ナイツの反対側に座っていたサクヤらも目を見張っていた。

 

ガン!! キィ!!

「くぅ……!?」

 

体重を乗せた一撃を、いとも簡単にタスクの刀に跳ね返され、リーファが思わずよろける。

 

「……さぁ」

「ぐっ……ううううああああ!!!!」

 

相変わらず余裕なタスクが膝を着くリーファをあえて煽る。

 

リーファは当然それに乗っかる。

 

キュン!!

「ちっ……」

 

鋭い突きがタスクの顔の横を射抜く。

否、正確には、タスクの顔が避けた結果、そうなった。

 

リーファはこれでもダメかと顔が険しくなる。

 

バキィ!!

「がっ……!?」

 

するとその直後、タスクの剣がリーファの剣の柄と刀身の境目あたりを下から斬りあげた。

 

力点のすぐそばである。もちろん、簡単に剣は上を向く。

 

そして続いて2撃。

 

チィ!! キィッ!!

「ぐっ……あっ……」

 

縦になった剣に、容赦なく刀が食い込む。

リーファは思わず後ろに下がった。

 

「……リーファさん、あなたは素晴らしい獣を持っている」

「……!?」

 

すると、タスクが刀を下げてリーファを見た。

 

「しかし」

「!!」

 

そして急接近。

タスクの顔が、リーファの顔の目の前に来る。

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

「なっ……!!」

 

そう言うと、タスクは身を瞬時に引いた。

するとリーファは脚がお互い重なり……

 

ドサッ

「あぅっ……!!」

 

尻もちを着く。

 

「またやりましょう、今日は……ここまで」

 

そしてタスクは笑い……

 

ヒュン!!

「くっ!!」

 

リーファの上腕を、()()()()()()()横に斬った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、ブザーがなる。

タイムアウトのブザーである。

 

勝者はタスク。

H()P()()()()()によっての、勝利であった。

 

 

「アンクル……ブレイク」

「キリトくん?」

 

一方、観客席。

 

タスクの勝利にまた湧く観客の中で、不思議そうな顔をするアスナに、タスクが今リーファにしてやった技術を教えていた。

 

「あれは……多分、アンクルブレイクだよ」

「な、なぁに、それ……?」

 

そう。

リーファがタスクの接近と後退で後ろに尻もちを着いた理由。

 

それは、「アンクルブレイク」という、小手先の技である。

 

「確か……バスケだったかな」

「?」

「相手の意識や視線を誘導して、脚を絡ませて転ばせるんだ」

「……!!」

 

アスナは驚く。

と、いうより慄く。

 

なんだそれは、と。

そんなこと、少なくとも戦いの中でやれるもんではない。

 

スポーツなら分かるが、これは戦闘だ。

相手の意識は自分ひとつに注がれているのだ。

 

状況や仲間などに意識を割かねばならない試合とは違うのだ。

 

「俺も……やったことは、ある。ただ、相手の体制を崩す程度だ。尻もちなんてどうやっても無理」

「……」

「そういえば、アスナもユウキにやられたろ? あの試合のとき」

「あ……!!」

 

そういえば、と言わんばかりに記憶が蘇ってきた。

初めて会ったあの試合の時、ユウキが急に接近してきて、驚いて後ろに倒れそうになったことがあった。

 

ああ、あれか。

そんな気持ちが出かけるが、いやいやそれにしたってあっちは尻もちである。

 

そもそも次元が違う。

後ろに倒すならともかく、尻もちは()()()()()()()芸当なのだから……。

 

「ま、なんにせよバケモンだね、彼」

「きゃっ!?」

 

するとその時、いきなり一段上からユウキが顔を覗かせてきた。

アスナはビックリして仰け反る。

 

「うっひひ、いい驚きっぷり、かっわいー♡」

「うぅ〜、もう!!」

 

してやったり顔のユウキにアスナがポカリと拳をあてる。

 

すると、その隣のシウネーが、ユウキをおさえながらキリトに尋ねた。

 

「この後はどうしますか? 今からDブロック予選ですが……」

「ん……ああ、そうだな……決勝にはきっと()()()がくるし、決勝だけ見ようかな」

()()()……?」

 

シウネーがはて? と言わんばかりに首を傾げる。

 

すると寄ってきたサクヤが笑って答えた。

 

 

 

 

 

「ふふ、()()()()()だろう?」

「へへ、正解」

 

 

そのまた他方。

店主もとい、()()()である。

 

彼は歓声を浴びる二人を見て、ニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

「ありゃぁ、()()()な。リーファさん」

 

そう言われるリーファの見上げた視線は、タスクを捉えていた。




前回の後書き?
知らない子ですね。

※たまたま時間が空きましたので仕上げました。


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