これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
「リーファ……お、おつかれ」
少し引き気味なキリトが、半ば放心状態のリーファを迎える。
「あ、お兄ちゃん……ただい……ま」
「あちゃぁー、こりゃ、精根尽き果てたな」
ポツポツと喋るリーファを、クラインが笑って支えた。
リズやその他のメンバーは、そんな彼女を不思議そうに見つめている。
それもそのはず。
リーファが、
確かに喋る言葉はカタコトだし、足取りもどこかおぼつかないが、どうもやつれているようには見えない。
「ねぇ……お兄ちゃん」
「……ん?」
すると、リーファがキリトを見て、不意に声をかける。
前を歩くキリトが振り向くにつられ、周りの皆も振り向く。
クラインは肩を抱えながらも顔はリーファに向いている。
そしてリーファは、ニコリと笑うと……
「楽し……かったよ」
「……!!」
そう言って、ガクリと項垂れた。
「わっ……とと!!」
クラインが、慌ててリーファを支え直した。
✣
時は、Dブロック決勝。
……まで、残り数分。
キリト達を始め、それに付随するスリーピング・ナイツは、少し早めに客席に固まって座っていた。
その隣には、シルフ族首領のサクヤや、ケット・シー族首領のアリシャ・ルーなども座っている。
お付きの者も含めればキリトらに引けを取らない大所帯だ。
それに首領ともあらば流石に人々の目を引く。
それに加え、隣の大所帯にはそれぞれAブロック・Bブロックの覇者がいるのだ。
そりゃぁもう……近寄り難い雰囲気すら漂っていた。
「なんか……陣取ったみたいになっちゃってますね」
「まあ……しょうがないよ、これは……」
そんな団体の中で、シリカとリズがそう言って笑い合う。
クラインやエギルも口にはしないがそんな感じだ。
……そんな最中。
不意に、人だかりが静かになった。
「え……?」
いきなり静まりかえる群衆に、かえってキリトらがそちらに目を持っていかれる。
するとそこには。
「あ……!!」
「えっ……!?」
「お、おお!!」
「タスク!!」
そう、彼がいた。
そのすぐ後ろに、シノンも。
そして意外にも。
一番嬉しそうなのはキリトであった。
「あのう、リーファさんいますかあ?」
「あ、ああ。ここに」
するとタスクは、大所帯を見渡しつつキリトに尋ねた。
キリトは、その問いに答えてリーファの方を見る。
それにつられて、タスクがリーファを見つけた。
そしてひょいひょいと座る人の間を縫って、リーファの元へ動き出す。
一方シノンは、すぐそこに座っていたリズに話しかけられていた。
「シノノン!! あんたも熱心ねぇまた」
「ね、熱心……?」
やたらニヤつくリズとシリカに挟まれながら、シノンは少し困惑した顔を見せる。
「ま、そんなあなたにライバル登場ってな」
すると、クラインがニヤニヤしてシノンの肩を軽く叩いた。
「ライバ……ル?」
「うしし……」
なんのことかさっぱり分からないシノンは、首を傾げる。
しかし。
はっ、と気づいてタスクの方を見た。
リーファと笑って話すタスクが視界に入る。
「くくく……」
「も、もう〜〜!!」
イジワルに笑うリズたちを、シノンは慌ててはたいた。
「でっ……!?」
「はぅ……!!」
「げっ……!!」
「もう!! やめてよ……!!」
しかしシノンの顔は、明らかに真っ赤であった。
✣
一方、リーファとタスクである。
「ありがとうございました」
「あ……」
純粋無垢に笑って手を差し出すタスク。
そこにはなんの邪念も含まれてないように感じた。
「こ、こちら、こそ……」
「……!!」
ぎゅ、と握り返すリーファを見て、またにっ、と笑うタスクは、ブンブンと手を上下に振った。
リーファはいきなりの事で驚く。
「わ、わ!?」
「いやぁ、楽しかったですよぉあの戦いは!!」
「へぇ?」
タスクの言葉に、思わず顔を上げるリーファ。
自分の言っていたことと、タスクの言ったことが重なり、少し不思議な気持ちになる。
するとそんな気持ちが駆け巡る中。
「ところで、リーファさん」
タスクが、まっすぐこちらを見てきた。
「っ……!?」
リーファは思わずドキリと心臓が鳴る。
少し目を逸らすと、ニヤついてこっちをチラ見するリズ御一行と、それに真っ赤になって覆いかぶさろうとするシノンが見えた。
タスクにしてみれば背後のことなので知った話ではない。
お構い無しにぐいと顔を近づけてくる。
……そして一言。
「その獣、ぜひ大切にしてください」
「っ……!!」
リーファの心臓が、別の意味でまた鳴った。
✣
それから、数分後。
タスクは今度はキリトに捕まり、シノンは相変わらずリズたちと抗争し……で。
Dブロック決勝までの待ち時間があっという間にすぎていた。
パンパパーン!!
「お!!」
そしてついに、高らかなファンファーレが鳴り響く。
今日4回目のファンファーレ。
流石に皆、これが
キリトやタスク達、スリーピング・ナイツ、そしてサクヤにアリシャ。
そして闘技場を埋め尽くす観客。
皆が待ちわびていたかのように、闘技場に注目した。
『さぁ!! 皆様!! お待たせ致しました!!』
「おおおお!!!!」
もはや聞きなれたアナウンス嬢の声に、観客は相変わらず盛り上がりを見せる。
『本日
高らかな宣言。盛り上がる観客。
A・B・Cとも大盛況だったとはいえ、ここまで盛り上がるのはなかなかない。
それもそのはずだ、なぜなら……
Dブロック優勝候補が、かの
キリトやユウキとは歴然の差がある古参であり、尚且つ未だなお圧倒的な強さと、それに基づく根強いファンがいる。
ユージーンの登場に、ファンはもちろん、一般の観客も大いに沸く。
「ひゃ〜、相変わらず人気だね、ユージーンは」
熱狂するファンを見て、アリシャがそんな声を漏らす。
まあ確かに、戦いが始まってもいないのにこの盛り上がりようは、人気の証かもしれない。
そして、それに対抗する、ある種
「え、あ、あれって……!!」
その時。
不意にアスナが驚いてタスクの方を見る。
キリトも同様に。
加え、リズ達はシノンを見、シノンは私も知らないと言わんばかりにタスクを見る。
そして当のタスクも、キリトやアスナ、シノンらを見返した後。
「ぼ、ぼ、僕も知らない……」
そう言って、闘技場を凝視した。
もう……お分かりであろう。
もう一人のファイナリスト、その場に立っていたのは……。
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