これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode138 宣戦布告 〜Declaration of battle〜

3.2.1……

虚空に浮かぶ数字が消えていく。

 

赤く光る両手剣を持つユージーンと、薙刀を持ち相対するタモン。

 

大方の予想はユージーンの圧勝だ。

優勝候補なのもそうだが、何よりタモンの方。

 

彼は、今までの予選全てにおいて、ごく普通の戦い方で終わらせてきた。

周知の通り、ユージーンはごく普通の戦い方が通じる相手では無い。

 

類稀なる技術と経験。

そして、「魔剣グラム」のエクストラ効果。

 

()()()()()()()()()()、直接相手にダメージを与えられる魔剣。

 

見たところ、羽を使えないあたりALOに来て間もないし、ユージーンの武器の特性さえなんなら知らないだろう。

そしてそのまま一撃クリーンヒットで終わり。

 

とまあ、こんなのがあらかたの予想であった。

 

……しかし。

 

「……はは」

「っ……!?」

 

タモンはのんきに笑うと、ユージーンをしかと見据える。

ユージーンはそんなタモンの視線に、警戒の色を含めた視線で返す。

 

するとタモンはギリッと薙刀を握り、一言。

 

 

 

 

 

 

 

「勝つのは僕。悪いけど、ね」

 

 

 

 

 

 

「なっ……!?!?」

 

そう言って、にっと微笑んだ。

観客は騒然とするどころか、大いに沸きあがる。

 

あのユージーンに、ここまで堂々と宣戦布告した奴が未だかつていただろうか。

 

タモンの実力が怪しいのはさておき、とにかくその意外な、かつ無謀とも取れる行動は、会場の観客を熱狂させていた。

 

そしてその瞬間。

 

 

 

ビーーッ!!

「「「「「「オオオオオオ!!!!」」」」」」

 

 

 

 

スタートの合図が鳴り響いた。

 

「おおおお!!!!」

「……おおう?」

 

直後、ユージーンが羽を使って急接近。

大きく振りかぶった上段の構え。

 

タモンはさも当然と言わんばかりに薙刀を横に突き出した。

 

「わかって……ないっ!!??」

 

サクヤが思わず観客席から身を乗り出す。

 

観客からは、ああ……やっぱり、と言わんばかりに落胆の声があがる。

 

グシャッ

「ぐぇっ……!?」

 

そしてそのままクリーンヒット。

タモンは斬られるどころか吹き飛ばされて、闘技場の壁に激突した。

 

「店主さん!!!!」

「お、おいおい!!!!」

 

アスナとクラインが、思わず立ち上がる。

 

砂煙に覆われた壁面に、皆の注目が集まる。

 

……しかし。

 

「な、な……なぜ……だ!?」

「っ……へへ」

 

()()()()()()()()のは、タモンではなくユージーンであった。

 

「えっ……!?」

 

アスナも信じられないと言わんばかりに前のめりになって目を細める。

 

それもそのはずであった。

なぜなら、()()()()H()P()()0().()1()()()()()()()()()()()()から。

 

「な、なんつう……」

「どんなキャラ育成してんだ……!?」

 

観客の感想が漏れ出る中。

 

「くそっ……おおお!!!」

 

ユージーンが、まだ止んでいない砂煙の中に紛れて突進した。

 

「わっ!?」

ビュン!!

 

地面に垂直めの、袈裟斬りを一撃。

しかしタモンはそれを避ける。

 

視線が完璧に追いついていた。

体スレスレを掠める剣を、笑いながら見送っている。

 

「おっ……おお!!」

 

完璧に見切ったタモンの回避に、サクヤが思わず感嘆した。

 

「ちいっ……」

「はは……そぉらっ!!」

ドゴォ!!

 

すると、ユージーンの腹に今度はタモンが一撃を加える。

 

薙刀ではなく、体勢を落とした横蹴り。

回し蹴りと違い、ベクトルはまっすぐ突き刺すようにユージーンに向いている。

 

「んぐぅ……っ!?」

 

ユージーンは、たまらず距離をとった。

 

ここで斬り合ってもいいが、一歩間違えば自分が壁に追いやられかねない。

一旦真ん中に戻り、広いところで応戦した方がいい。

 

そう考えたからだ。

 

「すっ……ごいね」

「……!!」

 

すると、ユウキがそう言いつつシウネーを見る。

シウネーは、こくりと頷き両手を握りしめた。

 

ユージーンは、決して並の相手ではない。

相対するほとんどのプレイヤーは、圧倒的力の差に屈服する。

 

それが今や対等、どころか少し劣勢だ。

しかも、つい最近ALOにコンバートしてきた相手に。

 

「ひょっとして、さ」

「う、うん」

 

ユウキが、笑いながらアスナを見る。

 

そして一言。

 

 

 

 

 

 

「アスナさん、とんでもない人達連れてきたよね……?」

 

 

 

 

 

 

その隣に座るタスクの口が、少し笑った気がした。




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